WIN-WIN効果による タクシー業界の安定化 ~許可証取引制度の導入を目指して~ 南山大学 寶多康弘研究会 池上千春・稲葉篤紀・位田雅俊・牛田桂菜 岡田菖子・広島麻衣子・町田旭弘・山野支央実
目次 1 タクシー業界の背景・現状 2 先行研究 3 分析 4 政策提言
1.背景・現状 ①-1/2 全国のタクシーにおける経営状況等の推移 輸送人員 1.背景・現状 ①-1/2 全国のタクシーにおける経営状況等の推移 輸送人員 出所:国土交通省「全国のタクシーにおける経営状況等(内訳)」より作成
収入基盤の疲弊 1.背景・現状 ①-2/2 供給過剰がもたらす問題1: タクシー運転者と全産業労働者の年間所得の推移 1.背景・現状 ①-2/2 収入基盤の疲弊 供給過剰がもたらす問題1: タクシー運転者と全産業労働者の年間所得の推移 出所:国土交通省「タクシー運転者と全産業の労働者の年間所得の推移」より作成
タクシー運転手と全労働者の平均年齢の推移 労働環境悪化 供給過剰がもたらす問題2 : タクシー運転手と全労働者の平均年齢の推移 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成
タクシー業界の政策過程 供給過剰 1.背景・現状 ②-1/2 2002 規制緩和: 道路交通法改正 2009 1.背景・現状 ②-1/2 タクシー業界の政策過程 供給過剰 2002 規制緩和: 道路交通法改正 2009 特定地域のみ規制: タクシー適正化・活性化法施行 2012 各政党、全国の規制強化検討
2002年 規制緩和 参入規制の緩和 運賃規制の緩和 供給過剰の原因 参入: 免許制→許可制 増車: 認可制→届出制 2002年 規制緩和 供給過剰の原因 参入規制の緩和 参入: 免許制→許可制 増車: 認可制→届出制 運賃規制の緩和 運賃ブロック毎の 上・下限運賃の範囲内・・・ 自動認可制
2009年 タクシー適正化・活性化法 特定地域における措置 新規参入 要件の厳格化 増車 事前届出制→認可制 減車 監査
→2013年の国会に向けて検討中 2012年 再び規制強化? 民主、自民党 タクシー適正化・活性化法の改正 に向けて議論 新法案の検討 2012年 再び規制強化? 新法案の検討 っ2s 民主、自民党 タクシー適正化・活性化法の改正 に向けて議論 →2013年の国会に向けて検討中
タクシー業界安定化のために 輸送人員 利用者 運送収入 1.背景・現状 ②-2/2 タクシー業界 安定化 単なる台数規制ではなく 1.背景・現状 ②-2/2 タクシー業界安定化のために タクシー業界 安定化 輸送人員 利用者 運送収入 単なる台数規制ではなく 画期的な新政策が必要
2.先行研究 ①安全・安心なサービスを提供するための タクシー事業制度の研究会 「安全・安心なサービスを提供するためのタ タクシー事業制度の研究会 「安全・安心なサービスを提供するためのタ クシー事業制度に対する提言」 ②山越(2009)「特定地域における一般乗用旅 客自動車運送事業の適正化及び活性化に関 する特別措置法案のポイント~タクシーの過 剰供給構造は解消できるのか~」立法と調査 第292号
3.分析 許可証取引制度 EU-ETS 欧州連合域内排出量取引制度 ITQ制度 漁業における許可証取引制度 1 2
3.分析①-1/2 EU-ETS 導入例 (筆者作成)
EU-ETS 施行期間 3.分析①-2/2 期間 割当方法 第1フェイズ 2005~07年 グランドファザリング 第2フェイズ 2008~12年 + ベンチマーク方式 (筆者作成)
EU-ETSによる排出権・排出割当総量の推移 出所:EEA欧州環境庁資料 EU Emission Trading System date viewer より作成
2013年~ 第3フェイズ オークション方式 有償割当の比率高めよう→ 発電・CCS施設 全量オークション方式 他の業種 2013年~ 第3フェイズ オークション方式 有償割当の比率高めよう→ 発電・CCS施設 全量オークション方式 他の業種 無償割当80%, 残りオークション方式
3.分析②-1/2 ITQ制度 1 総漁獲量(TAC)を設定 2 漁業者ごとに漁獲割当を設定 3 漁獲割当の取引が可能
ITQ制度導入例 出所:勝川俊雄公式サイトより作成
ニュージーランドでのITQ導入までの流れ 3.分析②-2/2 ニュージーランドでのITQ導入までの流れ タクシーでの規制緩和 ① 参入自由の下での水産業活動の拡大 過剰漁獲の発生---資源の枯渇への対応 ② 参入自由の下でのTAC制度の設定 過剰な漁獲能力の蓄積---効率性の悪化 ③ 個別割当(IQ)、譲渡可能個別割当 (ITQ)制度の導入 タクシーでの一部規制 タクシー業界での状況と類似している!
ニュージーランド漁業労働者数と労働生産性の推移 出所:ITQ制度導入後のニュージーランド漁業界の変遷(大西学)の資料より作成
ITQのメリット ・定められた量の範囲でゆっくりマーケットをみながら漁獲が できる ・漁獲量が定められているため、無駄な操業の削減 ・労働環境、収益性の改善 つまり 日本のタクシー業界にこのITQ制度の構造を取り入れることで、日本の経済的競争力を高め、崩れていた収益基盤を立て直し、全てのタクシー会社が質の良い事業を行うことが可能ではないか?
漁獲枠 台数枠 タクシー業界への 許可証取引制度の導入 ~ITQ制度~ ~タクシー業界~ ITQ制度・EU-ETSの成功例を軸に・・・ 3.分析③ ITQ制度・EU-ETSの成功例を軸に・・・ タクシー業界への 許可証取引制度の導入 ~ITQ制度~ 漁獲枠 ~タクシー業界~ 台数枠
新政策導入の具体例 ここで、A社がB社に20台分の台数枠を40万円で譲渡すると仮定する。 A社 売り上げ50万円 台売り上げは1万円/台 台売り上げは1万円/台 B社 売り上げ500万円 台売り上げは5万円/台 2社の合計利益 →550万円 ここで、A社がB社に20台分の台数枠を40万円で譲渡すると仮定する。 単純計算では、 A社売り上げは、 (50-20)台×1万円/台=30万円、 B社売り上げは、 (100+20)台×5万円/台=600万円となる。 これに譲渡の際の金額を含め、 A社 30万円+40万円=70万円 B社 600万円-40万円=560万円 2社の合計利益 →630万円 (筆者作成)
①グランドファザリング方式? ②ベンチマーク方式? ③オークション方式? 3.分析④-1/2 望ましい初期配分方法は… ①グランドファザリング方式? ②ベンチマーク方式? ③オークション方式? グランドファザリング方式 オークション方式
配分周期の検討 3.分析④-2/2 3~5年ごと (筆者作成)
総台数枠削減の例 毎年 (筆者作成)
ヒアリング調査 3.分析⑤ ~名古屋交通圏~ 出所:名古屋タクシー協会公式サイトより作成
ヒアリング項目 ヒアリング調査先 ・規制当局 ・A社(大手タクシー会社、保有認可台数100台以上) 3.分析⑤-2/2 ヒアリング項目 ① 現在のタクシー事情の規制について満足してるか ② 我々が立案した政策は実現可能だと思うか ヒアリング調査先 ・規制当局 ・A社(大手タクシー会社、保有認可台数100台以上) ・B社(中小企業、保有認可台数100台未満)
ヒアリング結果 寡占化 雇用者問題
対策 寡占化 ①企業ごとに持てる枠の上限を設ける ②会社の資本関係の調査を徹底する 雇用者問題 ①オークションによって出た利益を助成金として 充てる ②勤務形態を変える(1台2人制→1台3人以上制)
◇タクシー台数枠取引制度 第1フェイズ 第2フェイズ 第3フェイズ 4.政策提言 今の台数をTAQとし~モデル地区で導入~ ~全国で導入~
全タクシー企業が質の高いサービス提供を目指す ◇タクシー所有権取引制度 定められた台数制限下での タクシー経営 タクシー業界の安定化 買い取り金 業績良好な企業 業績不振の企業 ・経営の幅の拡大 ・買い取り金をサービス 向上に充てる タクシー保有台数枠 全タクシー企業が質の高いサービス提供を目指す
この政策提言により中小企業も大企業も ともに経営上昇が望める 中小企業の経営は向上し、 大企業の経営の幅を拡大させることを可能にする
参考文献 国土交通省「全国のタクシー事業の現状について」 (http://www.mlit.go.jp/common/000170155.pdf) 2012/8/13 データ取得 国土交通省 「タクシー問題について現時点での考え方」 (http://www.mlit.go.jp/common/000027112.pdf) 2012/8/13 データ取得 岡敏弘 「EU排出権取引制度(EUETS) の研究」 (http://www.s.fpu.ac.jp/oka/euets070314.pdf) 2012/8/15データ 取得 経済産業省 「排出量取引制度について」 (http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_war ming/pdf/credit_001.pdf) 2012/10/15データ取得 大西学 「ITQ制度導入後のニュージーランド漁業界の変遷」 (http://www.ps.ritsumei.ac.jp/assoc/policy_science/101/101_04_ onishi.pdf#search=‘ニュージーランドの水産業におけるITQ制度導 入’) 2012/8/15データ取得 山下東子(2009) 「魚の経済学」 日本評論社 寶田康弘、馬奈木俊介(2010) 「資源経済学への招待」 ミネルヴァ 書房
ご清聴、ありがとうございました。