経済原論IA 第8回 西村「ミクロ経済学入門」 第7章 企業行動と費用曲線 京都大学経済学部 依田高典
費用概念 経済上の費用 ≠ 会計上の費用 機会費用:最大の逸失収入 例:市街区農地の機会費用とは? 経済上の利潤 ≠ 会計上の利潤 利潤ー経済上の費用 しかし会計学は重要!勉強するように
2. 総費用・固定費用・可変費用 可変的生産要素の価格と投入量:w1, x1 固定的生産要素の価格と投入量:w2, x2 C= w1x1+w2x2- 短期総費用=可変費用+固定費用: STC=SVC+FC 可変費用:生産量に応じて発生 固定費用:生産量ゼロでも発生 短期費用関数:c=c(y)
短期総費用 短期可変費用 固定費用 O STC y SVC MC FC AC
3. 限界費用と平均費用 限界費用MC:STCの接戦の傾きΔc/Δy 平均費用AC:原点を通る直線の傾きc/y 平均可変費用AVC:VC/y 平均固定費用AFC:FC/y AC= AVC+ AFC 平均費用の最小点で、限界費用と一致する 平均概念と限界概念の深奥
O MC, AC, AVC y MC AC AVC
4. 費用と生産量の双対性 Δc=w1Δx1を用いて MC=Δc/Δy=w1 (Δx1/Δy) =w1/(Δy/Δx1) = w1/MP1 AVC= w1 (x1/y) = w1 /(y / x1) = w1/AP1
5. 長期費用曲線 y → (x1, x2) → c= w1x1+w2x2 長期費用曲線: 総費用=可変費用 (∵固定費用ゼロ) 短期費用曲線は長期費用曲線の上方に位置し、1点で接する 無数の短期費用曲線の最小費用(包絡線)
y*において短期・長期の限界費用も平均費用も一致 O c y LTC STC y*
6. 長期費用と短期費用 長期費用曲線は短期費用曲線の包絡線 生産の最適規模において、長期平均費用LACの最低点と短期平均費用SACの最低点は一致する(しかも接している) さらに生産の最適規模においては、長期限界費用曲線LMCと短期限界費用曲線SMCも一致する(ただし接するわけではない)
生産の最適規模 LAC=SAC=LMC=SMC O c y LAC SAC LMC SMC
O x2 x1 等量曲線・等費用曲線から見た短期費用と長期費用 x2** x2* x1* x1** x1’
7. 短期利潤極大化 利潤=総収入ー短期総費用: 総収入:TR=py 短期総費用:c(y) 短期利潤極大化条件:限界収入=限界費用 限界収入MR=p 限界費用MC=Δc/Δy p=MC
O STC y TR 短期利潤極大条件 p=MC STC P MC y*
8. 損益分岐点、操業停止点 損益分岐点:利潤ゼロとなる価格 p=SAC=SMC 操業停止点:利潤負ながら、固定費用を回収可能な価格 p=SAVC=SMC
O MC, AC, AVC y MC AC 利潤極大価格 損益分岐価格 AVC 操業停止価格
9. 生産者余剰 生産者余剰=粗利潤=利潤+固定費用 操業停止価格:生産者余剰ゼロ
10. 短期市場供給曲線 個々の企業の短期供給曲線:操業停止価格以上の限界費用曲線 市場の短期供給曲線:個々の企業の短期供給曲線の水平和(社会的な限界費用曲線と解釈可能) 個々の企業の生産者余剰の和は、市場の短期供給曲線から得られる生産者余剰と等しい
O p y p