中医学に基づく漢方医学 脈診
① 時刻 ② 体位 ③ 指法 ④ 挙・按・尋 ⑤ 平息 ⑥ 五十動 脈診の方法 ① 時刻 ② 体位 ③ 指法 ④ 挙・按・尋 ⑤ 平息 ⑥ 五十動
①時刻 ・脈を取るには外界の影響が少なく、人体が安静状態にある早朝が理想的である。 ・また、患者を一定時間休息させた後に静かで落ちついた環境で緊張を解き、ゆったりと脈を取るのがよい。
②体位 ・患者を坐位か仰臥位にして、腕は伸ばして心臓の高さに置き、手掌を上に向け、腕関節の下側に柔らかい敷物(枕状のもの)をあてる。
③指法 総按~三指を水平に揃えたままで同じように力を加えて脈象を診る一般的な方法である。 単按~臓腑や部位などとの対応を考えて、重点的に寸・関・尺のいずれかの脈象を診る。
右気左血 陽 気 陰 血 下 上
総按 ①第三指を橈骨茎状突起内側の関部にあてる ↓ ②第二指を関前の寸部に、第四指を関後の尺部にあてる *3本の指が弓形になるように立てて指先をそろえ、感覚が最も鋭敏な指尖に近い指腹で脈を触れるようにする。 *指の間隔は背の低い人ではつめ、背が高い人では広げる
単按 *一本の指だけで脈を按じる 寸脈を単按する→第二指を用いる 関脈を単按する→第三指を用いる 尺脈を単按する→第四指を用いる
その他 ①小児の場合は拇指だけで脈診する「一指定関法」を用い、寸関尺を分けない ②一般には医師は患者と斜めに向かい合い、左手 で患者の右脈を、右手で左脈をそれぞれ脈診する。 *いずれか一方の利き手で、片方ずつ脈を診てもよい。
挙・按・尋 ・脈にあてた指を上下させたり、力を変えたり、少々移動させることにより、脈象を探る方法 ①挙→軽取・浮取ともいい、指を軽くあてて脈象を診ること。 ②按→重取・沈取ともいい、指を下に沈め力を入れて脈象を診ること。 ③尋→挙でも按でもない中間で脈を診る「中取」のこと。 (あるいは力を入れたり抜いたりして脈の変化を診ること、あるいは脈に対し左右に指先を動かして脈の 大小を診ること。)
平息 一呼一吸を「一息」といい、医師が呼吸をととのえて一息あたりの患者の脈の至数を計算するほか、冷静に脈診するようにとの戒め。
五十動 1回の脈診には最低でも50拍の脈を診るべきことを「五十動」といい、結代などの有無を知るほか、正確な脈象を把握するための指示。 *必要なら、さらに2回3回と五十動を診る *一般には、脈診の時間は3~5分が適切
中医学から見た漢方 脈の所見
四診とは 四診~漢方医学における診察法。 望・聞・問・切の四つに分かれる。 ①望=現代においての視診 ②聞=聞知の意で、聴覚と嗅覚を通じて行う。 ③問=患者及び、看護人との問答によって患者の愁訴をはじめ、遺伝的関係、家族歴、既往歴、現病歴を知る。 ④切=医師が直接患者に接触(切触)して診察する。 脈診や腹診はこの中に含まれる。
基本となる脈の種類 浮脈 小脈 大脈 芤脈 革脈 沈脈 散脈 弱脈 伏脈 牢脈 遅脈 緩脈 渋脈 結脈 代脈 数脈 疾脈 促脈 滑脈 動脈 虚脈 実脈 微脈 短脈 濡脈 弦脈 緊脈 長脈
脈象の四つの基準 ①脈位~浮脈・沈脈 ②回数(至数)~数脈・遅脈 脈象 ③形状~大脈・小脈 ④脈の気勢~実脈・虚脈
脈位からみた脈象 ①浮脈~軽く触れると脈が得られ、強く圧迫すると相対的に減弱するが空ではない脈。 主病:表証・虚証に現れやすい。 ②沈脈~軽く触れても脈は得られず、強く圧迫してはじめて拍動が得られる脈。 主病:裏証に現われる。 *有力なものは裏実、無力なものは裏虚。
回数(至数)から見た脈象 ①遅脈~脈拍が緩慢で一息四至に満たない脈。 主病:寒証。 *有力なものは寒積、無力なものは虚寒。 ②数脈~脈拍が速くて一息五至以上の脈。 主病:熱証。 *有力なものは実熱、無力なものは虚熱。
形状から見た脈象 ①大脈~指に伝わる感触が広く、大きい脈。 主病:邪気が盛んで病が進行している病証と虚証に現れやすい。 主病:邪気が盛んで病が進行している病証と虚証に現れやすい。 *邪気の盛衰は大脈が無力か有力かにより区別される。 ②小脈(細脈)~脈形が糸のように細いが、指にはっきりと触れる脈。 主病:気血両虚、湿病
脈の気勢から見た脈象 ①実脈~三部の脈を軽く押さえても、強く押さえても有力な脈。 主病:実証 ①実脈~三部の脈を軽く押さえても、強く押さえても有力な脈。 主病:実証 *邪気が亢盛で正気が虚しておらず、邪気と正気が相搏ち、気血が脈道に充満しているので、指に力強く感じられる。 ②虚脈~三部を触れても弱々しく、空虚を感じる脈。 主病:虚証 *気が不足し血を運行できないと、脈は無力となる。血の不足によって脈が充足しないと空虚な脈になる。虚脈は気血両虚と各種の臓腑の虚証に現われる。
浮数脈 沈遅脈 沈細脈 沈細数脈 脈の臨床的意義 *前述した脈は、単独の形で患者に現われることはなく、いくつかの脈が組み合わさって出現する。 <代表例> 浮数脈 沈遅脈 沈細脈 沈細数脈
実際に脈診をしてみよう! 隣の席の人とペアになって、プリントを参照にし、脈診をしてみましょう。 <参考> ・四つの脈診を基準に考えてみてください。 なお、何の異常もない場合の脈は「平脈」といい、四至かつ緩和で有力、リズムがあって速くも遅くもありません。
参考文献 ・中医学の基礎(東洋学術出版社) ・中医臨床のための舌診と脈診(神戸中医学研究会) ・中医必須(加島先生著) ・中医基礎理論 ・中国漢方医学概論(株式会社中国漢方) ・中医診断と治療