企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 商法の基本概念(商人と商行為) 固有の商人と擬制商人 絶対的商行為と営業的商行為 商人資格の得喪

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企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 商法の基本概念(商人と商行為) 固有の商人と擬制商人 絶対的商行為と営業的商行為 商人資格の得喪 テキスト参照ページ:9~22p

講義のねらい 商法における基本概念である商人の意義と商行為の意義を理解するとともに、相互の関係を理解する。 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 講義のねらい 商法における基本概念である商人の意義と商行為の意義を理解するとともに、相互の関係を理解する。 商人や各商行為の意義を理解し、具体例をあげられるようになることを目的とする。

1.商法の適用対象 これを明らかにするために商人と商行為という二つの概念が用いられるが、その概念の定め方については、3つの立法主義がある。 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 1.商法の適用対象  これを明らかにするために商人と商行為という二つの概念が用いられるが、その概念の定め方については、3つの立法主義がある。 客観主義:まず商行為の概念を定め、それを営業とする者を商人とする立場 主観主義:まず商人の概念を定め、その営業上の行為を商行為とする立場(会社法) 折衷主義:両者の方法を併用する立場(商法) 会社法では、2条1号で会社を定義し、5条で会社が事業としてする行為およびその事業のためにする行為を商行為と定める主観主義の立場を採用

2.日本の商法の定め方(1) ア.一定の行為を絶対的商行為および営業的商行為と定める→これらを併せて基本的商行為と呼ぶ 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 2.日本の商法の定め方(1) ア.一定の行為を絶対的商行為および営業的商行為と定める→これらを併せて基本的商行為と呼ぶ イ.基本的商行為を営業とする者を商人と定める:固有の商人と呼ぶ ウ.それ以外の一定の者をも商人とみなす:擬制商人と呼ぶ エ.固有の商人と擬制商人が営業のためにする行為をも商行為(附属的商行為)とする

商 行 為 商 人 営業とする 営業とする行為 個人商人に限る 営業のためにする 固 有 の 基本的商行為 商 人 四 条 一 項 擬 制 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 個人商人に限る 固 有 の 商 人 四 条 一 項 基本的商行為 絶対的商行為 501条 営業とする  商 行 為 営業的商行為 502条 商   人 営業のためにする 附属的商行為 503条 擬 制 商 人 四 条 二 項 商行為を 営業とは しないが、 経営形式 や企業的 設備に着 目して商 人とみな される者 ・個人商人には、商人としての行為と私人としての行為がありえるので、個人商人と取引する相手方の保護のため、個人商人の行為は営業のためにするものと推定される(503Ⅱ)。 ・準商行為に対して、基本的商行為+付属的商行為を固有の商行為と呼んでいたが、準商行為が廃止されたので、区別の意味はなくなった。 営業とする行為 店舗物販人 鉱業を営む者 民事会社(削除) (準商行為) 旧523条削除

会社の場合 会社を右の 事業としてする 株式会社 ように定義する 商行為(会社5) 合名会社 (会社2①) 合資会社 合同会社 (会社2②) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 会社を右の ように定義する (会社2①) (会社2②) 事業としてする 商行為(会社5) 株式会社 合名会社 合資会社 合同会社 事業のためにする 外国会社 つまり、会社は商法501条または502条の商行為を行うか否かにかかわらず、すべて「自己の名をもって(会社3)、商行為をなすことを業とする者」であるといえる=固有の商人(商4Ⅰ) ・基本的商行為と付属的商行為の区別もなく、どちらも商行為とされる ・会社には事業としてする行為か、事業のためにする行為しかありえないので、附属的商行為性の推定も必要ない

企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 会社法5条と商法503条2項 会社には事業としてする行為か、事業のためにする行為しかありえないので、附属的商行為性の推定規定(商503Ⅱ)の適用はない(会社法立法担当者、学説の多数説) 会社の行為には、事業としてする行為、事業のためにする行為、そのいずれにも当たらない行為、が存在するが、会社は商人(4Ⅰ)であり、商503Ⅱの推定が働くため、商行為性を否定する者が、事業のためにする行為でないことの主張・立証責任を負う(判例:最判H20.2.22)

※基本用語解説 「業として」と「営業のために」 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 ※基本用語解説 「業として」と「営業のために」 「業(事業)として」:営利追求の目的のために反覆継続的に行う本来の営業行為として行う法律行為(営業として、事業として) 「営業(事業)のために」:本来の営業行為の補助として行う法律行為や準法律行為 例:資金を借りる、従業員を雇うなど ・商法では営業という用語が使われ、会社法では事業という用語が使われることになった。その趣旨は、従来一個の商号と一つの営業とが一対一で対応すると考えられてきた。個人商人は複数の商号を持てるため、その営業ごとに異なる商号を用いることができるが、会社は商号を一つしか持てないため複数の業種を営んでいても「営業」は一つ。個人商人と会社とで営業概念に食い違いがあった。また商法以外の多くの法人法制において、法人が行うべきものは「事業」として整理されつつある。このため、会社の場合に事業と呼ぶことで区別した。 ・事業という言葉は非営利活動も含まれるという印象が強いが、今回の改正は、教育、医療、弁護士業務等従来営利としては行えないとされてきた領域の活動にも会社形態が使えるようにする地ならしとしての意図をもったものではない。

※基本用語解説 「推定」と「擬制(みなす)」 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 ※基本用語解説 「推定」と「擬制(みなす)」 「推定」:ある事実が一応存在することを認めるが、これに反する証拠の提出があれば覆される(反証の余地がある) 「擬制」:ある事実が存在する、あるいは真実であるとみなし、反対の主張(反証)を許さない

3.商人(個人商人に限る)の意義 固有の商人と擬制商人: (営業とする行為)による分類 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 3.商人(個人商人に限る)の意義 固有の商人と擬制商人: (営業とする行為)による分類 ア.固有の商人:自己の名をもって商行為をすることを業とする者(4条1項) イ.擬制商人:固有の商人ではないが、商人と「みなされる」者(4条2項) a.店舗その他類似の設備によって物品の販売をすることを業とする者「店舗物販人」 b.「鉱業」を営む者 →商法の適用範囲を明らかにするために用いる一定の「主体」を表す概念 ・自己の名をもって:自分がその行為から生じる「権利義務」の主体となること (Cf.他人の名をもって:「代理人」として、「他人名義」で) 下線部「商行為」の意味:基本的商行為(絶対的商行為および営業的商行為) ・業とする:営業とする(「営利の目的」をもって反復継続して行う) ・営利の目的:収支の差額を利得する目的〔既述〕 鉱業→大規模な企業設備に着目

3.商人の意義 小商人(定義は商法施行規則3): 以下の規定は、小商人には適用されない 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 3.商人の意義 小商人(定義は商法施行規則3): 営業の用に供する財産につき貸借対照表に計上した額が50万円を超えない商人(会社には適用されない) 以下の規定は、小商人には適用されない 商業登記に関する規定(5,6,8~10:第3章) 商業帳簿に関する規定(19:第5章) 商号の登記に関する規定(11Ⅱ・15Ⅱ・17Ⅱ前) 店舗使用人に関する規定(26条) ・商業帳簿や商業登記の規定を適用すると、小商人にとって煩雑であり、コストもかかる。また、小商人の経済社会における影響の度合いから、これらの規定を適用しなくても、商業帳簿や商業登記の規制目的に反するほどの不都合がないと考えられることによる。 ・旧商法では、商号に関する規定すべてが適用されないものとされており、小商人に商号専用権を認めると、他の商人の商号選定を不当に妨げるおそれがあるからであると説明されていた。しかし、現行商法では、登記商号と同一の営業目的で同一市町村において同一の商号を登記できないという規制はなくなっており、このような弊害は生じない。それゆえ、商号に関する規定のうち、商号登記に関する規定のみが適用されないものとされている。

4.絶対的商行為と営業的商行為 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 I 絶対的商行為(501条): ・行為の客観的性質から強度の営利性があるものとして、営業としてなされるか否かにかかわらず、商行為とされる ・商人でない者の間で行われた場合でも、民法ではなく商法の規定が優先して適用される。 絶対的商行為:(非商人が1回限り行っても商行為とされる)

企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 1号:投機購買及びその実行行為 「利益を得て譲り渡す意思(投機意思)」をもってする、動産、不動産、有価証券の「有償取得」 →有償取得:仕入れ・原材料の購入、交換、消費貸借、請負、委託売買を含む その取得したものの譲渡を目的とする行為(実行行為)→実行販売 ※仕入れたものに手を加えて (製造・加工)譲渡してもよい 安く仕入れて、高く売る、という最も基本的な商業的行為 仕入れの当初から利益を上乗せした価格で他者に転売する意思が必要であり、かつ外部から投機意思が認識可能であることを要する ※実際に高く売れて利益が得られたかどうかは問題にならない

②部品からデジカメを生産 CASIO ①部品の購入 ③製品を出荷 精密機械生産業者 家電量販店 ④一般消費者に販売 投機購買とその実行行為は それぞれいくつありましたか? 精密機械生産業者 家電量販店 ④一般消費者に販売

具体例 (小売業・卸売業)等の流通業 (製造・加工業)等 ※原始取得した農産物、海産物、鉱物等を譲渡する行為は商行為ではない 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 具体例 (小売業・卸売業)等の流通業 (製造・加工業)等 ※原始取得した農産物、海産物、鉱物等を譲渡する行為は商行為ではない ※自己利用目的で購入した書籍を古書店に売る 行為は投機購買とその実行行為に当たらない →なぜか? 本を購入する時点では自分で使う(読む)つもりだっ た場合、購入する時点で利益を得て譲渡する意思 がなかったことになるから

2号:投機売却及びその実行行為 他人から有償取得すべき動産または有価証券の供給契約(投機売却) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 2号:投機売却及びその実行行為 他人から有償取得すべき動産または有価証券の供給契約(投機売却) その供給契約の履行のためにする物品の他人からの有償取得を目的とする行為(実行行為) (例:予約販売、先物取引など) ※供給契約:契約締結後一定の時期に目的物の所有権を譲渡する旨の有償契約 始めに動産または株式などの有価証券を売りますという契約をする(投機売却)、その後、目的物を契約した価格より安く購入する行為(実行行為)。 →将来他人から安く仕入れて履行する意思でする動産・有価証券の供給契約 →その履行のためにする有償取得(買入)を目的とする行為(実行行為)

投機購買と投機売却の違い 投機購買と投機売却とでは、仕入れと販売の順序が逆 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 投機購買と投機売却の違い 投機購買と投機売却とでは、仕入れと販売の順序が逆 投機売却の目的物には不動産を含まない: →不動産は、目的物が特定されるため、性質上なじまないから

3号:取引所においてする取引 金融商品取引所(証券取引所)および商品取引所で行う取引 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 3号:取引所においてする取引 金融商品取引所(証券取引所)および商品取引所で行う取引 ※取引所とは:多数の商人(会員)が定期的に集合して、一定の商品・有価証券などの取引を大量になす設備を備えた法人 ※近時、国際的競争力強化のため株式会社化・非会員組織化への改革が行われている(東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所など)

4号:手形その他の商業証券に関する行為 →有価証券自体を目的とする売買などの取引行為を含むとする判例もある(大判昭6/7/1) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 4号:手形その他の商業証券に関する行為 →有価証券(手形・小切手、株券、貨物引換証など)上になされる振出、引受、裏書などの行為(通説) →有価証券自体を目的とする売買などの取引行為を含むとする判例もある(大判昭6/7/1)

Ⅱ 営業的商行為 営業として行う場合にはじめて商行為とされる行為(502) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 Ⅱ 営業的商行為 営業として行う場合にはじめて商行為とされる行為(502) 但し、もっぱら賃金を得る目的で物の製造や労務に服する者の行為は、商行為ではない(同条柱書き但書) →例:小規模な賃金労働や手内職など 同条の規定は限定列挙と解されている:商法の適用の有無を判断する基準となるため、明確さが重要(38事件参照)

1.投機賃借とその実行行為 例:不動産賃貸業、各種レンタル・リース業(貸本、貸衣装、CD,DVDレンタル業、レンタカーなど) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 1.投機賃借とその実行行為 例:不動産賃貸業、各種レンタル・リース業(貸本、貸衣装、CD,DVDレンタル業、レンタカーなど) 賃貸目的で動産または不動産を有償取得するか賃借する行為(投機賃借) 取得または賃借した物を他人に賃貸する行為(実行行為) 有価証券は営業としての貸し借りにはなじまないので目的物に含まれない

企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 2.他人のための製造・加工 他人の計算で製造・加工すること:原材料を注文者から受け取るか、その費用を注文者が負担して、製造または加工することを有償(手数料)で引き受ける行為 製造:原材料を全く異なったものにする 加工:物の同一性を失わない程度で材料に変更を加える

3.電気・ガスの供給 電気(電力)、ガスの供給を有償で引き受ける行為 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 3.電気・ガスの供給 電気(電力)、ガスの供給を有償で引き受ける行為 電気事業法、ガス事業法により、電気やガスの供給事業を行うためには、経済産業大臣の許可が必要⇒新規参入は困難 例:関西電力、大阪ガスなど(通常、会社形態で行われるため会社5により商行為となる

4.運送に関する行為 有償で運送(人や物を場所的に移動させる)を引き受ける行為 人を輸送する:旅客運送(鉄道・バスなど) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 4.運送に関する行為 有償で運送(人や物を場所的に移動させる)を引き受ける行為 人を輸送する:旅客運送(鉄道・バスなど) 物を輸送する:物品運送(宅配業者、運輸業) 例:旅客・物品等の運送業者

5.作業・労務の請負 作業:道路の建設、家屋・工作物の建築、船舶の建造など 労務:労働者の供給 具体例: 不動産工事の請負(建設業) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 5.作業・労務の請負 作業:道路の建設、家屋・工作物の建築、船舶の建造など 労務:労働者の供給 具体例: 不動産工事の請負(建設業) 労働者供給の請負(※人材派遣会社)

6.出版・印刷・撮影 出版:文書等を印刷して販売・頒布する行為 印刷:機械力または化学力をもって文書・図画の複製を引き受ける行為 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 6.出版・印刷・撮影 出版:文書等を印刷して販売・頒布する行為 印刷:機械力または化学力をもって文書・図画の複製を引き受ける行為 撮影:写真の撮影を引き受ける行為 例:出版、印刷業者、新聞社、写真撮影業者

7.場屋取引 多くの人の来集に適した施設を準備して、来集した客の需要に応える諸種の契約 例:旅館、飲食店、浴場、野球場、劇場、遊園地等 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 7.場屋取引 多くの人の来集に適した施設を準備して、来集した客の需要に応える諸種の契約 例:旅館、飲食店、浴場、野球場、劇場、遊園地等 理髪店について争いあり →場屋営業者(場屋の主人)には客から預かった物の滅失・毀損について重い損害賠償責任(594)が課せられる

8.両替その他の銀行取引 例:両替商、銀行などの金融業者 銀行取引:与信行為(融資業務)・受信行為(預金業務など)の双方を行うことが必要 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 8.両替その他の銀行取引 例:両替商、銀行などの金融業者 銀行取引:与信行為(融資業務)・受信行為(預金業務など)の双方を行うことが必要 →与信行為のみを行う貸金業(消費者金融・ノンバンク)、質屋営業は含まれない(通説・判例) ※では、アコム、武富士、プロミス、アイフルなどは商人ではないのか?

9.保険 営利保険業者:対価を得て保険を引き受ける行為 非営利の保険:社会保険、相互保険はここでいう商行為としての保険ではない 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 9.保険 営利保険業者:対価を得て保険を引き受ける行為 生命保険株式会社、損害保険株式会社 非営利の保険:社会保険、相互保険はここでいう商行為としての保険ではない 保険相互会社とは?: 保険業法に基づいて保険業にのみ認められる特殊な会社(会社法上の会社ではないが、商法・会社法の多くの規定が準用される:保21) 例:ニッセイ、第一生命、明治安田生命など

10.寄託の引受 寄託:他人のために物の保管を引き受ける行為(民657以下) 例:倉庫業者、駐車場、トランクルームの経営など 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 10.寄託の引受 寄託:他人のために物の保管を引き受ける行為(民657以下) 例:倉庫業者、駐車場、トランクルームの経営など

11.仲立・取次 仲立:他人間の法律行為の媒介を引き受ける行為(法的性質は準委任) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 11.仲立・取次 仲立:他人間の法律行為の媒介を引き受ける行為(法的性質は準委任) 仲立人・民事仲立人(不動産仲介業者など)・媒介代理商 取次:自己の名義で他人の計算において法律行為を引き受ける行為(委託者との関係は委任関係) 問屋・準問屋・運送取扱人

12.商行為の代理の引受 委託者(他の商人)である本人にとって商行為である行為の代理を引き受ける行為 具体例:締約代理商 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 12.商行為の代理の引受 委託者(他の商人)である本人にとって商行為である行為の代理を引き受ける行為 具体例:締約代理商 旅行代理店、損害保険代理店など

5 附属的商行為(503) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 附属的商行為とは:商人が「営業のために」する行為で、基本的商行為と同様の規制をうける =本来の営業目的の行為を助ける手段的な行為(1項) 例:店舗の借り入れ・購入、従業員の雇用、営業資金の借り入れ、商品の配送委託等

企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 ・附属的商行為の推定(2項) 趣旨:個人商人の場合、個人の私生活上の行為か、営業のための行為か明らかでない場合があり得るので、取引相手の保護のために商人の行為は営業のためにするものと推定した =商人と取引する者は、通常商法の適用を念頭に行為すればよく、商行為ではないと主張する側が営業のためになされたのではないことを証明する責任を負う。

6.準商行為(旧商523) 擬制商人の「民事会社」が「営業として」する行為=商行為に関する規定が「準用」される 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 6.準商行為(旧商523) 擬制商人の「民事会社」が「営業として」する行為=商行為に関する規定が「準用」される 趣旨:民事会社が営業のためにする行為は附属的商行為として商行為に関する規定が適用されるが、本来の営業の目的たる行為には民法が適用されるというのは均衡を失することから、準商行為として商行為に関する規定を準用するものとした 会社法は、会社が事業としてする行為を商法上の基本的商行為か否かにかかわらず商行為としたため、民事会社・準商行為という概念は廃止された

※民事会社以外の擬制商人については準用されないのか? 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 ※民事会社以外の擬制商人については準用されないのか? →立法のミスとして他の擬制商人にも類推適用する(旧通説) ・改正商法からは523条は削除されたので、類推適用もできなくなるため、民事会社以外の擬制商人の営業行為は商行為とは扱われないこととなる→民法の規定が適用されるとなりそうであるが、附属的商行為との均衡上、商行為法の適用を受けると解する見解が有力

7 一方的商行為(3) 当事者のどちらか一方にとって商行為となる行為については、原則としてその双方に商法が適用される(Ⅰ) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 7 一方的商行為(3) 当事者のどちらか一方にとって商行為となる行為については、原則としてその双方に商法が適用される(Ⅰ) 当事者の一方が複数人の場合で、そのうちの一人にとって商行為となる行為については、その全員に対して商法が適用される(Ⅱ) ただし、当事者双方が商人である場合(商人間の)や、当事者の特定の一方が商人である場合(商人が)にのみ適用される規定もあるので、個々の規定について適用範囲を注意する必要がある

8 商人資格の得喪 自然人:(1)商人資格の取得の可否 「権利能力」(民3Ⅰ)に制限がないので、誰でも商人となり得る。 但し、単独で有効に営業するためには「営業能力」が必要 「未成年者」について:民4~6、商5、会584参照 後見人が代理する場合、登記が必要で代理権に制限を加えても善意の第三者に対抗できない(商6)

イ)成年被後見人 後見人(法定代理人)が成年被後見人を代理して営業を行い、それにより成年被後見人が商人となる(民9、859、864条参照) 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 イ)成年被後見人 後見人(法定代理人)が成年被後見人を代理して営業を行い、それにより成年被後見人が商人となる(民9、859、864条参照) 後見人の登記を要する点、代理権の制限を善意の第三者に対抗できない点は、未成年者の後見人と同じ(商6)

ロ)被保佐人 民13条に列挙された重要な財産の処分を行うには、保佐人の同意が必要であるが、それ以外の行為は単独で有効に行うことができる しかし、営業活動には保佐人の同意を要する行為が多く含まれる→取引のたびに保佐人の同意を得ながら営業を行うことは事実上困難 被保佐人について営業許可の制度はなく、保佐人も法定代理人ではない 被保佐人は営業活動において制限行為能力者の中で不利な立場にある 成年被後見人や被保佐人は、株式会社の役員の欠格事由にもなっている

(2)商人資格の取得時期 営業自体を開始しなくても、営業の意思を実現する開業準備行為の時点で商人資格を取得し、その開業準備行為がその商人の附属的商行為となる(判例・通説)→具体的にどのような行為が商人資格を取得させる開業準備行為となるかについては、諸説が分かれる

イ)画一的に決定する立場 表白行為説(旧判例):営業の意思を店舗の開設、開店広告等により外部に表白することが必要→あまりにも遅すぎる 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 表白行為説(旧判例):営業の意思を店舗の開設、開店広告等により外部に表白することが必要→あまりにも遅すぎる 営業意思主観的実現説(昭和初期の判例):特別の表白行為がなくても営業意思を開業準備行為によって主観的に実現していれば足りる(営業資金の借り入れ等) Cf.百選3事件→相手方に予期しない損害を与えるおそれがある

イ)画一的に決定する立場 営業意思客観的認識可能説(昭和後期判例、現在の通説的見解):営業意思が客観的に認識できるような開業準備行為が必要(相手方以外の者にも認識可能) 準備行為自体の性質による営業意思客観的認識可能説(最近の判例): 営業設備のある営業所の借り受け(テナントの賃借等)

ロ)段階的・相対的に決定する立場 段階説(相対説):最近の有力説 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 段階説(相対説):最近の有力説 営業意思が準備行為によって主観的に実現された段階→相手方は行為者の商人資格と行為の附属的商行為性を主張できる(商事法定利率など) 営業意思が特定の相手方に認識され、または認識可能となった段階→行為者もその相手方に対して自己の商人資格と行為の附属的商行為性を主張できる(商事債権の消滅時効など) 商人であることが一般的に認識可能となった段階→その者の行為について附属的商行為性の推定が生じる

企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 商人資格の喪失時期 営業自体が終了したときではなく、残務処理が終了したときに喪失する。

法人の商人資格 商人資格の取得の可否:法人は権利能力がその目的の範囲に制限される(改正民34)ことから、商人資格の取得の可否が問題となる 会社:自己の名をもって商行為をなすことを業とする商人 その他の法人:公益目的を達成する手段として付随的に営利目的で事業を営む場合には、その限りで商人となりうる(多数説) 協同組合、保険相互会社には商人資格を認めないのが判例・通説

(2)商人資格の得喪(法人) 会社: 会社以外の法人:自然人と同様に考える 企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.3 会社: 設立登記(会49、579、911以下等参照)により取得→生まれながらの商人 清算手続の終了(清算結了の登記)によって喪失(会929) 会社以外の法人:自然人と同様に考える