画像診断の基礎 2009.1.20.

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画像診断の基礎 2009.1.20

画像診断法 エックス線検査 単純エックス線検査 造影エックス線検査 MRI 超音波検査 CTスキャン その他

エックス線検査の原理 エックス線吸収係数(μ)は物質の原子番号の3乗と密度に比例する。 μが大きいほど白く写る=高濃度。 μは骨 >筋肉 >脂肪>肺 胸部正面(P→A) 胸部側面(R→L)

腹部単純エックス線撮影 ・立位正面 ・立位側面 ・仰臥位正面 ・仰臥位側面 ・第一斜位 ・第二斜位 仰臥位正面

エックス線造影剤 陽性造影剤 → 白く写る 陰性造影剤 → 黒く写る ヨード バリウム ガス → 空気 → 二重造影 血管撮影 経静脈性尿路造影 経静脈性胆道造影 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 経皮経肝胆管造影(PTC) バリウム 上部消化管造影(胃透視、MDL) 小腸造影 注腸造影 陰性造影剤 → 黒く写る ガス → 空気 → 二重造影 水溶性ヨード製剤 *油性ヨード製剤はリンパ管造影、卵管造影に用いられる。 硫酸バリウム

造影剤の副作用 ヨード製剤 バリウム製剤 アナフィラキシーショック 喉頭浮腫 嘔気・嘔吐 皮疹(蕁麻疹、発赤) 腎機能低下 閉塞性イレウス 便秘 腸管穿孔 誤嚥

上部消化管造影 バリウムを経口的に投与 食道 - 胃 - 十二指腸近位部 ・前日午後9時以降 食事禁 ・朝食抜き、水OK ・直前に発泡剤と シロップ服用 バリウムを経口的に投与 食道 - 胃 - 十二指腸近位部 充盈法 二重造影法 圧迫法

胃透視 食道 弓隆部 胃角 小弯 胃体部 十二指腸球部 大弯 胃角部 幽門前庭部

胃透視で認められる所見 食道裂孔ヘルニア 食道憩室 胃ポリープ 萎縮性胃炎 十二指腸球部変形≒潰瘍瘢痕 胃潰瘍瘢痕 胃潰瘍 十二指腸潰瘍 胃粘膜下腫瘍 胃憩室 胃癌:早期胃癌、進行胃癌 その他

注腸造影 ・平坦病変は発見しにくい。 その場合は、大腸鏡の方が適している。 下剤を3日前から投与 便の少ない食事 バリウムを直腸から注入 → 空気を注入

注腸 大腸ポリープ 大腸憩室 大腸癌 その他

尿路撮影 排泄性尿路造影(IVU) 逆行性腎盂造影(RP) 膀胱造影 尿道造影 IVU

胆道撮影 排泄性胆道造影 経口胆嚢造影 経静脈性胆道造影 直接胆道造影 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 経皮経肝胆管造影(PTC) MR胆管膵管造影(MRCP) → 高度T2強調画像を撮影し、画像処理を行う。全く無侵襲。ERCPより解像度は低い。

ERCP と MRCP

血管造影: Seldinger法によるカテーテル挿入

血管造影の所見 富血管性病変 Hypervascular lesion 乏血管性病変 Hypovascular lesion 無血管性病変 Avascular lesion 静脈の早期描出 Early venous filling 腫瘍濃染 Tumor stain 血管径の不整 動脈瘤 Aneurysm 造影剤の血管外漏出 Extravasation *DSA デジタル差分血管撮影 Digital Subtraction Angiography

冠動脈造影 ・狭心症、心筋梗塞に対してステント挿入

脳血管造影

脳血管のMRA

肝動脈造影 肝細胞癌 ・肝細胞癌に対する治療として 抗癌剤動注+肝動脈塞栓術 (TAI) (TAE)

腹部MRA 肝静脈 肝動脈 大動脈 腎動脈 門脈 上腸間膜動脈

MRI (Magnetic Resonance Imaging) 核磁気共鳴画像法 原理 静磁場の中に人体を入れる。 プロトンが静磁場の方向に整列する。 特定の周波数の電磁波を外部から照射する。 プロトンは共鳴現象で向きを変え横向きになる。 電磁波を止めると、プロトンは再度元の方向に戻っていくが、この際電磁波を放出する(緩和現象) 。 アンテナでとらえコンピュータで画像化する。

MRIの画像コントラスト 高信号病変 → 白く見える 低信号病変 → 黒く見える T1値(縦緩和時定数) → T1強調画像:水が黒 その他:プロトン密度、拡散係数、流速 FLAIR:脳MRIで用いられる画像条件。水のみ真っ黒。 拡散強調画像:水分子の拡散を反映。拡散が低下すると高信号となる。急性期脳梗塞の診断に有用。 MRアンジオグラフィー(MRA):移動するプロトンのみを高信号に表示。血管を選択的に画像化する。

造影MRI ガドリニウム製剤(Gd-DTPAなど):プロトンに接近してその緩和を促進する。 肘静脈から静注する(成人では10-15ml)。 造影効果を示す組織は、T1強調画像で高信号となる。(T2強調画像では効果が無い) 造影効果はCTと同じだが、より鋭敏→ 炎症、腫瘍などで高信号となる。 組織特異性造影剤: Gd-EOB-DTPAは肝細胞に集積する性質を利用し、HCCは早期相(20~40秒)で造影され、後期相(15~20分後)では低信号となる。

MRIの禁忌・注意事項 禁忌 妊娠前期は避ける。 持ち込み不可: 心臓ペースメーカ装着者 脳動脈クリップ術後 眼窩内磁性異物 固定していない磁性金属 電子機器 磁気カード

MRI装置 骨、筋肉、関節 脳神経系 脊椎、脊髄 あらゆる臓器

MRI

MRI

MRI アルツハイマー病

PSCのMRC 肝細胞癌の造影MRI

超音波検査 超音波を照射し、反射波(エコー)の強度、遅延時間を計測して画像の濃淡として表示する。 周波数:3~10MHz(周波数が高い方が分解能が高まるが、深達度は低下する。 伝達速度:1400~1800m 反射:音響インピーダンス=音速×密度が異なる境界面で反射する。 吸収:組織で吸収され、深部ほど減衰する。 高エコー性:反射波の輝度が高く、白く見える。 低エコー性:反射波の輝度が低く、黒く見える。

超音波ドップラー法 造影超音波検査 血管内を移動する血球成分に反射し、ドップラー効果が生じる→血流の速度、方向 血管の狭窄・閉塞の診断 腫瘍のHypervascular/Hypovascularの判定 造影超音波検査 マイクロバブルを含む超音波造影剤を静注し、超音波ドップラー法で観察する。 Hypervascularな腫瘍(微小肝癌)などに利用

腹部超音波検査

腎臓の超音波検査

肝硬変 胆嚢壁の肥厚 肝細胞癌(HCC) 肝表面の凹凸と内部のエコー不均一 横隔膜   腹水

総胆管結石、脂肪肝 Bright liver 肝腎コントラストの増強

膵癌

CTスキャン エックス線管球が1回転 → 1枚の画像を再構成 → 寝台が移動(この繰り返し) ヘリカルCT:エックス線管球が連続回転すると同時に寝台も移動 → 管球がらせん状の軌道を描く → 高速で3D画像が容易 多列検出器型(MDCT):エックス線検出器を320列まで複数配置 → 同時に複数の断面を撮影できる → さらにヘリカルCTを組み合わせる (現在の主流)

マルチヘリカルCT

CT値と画像コントラスト CT値=エックス線吸収係数から換算した値(Hounsfield単位、HU):骨>出血、甲状腺>肝、筋肉、脳灰白質>白質>脳脊髄液>脂肪肝>肺 CT値が大きいほど白く見える。 高吸収病変:石灰化、急性期血腫など 低吸収病変:上記以外の大部分

造影CT 造影剤:ヨード製剤(水溶性) 肘静脈から静注する:成人では100ml 通常の造影法:全量をゆっくり2~3分かけて静注し、終了後に撮影する。 ダイナミック造影法:造影剤を急速静注(3~5ml/秒)しながら撮影する。病変の血行動態がわかる。 造影剤により、組織のCT値が上昇する=造影効果(Contrast enhancement)。その程度により病変の性状を推測する。 造影効果が強いもの:血管が豊富な組織(肝細胞癌、腎細胞癌、膠芽腫など)、血管腔の拡張(動脈瘤、脳動静脈奇形など)、血液脳関門*の破綻(膠芽腫など) *中枢神経系は血液脳関門があるので、造影剤は血管から外には出ない。 したがって、正常中枢神経系は造影効果を示さない。

ダイナミックCT 動脈相 門脈相 平衡相

造影CT

肺癌のヘリカルCT

PET検査 PET:陽電子断層撮影(ポジトロン(P)・エミッション(E)・トモグラフ(T)) 微弱な特有の放射線を発する物質(放射性同位元素)で標識した薬剤を体内に投与し、全身の分布を撮影する。 FDG:フッ素18(18F) で標識したブドウ糖(フルオロデオキシグルコース)を静脈注射し、その全身分布を画像化してがんの診断に用いる。 ブドウ糖は、がん細胞は分裂や増大が正常の細胞に比べ激しいため、ブドウ糖を大量に取り込む。

PETスキャン

バーチャル大腸鏡 前処置:3日間注腸食、前日夜下剤と水約1500ml服用。 空気を大腸に注入してCT撮影を行い、ソフトウェアで大腸内部からの視点で画像を再構築する。