血液・免疫学ユニット 第2回 免疫担当細胞の種類と機能.

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血液・免疫学ユニット 第2回 免疫担当細胞の種類と機能

免疫とは? 3つの特徴について 1)免疫反応性の多様性 2)免疫寛容 3)免疫の記憶

免疫の理解に重要な3つの因子 1)免疫細胞の種類 2)免疫反応の場 3)免疫反応の時間的経過

血球系細胞は骨髄の造血幹細胞から分化する HSC 免疫システムの制御 に関わる細胞群 NK細胞 赤血球 NK cell リンパ球 Tリンパ球 T-cell 造血幹細胞 単球 Bリンパ球 B-cell 好酸球 マクロファージ Macrophage 白血球 好塩基球 樹状細胞 好中球 Dendritic cell 08/15/08 HDID SmGr 血小板

自然免疫と適応(獲得)免疫 自然免疫 適応免疫 抗原特異性:なし 免疫記憶:なし 反応速度:速い 抗原特異性:あり 免疫記憶:あり マクロファージ 顆粒球 NK細胞 樹状細胞 適応免疫 抗原特異性:あり 免疫記憶:あり 反応速度:遅い Tリンパ球 Bリンパ球 抗原特異性:個々の細胞がそれぞれ異なる抗原(標的)を認識すること

マクロファージ(Macrophages) 貪食細胞・スカベンジャー細胞

貪食・殺菌(リソソーム)

病原体関連分子パターン(Pathogen-associated molecular pattern:PAMP)がマクロファージ上のパターン認識受容体(Pattern-recognition receptor: PRR)に結合する。 TLR(Toll-like receptor:Toll様受容体)はPRRの主要な分子である。 免疫制御因子 サイトカイン:免疫細胞の活性化を制御 ケモカイン:免疫細胞の遊走を制御

リポテイコ酸 ペプチドグリカン リポ多糖 リポ蛋白

活性化マクロファージによる免疫制御因子の産生 IL: Interleukin(インターロイキン) TNF: Tumor necrosis factor    (腫瘍壊死因子)

マクロファージ 抗原提示細胞としての役割 抗原:免疫反応を誘導する分子。リンパ球や抗体は抗原を認識して免疫反応を起こ す。 MHC:Major Histocompatibility Complex (主要組織適合遺伝子複合体)の略。抗原提示細胞はMHC分子と抗原ペプチドの複合体をTリンパ球に提示する。MHCは各個体によって異なり、結合するペプチドの特異性が違う(多型性の存在)。

単球・マクロファージの分化 臓器・組織における局在と呼称の違い Monocytes (単球):末梢血を循環、不活化タイプ 末梢臓器へと移動し局在。活性化タイプと変化し機能を発現  Liver(肝臓):Kupffer cells(クッパー細胞)  CNS(中枢神経系):Microglia(ミクログリア)  Lung(肺):Alveolar macrophage (肺胞マクロファージ)  Bone(骨):Osteoclast(破骨細胞)

マクロファージ機能のまとめ 1.異物の貪食、殺菌 2.スカベンジャー機能 3.病原体を認識し免疫制御因子を産生 4.抗原をTリンパ球に提示

樹状細胞(Dendritic cells:DC) 適応免疫の司令塔 抗原提示細胞

樹状細胞:プロフェッショナルな抗原提示細胞 (DC=Professional Ag-presenting cells) DCによるT細胞の機能制御 (APC: Ag-presenting cells)

樹状細胞による抗原の取り込みと提示 未分化DC:PRRを介した病原体の貪食能力は高いが、抗原提示能力は弱い。 分化したDC:PRR刺激により分化したDCは貪食能力を失い、リンパ節に移動し、           T細胞に抗原提示する能力を獲得。

DC由来サイトカインによるT細胞の制御

樹状細胞(DC)によるサイトカイン産生

共シグナルによる免疫制御

共シグナルとは? MHC分子 T細胞受容体(第1シグナル) 抗原ペプチド T細胞受容体と共シグナルの両方からシグナル伝達 → T細胞の活性化 → 反応なし 共シグナルリガンド 共シグナル受容体(第2シグナル)

> < 共シグナルとは? 刺激性 共シグナル受容体 刺激性 共シグナル 抑制性 活性化 T細胞受容体 抑制性 共シグナル受容体  活性化  T細胞受容体 抑制性 共シグナル受容体 不活性化 免疫寛容の誘導

T細胞受容体シグナル 抑制性共シグナル 刺激性共シグナル

数多くの共シグナルが存在する 抑制性 Tリンパ球 樹状細胞 刺激性

(免疫寛容:免疫系が自己は攻撃しないこと) 免疫寛容のメカニズム (免疫寛容:免疫系が自己は攻撃しないこと) 中枢性寛容:胸腺で自己反応性Tリンパ球の分化を阻止(Negative Selection)。 末梢性寛容:抗原提示細胞は病原体に暴露さ れていない定常状態では共シグナルリガンド を発現していない。また一方で、抗原を認識し ていないTリンパ球は共シグナル受容体を発現 しない。よって、T細胞の反応は誘導されない。

樹状細胞(DC)機能のまとめ 1.最も強力な抗原提示細胞 (Professional Ag-presenting cells) 2.抗原をT細胞に提示すると同時に サイトカインや共シグナルを発現し Tリンパ球の活性化を制御する。 3.Tリンパ球反応における司令塔

Tリンパ球 適応免疫のメインプレーヤー 適応免疫の実行・実戦部隊

Tリンパ球の種類(CD4 vs. CD8陽性Tリンパ球) 抗原提示細胞 ヘルパーTリンパ球 CD4陽性、MHC Class II拘束性 細胞傷害性(キラー)Tリンパ球 CD8陽性、MHC Class I拘束性

MHC分子の発現パターンから示されるCD4、CD8陽性T細胞の機能 MHC Class I分子:赤血球を除くほぼすべての細胞に発現。 →CD8陽性Tリンパ球は抗原提示細胞で活性化された後、全身のさまざまな標的細胞を攻撃できる。 MHC Class II分子:主に抗原提示細胞に発現。 →CD4陽性Tリンパ球は抗原提示細胞で活性化された後、サイトカイン産生によって他の免疫細胞を制御する。

CD4陽性ヘルパーTリンパ球の種類と機能

Th1型リンパ球の誘導と機能 APC (DC)由来のIL-12により誘導され る。 APCから活性化されるだけでなく、APC の活性化も誘導する(相互作用)。 IL-2(Interleukin-2:インターロイキン2) やIFN-γ(Interferon‐γ:インターフェロン ガンマ)などのTh1型サイトカインを産 生し、CD8陽性Tリンパ球の活性化を 誘導する。 これらの結果、細胞性免疫(Tリンパ 球が主体となる免疫反応)を誘導す る。

Th2型リンパ球の誘導と機能 IL-4存在下で誘導される。 IL-4やIL-13などのTh2型サイトカインを産生し、CD40L/CD40 を介してBリンパ球の活性化を誘導する。 これらの結果、液性免疫(Bリンパ球の産生する抗体が主 体となる免疫反応)を誘導する。

Th17型リンパ球の誘導と機能 DCから産生されるIL-6とTGF-βにより 誘導される。 病原体感染の初期に誘導され、IL-17 やIL-25などのTh17型サイトカインを産 生し、繊維芽細胞や上皮細胞からの ケモカイン産生を刺激する。 その結果、好中球を主体とする炎症 細胞が集積し、感染防御反応が誘導 される。 Th17リンパ球の誘導は自己免疫疾患 の発症や悪化にも関与している。

Treg型リンパ球の誘導と機能 Treg(T regulatory cells:制御性T細胞) には胸腺で分化するNatural Treg(内在 性Treg)と末梢で誘導されるInducible Treg(誘導性Treg)が存在する。 TregはTGF-βやIL-10を産生することに より他のTリンパ球の反応を抑制する。 FoxP3と呼ばれる転写因子がTregの分 化、誘導に重要である。 Tregは免疫細胞が自己を攻撃しないよ うに監視し、免疫寛容のために重要な 働きをしている。

ヘルパーTリンパ球とサイトカインのまとめ Th1 Th2 IL-2、IFN-γなどのTh1型サイトカインを産生 細胞性免疫を誘導 IL-4、IL-13などのTh2型サイトカインを産生 液性免疫を誘導 Th17 Treg IL-17、IL-25などのTh17型サイトカインを産生 好中球遊走を誘導 自己免疫に関与 TGF-βやIL-10などの抑制性サイトカインを産生。 Tリンパ球の活性を抑制し、免疫寛容に関与

CD8陽性キラーTリンパ球の機能 CD8陽性キラーTリンパ球は標的細胞(ウイルス感染細胞やがん細胞など)のMHC Class Iと抗原ペプチドの複合体を認識する。パーフォリンやグランザイムといわれる細胞傷害分子を発現することにより、細胞のアポトーシス(死滅)を誘導する。

Tリンパ球の機能的分化 時間経過 ナイーブTリンパ球 (まだ抗原を認識をしていないTリンパ球) APCに提示された抗原を認識

Tリンパ球機能のまとめ 1.CD4陽性とCD8陽性Tリンパ球が存在。 2.CD4陽性Tリンパ球は、その機能により Th1, Th2, Th17, Tregに分類され、周囲の 免疫細胞を活性化もしくは抑制する。 3.CD8陽性Tリンパ球はウイルス感染細胞 やがん細胞をMHC拘束性に傷害する。 4.Tリンパ球はナイーブ→活性化→メモリー 細胞と機能的に分化する。

Bリンパ球・形質細胞 Bリンパ球 形質細胞 B lymphocytes Plasma cells 形質細胞へと分化し抗体を産生

Bリンパ球の活性化 Bリンパ球の活性化、形質細胞へ の分化には2つのシグナルが必要 1.B細胞受容体を介した抗原刺激 2.Th2型リンパ球によるサイトカイン (IL-4)およびCD40L/CD40刺激 樹状細胞によるT細胞の活性化誘導 と相似。ただしB細胞の活性化には 樹状細胞による抗原提示は必要で ない(MHC拘束性はない)。

Bリンパ球の産生する抗体のクラススイッチ IgG IL-4、CD40L/CD40 IgA IgM IgE IgD この部分の構造が変化

抗体の機能 病原体の中和 オプソニン効果 補体経路の活性化 オプソニン効果:標的細胞や標的分子に抗体が結合することにより、マクロファージなどの貪食細胞がその標的を貪食しやすくなる効果。

抗体機能の活性は抗体のサブクラスによって異なる

Bリンパ球機能のまとめ 1.B細胞は活性化すると形質細胞に分化 し、抗体を産生する。 2.B細胞の活性化にはTh2型リンパ球から のサイトカインや刺激シグナルが必要 (MHC拘束性はない)。 3.B細胞は活性化すると産生する抗体の サブクラスを変化させる。 4.抗体の機能はサブクラスによって異な る。

NK(Natural Killer)細胞 自然免疫を担う細胞 ウイルス感染細胞やがん細胞を傷害する

NK(Natural Killer)細胞の機能制御 NK細胞は活性化レセプターと抑制化レセプターを発現し、抑制化レセプターは自己のMHCを認識する。 MHC Class I を消失、低下した細胞(例えば、ウイルス感染細胞、がん細胞)を攻撃する。 T細胞の認識(MHC拘束性)から逸脱した標的細胞を攻撃

NK(Natural Killer)細胞によるADCC活性 (Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity) (抗体依存性細胞性細胞傷害)

免疫反応のまとめ

共シグナル分子 = 適応免疫 = Treg Th17