C 合成抗菌薬(サルファ剤、ピリドンカルボン酸系) 

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合成抗菌薬 (サルファ剤、ピリドンカルボン酸系)
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C 合成抗菌薬(サルファ剤、ピリドンカルボン酸系)  化学合成によって作られた感染症治療薬で、微生物が産生する抗生物質を基本骨格としないものを、一般に合成抗菌薬という。ここでは、サルファ剤(スルフォンアミド剤)とピリドンカルボン酸系(キノロン系とも呼ぶ)の合成抗菌薬などについて述べる。 ◎サルファ剤  サルファ剤は図12−7に示す基本骨格を持つ、パラアミノ安息香酸の構造類似体である。葉酸の生合成を競合阻害することにより、静菌的に作用する。消化管から吸収されて組織移行も良い。動物細胞は葉酸合成系が無いので作用を受けない。尿路感染や髄膜炎菌感染、細菌性赤痢などに有用であったが、サルファ剤に対する耐性菌が増加したことと、他の優れた抗菌薬の開発などにより現在ではその使用頻度は少ない。

スルファメトキサゾ−ル・トリメトプリム合剤      sulfamethoxazole・trimethoprim (ST; バクタ) スルファジアジン・銀(ゲ−ベン) ◎使用上の注意  血液障害やショック、胃腸障害、尿路障害(結晶尿)などの副作用に注意する。  アルブミンとの蛋白結合力が強いため、アルブミンと結合して他の薬物を競合的に追い出して非結合型の割合を多くする。通常、非結合型薬物濃度が薬理効果と関連しているので、結果的に他剤の効果を増強してしまう。例として、ワルファリンやスルホニルウレア系の血糖降下剤などがあり、併用には注意が必要である。  ビリルビンに対しても蛋白結合を競合し、高ビリルビン血症を引き起こすので妊婦や新生児、未熟児には使用しない。

◎ピリドンカルボン酸(キノロン)系抗菌剤  ピリドンカルボン酸(キノロン)系抗菌剤の基本構造を図12−8に示す。これらは細菌のDNA複製に必要な酵素(DNAジャイレ−ス)を特異的に阻害することにより抗菌活性を示す。グラム陰性菌に効果的であり、その代表的な薬剤であるナリジクス酸 nalidixic acid (ウイントマイロン)は尿路感染や腎盂炎などに用いられるが、耐性菌が出現しやすい点などから使用頻度は少ない。これに対して、近年、図12−8に示す基本骨格のR2にF(フッ素)を導入した種々の誘導体が開発された。これらは抗菌スペクトルが拡大されており、副作用も比較的少ない優れた抗菌薬として利用されている。作用機構は同じであるが、抗菌スペクトルがグラム陽性菌や緑膿菌にも拡大されており、ニュ−キノロンと呼ばれている。これに対して、それまでのものをオ−ルドキノロンと呼ぶこともある。代表的な薬剤を表12−8に示す。

(オールド) キノロンナリジクス酸         ウイントマイロンシノキサシン    シノバクト ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢ニューキノロン    ノルフロキサシン  NFLX   バクシダール  オフロキサシン   OFLX   タリビッド エノキサシン    ENX    フルマーク シプロフロキサシン CPFX   シプロキサン ロメフロキサシン  LFLX   ロメバクト トスフロキサシン  TFLX   オゼックス レボフロキサシン  LVFX   クラビット フレロキサシン   FLRX   メガロシン スパルフロキサシン SPFX   スパラ

ニュ−キノロン剤は抗菌スペクトルが広く、消化管吸収されて組織移行も良いので、呼吸器感染や尿路感染、腸管感染、胆道感染、性器感染などの各種感染症に利用される。主な副作用は、消化器症状と過敏症であるが、光線過敏症や中枢神経症状、関節症状も知られている。また、金属イオンと不溶性のキレ−ト化合物を生成するため、AlやMgイオンなどを含む制酸剤などとの併用により吸収が阻害されることが知られている。薬物相互作用では、テオフィリンの血中濃度を上昇させることが報告され、また、非ステロイド性抗炎症薬との併用でけいれんが誘発される場合がある。

D 抗結核薬  結核菌はらい菌とともに抗酸性菌の一種であり、その生育は緩慢であるものの徐々に肺などの組織を不可逆的に侵して、発見と治療が遅れると致死的な感染症となりうる。衛生環境と栄養状態の向上により国内での罹患率は減少したが、それでもなお、高齢者や免疫・感染防御機構の衰えた者(免疫抑制薬・副腎皮質ステロイド服用者、HIV感染者など)は結核菌に侵されやすい。以下に示す抗結核薬は単独使用では耐性菌が発生しやすいので、原則として抗菌薬に対する感受性試験を行い、有効な3剤以上の併用を行なう。最も良く行なわれる併用薬の組合せの基本は、イソニアジド+リファンピリン、 +ピラジナミドやエタンブト−ル

☆イソニアジド isoniazid (イスコチン;INH):  結核菌体内に浸透し、細胞壁の重要成分であるミコ−ル酸の生合成を阻害することなどにより強い抗菌力を発揮するので、抗結核治療における代表的な薬剤である。しかし、単独使用では耐性菌が速やかに発生するので、他の抗結核薬と併用する(予防目的の場合にかぎり、単独使用されることもある)。副作用は過敏症以外に、末梢神経炎や肝障害が起こることがある。神経炎はビタミンB6の不足により発生するので、ピリドキシン(ビタミンB6)を服用させると良い。

☆リファンピシン rifampicin (リファジン、リマクタン;RFP):  マクロライド系抗生物質の一つであり、細菌のDNA依存性RNAポリメラ−ゼを阻害し抗菌力を発揮するが、結核菌やグラム陽性菌・陰性菌に効果がある。イソニアジドとストレプトマイシンの活性を増強させる効果もあり、結核の治療においてイソニアジドとともに重要な薬剤である。単独使用で耐性菌が速やかに発生するので、併用にて使用される。副作用の発生頻度は低いが、過敏症や黄疸、肝障害に注意する。また、肝臓の薬物代謝酵素を強く誘導して、ジギトキシンやスルホニルウレア製剤(経口血糖降下剤)、フェニトイン、ワ−ファリンなど種々の薬物の効果を減弱させるので注意が必要である。リファンピシンは胆汁から排泄され腸管循環があり、また体液への移行も良いので、唾液や涙、汗、尿、糞便が橙赤色に着色するが、そのことによる心配はない。

☆エタンブト−ル ethambutol (エブト-ル; EB):  作用機序は核酸合成の阻害による細胞分裂の抑制によると考えられている。結核菌以外の細菌には抗菌活性がないが、イソニアジドやストレプトマイシン耐性結核菌にも有効である。腎排泄型なので、腎機能障害者には容量の調節を行なう。副作用は少ないが、過敏症の他に視力障害(赤緑色識別困難と視力の減退)が現われることがあるので、定期的な検査が必要である。

☆ピラジナミド pyrazinamide (ピラマイド): 抗結核菌作用を有するが、単独使用では耐性菌が急速に発生するので、イソニアジドなどと併用する。副作用として、肝障害が起こりやすいので、肝機能検査を定期的に行なう。 ☆ストレプトマイシン streptomycin (SM): アミノグリコシド系抗生物質で、結核菌に対する抗菌作用があるが、耐性菌の問題とアミノグリコシド系抗生物質に特有の副作用(アミノグリコシド系抗生物質の項を参照すること)に留意する。他の抗結核菌剤と併用されるが、本剤は注射で使用する。

☆その他の抗結核薬 パラアミノサリチル酸カルシウム calcium para-aminosalicylate (ニッパスカルシウム、パスカルシウム;PAS-Ca)、カナマイシン kanamycin (KM)、カプレオマイシン capreomycin (CPRM)などがあり、 結核菌が先に述べた薬剤に耐性であったり、患者のアレルギ−歴などにより使用できない場合に併用薬の中に追加される事がある。

◎使用上の注意  結核の治療には、感染菌に有効な(感受性のある)複数の抗結核剤を併用する。結核菌を根絶させるためには、長期間の継続的な服薬が必要である。体調の改善などの治療効果は投薬後、数週間目から現われるが、その後も継続して服薬させる必要がある。投薬開始後、6ケ月を過ぎても菌体が検出されるようならば、耐性菌の出現を疑う必要がある。 長期間の服薬が行なわれるので、各薬剤とも服薬期間中の副作用の出現に留意する。

E−2 らい(ハンセン病)治療薬 leprosy (Hansen’s Disease) F 抗スピロヘ−タ薬 G 抗真菌薬:                     ポリエン系抗生物質 アムホテリシンB(商品名:ファンギゾン)、ナイスタチン(商品名:ナイスタチン)、フルシトシン(5-FC)、フルシトシン(商品名:アンコチル)            イミダゾール系 ミコナゾール(商品名:フロリードF)、トリアゾール系、フルコナゾール(商品名:ジフルカン)、イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)

           アリルアミン系 塩酸テルビナフィン(商品名:ラミシール)            キャンディン系 ミカファンギンナトリウム(商品名:ファンガード) H 抗ウイルス薬  I 抗原虫薬:メトロニダゾール(フラジール®)   ☆抗マラリア薬   ☆抗アメ−バ薬   ☆抗ニュ−モシスチス・カリニ肺炎薬   ☆抗トリコモナス薬:   ☆抗トキソプラズマ薬:   ☆抗トリパノゾ−マ薬: J 駆虫薬   ☆線虫類に作用するおもな駆虫薬   ☆扁形動物類に作用する主な駆虫薬