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インフルエンザ対策 インフルエンザ対策について 役に立つ薬の情報~専門薬学
ライノウイルス アデノウイルス コロナウイルス など かぜとインフルエンザの違い かぜ(普通感冒) インフルエンザ 主な症状 鼻水、せき、くしゃみ 頭痛、筋肉痛、関節痛 熱 微熱 38~40 ℃ 悪寒 軽い 強い 進行 ゆるやか 急激 合併症 少ない 気管支炎、肺炎など 発生状況 散発性 流行性(12 月~3 月下旬) 病原菌 ライノウイルス アデノウイルス コロナウイルス など インフルエンザウイルス インフルエンザの説明に入る前に、かぜとインフルエンザの違いについて確認していこうと思います。 主な症状としては、かぜが鼻水、せき、くしゃみなのに対し、インフルエンザでは頭痛、筋肉痛、関節痛となります。熱や悪寒、進行、合併症に関して、かぜの多くは軽症ですが、インフルエンザではより重い症状となります。 発生状況はかぜの場合、散発的で年中発症します。インフルエンザは流行性であり、主に12~3 月に発生します。 かぜの病原菌はライノウイルスやアデノウイルス、コロナウイルスなど数百種類にも及びます。それに対し、インフルエンザはインフルエンザウイルスでのみ起こります。 役に立つ薬の情報~専門薬学
感染経路 感染経路の種類 飛沫感染 空気感染 接触感染 感染疾患: ノロウイルス、 O-157 など インフルエンザ など 次にインフルエンザを発症する感染経路について見ていこうと思います。感染症が起こる感染経路としては「飛沫感染、空気感染、接触感染」があります。 飛沫感染は、くしゃみなどをした時に出る細かい水滴、しぶきによって起こる感染です。インフルエンザはこの飛沫感染によって感染します。 次に空気感染です。空気感染は空気中を漂っている病原菌によって起こります。結核、はしかなどがこれに当たります。 三番目に接触感染です。接触感染は「病原菌が付着したタオル・容器」や「皮膚同士の接触」によって感染します。ノロウイルスやO-157 などが接触感染によって感染を引き起こします。 このように、感染経路には主に三つがありますが、インフルエンザには特に飛沫感染に関する対策が重要となります。 感染疾患: ノロウイルス、 O-157 など インフルエンザ など 結核、麻しん など 役に立つ薬の情報~専門薬学
飛沫感染と空気感染(飛沫核感染) 飛沫 飛沫核 水分の蒸発 飛沫とは 飛沫核とは ・ 直径5 mmより大きい 微粒子 微粒子 飛沫とは 飛沫核とは ・ 直径5 mmより大きい ・ すぐに床面に落下(約1 m) 飛沫感染と空気感染の違いについて説明します。 飛沫はくしゃみなどにより、病原菌の周りに水分がくっついている状態を指します。飛沫は直径5 マイクロメートルより大きい粒であり、すぐに床へ落下します。この飛沫による感染が飛沫感染です。 飛沫の水分が蒸発すると、粒子が軽くなり、長時間空中を浮遊するようになります。直径は5 マイクロメートル以下であり、この軽くなった粒子を飛沫核と言います。この飛沫核による感染が空気感染です。 ・ 直径5 mm以下 ・ 長時間空中を浮遊 飛沫 飛沫感染を起こす 飛沫核 空気感染を起こす 役に立つ薬の情報~専門薬学
インフルエンザウイルス [ 潜伏期間 ] 1~3 日間 [ 熱 ] 38~40℃ [ 感染様式 ] 飛沫感染 [ 主な症状 ] [ 感染様式 ] 飛沫感染 [ 主な症状 ] 悪寒、発熱、筋肉痛、関節痛 インフルエンザウイルスの特徴ですが、潜伏期間が1~3 日で38~40 ℃の熱を出します。感染様式は飛沫感染です。 主な症状としては悪寒、発熱、筋肉痛、関節痛などがあります。 予防用法はうがい・手洗い、マスクとなります。飛沫は比較的粒子が大きいため、マスクによってシャットアウトすることができ、とても有効です。 また、インフルエンザワクチンによる予防も効果的です。 予防方法 うがい・手洗い、マスク インフルエンザワクチン 役に立つ薬の情報~専門薬学
法律上でのインフルエンザ 感染症 一類感染症 エボラ出血熱 、ペスト 、ラッサ熱 など 二類感染症 鳥インフルエンザ(H5N1)、結核 、ジフテリア など 三類感染症 コレラ 、細菌性赤痢 、腸管出血性大腸菌感染症 など 四類感染症 鳥インフルエンザ(H5N1 を除く)、日本脳炎、マラリア など 五類感染症 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザなどの 感染症を除く)、麻しん、風しん、破傷風など さまざまな感染症の中でも、インフルエンザは法律によって規定されている感染症の一つです。 毎年起こる季節性インフルエンザであれば、麻しんや風しん、破傷風などと同じ五類感染症です。 新型インフルエンザであると四類感染症であり、その中でも高い致死率を示すH5N1 型の鳥インフルエンザは結核やジフテリアと並ぶ二類感染症と規定されています。 役に立つ薬の情報~専門薬学
インフルエンザによる入院者数 70~79 80~ (歳) 60~69 50~59 40~49 30~39 20~29 15~19 10~14 5~9 1~4 0~ 8000 (人) 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 スライドにはインフルエンザによる一年間の入院者数を示してあります。 ご覧の通り、小児でインフルエンザによる入院が多いことが分かります。これは、インフルエンザに対する免疫力が弱いため、小児の入院者数が多くなることが推測されます。 役に立つ薬の情報~専門薬学 厚生労働省 新型インフルエンザ対策関連情報
インフルエンザによる死亡者数 70~ (歳) 60~69 50~59 40~49 30~39 20~29 15~19 10~14 5~9 1~4 (人) 30 20 10 60 50 40 次にインフルエンザによる一年間の死亡者数についてです。 先ほど小児で入院患者が多いことを示しましたが、インフルエンザによる死亡者で考えると、生まれて年を追うごとに死亡者が少なくなり、20~29 歳を境として死亡者の増加が確認できます。 特に、死亡者は高齢者に多いことが分かります。高齢者になるほど糖尿病、心臓病などの基礎疾患を患っている可能性が高くなり、高齢という要因も重なって死亡者が多くなってしまうことが考えられます。 役に立つ薬の情報~専門薬学 厚生労働省 新型インフルエンザ対策関連情報
インフルエンザ脳症の発生件数 インフルエンザ脳症 インフルエンザによる発熱後、 急速な意識障害・機能障害が出現 ・ 致死率 ・ 後遺症率 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 10~15 16~20 21~ 20 30 40 50 60 (歳) (人) インフルエンザ脳症 インフルエンザによる発熱後、 急速な意識障害・機能障害が出現 ・ 致死率 ・ 後遺症率 : 約10 % : 約20 % インフルエンザを発症した場合、副反応としてインフルエンザ脳症を併発することがあります。インフルエンザ脳症とは、インフルエンザによる発熱後に急速な意識障害・機能障害が出現する症状のことです。 現在でも致死率が約10 %であり、後遺症率は約20 %に上ります。 インフルエンザ脳症は主に6 歳までの乳幼児で発症すると言われており、神経障害が出るまで数時間から一日と短い期間で症状が出てきます。 役に立つ薬の情報~専門薬学 厚生労働省 インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究
インフルエンザ脳症の発生件数 注意すべき症状 意識レベルが低下している けいれん発作が持続する 意味不明な言動 回復 死亡 経過観察中 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 10~15 16~20 21~ 20 30 40 50 60 (歳) (人) 経過観察中 死亡 回復 注意すべき症状 意識レベルが低下している けいれん発作が持続する 意味不明な言動 スライドにはインフルエンザ脳症の内訳を示してあります。 どの年代でも回復と死亡の割合は同じとなっていることが分かります。なお、回復した人の中には後遺症が残った人も含まれているため、インフルエンザ脳症は依然として恐ろしい症状の一つです。 インフルエンザによって「意識レベルが低下している」、「けいれん発作が持続する」、「意味不明な言動」などの症状が見られた場合、特に注意が必要です。 役に立つ薬の情報~専門薬学 厚生労働省 インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究
A 型はヒト、鳥、豚、馬など多くの哺乳類に感染 ヘマグルチニン(HA) インフルエンザウイルスの種類 ノイラミニダーゼ(NA) A 型、B 型、C 型の三種類 毎年流行を起こすウイルス A 型とB 型 パンでミックを起こすウイルス A 型のみ 次にインフルエンザウイルスの構造について確認していきたいと思います。 インフルエンザウイルスにはA 型、B 型、C 型の三種類があります。そのうち、毎年流行を起こすウイルスはA 型とB 型です。鳥インフルエンザなどパンデミックを起こすウイルスはA 型のみとなっています。 A 型インフルエンザウイルスにはノヘマグルチニン(HA)とイラミニダーゼ(NA)というものが存在します。重要なのは、このNA とHA にいろいろな種類があるということです。HAは16 種類、NA は9 種類の型が知られています。 なお、A 型は人、鳥、豚、馬など多くの哺乳類に感染するのも特徴です。 A 型におけるHA とNA の種類 HA : 16 種類、NA : 9 種類 RNA A 型はヒト、鳥、豚、馬など多くの哺乳類に感染 役に立つ薬の情報~専門薬学
鳥インフルエンザ A 型インフルエンザウイルスの種類 HA とNA の型によって決定 例) 3 型のHA、2 型のNAの場合 H3N2 のウイルス 人に感染する種類 HA は1~3 、NA は1~2 の亜型まで 鳥に感染する種類 HA は16 種類すべて、NA も9 種類すべて 先ほど、インフルエンザウイルスのHA とNA について説明しましたが、A 型インフルエンザウイルスの種類はこのHA とNA の型によって決定されます。 例えば、3 型のHA と2 型のNA の場合、H3N2 のウイルスとなります。 この中で人に感染する種類はHA が1~3 まで、NA が1~2 の亜型までとなっています。鳥に感染する種類であるとHA は16 種類すべてであり、NA も9 種類すべてとなっています。つまり、鳥インフルエンザは「16×9」 で、理論的には144 種類の型があります。 例えば、鳥インフルエンザのH5N1 がヒトからヒトへ感染する場合を考えます。先ほど説明した通り、人に感染するHA は1~3 であるため、5 型のHA はヒトがこれまでに経験したことのないウイルスとなります。 これによって、パンデミックが起こります。 例えば、鳥インフルエンザのH5N1 がヒトからヒトへ感染 5 型のHA はヒトがこれまでに 経験した事ないウイルス パンデミック発生 役に立つ薬の情報~専門薬学
パンデミック(大流行)発生の歴史 同じ型(例えば、H1N1 のウイルス)でも、毎年少しずつ変異 一年後 一年後 他由来(鳥や豚など)のウイルスにより、大幅に型が変化 鳥由来のウイルス ヒト由来のウイルス 新型ウイルス インフルエンザウイルスは同じ型、例えば同じH1N1 のウイルスでも、毎年少しずつ変異しています。 ここに、鳥や豚など他由来のウイルスによって大幅にインフルエンザウイルスの型が変化した場合、新型ウイルスとなります。 過去に起こったインフルエンザによるパンデミックとしては、スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪などが知られています。 スペイン風邪は鳥インフルエンザ由来のH1N1 亜型に由来し、当時の人にとってはそれまで経験したことのない全く新しいインフルエンザウイルスでした。世界で4000 万人が死亡し、6 億人に感染したと言われています。当時の世界人口が約18 億人だったことから、世界で猛威を振るった感染症であることが伺えます。 発生年 通称 型 概要 1918 年 スペイン風邪 H1N1 世界で4000 万人が死亡(当時の世界人口約18 億人) 1957 年 アジア風邪 H2N2 世界で200 万人が死亡 1968 年 香港風邪 H3N2 世界で100 万人が死亡 役に立つ薬の情報~専門薬学
パンデミック(大流行)発生の仕組み これまでのインフルエンザ 人から人への感染のみ 鳥から鳥への感染のみ 新型インフルエンザの発生 + パンデミック(大流行)発生の仕組みについてです。 これまでのインフルエンザであれば、人から人へのみの感染、鳥から鳥への感染のみでした。鳥に寄生するインフルエンザウイルスが人に感染することはありません。 新型インフルエンザの場合、ヒト由来のインフルエンザウイルスと鳥由来のインフルエンザウイルスが混ざり、新しいタイプのインフルエンザウイルスが発生します。 例えば、豚は人と鳥の両方に由来するウイルスに感染します。ここで、鳥インフルエンザウイルスの性質をそのままに、人へ感染する能力を獲得すれば、新型インフルエンザウイルスが発生します。 人に感染する 新型ウイルス 豚は人・鳥の両方の ウイルスに感染する 役に立つ薬の情報~専門薬学
インフルエンザの違い 季節性インフルエンザ 新型インフルエンザ 発生周期 毎年 10~40 年に一回 ウイルス型 A 型、B 型、C 型 免疫の有無 ある程度は免疫あり 免疫なし 共 通 点 治療薬 抗インフルエンザウイルス薬 主症状 発熱・せき・のどの痛み 感染力 感染力が強く、流行を引き起こす 季節性インフルエンザと新型インフルエンザの違いについて説明します。 発生周期ですが、毎年発生するのが季節性インフルエンザであり、10~40 年に一回発生するのが新型インフルエンザです。季節性インフルエンザではA型、B 型、C 型と全てのインフルエンザで起こりますが、鳥・豚などに由来する新型インフルエンザはA 型のみとなっています。 最大の違いは、季節性インフルエンザである程度免疫があるが、新型インフルエンザでは免疫が備わっていない点です。 共通点もあり、治療薬が季節性インフルエンザで使用される抗インフルエンザウイルス薬である点や発熱・せき・のどの痛みが主症状であること、感染力が強く、流行を引き起こすことなどがあります。 役に立つ薬の情報~専門薬学
WHO パンデミック警戒レベル 感染 リスク フェーズ 感染リスク 感染の状態 1 ヒト感染のリスクは低い 主に動物間で感染 2 ヒト感染はない ヒト感染リスクがフェーズ1 より高い 3 ヒト-ヒト感染が極めて限定的に発生 ヒト-ヒト感染が確認 4 ヒト-ヒト感染が地域的に発生 5 かなりの地域でヒト-ヒト感染がある 広範囲の ヒト-ヒト感染 6 ヒト-ヒト感染が効率よく発生 WHO のパンデミック警戒レベルによると、1 から6 段階のフェーズに分かれています。数字が大きくなるほど、感染リスクが高くなります。 フェーズ1~2 の場合、感染は主に動物間であるため人への感染リスクは低いです。 フェーズ3~4 であると、限定的・地域的に人から人への感染が確認されている段階です。この感染がより広い地域で確認されるようになると、広範囲で人から人への感染が起こっているフェーズ5 や6 へと引き上げられます。 役に立つ薬の情報~専門薬学
妊婦とインフルエンザ 妊婦の人 : もともと代謝異常などの合併症を起こしやすい 基礎疾患がある人と同じように、重症化しやすい WHO からの勧告 妊婦のインフルエンザでは、 集中治療室を必要とする確率が、一般集団より10 倍高い 妊娠28 週以降で、特に重症化の危険が高い 妊婦へのインフルエンザには、 下記の二つが有効 ① インフルエンザワクチン ② 抗インフルエンザ薬 妊婦とインフルエンザについて紹介します。 妊婦の方は、もともと代謝異常などの合併症を起こしやすいです。妊娠糖尿病などがこれに当たります。そのため、基礎疾患がある人と同じように、妊婦はインフルエンザによって重症化しやすいです。 WHO からの勧告によると、妊婦のインフルエンザでは「集中治療室を必要とする確率が、一般集団より10 倍高い」、「妊娠28 週以降で、特に重症化の危険が高い」と言われています。 そこで、妊婦へのインフルエンザには予防のためにインフルエンザワクチン、治療するために抗インフルエンザ薬が有効です。 役に立つ薬の情報~専門薬学 社団法人 日本産婦人科学会
妊婦とインフルエンザ よくあるQ & A Q. インフルエンザワクチンは妊婦に安全か? A. 安全性・有効性が証明されています Q. 抗インフルエンザ薬は胎児に何らかの影響を与えるか? A. 催奇形性などもなく、安全性は高いです 服用せず、インフルエンザの重症化を招く方が問題 妊婦とインフルエンザに関することで、よくある質問をまとめています。 ます初めに、インフルエンザワクチンは妊婦に安全かについてです。インフルエンザワクチンに関しては安全性・有効性が証明されており、安心して使用することができます。 抗インフルエンザ薬は胎児に何らかの影響を与えるかですが、催奇形性などもなく、安全性は高いことが確認されています。服用せずにインフルエンザの重症化を招く方が胎児に影響を与える恐れがあるため問題であるとされています。 また、母乳は安全かどうかですが、母乳を介した感染は現在のところ知られていません。赤ちゃんに母乳を飲ませることは問題ないようです。 Q. 母乳は安全か? A. 母乳を介した感染は、現在のところ知られていません 役に立つ薬の情報~専門薬学 社団法人 日本産婦人科学会
インフルエンザワクチン インフルエンザを予防するためには インフルエンザワクチンが効果的 ワクチンの優先接種者 1. 医療従事者 2. 妊婦、基礎疾患のある人 3. 乳幼児 4. 一歳未満の小児の両親 5. 高齢者・小中学生 よくあるQ&A それでは、インフルエンザワクチンについて紹介していきたいと思います。 インフルエンザを予防するためにはインフルエンザワクチンが効果的です。ワクチンには優先接種者が定められており、基本的にはこの順位にいます。 医療従事者が最も優先順位が高く、次に妊婦・基礎疾患のある人、乳幼児、一歳未満の小児の両親、高齢者・小中学生と続きます。 また、インフルエンザワクチンに関するよくある質問としてはワクチンの持続期間があります。予防に十分な抗体の持続期間は5 ヶ月間であるとされています。インフルエンザの流行時期は12~3 月であるため、ワクチンによってこの期間を十分にカバーすることができます。 Q. インフルエンザワクチンの効果持続期間は? A. 予防に十分な抗体の持続期間は5 ヶ月間です ※ インフルエンザの流行時期は12~3 月 役に立つ薬の情報~専門薬学
インフルエンザワクチンの効果 20 歳以上の成人 効果の判定基準 65 歳以上を対象とした試験 発病阻止効果 34~55 % 死亡阻止効果 中和法 10 % 20 % 30 % 40 % 50 % 60 % 70 % 80 % 90 % 100 % HI 法 0 % A/カリフォルニア/7/2009 (H1N1)株 予防に必要な抗体が十分に 作られている(抗体価40 倍以上) and 接種前と比べて4 倍以上の 抗体が作られている 65 歳以上を対象とした試験 発病阻止効果 インフルエンザワクチンの効果について説明します。 効果の判定基準ですが、「予防に必要な抗体が十分に作られていること」かつ「接種前と比べて4 倍以上の抗体が作られていること」を条件とします。 今回は二つの方法で確認していますが、20 歳以上の成人に一回接種した結果、どちらの方法でも70 %以上で効果を確認できます。 また、65 歳以上を対象とした試験では34~55 %の人を発病阻止効果を、82 %の人で死亡阻止効果を確認しています。 34~55 % 死亡阻止効果 82 % 役に立つ薬の情報~専門薬学 インフルエンザHAワクチン インタビューフォーム
インフルエンザワクチンの効果 6 ケ月以上3 歳未満 3 歳以上13 歳未満 HI 法 中和法 10 % 20 % 30 % 40 % 50 % 60 % 70 % 80 % 90 % 100 % 0 % 接種二回目 接種一回目 A/カリフォルニア/7/2009 (H1N1)株 10 % 20 % 30 % 40 % 50 % 60 % 70 % 80 % 90 % 100 % 0 % 接種二回目 接種一回目 HI 法 中和法 A/カリフォルニア/7/2009 (H1N1)株 先ほどは成人での効果でしたが、次に小児におけるインフルエンザワクチンの効果を示します。 6 か月以上3 歳未満の場合、摂取一回目では効果が不十分ですが、摂取二回目で十分な効果を発揮していることが分かります。 3 歳以上13 歳未満の場合、摂取一回目で既に予防に十分な免疫を得ていることが確認できます。 役に立つ薬の情報~専門薬学 インフルエンザHAワクチン インタビューフォーム
医療用マスク : サージカルマスク サージカルマスクとは 病気の予防に用いる医療用マスク サージカルマスクの性能 BFE : 細菌ろ過効率 細菌を含む粒子(約3 mm)が除去された割合(%) PFE : ポリエチレン粒子ろ過効率 微粒子(約0.1 mm)が除去された割合(%) 次にマスクについて紹介します。ここでのマスクはサージカルマスクについてであり、サージカルマスクとは病気の予防に用いる医療用マスクのことです。 サージカルマスクの性能を表す指標としてはBFE(細菌ろ過効率)とPFE(ポリエチレン粒子ろ過効率)があります。 BFE とは、細菌を含む約3 マイクロメートルの粒子が除去された割合のことです。多くのサージカルマスクはBFE が95 %以上となっています。また、PEF とは約0.1 マイクロメートルの微粒子が除去された割合のことを指します。 ただし、サージカルマスクは鼻の周りや頬のセンター部分に隙間ができやすいです。そのため、自分の顔に合うマスクを選ぶ必要があります。 鼻の周り・頬のセンター部分に隙間ができやすい 自分の顔に合うマスクを選ぶ 役に立つ薬の情報~専門薬学
インフルエンザに使用する消毒薬 分 類 成分名 抗微生物スペクトル 適応対象 一 般 細 菌 M R S A 緑 膿 菌 結 核 菌 真 菌 芽 胞 ウイルス 器具 環 境 手 指 ・ 皮 膚 粘 膜 中 型 サ イ ズ 小 型 サ イ ズ H I V 金 属 非 金 属 高 水 準 グルタラール ○ - フタラール △ 過酢酸 中 水 準 次亜塩素酸ナトリウム ポピドンヨード 消毒用エタノール イソプロパノール 低 水 準 塩化ベンザルコニウム 塩化ベンゼトニウム グルコン酸クロルヘキシジン 塩酸アルキルジアミノ エチルグリシン H C V H B V スライドにはインフルエンザに使用する消毒薬を載せています。 インフルエンザウイルスは中型サイズのウイルスであり、この消毒薬としては有効性・安全性そして簡便性を考慮して消毒用エタノールが多用されます。 消毒用エタノールの注意点としては、刺激性をもつために粘膜に使用できないという点です。 ○:有効 △:やや有効 -:無効 役に立つ薬の情報~専門薬学
抗インフルエンザ薬 抗インフルエンザ薬の作用 ウイルスを殺すわけではなく、増殖を抑える ウイルスが増殖した後では、薬の効果がない 発症早期(48 時間以内)に服用 抗インフルエンザ薬 ノイラミニダーゼ阻害薬 M2 タンパク阻害薬 ・ アマンタジン 抗インフルエンザ薬についてですが、現在の抗インフルエンザ薬はウイルスを殺すわけではなく、増殖を抑える作用をもちます。 増殖を抑えるため、ウイルスが既に増殖してしまった後では薬の効果がありません。そのため発症早期、具体的には48 時間以内に服用する必要があります。 抗インフルエンザ薬としてはノイラミニダーゼ阻害薬としてタミフル、リレンザ、イナビルなどがあります。M2 タンパク阻害薬としてはアマンタジン、RNA ポリメラーゼ阻害薬としてT-705 があります。 ・ タミフル ・ リレンザ ・ イナビル など RNA ポリメラーゼ阻害薬 ・ T-705 役に立つ薬の情報~専門薬学
抗インフルエンザ薬 インフルエンザウイルスの増殖過程に作用 M2 タンパク阻害薬 ノイラミニダーゼ 阻害薬 RNA ポリメラーゼ阻害薬 阻害 遊離 阻害 ノイラミニダーゼ 阻害薬 抗インフルエンザ薬の作用機序について説明します。 インフルエンザの増殖機構ですが、まず細胞に吸着して細胞内へ侵入します。侵入した後、ウイルスは自身の膜を除去し、細胞内へRNAという遺伝情報を放出します。この過程を脱殻といいます。M2 タンパク阻害薬であるアマンタジンはこの脱殻を阻害します。 細胞質に放出されたウイルスのRNAは核内に取り込まれ、ウイルスの遺伝子合成が行われます。この過程が複製であり、RNA ポリメラーゼ阻害薬はこの複製を阻害します。 複製された遺伝子からタンパク質などが作られ、新しく作られたインフルエンザウイルスは細胞の外へ遊離します。この遊離過程にはノイラミニダーゼというタンパクが重要な働きをします。 タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬はこの過程を阻害し、インフルエンザウイルスが細胞外へ遊離するのを防ぎます。 阻害 RNA ポリメラーゼ阻害薬 インフルエンザウイルスの増殖過程に作用 役に立つ薬の情報~専門薬学
まとめ ① インフルエンザの感染様式 : 飛沫感染 マスク、消毒薬などによる感染予防が重要 ② インフルエンザの予防 : ワクチンが効果的 ワクチンの優先接種者 1. 医療従事者 2. 妊婦、基礎疾患のある人 3. 乳幼児 4. 一歳未満の小児の両親 5. 高齢者・小中学生 これまでの内容をまとめます。 インフルエンザの感染様式は飛沫感染であることを認識して頂きたいと思います。これを防ぐためにはマスク、消毒薬などによる感染予防が重要です。 また、より感染予防に重要なものとしてはインフルエンザワクチンがあります。ワクチンの優先接種者は医療従事者から妊婦・基礎疾患のある人と続いていきます。 実際にインフルエンザにかかってしまった場合、抗インフルエンザ薬が有効です。増殖を抑える薬であるため、発症早期の48 時間以内に服用する必要があります。 ③ 抗インフルエンザ薬 発症早期(48 時間以内)に服用 役に立つ薬の情報~専門薬学