水利用者の行動変容に関する 調査・研究 熊本大学 地域公共政策研究室

Slides:



Advertisements
Similar presentations
携帯電話・PHSのリサイクルに関する アンケート調査結果 添付資料1 電気通信事業者協会 情報通信ネットワーク産業協会 調査協力会社:株式会社マクロ ミル.
Advertisements

計量的手法入門 人材開発コース・ワークショップ (IV) 2000 年 6 月 29 日、 7 月 6 ・ 13 日 奥西 好夫
1 STAS-J 導入プロセスと 看護師への影響 宮城千秋(沖縄県立精和病院) 神里みどり(沖縄県立看護 大学)
地方自治体による 住民意識調査の回収率の動向 山田 茂 2009 年 5 月 9 日 経済統計学会 関東支部 1.
はじめに 近年、飲酒が関与する重大な交通事故が発生しており、未成 年の時からのアルコールについての正しい教育がより重要と なってきている。 タバコは学校において健康被害等の防煙教育が徹底されてき ているが、アルコールは喫煙と異なり健康を促す側面もあり全 否定できないため防酒教育導入の難しさがある。しかし、一方.
平成 15 年度エネルギー教育調査普及事業 研究活動報告 名古屋工業大学エネルギー教育研究会 高校生のエネルギー・環境についての 意識に関するアンケート調査 高校生のエネルギー・環境についての意識に関するアンケート調査.
地震対策普及への架け橋 早稲田大学 商学部井上ゼミ TEAM : YUKI 伊藤 健一郎 梅林 伸伍 鎌田 佳美 矢野 大輔.
土地利用マイクロシミュレーションのための 年代の違いを考慮した世帯別転居行動分析 関西大学大学院理工学研究科 社会資本計画研究室 金崎 智也.
設置者・管理者の責務② ~職員の育成指導等~ 平成 26 年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修 公益社団法人 日本社会福祉士会 平成 26 年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修から.
SPSS操作入門 よい卒業研究をめざして 橋本明浩.
インターネット利用と学生の学力  中島 一貴  三国 広希  類家 翼.
最近の家計収支関連統計調査 結果の精度について
都市マイクロシミュレーションに基づく 課題の抽出と政策立案
社会調査とは何か(3) 調査対象者の選定方法
■ 基本サービスについて TMS A 医療安全に関する意識調査 B 会員専用ホームページの閲覧 C ■ 基本サービスについて 職員500名までを対象に医療安全に関する意識調査を実施 A 医療安全に関する意識調査 職員の意識を継続的に把握することは、日頃の医療安全活動の進捗を把握するために大変有用です。
※ 同時期に「平成18年事業所・企業統計調査」(総務省)が実施されますので、お間違いのないようご注意ください。
心理的報酬と課題の難易度が 課題に対する評価に及ぼす影響 社会工学における戦略的思考 動機付け班 池田 遼太 岩渕 佑一朗 清宮 晨博
第1章 費用便益分析への入門 政策評価(06,09,29)三井.
子ども手当の是非 ~肯定派~ 上町悠哉 工藤祐之介 蔵内雄大 棚倉彩香.
エアゾール缶等の収集処理時の 事故発生状況と今後の課題
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
小林盾(シカゴ大学) 大浦宏邦(帝京大学) 谷口尚子(帝京大学,ミシガン大学) 2004年11月21日 日本社会学会 熊本大学
-レイプ支持態度と回答者の立場による検討-
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」 の説明
消費税増税後による 節約意識の変化 100円ショップは本当に安いのか❕❔ 名古屋学院大学 16E0126 古賀翔平         16E0702 川島涼.
東山動植物園における象舎の改装が利用者に与える影響
14度目の“11” ~つくば市を題材にした風化と防災~
平成25年度 小平市がん検診受診率向上事業.
マーケティング・リサーチ.
「調査1.0」から「調査2.0」へ SQS:Shared Questionnaire System2.0の開発
マイクロシミュレーションにおける 可変属性セル問題と解法
マーケティング戦略.
卒業研究 先輩の経験談に基づいた就職活動の目標管理方法
回帰分析/多変量分析 1月18日.
健やか親子21中間評価のための 母性健康管理指導事項連絡カード認識率調査 ~自由記載分析~
ガソリンの価格変動と モビリティマネジメント
女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造
介護予防サービス・支援計画表 記入のポイント.
浜中 新吾(山形大学) イスラーム地域研究 東京大学拠点グループ2 パレスチナ研究班 研究会
観戦客が売り子からビールを 購入し続けるのは、経験価値が 関わっているのかを証明する為の研究
(一社)大学女性協会新潟支部研究発表 新潟県内の中小企業における 労働環境調査 ~女性活躍の状況に関して~
平成28年度 港北区 区民意識調査 報告書 平成29年3月 港北区役所.
企業を調査客体とする統計調査の 回収率の最近の動向について 日本統計学会 (大阪大学) 国士舘大学 山田 茂
中山和弘(聖路加看護大学) 戸ヶ里泰典(東京大学大学院健康社会学)
愛媛大学C班 M2 前川朝尚 M1 谷本善行 B4 薬師神司
この10年にみる 年間賃金の動向と賃金評価 労働調査協議会.
地域・社会貢献をするために人として必要な資質
血液透析患者の足病変がQOLに与える影響の調査 ~SF-36v2を使用して~
疫学概論 交絡 Lesson 17. バイアスと交絡 §A. 交絡 S.Harano, MD,PhD,MPH.
市町村保健活動の業務チャート 分野:介護予防
この10年にみる 年間賃金の動向と賃金評価 労働調査協議会.
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
高齢慢性血液透析患者の 主観的幸福感について
Ⅱ.高齢者に係る地域アセスメントの    手法について
【研究題目】 視線不安からの脱却に 影響を与える要因について
地方公共団体オープンデータ推進ガイドラインの概要
ストリートダンスの上手さの 要因について ━アンケート調査に基づく考察━
岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 教育情報システム学講座 4年 ;継田 優子
~市民ニーズ・バス利用者の要望等の把握に向けて~
まちづくりと交通 (株)ライトレール 阿部 等
コンクリート構造物の維持管理活動インパクト 統一評価モデルの構築
生物多様性班 生物多様性班:研究報告 メンバー:小巻拓平、廣直樹、田中愛夏音、正城結衣 コンジョイント調査.
世帯の復旧資金の調達と 流動性制約 京都大学大学院 小林研究室.
平成31(2019)年度大阪府がん検診受診率向上事業(案)
大阪府健康づくり支援プラットフォーム整備等事業(概要) ~府全域版健康マイレージシステムの構築~
タウンモビリティを通じて.
消費者を対象とした各市町の区域、水産物、水産物等の消費等に関する調査業務 報告書
高校・大学生の健康的な食習慣づくり重点化事業 ~No vegetable, No Life 大学生編~
実都市を対象とした初期マイクロデータの 推定手法の適用と検証
平成29年 「中小企業者・小規模事業者の 人材確保と育成に関するアンケート」
Presentation transcript:

水利用者の行動変容に関する 調査・研究 熊本大学 地域公共政策研究室 Study of Attitude and Behavior Modification of Water Users       熊本大学 地域公共政策研究室

1.研究の背景と目的 水道利用者の行動変容を促すための マネジメント手法の開発と有用性の検討 熊本市の上水道整備の現況 貴重な都市資源! 水道水を良質な地下水100%で賄っている “おいしい水”全国3位に選出 (旧厚生省,おいしい水研究会) 問題点 資源の有効活用? 市民からの評価が低い 「おいしい」という評価はわずか4割にとどまる.(H.18 熊本市調査) 【仮説】 水道水に対する“不安感”が “まずい”という評価につながった? “不安感”の軽減→利用者が水道水を積極的に飲むことを促進 目的 水道利用者の行動変容を促すための マネジメント手法の開発と有用性の検討

2.マネジメント手法 モビリティ・マネジメントのフレームワークを援用 Mobility Management (=MM) 水道利用の現況把握過程 コミュニケーションによる 学習促進過程 学習による 意識変化,行動変容の検討過程 学習効果の継続度の検討過程

3.マネジメント手法(補足) モビリティ・マネジメントのフレームワークを援用 MM 社会的にも個人的にも 一人ひとりの 望ましい方向へ コミュニケーションを通じた 動機付け情報の付与 Mobility Management (=MM) 一人ひとりの 交通行動 社会的にも個人的にも 望ましい方向へ “自発的な変化” ex.) 自家用車から公共交通への転換 MM TFP (Travel Feedback Program) ワークショップ型 ・MMの中で最も基本的な手法 ・アンケートを調査ではなくコミュニケーション  の一部として捉える 個別的コミュニケーション TFP 簡易TFP 標準TFP ワンショット TFP

結果と考察

3. 水道利用の現況 事前アンケートの概要 調査項目 水道水の飲用形態や味の評価に影響を及ぼす因子 (1)住居形態 (2)年齢 実施期間 2007年9月28日~10月9日 対象世帯 熊本市内に居住する4,000世帯 サンプルの抽出 住民基本台帳から無作為抽出 調査方法 郵送配布・郵送回収 回収数,回収率 1,395世帯,34.9% 世帯票 ・家族構成 ・属性(性別,年齢,職業,県外居住経験など) 調査票 ・水道利用状況 ・水道への金銭的負担 ・水道事業に関する意識・関心 (調査項目は全12項目) 水道水の飲用形態や味の評価に影響を及ぼす因子 (1)住居形態 (2)年齢 (3)水道水に関する知識の有無

3. 水道利用の現況 集合住宅 (1)住居形態 (2)年齢 (3)水道水に関する知識の有無 直接飲用率が低く味の評価も低い 【要因】 貯水槽や水道管の汚れなど,給水設備に対する不安

3. 水道利用の現況 (1)住居形態 (2)年齢 (3)水道水に関する知識の有無 年代が下がるほど 水道利用・・・消極的 味の評価・・・否定的 【要因】 ①市販のボトルウォーターの普及 ②水道水に関する知識の不足

3. 水道利用の現況 (1)住居形態 (2)年齢 (3)水道水に関する知識の有無 知識多い 知識少ない 知識が多いほど 味の評価・・・高い 学習による意識変化が 期待できる可能性

4.ダイアリー調査 ダイアリー調査の概要 学習ツール 1.ミニ情報紙「くまもとの水道水」 2.熊本市の水道水に関するクイズ 実施期間 2007年12月8日~16日 対象世帯 熊本市内に居住する1,000世帯 サンプルの抽出 事前アンケートの回答者から無作為抽出 調査方法 郵送配布・郵送回収 回収数,回収率 362世帯,36.2% 学習ツール 1.ミニ情報紙「くまもとの水道水」 2.熊本市の水道水に関するクイズ (↑正解者の中から事後報酬を提供することを告知.任意での返送を要請) 3.くまもとウォーターライフダイアリー (↑ダイアリー調査として兼用.任意での返信を要請)

熊本市の水道水に関するミニ情報紙(表)

熊本市の水道水に関するミニ情報紙(裏)

ダイアリー調査票 熊本市の水道水に関するクイズ

5.学習による意識変化・行動変容 事後アンケート調査の概要 実施期間 2007年1月21日~2月4日 対象世帯 事前アンケート回答者 調査方法 郵送配布・郵送回収 回収数,回収率 831世帯,60.0% 対象者の分類 事前アンケート回答者(1,385) マネジメント施策群 水道水に関する情報を 与えたグループ (1,000) マネジメント対照群 与えていないグループ (385) ダイアリー調査 返送あり (333) 返送なし (667) 1群 2群 3群 学習度:高 学習度:? 学習度:低

5.学習による意識変化 学習しているグループ(1群,2群) 意識構造の変化が見られた ↓ プラス評価「おいしいと思う」が増加 ※図中の記号 [前]・・・事前アンケート [後]・・・事後アンケート 変化あり 変化あり 変化なし 学習しているグループ(1群,2群) ↓ プラス評価「おいしいと思う」が増加 意識構造の変化が見られた

5.学習による意識変化(回答の推移) 回答の推移を個別に検討 していくことによって, 学習による行動変容を 証明できる可能性がある 1群 2群 3群 回答の推移を個別に検討 していくことによって, 学習による行動変容を 証明できる可能性がある

5.学習による行動変容 すべてのグループにおいて 行動変容が認められなかった ↓ 分析手法を変えることで 統計的な行動変容が認められる ※図中の記号 [前]・・・事前アンケート [後]・・・事後アンケート 変化なし 変化なし 変化なし すべてのグループにおいて 行動変容が認められなかった ↓ 分析手法を変えることで 統計的な行動変容が認められる 可能性あり

5.学習による行動変容(回答の推移) 1群 2群 3群 個別の回答の推移を追っても, 意識変化があることが分かる。

5.学習による意識変化・行動変容 学習しているグループ(1群) 水道水に対する 不安が軽減する傾向にある。 ↓ ●水道水に対して不安に思う項目(複数選択) ●水道水に対して「不安はない」と答えた回答者数 学習しているグループ(1群) ↓ 水道水に対する 不安が軽減する傾向にある。

6.まとめ 本研究で使用したマネジメント手法の 有用性を支持するデータが得られた. 本研究では,水道利用者に対して行動変容を促すためのマネジメント手法を適用し,学習による水道利用者の行動変容・意識変化の有無を検討した. 1.水道水の味の評価や飲用形態に影響を及ぼす因子として,住居形態,年齢,水道水に関する知識の有無が確認された. 2. コミュニケーションを通じて学習したグループには,水道水に対する意識変化が見られた. 3. 学習による行動変容は分析手法の見直しを行うことで,行動変容が.認められる可能性が示唆された. 本研究で使用したマネジメント手法の 有用性を支持するデータが得られた.