ただしい傷の治し方 上富良野町立病院外科医長 兼古 稔
傷に関する常識? 1.傷は必ず消毒しなければならない。 2.傷は消毒しないと化膿する。 化膿しないために消毒する。 化膿しないために消毒する。 3.傷が化膿したので消毒する。 4.傷は濡らしてはいけない。 縫った傷は濡らしてはいけない。 5.かさぶたは傷が治るときに出来る。 かさぶたが出来たら傷が治る。 6.傷は乾かした方が早く治る 7.傷にはガーゼを当てる。
消毒薬の効果 1.消毒薬はなぜ細菌を殺せるのか? →細菌の細胞を破壊するからです。 じゃあ、人の細胞に消毒薬を使ったら? 人の細胞と細菌はどちらが強いでしょう? 2.消毒薬の効果時間は? 皮膚や粘膜に使った場合、通常3時間でもとの菌数に戻ると言われています。 じゃあ、残りの21時間は?
ウル○ラマンは 地球を救えるか?
かくして、ウル○ラマンは、地球を破壊したテロリストとして指名手配されたのでした・・・。 終
ウル○ラマン登場 ウル○ラマン再登場 カラータイマー点滅! ウル○ラマンM78星雲に帰る この間、怪獣はやりたい放題! 9:25 9:28 24:00 9:25 この間、怪獣はやりたい放題!
生き残った皮膚の細菌が毛穴から出てくる 消毒 もとの菌数に戻る この間は消毒してもしなくても同じ 9:00 10:00 12:00 24:00 9:00 この間は消毒してもしなくても同じ
消毒薬は浸出液(じくじく)で効果を失うので、 消毒薬は組織に届かない 表皮 浸出液 細菌 真皮 皮下脂肪 低い濃度の消毒薬でも組織は死んでしまう
別に問題ありません。 皮膚や腸にはごく普通に細菌がいます。 傷に細菌がいても 悪さをしなければ 傷は消毒しないと化膿する? 傷に細菌がいる=化膿? 皮膚や腸にはごく普通に細菌がいます。 傷に細菌がいても 悪さをしなければ 別に問題ありません。
じゃあ、化膿(感染)って何? 化膿とは、傷に細菌がいて を起こしている状態 炎症の4つのサイン
赤く 腫れて 熱を持って 痛い
正しく治療している傷 フィルムの下に膿が貯まっているように見えますが・・・ フィルムを取ってみると、赤くも腫れても熱をもってもいません。 もちろん痛みもありません
じゃあ、どんなときに化膿するの? 細菌とゴミ、どちらが問題 だと思いますか? 化膿するのは 組織1gに10万個の細菌がいる場合 または 組織にゴミ(異物)が混じっていて 組織1gに200個の細菌がいる場合 細菌とゴミ、どちらが問題 だと思いますか?
ゴミ(異物)にはどんなものが? 1.ガーゼや糸(特に絹糸) 2.死んだ組織や血液(血腫) 3.外から入った異物 (木片、砂、木の葉、さび) (木片、砂、木の葉、さび) だから傷は良く洗わなければならない
水道水にはほとんど細菌はいません。 (1ml当たり100個以下) きれいな物で汚い物を洗って害がある?
きれいに縫った傷は48時間で皮が張ります ここから入る細菌は有ったとしても ごくわずか。 感染を引き起こす数にはなり得ない。 だからもう細菌は入れない・・・ ここから入る細菌は有ったとしても ごくわずか。 感染を引き起こす数にはなり得ない。
人間の細胞は水分がなければ死んでしまうからです 傷は乾燥させてはいけない なぜでしょう? 人間の細胞は水分がなければ死んでしまうからです じゃあ、どうして皮膚は乾燥しても死なないの??
皮膚の構造 角質 表皮 真皮 角質は 死んだ表皮です。 死んだ角質が生きている表皮や真皮を守っているから、皮膚は乾燥しても死にません。
傷は守ってくれる角質がないので 乾燥すると死んでしまう 傷は守ってくれる角質がないので 乾燥すると死んでしまう 表皮 じくじくには傷を治すための物質 (サイトカイン)が含まれてます 真皮 皮下脂肪 白血球
縫合していない傷にガーゼを当てると・・・ じくじくがガーゼに吸収され、さらに蒸発して肉芽組織が乾燥してしまう。
乾燥した浸出液が血液、死んだ白血球、死んだ表皮細胞などとともに固まった物が「かさぶた」
「かさぶた」(乾燥した浸出液) 異物とは? は感染源になります! 1.ガーゼや縫合糸(特に絹糸) 2.壊死組織や血液(血腫)など 3.外から入った異物(木片、砂、 木の葉、さび) 「かさぶた」(乾燥した浸出液) は感染源になります!
かさぶたが邪魔をして 表皮細胞が延びてゆけない かさぶたが邪魔をして 表皮細胞が延びてゆけない かさぶたは細菌にとって良い栄養源。 かさぶたの下はよく化膿します。
傷は治ったら乾燥する のであって・・・ 乾燥させると治りません
では、どうやれば 傷が良く治るの?
傷に関する常識? 1.傷は必ず消毒しなければならない。 2.傷は消毒しないと化膿する。 化膿しないために消毒する。 化膿しないために消毒する。 3.傷が化膿したので消毒する。 4.傷は濡らしてはいけない。 縫った傷は濡らしてはいけない。 5.かさぶたは傷が治るときに出来る。 かさぶたが出来たら傷が治る。 6.傷は乾かした方が早く治る 7.傷にはガーゼを当てる。
傷を良く治すには・・・ ・消毒しない ・乾燥させない ・良く洗って異物を残さない これらが最低条件です。
もう一つ大事なのは・・・ じくじく(浸出液)を適度に コントロールすること 少なすぎると 傷が乾燥する、サイトカインが足りない 多すぎると 皮膚がかぶれる、ふやける 肉が上がりすぎて皮が張らない
創傷被覆材って? ガーゼの代わりに傷を覆うものです。 1.傷にくっつきにくい 2.傷を乾かさない 3.じくじくを適度に吸ってくれる 3.じくじくを適度に吸ってくれる (ものによっては)
ポリウレタンフィルム 空気(水蒸気)は通すが水は通さない。 ポリウレタンフォーム 浸出液を適度に吸収する。 この他にもいろいろあります
通常の傷の場合 1.良く洗う。(飲める水で有れば可) 2.水気を良く拭いて、フィルムで覆う。 (フィルムがなければ食品用ラップでも可) (フィルムがなければ食品用ラップでも可) 3.浸出液がたくさん貯まったらフィルムを交換。 (このときも良く洗う) 4.浸出液が多い場合はポリウレタンフォームなど 浸出液を吸収する物を使う。
やってはいけないこと ではどうするか? 1.入り口が狭くて深い傷は密閉しては いけません。 (例:動物(特に猫)咬みきず、 いけません。 (例:動物(特に猫)咬みきず、 木片などの刺しきず) 2.異物をそのまま密閉してはいけません ではどうするか?
咬みきず・刺しきずの場合 直ちに病院へ! 出来るだけ早期に抗生物質を投与した方が良い。病院では傷がふさがらないような処置をする。 木片などの場合は異物が傷の中に残っていると感染を起こすので、周囲ごとえぐり取る必要がある。 猫による咬みきず
どんな傷は自分で処置して良いの? 1.きれいなもので切った浅い傷 2.異物が残っていない擦り傷 3.水ぶくれになっていない(赤くなって いるだけの)やけど
こういう傷はすぐ病院へ 1.入り口が狭くて深い傷 2.皮下脂肪が見えるぐらいの深い傷 3.水ぶくれが出来ているやけど 4.なかなか血が止まらない傷 5.泥がついているなどの汚い傷
出血が多いときにどうするか? やってはいけないのは・・・ キズの心臓側でしばることです。 なぜでしょう?
心臓の近くでしばると・・・ 静脈はつぶされるが 動脈はつぶされない
出血してるときは 1.傷口を出来るだけ心臓より 高くして 2.傷口を静かに圧迫する
家庭で出来る正しい傷の治療 新しい治療の考えた方に基づいた製品や、日用品での治療 原理を分かっていれば、家庭でも 傷の治療は可能です。 (ただし、自己責任で・・・)
役立つ市販品
日用品で傷の治療? 傷の治療の基本さえ分かっていれば 日用品でも傷の治療は可能です。 どんなものが使えるか どんなときに使えるか
とっても便利な・・・ 利点:傷を乾燥させない。安価で手に入りやすい 傷や皮膚にくっつきにくい。 欠点:蒸れやすい。臭いやすい。 傷や皮膚にくっつきにくい。 欠点:蒸れやすい。臭いやすい。 浸出液を吸ってくれない。
これも便利な・・・ 利点:傷にほとんどくっつかない 傷を乾燥させない 浸出液を適度に外に逃がし てくれる 欠点:単独では使えない 傷を乾燥させない 浸出液を適度に外に逃がし てくれる 欠点:単独では使えない (オムツやナプキンと併用)
これも便利 穴あきポリ袋を貼って使うと ポリウレタンスポンジと同じです 利点:浸出液を吸ってくれる 一つずつ滅菌パックに 一つずつ滅菌パックに なっているので使いやすい 欠点:やや傷を乾燥させやすい 傷にくっつきやすい 穴あきポリ袋を貼って使うと ポリウレタンスポンジと同じです
WANTED! これだけは止めて欲しい極悪商品 傷を治さないどころか、 悪化させる商品たち。 以下の製品の撲滅運動に ご協力下さい
指名手配1号
指名手配2号 大抵の軟膏類は素人が自己判断で使うのは危険です!
最後にもう一度復習 ・消毒しない ・乾燥させない ・良く洗って異物を残さない ・浸出液を適度にコントロール。