2000年1月17日版 アストロ E 衛星 文部省宇宙科学研究所

Slides:



Advertisements
Similar presentations
X線で宇宙を見よう 1. X線て何だ? 2. ダークマターやブラックホールが 見える 3. 「すざく」衛星について 首都大学東京 ( 東京都立大学 ) 大橋隆哉.
Advertisements

1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
宇宙の「気温」 1 億度から –270 度まで 平下 博之 ( 名古屋大学・理・物理 U 研 ).
日本学術会議マスタープランへの提案 ガンマ線バーストを用いた初期宇宙探査計画 HiZ-GUNDAM 主査: 米徳 大輔(金沢大学) HiZ-GUNDAM WG 光赤天連シンポジウム「光赤外将来計画:将来計画のとりまとめ」( 2016/02/09 – 10 国立天文台.
2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
ところで一般相対性理論によれば、太陽を半径3 kmにまで 圧縮したらブラックホールになるらしい。どんな世界なのか?
X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
HETE-2のバースト観測ネットワーク マウイ 副地上局 パラオ 副地上局 シンガポール 主・副地上局 赤道
2006年2月22日 宇宙重力波干渉計検討会 - 小型衛星とDECIGO - 川村静児 国立天文台
神岡宇宙素粒子研究施設の将来 Future of the Kamioka Observatory
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
謎の惑星スーパーアースを探れ! 国立天文台・成田憲保.
--X線天文衛星「すざく」の成果を中心に--
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
数値相対論の展望        柴田 大 (東大総合文化:1月から京大基研).
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
2m電波望遠鏡の製作と 中性水素21cm線の検出
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
信号電荷の広がりとデータ処理パラメータの最適化
愛媛大学理学部物理学科 & 愛媛大学宇宙進化研究センター 鍛冶澤 賢 理学部物理学科 松山市 (宇宙進化研究センター併任)
愛媛大学 理学部物理学科 & 宇宙進化研究センター
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
内山 泰伸 (Yale University)
太陽を見る 可視光 X線(ようこう衛星) 太陽フレア.
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
パルサーって何? 2019/4/10.
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
すばる望遠鏡による10GeV領域ガンマ線天体の観測
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
京大他、東大やアデレード大学など日豪の16機関が共同で、オーストラリアの砂漠地帯に望遠鏡4台を建設しTeVγ線を観測している。
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
平成 31 年度 P6 高エネルギー宇宙実験 担当: 物理学第二教室 宇宙線研究室の教員 谷森達 教授、鶴剛 教授、 窪秀利 准教授、
柴田 晋平 山形大学理学部 With 早坂 由美子 NHK山形 キャスター
最近の宇宙マイクロ波背景輻射の観測 銀河の回転曲線 回転曲線の測定値 NASAが打ち上げたWMAP衛星が観測
下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション
「すざく」搭載XISのバックグラウンド ――シミュレーションによる起源の解明
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
京大岡山3.8m望遠鏡用高分散分光器 京大宇物 岩室史英 サイエンス 太陽型星のスーパーフレア現象の解明
第17回DECIGOワークショップ 2018.11.1 川村静児(名古屋大学)
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
第12回 銀河とその活動現象 東京大学教養学部前期課程 2017年度Aセメスター 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
JASMINEワークショップ March 6-7,2003 松原英雄(宇宙研)
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
Introduction to the X-ray Universe
ようこそ Hot Universe へ Fes. 馬場 彩 Contents X線天文学とは?
すばる/HDSによる系外惑星HD209458bの精密分光観測
Telescope Array ~Searching for the origin of the highest energy cosmic ray 私たちの研究の目的 宇宙線って何? 最高エネルギー宇宙線の数が、 理論による予想を大きく上回っていた! 現代物理学の主要な謎の1つ 宇宙空間を光に近い速度で飛び回っている非常に小さな粒子のことです。
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
「大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの共同利用・共同研究拠点化」に向けた要望書・意見書のお願い
スーパーカミオカンデ、ニュートリノ、 そして宇宙 (一研究者の軌跡)
XMM-Newton衛星による 電波銀河 3C 98 の観測
研究紹介:山形大学物理学科 宇宙物理研究グループ 柴田研究室
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
X線天文衛星『すざく』の成果 1.5年経過 “すざく” (朱雀) 査読付専門雑誌 32 編 (日本の衛星、大型プロジェクトでは最多)
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
宇宙X線の Imaging Spectroscopy (Suzaku/XIS/X線CCD)
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

2000年1月17日版 アストロ E 衛星 文部省宇宙科学研究所 宇宙科学研究所第19号科学衛星アストロEは、「はくちょう(1979年)」「てんま(1983年)」、「ぎんが(1987年)」、「あすか(1993年)」に続く、我が国5番目のX線天文衛星として、2000年2月の打ち上げを予定しています。衛星は宇宙科学研究所のMーVー4号ロケットにより、近地点高度250 km、遠地点高度550 kmの楕円軌道に投入、その後、搭載二次推進系により、高度約550 kmの略円軌道へ修正されます。アストロE衛星は直径2.1 m、全長6.5m(軌道上で鏡筒伸展後)の大きさを持ち、太陽パドルを広げると5.4 mの幅になります。衛星の重量は1600 kgにもなり、宇宙科学研究所としては、これまでにない大型衛星となります。 宇宙科学研究所提供

アストロ E 衛星 太陽電池パドル X線望遠鏡

組み立て中のアストロ E 衛星 アストロ E 衛星 電子機器をとりつけるパネルの組み立て中 宇宙科学研究所提供 宇宙科学研究所提供

X線望遠鏡(XRT)と 伸展式光学台(EOB) 現在観測中の「あすか」衛星搭載のX線望遠鏡の有効面積と、結像性能をどちらも倍近く改善した、新しいX線望遠鏡(口径40 cm、焦点距離4.5 - 4.75 m) が5台搭載されます。その特徴は極めて軽量ながら、10 キロ電子ボルトに近い高エネルギーX線に対しては世界最大級の感度を持つことです。特にあすか以来の、日本独特の伸展式光学台(伸展長1.4m)を用い、欧米の大型X線天文台に比べて、小型ながら大面積を実現しています。 担当:名古屋大学、宇宙科学研究所、    NASA Goddard研究所 X線望遠鏡 宇宙科学研究所提供

高分解能X線分光器(XRS) 5台の望遠鏡の内の1台の焦点面には、これまでのX線検出器に比べて、一桁も波長分解能の高い、高分解能X線分光器が搭載されます。この検出器の原理は、絶対温度約0.06度の極低温に素子を冷し、X線入射に伴う素子の微弱な温度の上昇から入射X線のエネルギーを極めて精度良く決めるものです。このような検出器が衛星に搭載されるのは、はじめてです。動作に必要な極低温を軌道上で実現するため、宇宙で動作する、断熱消磁型冷凍機、液体ヘリウム容器(絶対温度1.2 度)、固体ネオン容器(絶対温度17 度)の3段階の冷却システムが新たに開発されました。観測は、0.5 キロ電子ボルトから12キロ電子ボルトの範囲で行われます。 XRSではこれらの冷媒の消費のため、観測期間は打ち上げ後、2年間と予想されます。 担当:宇宙科学研究所、NASA Goddard 研究所、東京都立大学、ウィスコンシン大学、理化学研究所 XRS冷却用デュワー 宇宙科学研究所提供

X線CCDカメラ(XIS) 5台のX線望遠鏡の内、4台の焦点面上に、X線CCDカメラが搭載されます。 担当:京都大学、大阪大学、     宇宙科学研究所、 マサチューセッツ工科大学(MIT) X線CCDカメラ 宇宙科学研究所提供

硬X線検出器(HXD) X線望遠鏡でカバーされるX線の何十倍ものエネルギーを持つ硬X線からガンマ線の領域を観測するため、硬X線検出器が搭載されます。このように高いエネルギーまで観測できる装置が衛星に搭載されるのは、日本で初めてです。この検出器はガドリニウム・シリケート結晶を用いた無機シンチレータ(GSO)とシリコン検出器を組み合わせたものです。筒状に伸びた井戸型シンチレーターによって周りからの雑音ガンマ線を低減するなど、様々な工夫により、このエネルギー領域で、これまでにない、高感度の観測が可能になります。 担当:東京大学、宇宙科学研究所 硬X線検出器 宇宙科学研究所提供

アストロ E 衛星で切り拓く 新しい世界 1. 銀河団の高温ガスと宇宙の構造の進化 2.ブラックホール流入物質の運動と時空構造 宇宙の中でも高温でかつ激しい活動領域からは、X線を中心に多量のエネルギー放射が行われています。例えば銀河が集団となっている銀河団では、1000 万度から1億度の高温ガスの中に銀河が浮かんでいます。X線でしか見えない高温ガスの質量は、可視光で見えている構成銀河の質量の3倍ほどもあり、銀河団の本質を知るためにX線観測が欠かせません1) 。アストロE衛星の高分解能分光器を用いることにより、このガスの元素2)の成分と、物理状態とを、これまでとは桁違いの精度で詳しく調べることができるようになります。そのために、はじめて、銀河団中の激しい高温ガスの流れ を解明する3)事ができるようになります。これにより、銀河、銀河団の形成のしくみが明らかになり、宇宙の構造形成がいかに進んできたかを知る手がかりが得られる事が期待されます。 2.ブラックホール流入物質の運動と時空構造 中性子星やブラックホールへ大量の物質が流れ込み、それらの重力エネルギーが解放されてX線で明るく光っていることも良く知られています。アストロE衛星の高分解能分光器やX線CCDカメラでは、落下物質のブラックホール近くでの運動を検出することができ、ブラックホール近傍の時空構造の解明4)が期待できます。また、多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在していることが、日本のあすか衛星の観測でも明らかになってきています。アストロE衛星では更に高い感度で、遠くの銀河まで詳しく調べ、その進化を探ることにしています。

アストロ E 衛星で切り拓く 新しい世界 3.高エネルギー粒子加速 地上には、非常に高いエネルギーの宇宙線がふりそそいでいます。中には、1個の粒子あたり16ジュール5)という想像を絶するエネルギーに達するものもあります。宇宙には、こうした宇宙線を作り出す「巨大加速器」が存在し、その中で粒子が加速されて高いエネルギーを持つと考えられています。広い波長にわたって観測を行う事のできるアストロ E 衛星では、高いエネルギーのX線・ガンマ線の観測から、宇宙線の加速がどこで、どのように行われているかを探査し、その起源と加速の機構を探ろうとしています。 注1) こうした高温ガスを閉じこめておくために、観測される質量の5倍近くもの質量を、観測には直接かからない「暗黒物質」が担っている事が示唆されています。 注2) X線の輝線は各元素に特有の波長を持ち、その波長と強度の観測から、元素組成と、温度、電離度等が分かる。 注3) 高速運動のドップラー効果により、見かけの波長がずれることを検出する。 注4)強い重力場の中では一般相対論の効果で、見かけの波長が長くなる。 注5)4カロリー。1グラムの水を4度上昇させる事ができる。  アストロ E 衛星は、国内外の様々な機関が密接に協力して開発/準備を進めてきました。観測機器や衛星、そしてロケットの開発ばかりでなく、ソフトウエア、観測計画立案でも、様々な形で共同作業が行われています。これにより、アストロE衛星の能力を最大限に活かすことを目指しています。