青森県農林総合研究センター 畑作園芸試験場 土づくり技術者研修会 青森県農林総合研究センター 畑作園芸試験場
青森県の畑土壌の現状
青森県の火山灰表層土壌の 地帯区分 地域 特性概要 十和田・八甲田地帯 弱酸性。PH5.5~6.0。燐酸吸収係数は2000未満。 下北半島地帯 酸性やや強く、PH5.0前後。燐酸吸収係数は1500前後。 岩木地帯 酸性が強く、PH5.0以下。燐酸吸収係数は2000以上。 津軽半島地帯 強酸性PH5.0以下。燐酸吸収係数は1000前後。
普通畑土壌の一般的特徴 ・畑によりpHに大きなバラツキがある。 ・特に野菜畑土壌は多肥が行われる傾向があり、土壌化学性の変化が大きい。 ・土壌構造が破壊され、単粒構造になりやすい。 ・同一作物を毎年栽培すると塩基バランスの変化、ミネラルの不足、土壌病害虫の発生が起こる。
普通畑土壌の特性① (作付け圃場の作土 昭和54~平成14年) 普通畑土壌の特性① (作付け圃場の作土 昭和54~平成14年) 調査時期 pH EC CEC 交換性塩基飽和度% 可給態 りん酸 H20 (ms) (me) CaO MgO K2O (mg/100g) S54~57 5.9 0.22 27.0 44.8 9.0 5.4 32.2 S59~62 5.8 0.12 26.2 41.4 7.9 5.0 43.5 H元~4年 5.8 0.25 25.9 42.0 8.5 5.1 47.0 H6~9年 5.8 0.14 27.5 40.6 8.2 4.7 47.3 H11~14年 5.6 0.12 24.6 32.7 7.5 5.4 37.0
普通畑土壌の特性② (作付け圃場の作土 昭和54~平成14年) 普通畑土壌の特性② (作付け圃場の作土 昭和54~平成14年) 調査時期 T-C T-N 可給態窒素 mg/100g (%) (%) S54~57 5.68 0.37 6.8 S59~62 5.64 0.38 6.4 H元~4年 5.50 0.38 5.6 H6~9年 5.13 0.40 4.4 H11~14年 4.66 0.35 4.5
畑の土づくりについて (露地)
土壌改良の目標 土壌改良の目標は、作物が生育しやすい環境を整えることである。
土壌とは 土壌は ①物理性 ②化学性 ③生物性 の要素から構成されている。
土壌の物理性
三相分布 土壌は固体、水、空気の3つの部分で構成され、それぞれを固相、液相、気相という。これら三相の割合(%)を三相分布という。 固相には砂、粘土などの土壌粒子と腐植、微生物、ミミズなど土壌動物が含まれる。
団粒の役割と形成 ・畑土壌は小さい土粒子が集合してできた団粒と、バラバラの土粒子とがいろいろな割合で混合している。 ・水分はこれら粒子の隙間である。また、隙間は空気の通路でもある。 ・団粒は、土壌中の微生物等の働きによって生成されるもので、化学的反応のみで作られるものではない。
連用土壌の粒径別重量の比較 (昭和39 青農試) 連用土壌の粒径別重量の比較 (昭和39 青農試)
土壌構造の維持 ロータリー耕は、プラウ耕より土壌構造を破壊する程度が激しく、土壌水分含量の低い状態での耕起は団粒破壊が進む。 ↓ ロータリー耕は、プラウ耕より土壌構造を破壊する程度が激しく、土壌水分含量の低い状態での耕起は団粒破壊が進む。 ↓ 緑肥の導入、堆肥の施用、輪作は土壌中の微生物等の活動を促進し、土壌構造を発達させるための重要な土壌管理である。
根域の拡大と心土破砕 トラクターによる耕耘が続くと、耕盤が形成される。耕盤は、土が固まり緻密層となり透水性も不良となるので、多雨時の湿害の原因となる。 ↓ プラウ耕などの深耕及び心土破壊によって、耕盤を破壊すれば、根域が広まり、作物の収量は増大する。
土壌改善の方法と作物の収量 (昭和43~45 青農試) 土壌改善の方法と作物の収量 (昭和43~45 青農試) 区 名 とうもろこし バレイショ ナタネ 普 通 耕 650 1,902 304 深 耕 711 2,882 359 心土破壊 675 3,356 378
普通畑(野菜)の土壌改良目標到達状況 調査時期 作土 厚さ ち密土 20~40cm 20以下 S54~57 過剰 0.0 1.1 調査時期 作土 厚さ ち密土 20~40cm 20以下 S54~57 過剰 0.0 1.1 適正 35.6 98.9 不足 64.4 H元~4年 過剰 0.0 1.1 適正 61.4 98.9 不足 38.6 H6~9年 過剰 0.0 9.2 適正 47.6 90.8 不足 52.4
物理性の改善のまとめ 物理性の改善には時間がかかる。 有機物などを施用し、団粒構造を発達させる。 深耕などを行い耕盤を発達させないようにする。
土壌の化学性
普通畑への資材投入量① (施肥量 成分kg/10a) 項 目 窒素 リン酸 加里 S54~57 16.5 19.1 19.2 S59~62 15.5 17.8 16.2 H元~4年 13.3 13.9 13.0 H6~9年 12.5 15.6 13.4 H11~14年 15.7 15.8 17.3
普通畑への資材投入量② (土づくり肥料 成分kg/10a) 項 目 リン酸 石灰 苦土 S54~57 12.8 44.9 10.2 S59~62 12.3 45.7 9.1 H元~4年 13.2 47.2 9.5 H6~9年 9.3 33.3 6.4 H11~14年 17.1 19.9
最小養分律 ある植物が必要とする栄養素の要求量に対して供給割合が最も低い栄養素が、その条件で生育を制限し、この栄養素を最小栄養素とよび、この関係を最小養分律という。
収量漸減の法則 特定の栄養素の供給量が少ないときには供給量に比例して生育量が直線的に増加するが、次第に供給量に伴う生育量の増加効果は小さくなっていく。
多量必須元素と微量必須元素 多量必須元素 窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄 微量必須元素 窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄 微量必須元素 鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ホウ素、塩素、ニッケル
土壌のpHと土壌反応の区分 8.0以上 強アルカリ性 7.6~7.9 弱アルカリ性 7.3~7.5 微アルカリ性 6.6~7.2 中性 6.0~6.5 微酸性 5.5~5.9 弱酸性 5.0~5,4 明酸性 4.5~4,9 強酸性 4.4以下 ごく強酸性
主要作物の最適pH域 ・作物の多くは微酸性(pH6~6.5)を好むもが多い。作付前にその作物の生育に最適となるようpHを調整する必要がある。
土壌の反応(pH)と肥料要素の有効性 土壌が酸性またはアルカリ性になるといろいろな養分の溶け方がかわり、欠乏症や過剰症がおこる。
陽イオンの交換力 土壌コロイドに付いている他の陽イオンと交換する力は陽イオンによって異なる。 H>Ca>Mg>K=NH4>Na
塩基のバランス 塩基が総量として十分確保されても、塩基間のバランスが失われると養分の吸収時に拮抗作用がおこり、各種の生理障害がおこる。 作物が吸収する度合は 加里>苦土>石灰 の順である。
加里について 加里欠乏のおこり易い土壌は、砂土とか腐植の少ない土などである。加里の作物への取り込みは、ホウ素、鉄、マンガンの存在で容易になるが、窒素、石灰、苦土の多いときは吸収が抑えられる。 加里の過剰は窒素、石灰、苦土などと拮抗作用があり、石灰欠乏、苦土欠乏などになるので、石灰、苦土とのバランスを考える。
石灰について 石灰が欠乏した土壌は、土壌が酸性となり、ホウ素などの微量要素の欠乏を伴うことがある。 石灰の吸収は、リン酸の吸収をよくしているが、窒素、加里、苦土などが多いときは、石灰の吸収が抑えられる。 石灰の過剰により、土壌のpHが高まる。そのため、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素などが不溶性になって吸収が抑えられる。
苦土について 苦土の吸収は、加里、石灰によって抑えられる。 苦土の過剰は、土壌のpHを高め、ホウ素、マンガン、鉄、亜鉛などの欠乏を伴うことがある。
土壌塩類過剰障害と対策 近年、石灰の過剰施用によってpHが高まりすぎたり、過剰施肥によって塩基飽和度80%を超えてしまった土壌が見られるようになった。 土壌の塩類がたまりすぎて濃度障害がいったん起こるようになると、その土壌の改良は困難である。深耕、洗浄による除塩などの対策を総合的に行う。
土壌塩類過剰障害発生の 防止対策 土壌塩類濃度の高まりを防ぐには、次ぎのような対策を考えなければならない。 ①施肥量の適正化 ①施肥量の適正化 ②塩類を高めない肥料の施用
火山灰土壌の改良とリン酸 火山灰土壌は、水溶性リン酸の土壌吸着固定力が高く、施肥したリン酸の利用率は低い。
リン酸欠乏と過剰 リン酸の欠乏は、土壌が酸性になったときなどに起こりやすい。 リン酸の過剰の害は現れ難いので、過剰施肥に注意する必要がある。
リン酸資材の施用試験 (昭和42~44年 青農試) 項 目 とうもろこし だいず リン酸無施用区 507 405(100) 427(100) リン酸資材の施用試験 (昭和42~44年 青農試) 項 目 とうもろこし だいず 42年 43年 44年 リン酸無施用区 507 (100) 405(100) 427(100) 163(100) 171(100) 207(100) 42年にようりん129kg+32kg/10a施用区 542(107) 512(120) 187(115) 195(114) 238(115)
施用する有機物 有機物の施用効果 ①養分供給のはたらき ②土壌の理化学性を改良するはたらき ③土壌の生物性をよくするはたらき ①養分供給のはたらき ②土壌の理化学性を改良するはたらき ③土壌の生物性をよくするはたらき これらの効果やはたらきは、バラバラに離れたものではなく、たがいにかかわり合いながら発現する。
普通畑への有機物の資材投入量 項 目 有機物 S54~57 施用率% 67 施用量kg/10a 1,611 S59~62 施用率% 65 項 目 有機物 S54~57 施用率% 67 施用量kg/10a 1,611 S59~62 施用率% 65 1,504 H元~4年 57 1,646 H6~9年 56 施用量 1,484 H11~14年 施用率 70 1,579
土壌診断
野菜畑の土壌診断 ①pH、EC ②有効態リン酸(トルオーグリン酸) ③塩基置換容量(CEC) ④塩基飽和度 ②有効態リン酸(トルオーグリン酸) ③塩基置換容量(CEC) ④塩基飽和度 この4つを調べると畑の‘健康状態’が分かる。
普通畑(野菜)の土壌改良目標到達状況 調査時期 pH 交換性塩基飽和度% 塩基 可給態りん酸 H20 CaO MgO K2O 飽和度% (mg/100g) 基準値 6.0 45 10 3 70 20~ ~7.0 ~75 ~25 ~6 ~90 S54~57 過剰 0.6 6.7 1.7 29.4 10.6 4.4 適正 50.0 52.8 35.0 55.0 22.2 49.4 不足 49.4 40.6 63.3 15.6 67.2 46.1 H6~9年 過剰 0.5 1.1 0.0 22.7 2.7 10.8 適正 36.8 51.4 30.3 57.3 22.2 54.1 不足 62.7 47.6 69.7 20.0 75.1 35.1 H11~14年 過剰 0.0 2.1 0.0 27.1 2.1 6.3 適正 22.9 29.2 22.9 62.5 8.3 52.1 不足 77.1 68.8 77.1 10.4 89.6 41.7
畑から土壌を取る時は、 畑の土壌は「ばらつき」が大きい。 ↓ だから、畑一枚から5ヶ所とり、ひとつにしたものを分析してもらいましょう。
塩基置換容量(CEC) 肥料を蓄えるちからと考えていいです。 にんげんでいえば胃袋です。 7以下・・・赤ん坊 7~15・・・こども 15~25・・・おとな 25~35・・・関取なみ 35以上・・・横綱なみ
塩基飽和度 胃袋に食べ物がいくら入っているかを示す満腹度を示すと考えていいです。 40以下・・・・栄養失調状態 40~50・・・空腹な状態 胃袋に食べ物がいくら入っているかを示す満腹度を示すと考えていいです。 40以下・・・・栄養失調状態 40~50・・・空腹な状態 60~80・・・適正(腹八分目) 100前後・・・・・・過食で肥満体 100を超える・・・糖尿病
作物別土壌改良目標(普通畑作物) 項目 大麦 小麦 なたね 20以上 50~80 40~80 38~60 37~56 30~59 30~60 ばれいしょ 大豆・小豆 PH(水) 6.5~8.0 6.0~7.5 5.5~6.5 5.0~6.5 塩基交換容量me 20以上 塩基飽和度% 50~80 40~80 石灰飽和度% 38~60 37~56 30~59 30~60 苦土飽和度% 6~10 8~15 6~12 6~11 加里飽和度% 2~3 MgO/K2O当量比 2以上 トルオーグリン酸mg 5~15 10~30
作物別土壌改良目標(野菜①) 60~80 44~50 15~20 2~10 10~20 0.5 項 目 PH(H2O) 6.0~6.5 項 目 スイカ・メロン トマト・キュウリ スイートコーン PH(H2O) 6.0~6.5 6.5~7.0 6.0~7.0 塩基交換容量me 20以上 塩基飽和度% 60~80 石灰飽和度% 44~50 苦土飽和度% 15~20 加里飽和度% 2~10 MgO/K2O当量比 2以上 トルオーグリン酸mg 10~20 EC(1:5)(ms/cm) 0.5
作物別土壌改良目標(野菜②) 60~80 80~90 44~50 55 15~20 20~25 2~10 5~10 2以上 20~30 項 目 ダイコン・ ニンジン ながいも・ ごぼう にんにく・ たまねぎ はくさい・ キャベツ・レタス PH(H2O) 6.5~8.0 6.0~7.0 6.0~6.5 5.0~6.5 塩基交換容量me 20以上 塩基飽和度% 60~80 80~90 石灰飽和度% 44~50 55 苦土飽和度% 15~20 20~25 加里飽和度% 2~10 5~10 MgO/K2O当量比 2以上 トルオーグリン酸mg 20~30 30~50 50~70 10~20 EC(1:5)(ms/cm) 0.3 0.5
土壌診断のまとめ pHを適正にする。 塩基類のバランスをとる。 塩基類やリン酸が過剰な状態にならないように管理する。