女性と子どもをたばこの害から守るには 産婦人科医師の立場から 三八地区で喫煙・禁煙問題を考える会 弘前レディスクリニックはすお 蓮尾 豊 蓮尾 豊 三八地区で喫煙・禁煙問題を考える会 2002-06-08 女性と子どもをたばこの害から守るには
産婦人科医師として 1.たばこと身体・たばこと健康 2.知っておきたいたばこの知識 3.女性に対するたばこの害 1.たばこと身体・たばこと健康 2.知っておきたいたばこの知識 3.女性に対するたばこの害 4.妊婦・胎児に対する喫煙の影響 5.新生児・乳幼児に対するたばこの影響 6.子どもと女性をたばこの害から守るには
1.たばこと身体 ①夫の喫煙と妻の肺がん死亡率 ②家族の喫煙と3歳児の 喘息様気管支炎有病率 ③喫煙と皮膚温の変化
①夫の喫煙と妻の肺がん死亡率
夫の禁煙と妻の肺がん死亡率 妻の肺がん死亡率 (平山 雄、1990) 倍 夫喫煙(20本以上) 2.0 1.9 夫禁煙 1.5 1.4 (平山 雄、1990) 倍 夫喫煙(20本以上) 2.0 1.9 妻の肺がん死亡率 夫禁煙 1.5 1.4 夫非喫煙 1.0 夫が禁煙すれば 1.0 0.5
②家族の喫煙と3歳児の 喘息様気管支炎有病率
③喫煙と皮膚温の変化 サーモグラフィー所見
2.知っておきたいたばこの知識
①主流煙と副流煙 主流煙:酸性 副流煙:アルカリ性 刺激が強く、目や鼻に 入ると痛い 受動喫煙 間接喫煙・不本意喫煙 強制喫煙
主流煙と副流煙に含まれる有害物質 主流煙には4000種類の化学物質と 200種類以上の有害物質が含まれる 副流煙にはそれらの物質が主 1 ニコチン タール カドミウム 一酸化炭素 アンモニア ニトロソアミン 52 46 4.7 3.6 3.4 2.8 (血流を悪化) (ヤニ・発がん物質) (発がん物質)) (目を刺激する) (酸素不足を招く) (発がん物質) 主流煙には4000種類の化学物質と 200種類以上の有害物質が含まれる 副流煙にはそれらの物質が主 流煙以上に多く含まれている
喫煙におけるニコチンの経路 葉たばこ 主流煙 口腔 唾液 肺 肺胞 毛細血管の血液 口腔の粘膜 胃の粘膜
ニコチンが脳に及ぼす作用 ・少量で興奮=眠気ざまし ・大量で鎮静=気を落ち着ける ニコチンが体内から消失すると… ・易刺激性・離脱症状・集中困難・ イライラ・タバコへの渇望 ニコチン ●興奮→麻痺→痙攣→呼吸麻痺 ●中毒量:1~4mg/致死量30~60mg ●1本の喫煙:3~4mg吸収/ タバコ1本:15~20mg含有
あなたのニコチン依存度は? 喫煙は薬物依存症(WHO) あなたのニコチン依存度は? 喫煙は薬物依存症(WHO) ●朝、目覚めて何分くらいで最初の たばこを吸いますか? ●1日に何本吸いますか? □5分以内・・・・・・・3点 □6~30分・・・・・・・2点 □31~60分・・・・・・・1点 □61分行こう・・・・・・0点 □31本以上・・・・・・・3点 □21~30本・・・・・・・2点 □11~20本・・・・・・・1点 □10本以下・・・・・・・0点 ●喫煙が禁じられている場所で、たばこ を我慢するのが難しいと感じますか? ●目覚めて2~3時間以内のほうがそ の後より頻繁にたばこを吸いますか? □はい・・・・・・・・・1点 □いいえ・・・・・・・・0点 □はい・・・・・・・・・1点 □いいえ・・・・・・・・0点 ●喫煙をやめるのに未練が残るのは、 どちらですか? 合計・・・・・・・・・点 □朝、起きた時の1本・・1点 □それ以外・・・・・・・0点 合計 依存度 0~2点 3~6点 7~10点 低 中 高 ●病気でほとんど1日中寝ている時で も、たばこを吸いますか? □はい・・・・・・・・・1点 □いいえ・・・・・・・・0点
一酸化炭素(CO) 酸素の200倍もHbと結合しやすい ヘビースモーカーは、2500メートルの 高地で生活しているのと同じ状態。 酸欠状態となり、脳の働きや運動能力 が低下。
②喫煙とがん
タバコが原因で死亡する割合
③喫煙とビタミンの関係 ビタミンCとビタミンB12が重要 喫煙によりビタミンCの濃度は低下 喫煙によりビタミンB12の作用が減弱
3.女性に対するたばこの害
アメリカの女性の年齢調整肺がん死亡率 女性10万人対死亡率 (WHO)
喫煙・ピル使用経験、または双方に起因して増加する 循環器系疾患(心筋梗塞など)による死亡率 女性10万人対死亡率 (イギリス王立一般医協会)
ピルの副効果 喫煙とピル(経口避妊薬) 低用量ピル:1999年9月 月経に関するもの 1.月経周期異常の治療 2.過多月経の治療 月経に関するもの 1.月経周期異常の治療 2.過多月経の治療 3.月経困難症の治療 その他の効果 1.子宮外妊娠の減少 2.卵巣癌が減少 3.子宮体癌の減少 4.卵胞嚢胞・黄体嚢胞減少 5.子宮筋腫が減少 6.良性乳腺腫瘍が減少 7.骨盤内炎症が減少
たばこによる女性の老化現象 女性の性機能への影響 1.原発性不妊症の増加:1.3~1.6倍 2.閉経年齢:1~2年早まる 更年期障害、高脂血症、骨粗鬆症
そんな臭い息では、せっかくの美貌が・・・ オーストラリア制作ポスター そんな臭い息では、せっかくの美貌が・・・
双子の分かれ道
日本人女性の喫煙率の推移 10歳代の女性は? 喫煙率 10 15 20 25 1975 80 85 90 95 全年齢 30歳代の女性 % 1975 80 85 90 95 年 全年齢 30歳代の女性 20歳代の女性 12.7 14.2 13.7 14.3 15.2 13.5 14.4 17.2 19.3 15.1 16.2 16.6 19.5 23.3 資料:日本専売公社全国たばこ喫煙調査(1958~1984) 日本たばこ産業株式会社全国たばこ喫煙率調査(1985~1995)
4.妊婦・胎児に対する 喫煙の影響 ① 流産・早産 ② 産科異常 ③ 低出生体重児 ④ 先天異常
① 流産・早産 自然流産の頻度 10本以内の喫煙で46%増加 20本までの喫煙で61%増加 同様に、早産の頻度も喫煙本数が増える ① 流産・早産 10本以内の喫煙で46%増加 自然流産の頻度 20本までの喫煙で61%増加 同様に、早産の頻度も喫煙本数が増える ほどに頻度が高くなる
1日の喫煙量と早産の関係 喫煙と低体重児出生の関係 (鈴木雅洲ら、1980) (中村正和、1988) 2.8 14.5 1.7 7.1 倍 % 3.0 2.8 14.5 15 2.5 低体重児の危険 12 2.0 早産の頻度 1.7 9 7.1 1.5 1.0 6 1.0 2.8 3 0.5 0本 10本以下 11本以上 妊婦も夫も 吸わない 夫だけが 吸う 妊婦も夫も 吸う 1日の喫煙量
妊婦の喫煙が妊娠・分娩に影響を及ぼすメカニズム 妊婦喫煙 ニコチン 一酸化炭素 血管収縮 子宮血流量の減少 一酸化炭素ヘモグロビンの増加 胎児・胎盤系の低酸素状態 低出生体重児、早産、周産期死亡の増加
妊娠中の喫煙と11歳児の知能・身長と発育状況
妊婦と夫の喫煙と低出生体重児の頻度 妊婦も夫も(-) 0 1 2 3倍 夫だけが吸う 1.7 妊婦も夫も吸う 2.8
④ 先天異常 特に関係があるとされている疾患 妊婦の喫煙と先天異常の関係 口唇裂・口蓋裂・心臓の先天異常
5.新生児・乳幼児に対するたばこの影響 ① 母乳への影響 ② 室内の空気環境 ③ 誤飲事故
① 母乳への影響 授乳期間中の喫煙 血液中のプロラクチン濃度が低下 母乳の分泌の低下、母乳が出る期間も短縮 母乳中へニコチンが移行 ① 母乳への影響 授乳期間中の喫煙 血液中のプロラクチン濃度が低下 母乳の分泌の低下、母乳が出る期間も短縮 母乳中へニコチンが移行 ニコチン中毒の報告もあり; 不眠・嘔吐・下痢・頻尿
② 室内の空気環境 妊娠前後の喫煙率
両親の喫煙による乳幼児の肺炎・気管支炎発症率
両親の喫煙と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関係 母親の喫煙 うつ伏せ寝との関係は 仰向けの3倍 人工栄養は 母乳栄養の4.8倍
母親の喫煙と注意欠陥・多動性障害(ADHD) 妊娠中の喫煙と子どもの行動異常との関係 喫煙しない母親から生まれた男児の 4 倍 喫煙しない母親から生まれた女児の 5 倍
③ 誤飲事故 64.5% 19.6%
大人たちの現状 学校の教師にも喫煙者が多い。 医師・助産婦・看護婦にも喫煙者が多い。 ことに青森県は全国平均以上 大人たちの現状 学校の教師にも喫煙者が多い。 医師・助産婦・看護婦にも喫煙者が多い。 ことに青森県は全国平均以上 産婦人科医師にも喫煙者が多い。 医療職なのに喫煙が薬物依存症という認識がない これでは子供達や妊婦に何と言えばいいのか?
1.世の中からたばこがなくなること 少なくとも喫煙マナー(分煙など) 2.禁煙 3.自分の子どもを喫煙者にしない 女性と子どもをたばこの害から守るには 1.世の中からたばこがなくなること 少なくとも喫煙マナー(分煙など) 2.禁煙 3.自分の子どもを喫煙者にしない
究極的な解決法 →世の中からたばこがなくなること 現実としては 喫煙者のマナー ・子どものそばでは吸わない ・家族との車の中では吸わない 究極的な解決法 →世の中からたばこがなくなること 喫煙者のマナー 現実としては ・子どものそばでは吸わない ・家族との車の中では吸わない ・狭い部屋の中では吸わない ・換気扇のない部屋では吸わない などなど・・・・・
何とか禁煙できないか
ニコチンパッチ ニコチンガム
禁煙を始める前に : ①自分自身がやめることに対し意志を持つ事 ②ご家族など、周りの方の支援をもらう。 ③始める際にカレンダーなどにしっかりと計画を書く。 ④タバコ、灰皿などの誘惑物は捨てる。
禁煙で味わうすばらしさ 1.精神的にも生理的にも好転 2.食べ物の味わいがよみがえる 3.各種疾患死亡率の低下 4.その他の禁煙の効果
禁煙したら危険性は どの位下がるの? 循環器疾患では死亡の危険度は速やかに低下!! 効果は1年以内に!(米国フラミンガム) 更に5年で非喫煙者と同じレベルに! 発病後禁煙した人は継続喫煙者の三分の一の発症率
肺がん死亡率の関係(男) 禁煙後の年数と (非喫煙者を1として) 4.5 死亡率 2.0 1.6 1.4 1.0 禁煙後の年数 5 4 3 2 1.4 1.0 1 毎日喫煙 4年以下 5~9年 10年以上 非喫煙 禁煙後の年数 平山雄、Kranger,1990
6.子どもと女性を たばこの害から守るには 子どもたちに、はっきりとたばこの害を言えるように
自分の子どもを喫煙者にしない 子どもたちの喫煙の現状を知っていますか?
青少年の喫煙行動 (この1か月間に1本でもたばこを吸った者の割合)
子供を守るのは大人の責任
先進国でのタバコ売り上げは低下 でも・・・日本では
インポテンツの原因にもなってるんだ
タバコ に手を伸ばさないで! ぜんぜん かっこよくない!!
高校生における父母の喫煙習慣と 本人の喫煙習慣の関係 生徒の喫煙率(%) 週に3回以上 男子 女子 10 20 30 40 50 60 喫煙経験あり 父が喫煙 母が喫煙 父が 非喫煙 母が 男子 女子 10 20 30 40 50 60 1か月以内に 吸ったことがある
子どもと女性をたばこの害から守るには 親として 教師として 医療職として 夫として 子どもたちに、はっきりとたばこの害を言えるように 思春期教育45回 医療機関の禁煙
産婦人科医師としての願いは 1.妊娠中・産褥での禁煙 2.家族の禁煙 3.どうしても禁煙できなければ喫煙マナーを 1.妊娠中・産褥での禁煙 2.家族の禁煙 3.どうしても禁煙できなければ喫煙マナーを 4.医療機関内禁煙(受け入れ側) 特に産婦人科・小児科は絶対に!
医師としての願いは 1.たばこを吸わない人はこれからも吸わない 2.現在喫煙している方は禁煙を 3.禁煙できないまでも節煙を 1.たばこを吸わない人はこれからも吸わない 2.現在喫煙している方は禁煙を 3.禁煙できないまでも節煙を 4.禁煙できないなら分煙を 5.自分の子供を喫煙者にしない
喫煙医師では、疾患治療を行う時、 説得力がない! 極論ですが、検査・治療を行うよりも、 タバコのない世界をつくる方が 本当は人間の健康を保てると思います!
患者に禁煙を勧めるためには! すべての医療機関 を禁煙に!! 全面禁煙医療機関 リストの作成を! ホームページで 公開を (久芳先生のHP) 朝日新聞 2002年5月11日 患者に禁煙を勧めるためには! すべての医療機関 を禁煙に!! 全面禁煙医療機関 リストの作成を! ホームページで 公開を (久芳先生のHP)
何年後かの、みんなの姿だよ! 男の子はこんな写真を 撮ってあげたいね
付録:最近の新聞記事から 2001年12月19日
朝日:2002年1月14日 朝日:2001年12月19日
朝日:2002年2月16日
朝日:2002年3月18日
東奥日報:2002年3月31日