確率・統計Ⅰ 第11回 i.i.d.の和と大数の法則 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均

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確率・統計Ⅰ 第11回 i.i.d.の和と大数の法則 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均 確率変数の平均(続き)、確率変数の分散 確率変数の共分散、チェビシェフの不等式 ベルヌイ試行と二項分布 二項分布(続き)、幾何分布など 二項分布の近似、ポアソン分布、正規分布 正規分布とその性質 i.i.d.の和と大数の法則 中心極限定理 統計学の基礎1(母集団と標本、確率論との関係) 統計学の基礎2(正規分布を用いた推定・検定) ここです!

中心極限定理とは 大数の法則 中心極限定理 X1, …, Xn を i.i.d. とし、 X = X1 + … + Xn とおく。 簡単のため、平均 E(Xi)=0, 分散 V(Xi)=1 としよう。 n→∞のとき 大数の法則 「中心極限定理」という名前の理由は知らないが、「確率・統計の“中心”になる定理だから」という説が有力。 中心極限定理

中心極限定理とは i.i.d.の和 X の標準化 X* は、 標準正規分布 N(0,1) に“近づく” この主張を理解するためには、 「中心極限定理」という名前の理由は知らないが、「確率・統計の“中心”になる定理だから」という説が有力。 この主張を理解するためには、 「標準化」と「正規分布」 について知っておく必要がある。

正規分布と中心極限定理 (復習)確率変数の標準化 (復習)正規分布 中心極限定理

確率変数の標準化 (Xの標準化) 確率変数 X の平均 E(X)=μ, 分散 V(X)=σ2 とするとき、

確率変数の標準化 補足 (aX+b)* = X* X の標準化 X* と、Y=aX+b の標準化 Y* は、同一の確率変数となる: (例) 確率変数の標準化 補足 X の標準化 X* と、Y=aX+b の標準化 Y* は、同一の確率変数となる: (aX+b)* = X* (例) X = X1+…+Xn の標準化 X* X= X / n = (X1+… +Xn) / n の標準化 X *  は、同一 : X* = X * なぜかこのことは教科書類では明確には述べられていない。 しかし、後述の中心極限定理を、Snの標準化に対する定理として述べている場合(確率論の本に多い)と、X~ = X / n の標準化に対する定理として述べている場合(統計学の本に多い)があるのに、それらが同じだということが認識しにくい記述が多い。

正規分布と中心極限定理 (復習)確率変数の標準化 (復習)正規分布 中心極限定理

正規分布 確率密度関数 が次の式で与えられる確率分布を、平均μ, 分散σ2の正規分布 N(μ,σ2) という: (問) これが確かに確率分布であることを確かめよ。

正規分布の平均・分散・標準化 E(Z) =μ V(Z) =σ2 Z の標準化 Z* は N(0,1) に従う 標準正規分布と呼ぶ (問) これらを確かめよ。

正規分布と中心極限定理 (復習)確率変数の標準化 (復習)正規分布 中心極限定理

中心極限定理 X = X1 + X2 + … + Xn とおく。 X1, X2, …, Xn を i.i.d. とし、 ただし、 E(Xi) =μ, V(Xi) =σ2 とする。

(復習)i.i.d.の和の平均と分散 Sn = X1 +…+ Xn E(Sn) = nμ V(Sn) = nσ2 E(Xi) =μ, V(Xi) =σ2 E(Sn) = nμ V(Sn) = nσ2 特に 二項分布 E(Sn)=np, V(Sn)=npq E(Xi) = p, V(Xi) = pq 1 p q Sn = X1 +…+ Xn

中心極限定理 X の標準化 X* は、 標準正規分布 N(0,1) に“近づく” n→∞のとき 正確には: (「中心極限定理」) さらに実は、X1, X2, …, Xn が同一の分布でなくても、一定の条件があれば中心極限定理が成り立つ。 [参考]中心極限定理の証明は、特性関数(フーリエ変換)を用いて、間接的に行われる。すなわち、(1) 左辺をフーリエ変換したものが、右辺をフーリエ変換したものに収束すること, (2) フーリエ変換が収束すれば、もとの分布の収束もいえること, を用いる。(1)はテーラー展開などを用いた解析的な計算(やや高度だが)に帰着する。 (2)の厳密な証明はたいへん高度である。

中心極限定理 補足① だから、 中心極限定理は「大数の法則」の精密化である。 中心極限定理 補足①       だから、 中心極限定理は「大数の法則」の精密化である。 X / 1 は発散し、X / n は平均に集中(大数の法則)した。 その中間のオーダーで割った X /√n を考えている。

中心極限定理 補足② だから、中心極限定理は の極限と考えてもよい。 (実際、 X* の分子と分母を n で割った式になっている。) 中心極限定理 補足② だから、中心極限定理は の極限と考えてもよい。 統計学では中心極限定理をこちらの形で利用する。  前のページで、中心極限定理は大数の法則の精密化であることを注意したが、同じことを Xでなく X~ = X / n を使って述べれば次のようになる: “ 大数の法則は、「X - μ が(ある意味で)0 に近づく」という定理だったが、その極限のスピードは1/√n が 0 に近づくスピードと同じレベルであり、したがってその √n 倍は(∞と0が同じオーダーでちょうど釣り合って) 0でも∞でもないある分布(正規分布)に収束する。これが中心極限定理である。 ” (実際、 X* の分子と分母を n で割った式になっている。)

(問)この場合の中心極限定理を述べてみよ 中心極限定理 補足③ ド・モアブル-ラプラスの定理は、 中心極限定理の特別な場合。 X が二項分布 B(n, p) に従うとき、 X はi.i.d.の和とみなせる。 E(X)=np, V(X)=npq (問)この場合の中心極限定理を述べてみよ

二項分布の正規近似(再) (ド・モアブル-ラプラスの定理) N(np, npq) X を 二項分布 B(n, p) に従う確率変数とする。 複雑に見えた右辺は、平均np, 分散npq(すなわち左辺の二項分布と同じ平均・分散)の正規分布 N(np, npq) であった。

二項分布の正規近似´ (再) (ド・モアブル-ラプラスの定理;別の形) N(0, 1) X を 二項分布 B(n, p) に従う確率変数とする。 (ド・モアブル-ラプラスの定理;別の形) N(0, 1) n→∞のとき、 この形での右辺は、標準正規分布 N(0,1) であった。

[1] X1, X2, …, Xn を i.i.d. , X1*, X2*, …, Xn* をそれぞれの標準化とする。 [演習] 確率変数の標準化 [1] X1, X2, …, Xn を i.i.d. , X1*, X2*, …, Xn* をそれぞれの標準化とする。 Sn = X1 + X2 + … + Xn の標準化 Sn* に対して、次式が成り立つことを示せ。 ヒント: E( Xi )=μ, V( Xi )=σ^2 とおくと、Xi * = ( Xi -μ) /σ, Sn * = ( Sn - nμ) / (σ√n)

[2] 確率変数 Z が正規分布 N(5,16) に従うとする。 次の確率を、標準正規分布に従う確率変数 Z* に関する確率で表せ。 [再演習] 正規分布 [2] 確率変数 Z が正規分布 N(5,16) に従うとする。 次の確率を、標準正規分布に従う確率変数 Z* に関する確率で表せ。 P( 4< Z ≦8 ) P( Z > 0 ) 確率が P( -2< Z* <2 ) と等しくなるような、 Z の範囲を求めよ。 ヒント: Ⅰ. Z* = ( Z - 5 ) / 4 Ⅱ. P( μ-2σ< Z < μ+2σ)

[再演習] 正規分布 P( 4< Z ≦8 ) P( Z > 0 ) [再演習] 正規分布 [3] 確率変数 Z が正規分布 N(5,16) に従うとき、次の確率を関数 を用いて表せ。  さらに、負の数を使わずに表す工夫を考えよ。 P( 4< Z ≦8 ) P( Z > 0 ) ヒント:演習 [2]の結果と、P( a < Z* < b ) = F(b) - F(a) であることを用いる。 ([注] このF(x) は、標準正規分布の「(累積)分布関数」と呼ばれるものである。) 負の数を使わないためには、グラフの対称性を利用する。たとえば、F(-a) = F(0) - { F(a) - F(0) } = 1 - F(a) など。

P( 45< X ≦60 ) P( X > 0 ) [演習] 二項分布の正規近似 [演習] 二項分布の正規近似 [4] 確率変数 X が二項分布 N(100, 0.5) に従うとき、次の確率を標準正規分布 Z* についての確率で近似せよ。 P( 45< X ≦60 ) P( X > 0 )

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