2016年9月6日 レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長 藤野英人 市場から見た 健康経営の必要性 2016年9月6日 レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長 藤野英人
健康経営とは 健康経営とは、従業員や生活者の健康が企業およ び社会に不可欠な資本であることを認識し、従業 員への健康情報の提供や健康投資を促すしくみを 構築することで、生産性の低下を防ぎ、医療費を 抑えて、企業の収益性向上を目指す取り組みを指 します。 1980年代に米国の経営心理学者のロ バート・ ローゼン氏によって「健康な従業員こ そが収益性の高い会社をつくる」という”ヘル シーカンパニー”思想が 提唱されました。 …健康経営フォーラムより
「健康経営銘柄」選定の意義 日本の企業・産業の戦略と日本経済政策 として取り組むべき新たな課題 日本が海外に向けて発信できる先進的取 り組み → 課題先進国として少子高齢化などの問 題を抱えている国からの提言
企業にとって社員の健康への取組は 従来 今後 コスト リスク管理 後ろ向きな問題解決 社員は「材料」 将来に向けた投資 企業価値の向上 前向きな課題解決 社員は「資産」
「健康経営銘柄」とは 「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、 戦略的に実践すること 企業理念に基づき、 従業員への健康投資を行うことは、従業員の 活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に 業績向上や株価向上につながると期待される 東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を 選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する 投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることを通じ、企業 による「健康経営」の取組を促進することを目指す 日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に対す る取組の一つ 経済産業省発表資料より
「健康経営」を重視する社会的背景 世の中の潮流 世界的な潮流 少子高齢化による競争力の低下懸念 → ブラック企業批判 → ブラック企業批判 → 生きがいややりがいを求めていく 世界的な潮流 → ESG投資・SRIの普及 少子高齢化による競争力の低下懸念 → 今働いている人を大切にしていく → なでしこ銘柄
社員の信頼度 エデルマン・ジャパンの調査
未来を信じる力 エデルマン・ジャパンの調査
投資=ダーティ お金もうけ=悪 日本の若者の「投資観」 明治大学の大学生たちに聞きました Q.「投資」のイメージは? 8割の学生たちが と答えます
そもそも日本の若者は「働きたくない」? Q.働くことの意義について 働くのは当たり前だと思う 39.1% できれば働きたくない 28.7% 働くのは当たり前だと思う 39.1% できれば働きたくない 28.7% (出典)2015 電通総研 就労している18~29歳の若者の回答 なぜそんなにも 働きたくないのか…??
働き方改革が必要 デフレ&少子化による 労働力不足 採用とモチベーションマ ネージメント
企業と個人の関係が変化 「相互拘束型」の関係 企 業 個 人 「相互選択型」の関係 企 業 個 人 多様な雇用形態の提供 自立的な投資行動 企 業 右肩上がりの成長を予測 個 人 豊かな消費生活を期待 「相互拘束型」の関係 終身雇用を保証 全面的な忠誠行動 企 業 環境変化への 迅速な対応 個 人 多様なワークモチベーション 「相互選択型」の関係 多様な雇用形態の提供 自立的な投資行動
変化する2つの市場 背景②:「商品市場の変化」と「人材の流動化」 労働市場 商品市場 商品市場に加えて労働市場への適応 投資シフトが成長の鍵 企業の競争優位が ハード⇒ソフト 商品のライフサイクルが 長期⇒短期 となった 企業と個人の関係が 相互拘束⇒相互選択 となった (=人材流動化) 商品市場に加えて労働市場への適応 投資シフトが成長の鍵
サービスの価値を下げ、仕事の価値を下げた デフレによる仕事への影響 <商品市場> <労働市場> ●低価格訴求型サービス ●原価削減による品質低下 ●人件費削減による品質低下 ●仕事への期待が低下 ●仕事への誇りが低下 ●帰属意識の低下 サービス品質の低下 働く魅力の低下 デフレ時代の「低価格競争」激化は、 サービスの価値を下げ、仕事の価値を下げた
労働市場への投資 → 健康経営へのシフトはこのような 時代の背景を反映する 日本の企業の成長、生産性向上のためには 人材力、組織力を伸ばす必要があり、労働 市場への投資シフトが欠かせない → 健康経営へのシフトはこのような 時代の背景を反映する
健康経営の推進の効果 健康経営は働き方改革の企業サイドからできる 重要なメッセージである 社員と会社の関係性の再構築 → 企業と個人が相互選択型の関係になる中で、会社側 が長期的なコミットメントを放棄した結果が社員側のロ イヤリティの低下という傾向を生んだ → 相互選択型の関係で社員のロイヤリティを回復する ひとつの方法論が「健康経営企業」というあり方へ 社員と会社の関係性の再構築 → 会社との信頼関係の再構築。社員をコストととらえ る考え方から相互信頼関係で結ばれているパートナーへ
「勤務先が従業員の健康を大切にしている」と思うビジネスパーソンは 健康経営と従業員の生産性 「勤務先が従業員の健康を大切にしている」と思うビジネスパーソンは 生産性(仕事のパフォーマンス度)が高い ■自身の仕事のパフォーマンス度(日経リサーチ 2015年 ビジネスパーソン調査より) 勤務先は「従業員の健康の保持・増進」 を大切にしていると思うか 分析軸
バリューダイナミクス 非財務情報の重要性
2つの「健康経営投資」 企業側の将来に対する制度や社員に 対する投資 投資家(個人投資家や機関投資家) が「健康経営」を評価してする投資
健康経営は企業価値を向上させる ヘルスケア・コストの削減→ 社会的コストの提言 健康的で生産性の高い社員(生産性向上) ヘルスケア・コストの削減→ 社会的コストの提言 健康的で生産性の高い社員(生産性向上) 企業に対する献身度の高い社員の増加 質の高い(新入)社員のリクルート・マネジメント 顧客・消費者からの高い評価・イメージアップ 企業価値の向上(社会・ガバナンスへの取組み強化) 長期的な企業価値を重視する投資家(株主)からの 評価向 上(安定的な株主基盤の強化) 先進的取り組みとして海外からの評価向上
就活における採用状況の変化 キーワードは「オヤカク」 「内定先企業が当該企業に入ることの承諾を親 から受けたのかを確認する行動」 → 少子化の影響で親の子供に対する関与度が上昇 し、就活にまで影響を与える。親の意見で内定切り があることは珍しくない → 健康経営銘柄に選ばれること、もしくは新設の 「ホワイト500」に選ばれることにより、オヤカ クの成功確率を上昇できる
株価って何? 株価 EPS PER 1株当たり利益 株価収益率 情熱 工夫 頑張り 人気 金利 為替 市況
健康経営の株価への影響 EPSの上昇 PERの上昇 → 採用力の向上による競争力の強化・社員のモチ ベーション・ロイヤリティの向上による生産性の上昇 PERの上昇 → 健康経営を志向している会社に対する価値がホワ イト500などの発表によりわかりやすい指標の一つ になり、長期的には株価評価の対象の一つになる可能 性がある
株価って何? 株価 EPS PER 1株当たり利益 株価収益率 情熱 工夫 頑張り 人気 金利 為替 市況
健康経営と株価は連動する 2008年9月リーマン・ショック 2014年11月「従業員の健康に関する取り組みについての調査」結果を基にして経済産業省が作成 ※2005年1月末を基点100とし、2015年2月末までの各月末時点の各社の時価総額から指数を作成。新規上場など、基点のデータがない企業は除いた
今後の課題 健康経営銘柄がなぜパフォーマンスがよいかを経営学 的、証券分析的アプローチでの解明をすること 健康経営銘柄の選定が当初の目標を達成するためには、 企業サイドにその重要性を認識してもらい、積極的に 行動をするように促すことが必要である。また同時に 投資家も当該銘柄への投資が長期的な投資成果につな がることを確信する必要がある 上記目標のためには①継続性②透明性が重要。継続性、 透明性を担保して当該銘柄の情報を幅広く公開して、 今後の研究の厚みを増すとともにより実務的に使われ るものとして定着をはかる必要がある