無脾症候群 無脾症候群は、内臓の左右分化障害を基本とする病気です。 その中で、左右とも右側形態をとるものを無脾症候群と呼んでい ます。脾臓が無いか非常に小さな場合が多く感染症に耐性がありません。 多種多様な心奇形を呈しますが、単心室、肺動脈閉鎖・狭窄、総肺静脈還流異常(しばしば肺静脈狭窄を呈します)、共通房室弁口遺残(心房─心室間の弁がきちんと左右2つに分化しておらず、しばしば弁逆流を合併します)を高頻度に合併しています。全国的に、現在でも先天性の心疾患の中で最も治療が難しい疾患の1つです。 程度の差はあれ、新生児1万人に1人の割合で発生すると言われています。
無脾症 脾臓の場所は左上腹部で肝臓の反対側です。大きさは軽く握ったこぶし大で、大人で120g程度です。 脾臓があまり知られていないのは、ヒトが幼い時に主に活動するからで、胎児期、脾臓は骨髄で造血がはじまるまで、血球を作る造血組織としてとても活発に働いている。小児期においては、子供達の細菌感染を防ぐため、重要な役割を担っています。 4,5歳以下で脾臓を摘出すると感染症が重症化しやすいが成長するにしだがって、それまで脾臓が行っていた仕事は、リンパ節・肝臓・骨髄などに取って代わられるといわれています。 無脾症は脾臓が先天的にないため感染症に非常に弱い。
正常な心臓 心臓はいわゆるポンプの役割をはたしています。 全身に酸素を供給し終えた静脈血は上大静脈と下大静脈を通って右房に還流してきます。 この血液は三尖弁を経て右室に入り肺動脈に駆出され、肺で酸素化された後に左房に還流します。
心室中隔欠損症 先天性心疾患の中でも最も頻度の高いものの1つです。 左室と右室を間にある心室中隔が一部欠損し、左室の血液が右室と肺動脈に短絡するために、呼吸不全や心不全をきたす疾患です。 隔壁欠損
単心室症 左室、右室どちらかの心室が低形成で、体循環と肺循環を2つの心室が分担するように修復する根治手術ができない疾患です。 無脾症候群や多脾症候群の多くが単心室の形態をとります。 チアノーゼを起こす肺動脈狭窄を合併することが多く、方舟君の心臓も単心室に近い状況です。
次回予定のフォンタン手術(最終手術) フォンタン手術は上大静脈を切断して右肺動脈に吻合し、下大静脈の血液を心房の中のトンネルを通して肺動脈に導く術式です。最近では心房内トンネル法にかわり、心臓の外に置いた人工血管術式(心外導管法)が多くなっています。 人工血管の材質としてはPTFE(ゴアテックス)が用いられます。利点としては①手術が短時間に終わること、②術後心機能が良いこと、③不整脈の発生が少ないことなどがあげられます。