運動器機能向上の効果検証 Key Word : 『歩幅』、 『歩行』 すずらんの里デイサービスセンター 発表者 小橋 佳和
すずらんの里デイサービスセンター沿革 平成11年4月 老人デイサービスセンターB型(委託) 老人デイサービスセンターE型(委託) 平成12年4月 併設通所介護(定員30名)月曜日~土曜日 痴呆併設通所介護(定員1単位:10名、2単位:5名) 月曜日~土曜日 平成12年10月 併設通所介護(定員30名⇒35名へ変更) 痴呆併設通所介護 月曜日~土曜日⇒月曜日~日曜日へ 変更 平成15年4月 併設通所介護 月曜日~土曜日⇒月曜日~日曜日へ変更 平成18年4月 通常規模型通所介護(定員35名)月曜日~日曜日 地域密着型認知症対応型通所介護 (定員1単位:12名、2単位:10名) 月曜日~日曜日 平成20年5月 地域密着型認知症対応型通所介護(定員12名)新設 月曜日~金曜日 通常規模型35名、認知症対応型34名=合計69名
はじめに… 1)運動器機能向上-9割以上の方々が利用 2)口腔機能向上-加算実績なし 3)栄養改善-加算実績なし 当センターで行っている介護予防サービス 1)運動器機能向上-9割以上の方々が利用 2)口腔機能向上-加算実績なし 3)栄養改善-加算実績なし 運動プログラムの効果判断、課題抽出を行なうため、以下の項目について効 果検証を行う。 1) 要支援(要介護)状態の変移 平成18年度の初回要支援認定と平成20年9月現在の要支援(介護)状態を比較 2) 運動器機能評価(体力測定)の統計 3ヶ月サイクルで2回実施している運動器機能評価の統計を取り、運動プログラ ムの効果検証を行う
要支援(要介護)認定結果変移 34名内訳 ⇒ 改善 ⇒ 維持 ⇒ 悪化 ⇒ 2名 要支援2から要支援1に改善 25名 平成18年度に要支援認定を受けられた方、34名の初回要支援認定結果と平成20年9月時点での要支援(要介護)状態を比較。 男性:3名 女性:31名 最高齢者:94歳 最年少者:74歳 平均年齢:83.3歳 34名内訳 ⇒ 改善 ⇒ 維持 ⇒ 悪化 ⇒ 2名 要支援2から要支援1に改善 25名 7名 うち、要支援1から要支援2に悪化 1名 うち、要支援2から要介護状態に悪化 6名
要支援(要介護)認定結果変移 2名(6%) 7名(21%) 25名(73%) 2年半年の間、維持されている方が7割
運動器機能向上計画書 個別による運動 プログラムを記載 課題ニーズや目標 を記載 考慮すべきリスク 等を記載
個別による運動 プログラムを記載
運動器機能評価項目 5m歩行 握力 ファンクショナル・リーチ 測定 着眼点 方法 注意事項 歩行能力 スタート前とゴール後に予備区間の距離を確保する。 握力 筋力 握力計 腕を自然に伸ばし、手は身体に触れないようにする。 ファンクショナル・リーチ 動的バランス 肩幅程度の開脚立位をとり、片手を90度屈曲した開始位置から足を動かさないようにバランスを保ちながら前方へ手を伸ばし、到達距離を測定する。 メジャーは挙上した上肢に平行に位置し、前方移動の際、極端な股関節屈曲、体幹前屈にならないようにする。
運動器機能評価項目 端座位 体前屈 開眼片 足立ち Timed Up & Go 測定 着眼点 方法 注意事項 柔軟性 膝を90度に屈曲し、椅子に腰掛け、体前屈棒を前方に押し、到達距離を測定する。 いきおいを付けたり、反動を付けないように注意する。 開眼片 足立ち 静的バランス 両足を腰にあて片足で立ち、他方の足を軽く上げ床から離す。この状態でできるだけ長く立ち続け、保持できた時間を計測する。 上げた足を支持足に付けないように注意する。 Timed Up & Go 歩行能力 動的バランス 「はじめ」の合図で椅子から立ち上がり、3m先の目印を折り返して再び椅子に腰掛けるまでの時間を計測する。 対象者がコーンを回るときや、椅子に腰掛けるときにいきおいが付いて倒れないように注意する。
80歳~84歳の体力測定結果判定基準表 男性 5.8以上 5.7~4.7 4.6~3.5 3.4~2.4 2.3以下 Lv1 (低い) Lv2 (やや低い) Lv3 (平均) Lv4 (やや高い) Lv5 (高い) 5m歩行 5.8以上 5.7~4.7 4.6~3.5 3.4~2.4 2.3以下 握力(㎏) 18.0以下 18.1~23.0 23.1~27.0 27.1~35.0 35.1以上 開眼片足立ち(秒) 2.9以下 3.0~5.9 6.0~18.9 19.0~43.9 44.0以上 端座位体前屈(㎝) 32.0以下 32.1~40.0 40.1~48.0 48.1~60.0 60.1以上 ファンクショナル・リーチ(㎝) 24.0以下 24.1~28.0 28.1~34.0 34.1~44.0 44.1以上 Timed Up & Go(秒) 16.0以上 15.9~12.0 11.9~9.0 8.9~6.0 5.9以上
80歳~84歳の体力測定結果判定基準表 女性 7.3以上 7.2~5.9 5.8~4.4 4.3~3.0 2.9以下 Lv1 (低い) Lv2 (やや低い) Lv3 (平均) Lv4 (やや高い) Lv5 (高い) 5m歩行 7.3以上 7.2~5.9 5.8~4.4 4.3~3.0 2.9以下 握力(㎏) 12.0以下 12.1~16.0 16.1~17.0 17.1~23.0 23.1以上 開眼片足立ち(秒) 1.9以下 2.0~3.9 4.0~13.9 14.0~35.9 36.0以上 端座位体前屈(㎝) 30.0以下 30.1~38.0 38.1~46.0 46.1~58.0 58.1以上 ファンクショナル・リーチ(㎝) 22.0以下 22.1~26.0 26.1~32.0 32.1~42.0 42.1以上 Timed Up & Go(秒) 17.0以上 16.9~13.0 12.9~10.0 9.9~7.0 6.9以下
宮城県リハビリテーション支援センター http://www.pref.miyagi.jp/rehabili/
80歳~84歳の体力測定結果判定基準表 男性 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 5.8以上 5.7~4.7 4.6~3.5 (低い) Lv2 (やや低い) Lv3 (平均) Lv4 (やや高い) Lv5 (高い) 5m歩行 5.8以上 5.7~4.7 4.6~3.5 3.4~2.4 2.3以下 握力(㎏) 18.0以下 18.1~23.0 23.1~27.0 27.1~35.0 35.1以上 開眼片足立ち(秒) 2.9以下 3.0~5.9 6.0~18.9 19.0~43.9 44.0以上 端座位体前屈(㎝) 32.0以下 32.1~40.0 40.1~48.0 48.1~60.0 60.1以上 ファンクショナル・リーチ(㎝) 24.0以下 24.1~28.0 28.1~34.0 34.1~44.0 44.1以上 Timed Up & Go(秒) 16.0以上 15.9~12.0 11.9~9.0 8.9~6.0 5.9以上 (5m歩行・握力・開眼片足立ち:宮城県リハビリテーション支援センター体力測定結果判定基準参照) (端座位体前屈・ファンクショナル・リーチ・TUG:平成18年度4月~平成20年8月までの測定結果から宮城県リハビリテーション支援センターの指導のもと、独自に作成)
N.T様の12ヶ月評価 5m歩行 握力 ファンクショナル ・リーチ 端座位体前屈 開眼片足立ち Timed Up & Go 初回測定 3ヶ月目 6ヶ月目 9ヶ月目 12ヶ月目 個人平均 LV 5m歩行 9.0秒 (LV1) 6.3秒 (LV2) 10.4秒 5.4秒 (LV3) 6.7秒 LV1.8 握力 6.0㎏ 15.3㎏ 13.8㎏ 10.9㎏ 13.4㎏ LV1.6 ファンクショナル ・リーチ 17.5秒 18.0秒 23.0秒 30.0秒 22.0秒 端座位体前屈 7.0cm 8.5cm 28.5cm 37.0cm 28.0cm LV1.4 開眼片足立ち 4.4秒 4.0秒 4.8秒 2.8秒 LV2.6 Timed Up & Go 21.3秒 15.7秒 13.9秒 15.2秒
すずらんの里平均レベルグラフ 5m歩行 1.6 握力 2.8 ファンクショナル 2.0 端座位 2.7 開眼片足 1.9 T U G 項目 平均Lv 5m歩行 1.6 握力 2.8 ファンクショナル 2.0 端座位 2.7 開眼片足 1.9 T U G 宮城県平均水準 すずらんの里平均
5m歩行 ~検証結果~ 初回LVと12ヵ月後のLVを比較 2名(6%) 1名(3%) 4名(12%) 19名(55%) 8名(24%)
5m歩行 ~検証結果~ 『歩幅減少』 『股関節回転速度が遅い』 レベルを維持・向上された方で9割となっているが、宮城県の平均レベル3にはほど遠い、平均レベル1.6となっている。また、6項目の中でも一番低い水準レベルである。 考えられる要因 『歩幅減少』 『股関節回転速度が遅い』
5m歩行 ~検証結果~ 『歩幅減少』 若年者平均歩幅 男性:80㎝前後 女性:70㎝前後 利用者平均歩幅 男性:60㎝前後 女性:50㎝前後 若年者平均歩幅 男性:80㎝前後 女性:70㎝前後 *職員で計測 利用者平均歩幅 男性:60㎝前後 女性:50㎝前後 高齢者は若年者に比べるとおおよそ20㎝程遅れている 5mを歩くのにおよそ男性で8~9歩前後、女性で10歩前後必要 男性:5m(500㎝)÷60㎝=8.3歩、女性:5m÷50㎝=10歩 一般的な歩行速度は2歩で1秒を要するといわれている 5mを歩くのにおよそ男性で4秒前後、女性で5秒前後必要 男性:8.3歩÷2歩=4.2秒、女性:10歩÷2歩=5秒 歩幅の減少は、歩行速度の低下と転倒を誘発する要因である
腰部付近の柔軟性の欠如は、歩行姿勢の悪化や 5m歩行 ~検証結果~ 『股関節回転速度が遅い』(=腰部付近の柔軟性が欠如している) 当センターの半数以上の女性利用者に円背傾向が見られる 円背の方は股関節が屈曲しており、股関節の回転が遅くなる 当センターの半数以上の方々にすり足歩行傾向が見られる 歩行時の蹴りだしの力(腓腹筋とひらめ筋の力)が弱い 腰部付近の柔軟性の欠如は、歩行姿勢の悪化や 視野減少など歩行の阻害要因である
5m歩行 ~検証結果~ 歩行速度を向上させるために… 歩幅を向上させる 股関節回転速度を向上させる 股関節周囲筋力の向上を図る 足関節底屈力(蹴りだしの筋力)向上を図る ⇒ 腓腹筋とひらめ筋の筋力向上を図る 股関節回転速度を向上させる 背筋力の向上により ⇒ 円背を軽減する 歩行時の目線をできるだけ高い位置に持っていき、歩行時の姿勢(体幹)の改善を図る これらのことを踏まえ、運動プログラムを立案し、継続的に取り組む事で歩行速度の向上が期待できる!!
開眼片足立ち ~検証結果~ 【測定結果】 平均LV1.9とこのテストでも宮城県の平均水準(LV3)には及ばない低い数値であったが、LV3の方も8名(24%)おられ、個人差が大きいことが伺える。また、向上された方と低下された方とで2極分化しており、低下されている方全員に転倒歴があることが分かった。 1名(3%) 1名(3%) 5名(15%) 21名(61%) 6名(18%) 【考察】 このテストに重要なことは、バランス能力及び下肢筋力の協調性である。筋肉の協調性は、大腿の前面筋である大腿四頭筋と後面筋であるハムストリングスが同じ力を発揮することで、うまく筋肉バランスを維持することができ、より長く片足立ちが可能になると考える。 【検証結果より】 片足立ちを反復練習することと、ゆっくりと足踏み運動を行なうことで大腿四頭筋とハムストリングスの筋力向上が図れると考える。
握力 ~検証結果~ 【測定結果】 男性平均29.1㎏、女性平均19.3㎏ 【考察】 【検証結果より】 平均LV2.8である。 握力 ~検証結果~ 【測定結果】 平均LV2.8である。 測定項目の中で一番高い平均LVとなっているものの、宮城県の平均(LV3)には達していない。中にはLV4・LV5を記録されている方もおられた。 男性平均29.1㎏、女性平均19.3㎏ 2名(6%) 1名(3%) 6名(18%) 16名(47%) 9名(26%) 【考察】 宮城県の平均に達していないように、当センターの利用者の筋力水準が低いことは明らかである。利用者の筋力向上を望むには、高負荷訓練を行なわなくてはならない。今回、レベル向上された方が8名(24%)おられたが、この背景には筋出力の向上があったと考える。運動を行い、日頃使用していない筋力を使用し、筋出力を発揮できるようになったのではないかと思われる。 【検証結果より】 筋力訓練として、腿挙げ訓練、膝の伸展訓練、足関節の底背屈訓練、腹筋背筋強化訓練等を鉛やゴムなどを使用し、抵抗を加え行なう。
端座位体前屈 ~検証結果~ 【測定結果】 このテストでは、当センター基準による比較であるため、平均(LV3)に近い水準となった。(平均LV2.7) しかしながら、2段階以上向上されている方も多く見られ、27名(79%)の方々が維持・向上しているという好結果が得られた。 1名(3%) 4名(12%) 14名(40%) 6名(18%) 7名(21%) 【考察】 体幹の柔軟性を必要とするテストであるが、身体の円背が若干影響し、前屈の好評価に繋がった感がある。着目すべき点は、能力(数値)が大幅に向上していることである。運動の前に十分なストレッチ体操を行ない、身体の柔軟性を引き出してから運動を行なったことがLVアップに繋がったと思われる。 【検証結果より】 予防運動の前に十分なストレッチ体操を行なう。特に骨折しやすい手首周囲・腰椎周囲・股関節周囲を入念に行なう。
ファンクショナル・リーチ ~検証結果~ 【測定結果】 【考察】 【検証結果より】 このテストでは、平均LV2であった。 ファンクショナル・リーチ ~検証結果~ 【測定結果】 このテストでは、平均LV2であった。 レベル低下されている方が8名(24%)おられた。 当センターでは、これまで動的バランス向上における訓練メニューが少なかったため、平均LV2と低い水準結果が得られたと思われる。 3名(9%) 4名(12%) 12名(35%) 4名(12%) 11名(32%) 【考察】 端座位体前屈同様、ストレッチ体操が柔軟性を向上させたと考えられる。但し、端座位体前屈と比べ、立位で行うためバランス能力を要する。ここでは動的バランスが必要であり、特に前後へのバランス能力が必要になる。身体が前に行く動きに対し、倒れないように股関節周囲や足関節にてバランスを保つ。リーチを伸ばしながら、バランスを保つ高度な能力が必要である。 【検証結果より】 動的バランス訓練はリスクが高くなるため、平行棒内等で障害物歩行訓練(印の上を歩行)を行い、視覚の代償にてバランス能力の向上を図る。
Timed Up & Go ~検証結果~ 【測定結果】 【考察】 【検証結果より】 このテストでは、平均LV2であった。 レベル低下されている方が8名(24%)おられた。 当センターでは、これまで動的バランス向上における訓練メニューが少なかったため、平均LV2と低い水準結果が得られたと思われる。 1名(3%) 1名(3%) 3名(9%) 16名(47%) 13名(38%) 【考察】 通常5m歩行同様、歩行スピードが問題となり、平均LV1.9と低い水準であった。3m先のポールを回る際、バランス能力が発揮され、タイムロスなく回ってこないと歩行速度を減少させることになる。また、椅子から立ち上がってからスタートとなるため、立位動作能力も大きく影響することになる。 【検証結果より】 筋力・動的バランス・静的バランスの総合評価であり、評価者は他の評価と比較し、利用者の何が不足しているかアセスメントできる重要なテストである。
~検証結果まとめ~ 当センターの歩行レベル水準は極めて低い 歩行速度の早い方は、他のテストでも好成績であった 当センターの歩行レベル水準は極めて低い 要支援状態の方々でも極めて転倒のリスクが高い 歩行速度の早い方は、他のテストでも好成績であった 5m歩行以外のテスト項目も歩行能力に何かしらの因果関係がある 歩行器を押す推進力が歩幅を上昇させている 専門的知見により、適切な歩行手段(補助具や靴の使用)を提案する 歩行速度低下の原因(要因)をアセスメントする 利用者によって様々である原因(円背・疼痛・股関節拘縮・各筋肉の短縮・ バランス能力の低下等)をアセスメントする 正常に歩行できるライフスタイルを確立させる!!
研究発表の動画