1日目 16:20~17:50〔90分〕 【講義】強度行動障害とは 国立のぞみの園 信原和典

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1日目 10:25 テキストp.◯ 【演習】 情報の収集とチームプレイの基本 -オリエンテーション- 松本 亜希子 障害者支援施設 虹の家.
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基礎・講義2・映像2 10:45~11:45(60) 強度行動障害の理解④ 障害特性の理解.
基礎・講義2・映像2 10:45~11:45(60) 強度行動障害の理解④ 障害特性の理解.
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1日目 16:20~17:50〔90分〕 【講義】強度行動障害とは 国立のぞみの園 信原和典 1日目 16:20~17:50〔90分〕                                【講義】強度行動障害とは                                                                               国立のぞみの園 信原和典 この時間は、障害特性や支援の概要を知ります。この講義は知識を身につけてるものではありません。 この講義を通じて、受講者のみなさまに知ってもらいたいことは、以下の5点です。 「強度行動障害」と言われる人がいること どのような人たちなのか 支援によって(ある程度は)改善すること 指示どおり一貫した支援をする必要があること 勉強しようと思ったときのキーワード 

この講義の内容 強度行動障害とは 支援上の留意点 事例映像 (強度行動障害支援者養成研修用資料) どのような人が強度行動障害なのか 事例映像 (強度行動障害支援者養成研修用資料) どのような人が強度行動障害なのか なぜ強度行動障害になるのか 支援はどのように考えて行ったら良いのか 支援上の留意点 福祉と医療の連携 緊急時の対応 さまざまな評価の方法 情報の収集

強度行動障害とは|事例より 事例1 14歳になるAさんは重度の知的障害を伴う自閉症の診断を受けています。中学部から特別支援学校に入学し、すぐに不登校になりました。家では顔が変形するほどの自傷があり、左目はほとんど見えなくなってしまいました。最近は食事や水分摂取を拒否するようになり、夜間も興奮状態が続いて朝方まで寝ることはありません。 ご両親は自傷を防ぐために、交代で一晩中本人を抱きかかえながら過ごしています。止めようとすると噛み付かれたり強くつねられたりするため、ご両親とも体中傷だらけです。睡眠もまともに取れない日々が続き、家庭生活は破綻寸前の状態です。

強度行動障害とは|定義 精神科的な診断として定義される群とは異なり、直接的 他害(噛み付き、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱 れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない 頻度と形式で出現し、その養育環境では著しい処遇の困 難な者であり、行動的に定義される群 家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力が あっても著しい処遇困難が持続している状態 (行動障害児者研究会、1989年)

強度行動障害になりやすいのは 急性期の 反社会的行動 精神科症状 非行・虞犯 興奮・混乱 触法行為等 混迷・拒絶等 強度行動障害 最重度 重 度 中 度 軽 度 境界域 標 準 知的障害の程度 急性期の 精神科症状 興奮・混乱 混迷・拒絶等 反社会的行動 非行・虞犯 触法行為等 強度行動障害 自傷・他傷・破壊 非衛生的・異食 極端な固執行動等 強い 自閉症の特徴 弱い

知的障害とは|IQの目安 知的障害の定義 発達期(おおむね18歳未満)に遅れが生じること 遅れが明らか(IQ70以下)であること 遅れにより日常生活への適応に困難があること 最重度 重度 中度 軽度 標準 境界域 20 35 50 70 85

知的障害とは|ICD-10の分類 軽度(Mild mental retardation : IQ 50-69) …B2/Ⅳ 成人期においてその精神年齢は概ね9歳から12歳相当。学齢時に学業不振が表面化する場合が多い。社会的な興味は年齢相応である。成人になってから、仕事に就き、良好な人間関係を保ち、結果的に地域社会の一員として周囲から評価されている事例が多く、そのような能力をもっている。 中度(Moderate mental retardation : IQ35-49)  …B1/Ⅲ 成人期においてその精神年齢は概ね6歳から9歳相当。幼児期から発達の遅れが顕著であるが、基本的な身辺自立やコミュニケーション能力、そして読み書きについては一定レベルの学習は可能である。社会生活や就業生活に必要な支援の程度には個人差がある。 重度(Severe mental retardation : IQ20-34)   …A2/Ⅱ 成人期においてその精神年齢は概ね3歳から6歳相当。12歳頃までに2語文程度を用いる。人生のどの時期においても、生活のさまざまな場面で他者からの継続的な支援が必要である。 最重度(Profound mental retardation : IQ 20以下) …A1/Ⅰ 成人期においてその精神年齢は概ね3歳未満。身辺自立や節制(がまん)、コミュニケーション能力、さらには外出・移動において相当の制限がある。

知的障害とは|社会生活能力の目安 軽度(Mild mental retardation : IQ 50-69) …B2/Ⅳ 【時間管理】~分後に待ち合わせはOK、通勤時間の質問に多くは回答できる 【金銭計算】日常の買い物や銀行振込、通帳記帳等はOK、ただし金銭管理は支援必要 【ストーリー理解】コミックや簡単な小説から、筋書きや人間関係の理解がある程度可能 【コミュニケーション】少人数のグループで適切な会話が可能 中度(Moderate mental retardation : IQ35-49)  …B1/Ⅲ 【時間管理】~時~分に待ち合わせはOK、~分後に○○の理解は難しい 【金銭計算】日常の買い物は可能。振込や引き落としなどには支援必要 【ストーリー理解】文章の読みは可能だが、理解や記憶は部分的 【コミュニケーション】1対1で個別で確認しながらの話し合いが必要 重度(Severe mental retardation : IQ20-34)   …A2/Ⅱ 【時間管理】時計(デジタル)の読みは可能であっても、日常生活に応用できる時間管理は難しい 【金銭計算】買い物場所(コンビニ等)や品物、金額などは限定されるが買い物は可能 【ストーリー理解】文章の読みと理解は結び付きにくい。単語で表現できる指示が必要 【コミュニケーション】2~4語程度の指示理解は可能。言語のやり取りは1~2往復程度。 最重度(Profound mental retardation : IQ 20以下) …A1/Ⅰ 【時間管理】時計による行動コントロールは困難。タイマー等の利用が可能の場合も 【金銭計算】自動販売機や特定の商品のみの金銭利用が可能な場合も、多くは他者に依存 【ストーリー理解】比較的限定された単語の理解が可能な場合も、発語と意味とは無関係な場合もある 【コミュニケーション】意思の疎通には、本人の生活パターンの理解が必要になる

自閉症とは|三つ組の障害 【三つ組】 【その他】 感覚過敏・鈍麻 多動 睡眠の問題 社会的相互作用の 質的な障害 人に対する独特な 関わり方 想像力の障害 コミュニケーションの 質的な障害 見通しが持ちにくく 急な変更が苦手 言葉や表情等の使い方 や理解の仕方が独特

自閉症とは|社会的相互作用 社会的相互作用の4つのタイプ 独特の関わり方 「孤立群」「受容群」「積極・奇異群」 「形式ばった大仰な群」 人への無関心 名前を呼ばれても反応せずに自分の活動に没頭 道具のように人と接する(例:クレーン) 一方的な関わり 相手の反応を気にせずに一方的に話しかける 相手の話には興味を示さない ルールへのこだわり・過度に堅苦しい態度

自閉症とは|コミュニケーション 独特の理解の仕方 独特の伝達の仕方 知っている言葉を会話でうまく使えない 言葉以外の手段をうまく使えない 伝える意図のない独語 意味を伴わないフレーズの繰り返し(エコラリア) 言葉以外の手段をうまく使えない 視線が合わない、過剰に目が合う 抑揚のない話し方 独特の理解の仕方 言葉自体の理解ではなくパターンによる理解 字句どおりの解釈 冗談や皮肉の理解が難しい

自閉症とは|想像力・反復的な行動 目の前にないことの理解が困難 物事の先の展開(これからどうなるのか) その展開に至った背景(どうしてそうなったのか) 急な予定の変更を苦手とする 過去の経験や知識を生かすことを苦手とする 興味や関心の偏り・反復的な行動 ごっこ遊びよりも感覚遊び(幼児期) パターン化したこと以外の見通しを持ちにくい 特定の物やパターンへの執着 いつも同じ状態であることへの強いこだわり

知的障害と自閉症 まとめ 知的障害と自閉症の併存 情報を受け取ること・表現することが難しい 感じ方や考え方が独特で共有しにくい ⇒「わかろうとする努力」と「伝える工夫」が必要 知的障害と自閉症の併存 知的障害が重度であればあるほど、自閉症の併存率は高くなる IQ30以下では併存率は7割以上(杉山, 2008) ⇒診断がついていなくても自閉症の人はいる

(物理的な環境、支援者、その他の人、状況等) なぜ強度行動障害になるのか? 環境 (物理的な環境、支援者、その他の人、状況等) 情報・刺激が ■偏ったり ■分かりにくい ■独特な形で 入ってくる 伝えたいことを ■言葉ではない ■独特の表現や行動を通して 伝えようとする 人や場に対する 嫌悪感・不信感 「分からない」 の積み重ね 「伝わらない」 の積み重ね 障害特性 × 環境要因 ⇒ 強度行動障害

強度行動障害の推移 最初から強度行動障害というわけではない 中学校、高校、高校卒業直後に問題が大きくなるケースが多い (人) Fig. 行動障害が最も大変だったと思う時期 強度行動障害判定基準の全体得点平均 就学前 小 中 高 卒業後 Fig. 強度行動障害得点の時期別の平均 最初から強度行動障害というわけではない 中学校、高校、高校卒業直後に問題が大きくなるケースが多い 学校卒業後に比較的落ち着くケースもある 社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会(2012)「強度行動障害の評価基準等に関する調査について報告書」より引用

強度行動障害対策の歴史的経緯 医療機関を中心とした 「重度」の障害児への対応 入所施設を中心に本格的な 対策が取られる時代に 1953年 1958年~ 1961年~ 自閉症 (初めての症例報告) 重度知的障害児施設 (国立秩父学園) 重症心身障害児対策 (島田療育園) 行動援護事業の開始 2005年~ 強度行動障害対策 1988年~ 動く重症児対策 1970年代 医療機関を中心とした 「重度」の障害児への対応 入所施設を中心に本格的な 対策が取られる時代に 強度行動障害 研究事業 入所施設で支える仕組みから 地域生活を支える仕組みへ

強度行動障害に有効だった支援 (n=32) (飯田, 2004)

共通する支援の枠組み 構造化された環境の中で 医療と連携しながら リラックスできる強い刺激を避けた環境で 一貫した対応をできるチームを作り 自尊心を持ちひとりでできる活動を増やし 地域で継続的に生活できる体制づくりを進める

福祉と医療の連携|事例より 事例2 Bさんは中度の知的障害と自閉症のある18歳の男性です。特別支援学校高等部卒業後に利用し始めた通所先が合わず、1ヶ月程度で通うのをやめてしまいました。やがて家ではお母さんに対して殴る・物を投げる等の暴力が目立つようになり、とうとうお母さんの骨折を機に精神科病院に緊急入院することになりました。 病院にて急性期の症状への治療を進める一方、相談支援事業所が中心となり、行動援護や短期入所等の家族のレスパイトを継続的に利用できるように調整を進めています。また、通所先の確保や家庭での対応についても話し合いを進めているところです。

福祉と医療の連携|それぞれの役割 強度行動障害の人にとって薬物療法は必須 福祉+医療を機能させるために情報交換を 生活全般の組み立て 環境の整備 居住の場の提供 移動の支援 日中活動の提供 家族のレスパイト 家族や関係機関との 連携 福祉ができること 通院による薬物療法 精神科薬 睡眠、てんかん等 入院治療 急性期症状の治療 家族や本人の保護 破綻した生活のリセット 医療ができること

緊急時の対応|基本的な指針 大きな問題が目の前で起きたら 家庭からヘルプが来たら 「何とかしなくては!」という焦りが危険 周囲あるいは本人の「安全確保」に頭を切り替える 防災訓練と同じく単純な手順をマニュアル化しておく 家庭からヘルプが来たら 日頃から家族と緊急時の対応について取り決めをしておく 警察や精神科救急とも連携をして駆けつけてもらえる体制を

緊急時の対応|一般的な手順 もし可能ならば、その行動に必要以上に注目をしない ようにする。 ※本人または周囲に危険がなく、注目することで悪化する場合 危険にさらされている人をその場から遠ざけて安 全を確保する。 本人や周囲の人の身体に危険が及ばないように防 御する。 別の行動をとるように指示(手がかり)を出す。 その行動が収まるまで見守る。

評価の方法|強度行動障害の判定 強度行動障害判定基準〔1993~2004〕 行動援護の支給決定基準〔2014~〕 強度行動障害児(者)研究会(1988-89)作成 「ひどい自傷」や「ひどい他傷」等の11項目 10点以上が強度行動障害、20点以上が強度行動障害特別処遇事業となった 行動援護の支給決定基準〔2014~〕 障害支援区分の行動関連項目より 11項目+てんかんに関する1項目 10点以上が対象となる要件のひとつ

評価の方法|その他のアセスメント 広汎性発達障害日本自閉症 協会評定尺度(PARS-TR) 自閉症スペクトラム障害 ウェクスラー式成人 知能検査(WAIS-Ⅲ) ウェクスラー式児童用 知能検査(WISC-Ⅳ) 田中ビネー知能検査Ⅴ 自閉症・発達障害児 教育診断検査(PEP-3) 知的な能力/発達の状況 異常行動チェックリスト 日本語版(ABC-J) 日本版Vineland 適応行動尺度Ⅱ 適応行動/不適応行動 機能的アセスメント/ ABC分析/機能分析(FBA) 行動の原因 ※他にもさまざまな評価方法があります ※これらは「フォーマル」な評価と呼ばれます ※日常の行動観察や背景情報などをもとにした 「インフォーマル」な評価も非常に重要です

情報の収集|組織として取組む支援 相手を理解するために必要な場合もある情報 情報の入手手続き【厳守】 医療情報(既往歴や、これまでの経過、等) 家族の情報(家族の状況・構成、生育歴、住居の構造、等) 支援や教育の情報(これまでの取組みや結果、等) 情報の入手手続き【厳守】 サービス管理(提供)責任者に聞く サービス管理(提供)責任者が情報を収集する 支援者・ヘルパー個人の独断で情報を収集するのではなく、組織として情報を得る 普段からの意見交換が大切

まとめ|強度行動障害とは 重度・最重度の知的障害を伴う自閉症児者が中心 強度行動障害は環境との相互作用で引き起こされる 反社会的な行動のある人、精神科的な症状が顕著な人は   別の枠組みで考える 強度行動障害は環境との相互作用で引き起こされる 行動障害になるにはそれなりの理由がある 強度行動障害への支援にはスタンダードがある 構造化された環境の中で 医療と連携しながら リラックスできる強い刺激を避けた環境で 一貫した対応をできるチームを作り 自尊心を持ちひとりでできる活動を増やし 地域で継続的に生活できる体制づくりを進める