物理化学因子による疾患、 動物性皮膚疾患 澄川靖之.

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物理化学因子による疾患、 動物性皮膚疾患 澄川靖之

物理・化学因子による疾患 動物性皮膚疾患 光線過敏症 疥癬 放射線皮膚炎 頭虱・毛虱 マダニ刺傷 熱傷・化学熱傷 毛虫皮膚炎 凍瘡・凍傷 ハチ刺傷 褥瘡

物理・化学因子による疾患 動物性皮膚疾患 光線過敏症 疥癬 放射線皮膚炎 頭虱・毛虱 マダニ刺傷 熱傷・化学熱傷 毛虫皮膚炎 凍瘡・凍傷 ハチ刺傷 褥瘡

光線による障害 U 光線過敏症・・・・紫外線が主な原因。稀に可視光が原因のことも 放射線皮膚炎・・・放射線による皮膚障害。 主にこの領域の波長が原因となる。 U V A U V B U V C

光線過敏症 光線の照射によって被照射部に丘疹、紅斑、水疱、膨疹などの皮膚症状を呈すること。  光線の照射によって被照射部に丘疹、紅斑、水疱、膨疹などの皮膚症状を呈すること。  様々な原因で、光線過敏症を起こす事が、知られている。  大きくは、4つに分類されている。

光線過敏症の分類 遺伝性光線過敏症 色素性乾皮症のように紫外線により傷害されたDNAを修復する酵素の先天的欠損により光線過敏をおこすもの。 代謝性光線過敏症 ポルフィリン症のようにポルフィリン代謝異常によりポルフィリン体が蓄積して起こる。 光毒性光線過敏症 いわゆる日焼け。だれにでも起こりうる。 光アレルギー性光線過敏症 紫外線の特定の波長により、薬剤が化学変化を起こし、ハプテンとなり、生体蛋白質と結合し、それに対する免疫応答がおこるもの。

光線過敏を起こす疾患 色素性乾皮症 薬剤性光線過敏症 光アレルギー性接触皮膚炎 ペラグラ ポルフィリン症 ベルロック皮膚炎 全身性エリテマトーデス

色素性乾皮症 露光部を中心に黒褐色色素斑と 肌の強い乾燥を認める。

色素性乾皮症 (Xeroderma pigmentosum:XP) ・常染色体劣性遺伝性の光線過敏性皮膚疾患である。 ・紫外線の照射によりDNAが損傷(おもにピリミジンダイマーが紫外線に  より架橋)を受けると損傷を受けたDNAを正常な状態へと修復する。 ・XP患者では、DNA損傷部位を修復する機能が遺伝的に低下しているため、  DNAレベルの損傷が固定化され、異常細胞、すなわち、がん細胞の増殖  に繋がり、皮膚がんが発生すると考えられている。 ・ XP患者に皮膚がんが発生する確率は、健常者の約2千倍と言われている。 ・主な責任遺伝子は同定されており、約30%に血族結婚を認める。

薬剤性光線過敏症 特に頬部、鼻背、前額部に 紅斑が見られる ニュ-キノロン系抗菌剤 サイアザイド系利尿剤 5FU系抗癌剤 など 特に近年の降圧剤にサイアザイド との合剤が増えたため要注意である。

光アレルギー性接触皮膚炎 定義: 光アレルギー性物質(ハプテン)が、直接に皮膚と接触して、そこに作用波長の光線が照射されることにより生じる遅延型の光アレルギー反応 病因: 皮膚に吸収されている化学物質が紫外線(UVA)により化学変化を起こし、アレルゲン、または   ハプテンとして働くことにより抗原性を発揮する。

湿布による光接触皮膚炎 ケトプロフェン(湿布)による光接触性アレルギー性皮膚炎

3か月は薬剤が皮膚に残留するという報告もある。 頻度、疫学: 正確な頻度は不明。感作物質であるサリチルアニリドおよび類似殺菌剤の使用が1970年代に禁止されて以来、発生頻度は激減したが、現在、非ステロイド性外用剤であるケトプロフェン、スプロフェン、ピロキシカムによる発生が増加している。 湿布を貼ると最低4週間は遮光を要する。 3か月は薬剤が皮膚に残留するという報告もある。 安易に露光部に湿布は貼らない!!

光線過敏症の診断と治療 光線過敏の原因となる主な光線は紫外線である MED(minimal erythema dose) の測定 UVA 5J以下 UVB 60mJ以下で 光線過敏の存在を疑う 前述の原因を検索 治療は遮光の徹底、ステロイド、タクロリムスの外用

放射線皮膚炎 有棘細胞癌の素地になりうる 放射線治療に伴い生じる 紅斑、水疱、糜爛を形成。 放射線治療が終了すると治癒する。 ステロイド外用などで対処する。 その後皮膚の萎縮・硬化を来たし 潰瘍を生じることがある。 有棘細胞癌の素地になりうる

放射線による発癌は数十年たってでてくるのです。 余談ですが・・・・ 高齢者でまれに足指、趾間部に有棘細胞癌ができることがある。 なぜか?? 昔、水虫を治せたらノーベル賞だと言われた時代、 難治性の足白癬に対する放射線療法が脚光を浴びたのです。 もちろん今は絶対にしませんが!! 放射線による発癌は数十年たってでてくるのです。

熱傷の分類 ・熱傷 ・化学熱傷 ・電撃傷 火炎熱傷・・・爆炎の場合範囲は広いが浅いことが多い。 気道熱傷受傷の有無に注意する。 ・熱傷   火炎熱傷・・・爆炎の場合範囲は広いが浅いことが多い。         気道熱傷受傷の有無に注意する。 低温熱傷・・・40度から60度程度で長時間接触することで受傷。         (電気あんか、便座など)深達度が深いため         治癒にかなり時間を要する。  ・化学熱傷 酸・アルカリ熱傷、灯油皮膚炎など ・電撃傷

熱傷(やけど) 熱傷の深さによって、1度、2度、3度に分類される。 一般的に、頻度の高いものは、熱いものに触れたり、こぼして受傷する場合は、1度、2度が多く、2度でも、浅い2度のものが、一般的である。 低温熱傷(湯たんぽなどによる)の場合は、一般的に深い熱傷で、治るのに時間もかかり、瘢痕を残す事も多い。

熱傷 深度 症状 治癒 Ⅰ度(表皮) 発赤と乾燥 灼熱感、疼痛が著明 Ⅱ度(真皮浅層) 浮腫、水疱、びらん 灼熱感、疼痛が著明 1週間以内に治癒。後遺症は残らない Ⅱ度(真皮浅層) 浮腫、水疱、びらん 灼熱感、疼痛が著明 約3週以内に瘢痕を残さず治癒する 色素沈着、色素脱失を残す Ⅱ度(真皮深層熱傷) 痛覚の鈍麻、欠如 潰瘍を形成 1か月以上かかって治癒する 瘢痕を残す可能性が大きい Ⅲ度(皮下損傷) 陶磁器様の白色 知覚消失

やけどの重症度 ・Ⅱ度の熱傷が30%以上 ・Ⅲ度の熱傷が10%以上 ・熱傷の程度は軽症でも、高温蒸気やガスを 重症  吸い込んで気道にまで熱傷が及んでいるもの 中等症 ・15~30%のⅡ度の熱傷 ・10%以下のⅢ度の熱傷 軽症 ・15%以下のⅡ度の熱傷 ・2%以下のⅢ度の熱傷

熱傷範囲の算定法 ●受傷面積  成人では9の法則、小児(頭が大きい)では5の法則による。  小範囲では患者の手掌を1%として計算する。

化学熱傷 ・化学物質(酸、アルカリ、フッ素、灯油など)による 刺激性接触皮膚炎と考えられる。  刺激性接触皮膚炎と考えられる。 ・アルカリ・フッ素の場合、タンパクを凝固させつつ  溶解することで深部に到達する。 ・早期に大量の水で洗浄する。深部にわたる場合は  デブリードマン施行

灯油皮膚炎 症状:衣服による被覆部位に生じる。灯油に接触した直後は無症状。数時間後、Ⅱ度熱傷様の紅斑、びらんを呈す。 治療:汚染した衣服を除去、病変部をセッケンで洗浄。ステロイド外用にて経過良好。 予防:灯油のかかった衣服は着替える。

フッ化水素酸による化学熱傷 ●弱酸であるため、皮膚への刺激感が弱く、接触直後は無症状 ●酸による障害と遊離フッ素イオンによる組織障害(カルシウムイ オンとの結合)をきたす ●早期の十分な洗浄 ●希釈したグルコン酸カルシウムの局所投与

電撃傷 皮膚損傷に比し、深部で広範な障害をきたしやすい。筋肉の障害の可能性が高い。 電流の流入部と流出部位に深い損傷。 呼吸停止、心停止をきたすことがある。 入院の上、経過観察することが望ましい。 局所処置は熱傷に準じる。 筋、骨、臓器障害に留意する。

熱傷の治療 ・基本的には潰瘍に対する治療。 1度熱傷に対しては初期にステロイド外用  1度熱傷に対しては初期にステロイド外用 ・重症の場合大量の輸液を必要とする。(Baxterの公式)  ICU管理が望ましい。 ・受傷後浮腫により血行障害を来たすことがあり減張切開を  要する場合がある。 ・熱傷後瘢痕から高率に有棘細胞癌が発生する。

凍瘡と凍傷 いずれも冷やさないようにすることが一番重要。 ・凍瘡・・・いわゆる”しもやけ”であり、局所の血管収縮、 いずれも寒冷暴露により生じる皮膚障害 ・凍瘡・・・いわゆる”しもやけ”であり、局所の血管収縮、       循環不全で生じる浮腫、多形紅斑様の皮疹。       血流が戻るとかゆみを生じる。 ・凍傷・・・組織の凍結により生じた組織の壊死。       血流が再開しても回復しない。       急に温めないこと。       デブリードマンを要することも いずれも冷やさないようにすることが一番重要。

褥 瘡 褥瘡の発生へ 長期臥床や半身不随は直接原因ではない!! 圧迫により生じる局所の阻血によってひき起こされる 褥 瘡 長期臥床や半身不随は直接原因ではない!! 圧迫により生じる局所の阻血によってひき起こされる 動脈圧140mmHg/cm3以上(末梢は60~80mmHg)に 圧力がかかると血流が途絶える。 2時間後くらいより紅斑、疼痛を生じ、8時間を越えると 組織の壊死が起こる。 褥瘡の発生へ

褥瘡発生の直接的メカニズム 一定の場所に、一定時間以上、一定以上の圧力が加わることにより皮膚組織 への血行が乏しくなり、虚血性壊死を起こした状態を褥瘡という。 石川 治 先生 監修:褥瘡の予防とケア、2002

創 傷 の 深 さ に よ る 分 類 Ⅰ度:表皮内の深さの創 Ⅱ度:真皮に至る創 浅層・・・毛根が残る真皮中層まで   浅層・・・毛根が残る真皮中層まで   深層・・・毛根を含まない        真皮深層に至る創 Ⅲ度:皮下組織に達する創 Ⅳ度:筋肉・骨に達する創

褥瘡の深達度分類 石川 治 先生 監修:褥瘡の予防とケア、2002

圧迫:時間と壊死の関係 石川 治 先生 監修:褥瘡の予防とケア、2002

褥瘡好発部位 仰臥位 側臥位 腹臥位 入院患者(58.7%)及び在宅患者(51.1%)ともに仙骨部が最も多い。 石川 治 先生 監修:褥瘡の予防とケア、2002 入院患者(58.7%)及び在宅患者(51.1%)ともに仙骨部が最も多い。

車椅子などに同一体位で長時間座っていることが多い場合は 坐位での褥瘡好発部位 石川 治 先生 監修:褥瘡の予防とケア、2002 車椅子などに同一体位で長時間座っていることが多い場合は 座骨結節部に発生しやすい。

増悪因子がなければ悪化はしない!! 褥瘡の増悪因子と創傷遅延因子 創傷遅延因子 増悪因子 圧迫による血流不全 感染 褥瘡治癒の阻害因子は増悪因子と創傷遅延因子に分けられる。 創傷遅延因子 増悪因子 貧血 圧迫による血流不全 加齢 感染 低栄養状態 外用剤による刺激 増悪因子がなければ悪化はしない!!

発症からの時間経過や創傷治癒の進行段階に応じて、 褥瘡のステージ分類 色による一般的分類 発症からの時間経過や創傷治癒の進行段階に応じて、 創面の色調が変化する。 大きさ、深さでステージングを行っていたが、治療法には あまり反映されない。色による分類の方が、褥瘡の状態を よく反映し治療法と結びつけやすい。

褥瘡の発生(紅斑・紫斑) 圧迫による阻血により、毛細血管拡張を来してる状態 治療 体位変換による圧迫の解放、マッサージ プロスタグランディン製剤、 ヘパリン類似物質含有軟膏などの血流改善軟膏

黒色期 血流が途絶えたために皮膚の壊死を起こした状態 治療 感染予防(ポピドンヨード含有軟膏、スルファジアジン銀) 感染を起こした場合デブリードマン

黄色期 生体内蛋白分解酵素により自己融解を起こしている状態 治療 物理的デブリードマン 蛋白分解酵素製剤等

赤色期 壊死組織がなくなり肉芽形成が行われている状態 治療 肉芽形成を促進する薬剤(bFGF製剤 プロスタグランディン製剤等) 感染がある場合は抗生剤含有軟膏、スルファジアジン銀

白色期 陥凹がなくなり上皮化が行われている状態 治療 上皮化を促進する薬剤(プロスタグランディン製剤等) デュオアクティブ・ハイドロサイト等被覆剤

物理・化学因子による疾患 動物性皮膚疾患 光線過敏症 疥癬 放射線皮膚炎 頭虱・毛虱 マダニ刺傷 熱傷・化学熱傷 毛虫皮膚炎 凍瘡・凍傷 ハチ刺傷 褥瘡

疥 癬 病因:ヒゼンダニ 症状:指間・下腹部・外陰部に小丘疹が多発

疥癬 疥癬(scabies)は蛛形綱目ダニ目に属する疥癬虫(Sarcoptes scabei)、別名ヒゼンダニがヒトの皮膚角質、表皮内に寄生して起こる皮膚感染症である。

疥癬 感染経路(接触感染) 直接感染 患者皮膚との接触による感染。 間接感染 患者の使用した寝具、リネン、医療  直接感染 患者皮膚との接触による感染。  間接感染 患者の使用した寝具、リネン、医療         器具、介護用品などを介した感染。 症状   初感染の場合、1~2ヶ月の潜伏期を経て発症。  強い掻痒を伴い夜間に増強するとされる。

疥癬虫(ヒゼンダニ) 体長約0.4mm 皮膚に付着した後、角質内に進入し一日2mm程度移動し疥癬トンネルを作る。 トンネル内で交尾が行われる。 寿命は4~6週間 一日1~2個の卵を産み続ける。 卵は3,4日で孵化する。 2週間で成虫になる。

宿主を離れた疥癬虫は乾燥に弱く24~36時間で死滅する。      (気温21℃湿度40~80%) 湿度90%温度12℃の好条件下でも2週間しか生きられない。 熱に弱い。 50℃、10分間で死滅する。 卵は乾燥状況でも1週間は感染性がある。

部屋の掃除は甲斐がない ヒゼンダニが増えるのは皮膚だけ。 皮膚から離れては増えるどころか生きられない。 大滝倫子ら:疥癬はこわくない,78,医学書院(2005)

通常の疥癬の感染 車椅子への乗り移り程度の介護による 接触では通常疥癬は感染しないので、 特別な配慮は必要ない。 ※ただし、角化型疥癬では感染する可能性が あります。 空気感染はしないため、マスクは不要である。 大滝倫子ら:疥癬はこわくない,77,医学書院(2005)

施設での管理 病型による対応の違い 診断により病型が決定したら、それぞれの病型に適した対応をとりましょう。 疥癬と角化型疥癬では感染力の違いから、下記の表のように対応が異なります。疥癬と角化型疥癬の内容を混同して過剰な対応をとらないことが大切です。 疥癬 角化型疥癬(ノルウェー疥癬) 個室管理 (隔離) 必要ありません。 必要です。しかし、適切な治療を行えば長期にわたり個室管理を行う必要はありません。生きたヒゼンダニが検出されなくなった時点(通常1~2週間)で解除します。 介助 特別な注意は必要ありません。 予防着、手袋を使用し、ケア後は流水と石鹸で手を洗います。 室内消毒 加熱乾燥できない場合は、ピレスロイド系殺虫剤を噴射し、1時間後にダニ専用掃除機で吸引します。隔離室、隔離前に使用した部屋、共同スペースなどにも殺虫剤を散布します。この処置は治療開始時と治療終了時に各1回ずつ、計2回行ないましょう。処置を行わない場合は、2週間閉鎖した後に再使用します。

治療 イベルメクチン(ストロメクトール) クロタミトン(オイラックス軟膏) 安息香酸ベンジル (γーBHC)

イベルメクチン(ストロメクトールR) ・内服駆虫剤 ・週1回内服を1~2回 ・一回の有効率は80%以上 ・卵には無効 現在の疥癬治療の主流

疥癬対策のポイント 疥癬は接触感染である。 1~2ヶ月の潜伏期間をおいて発症する。 疥癬は接触感染である。  1~2ヶ月の潜伏期間をおいて発症する。 疥癬と診断され治療を開始されたものから感染する可能性は低い。 通常の疥癬であればリネン類は普通の洗濯、乾燥で十分である。 早期発見、早期治療が最も重要である。 感染機会のあったものには広く通知する。 クロタミトンによる予防的治療を検討する。

頭虱(アタマジラミ) 毛虱(ケジラミ) ・それぞれ毛に寄生。吸血することでそう痒を来たす。 ・アタマジラミは学童で集団発生することがあり、  ケジラミは性交渉で感染する。(STD) ・治療にはスミスリンシャンプーを使用。剃毛する。 家族・パートナーを含め同時に治療を行う必要がある。

マダニ刺傷 ・山野で草木の上で待機していたマダニ (7~8 mm大) が 炭酸ガス濃度・音・振動で宿主の来るのを知り、寄生する。  炭酸ガス濃度・音・振動で宿主の来るのを知り、寄生する。 ・無理に引っ張ると口器が残り、肉芽腫形成を来すので  周辺皮膚とともに切除するか、麻酔して取り除く。 ・ライム病ボレリア保有マダニの可能性を考え,  できるだけ皮膚を含めて虫体を切除する。 ・感染予防として抗生剤を投与するときは,ライム病を考慮に  入れて,テトラサイクリン系の投与を行う。

毛虫皮膚炎 ・毒針毛をもつものと毒棘をもつものがある。 ・毒針毛は,幼虫・成虫・脱皮した殻にあり,それが皮膚に刺さり,  発症する。毒針毛は100μmで肉眼では見えない。 ・受傷後数分で膨疹を生じ,膨疹はその後消失するが,数日から  1週間後に紅斑・丘疹を生じる。 ・衣服についた毒針毛に触れて発症することもある。

ハチ刺傷 ・刺症直後に毒液中の発痛物質により疼痛や 一時的な発赤・腫脹を生じる。 ⇒ステロイド外用または内服  一時的な発赤・腫脹を生じる。 ⇒ステロイド外用または内服 ・ハチ刺傷の既往がある場合はアナフィラキシーに  十分注意する。 ⇒受傷後1時間は経過を見る。

即時型反応(アナフィラキシー) 軽症(Ⅰ度,皮膚症状): 刺された部位以外に蕁麻疹、そう痒感 中等度症状(Ⅱ度,消化器症状):        刺された部位以外に蕁麻疹、そう痒感 中等度症状(Ⅱ度,消化器症状):         上記に加え,全身の浮腫,気道狭窄,口渇,口のしびれ               感,腹痛,嘔気,頭痛など 重症(Ⅲ度,呼吸器症状): さらに,呼吸困難,嚥下困難,嗄声,錯乱状態 重篤(Ⅳ度,循環器症状): さらに悪化し,意識喪失,血圧低下,チアノーゼを生じ,          アナフィラキシーショック