タンパク質について 第2回 タンパク質抽出の概要.

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タンパク質について 第2回 タンパク質抽出の概要

細胞膜の模式図 タンパク質 タンパク質 多糖 (糖タンパク質、糖脂質) リン脂質頭部 (親水基) リン脂質尾部 (疎水基) すべての細胞には、タンパク質-脂質二重層である形質膜があり、これによって細胞内容物が細胞外の環境から隔てられています。形質膜を構成する脂質は親水性領域と疎水性領域を有した両親媒性であり、これらが自然に結合し密着した2分子膜が形成されています(上図)。膜タンパク質はこの脂質二重層に埋め込まれており、疎水性のコアまで伸びる1個または複数のドメインによって繋ぎ留められています。さらに、表在性タンパク質が内在性膜タンパク質または極性の脂質頭部との相互作用により、この二重層の内側または外側に結合しています。この脂質とタンパク質成分の特性は、細胞の種類によって異なります。

タンパク質の抽出・精製 サンプルから総タンパク質を抽出する。 目的タンパク質の特異的な濃縮、分離 (アフィニティ精製)。 目的タンパク質の特異的な濃縮、分離 (アフィニティ精製)。 干渉物質や夾雑物質の除去。 注意点として・・・ ※サンプルから出てくるプロテアーゼによるタンパク質の分解 ※熱的、化学的なタンパク質の変性 ※精製を進めるとタンパク質濃度が薄くなる(一般的に希釈されるほどタンパク質は変性し易くなる)

1.抽出操作は酵素活性を抑え、熱変性が起きない0度近辺で行う。 2.目的タンパク質の酵素分解を防ぐために種々のProtease Inhibitorを使用する。 ①アプロチニン(分子量6500)・・・カリクレイン、トリプシン、キモトリプシン、プラスミンなどを阻害 ②ロイペプチン(分子量426.6)・・・プラスミン、トリプシン、パパイン、カテプシンBなどを阻害 ③ペプスタチンA(分子量685.9)・・・ペプシン、カテプシンDなどを阻害 ④PMSF(Phenylmetylsulfonyl Fluoride)(分子量174.2)・・・キモトリプシン、トリプシンなどを阻害 ⑥アンチパイン(分子量604.7)・・・トリプシン、カテプシンA/B、パパインなどを阻害 ⑦キモスタチン(分子量607.7)・・・キモトリプシン、カテプシン、パパインなどを阻害

3.タンパク質濃度を濃縮するためにエバポレーターや透析膜などを使用する。 4.タンパク質を安定化させるために添加剤を加える。 主な添加物質 塩類 SH試薬 ポリオール キレート試薬 界面活性剤 NaCl、KCl、(NH  ) SO 2 4 メルカプトエタノール、DTT グリセロール、スクロース EGTA、EDTA TritonX-100、オクチルグルコシド 試薬 添加濃度 50mM~1M 1~100mM 2~20% 0.1~1mM 0.1~1%

細胞の破壊法 ・物理的手法(機械的破砕、液状でのホモジナイゼーション、超音波処理、凍結・融解、手動による粉砕) ・界面活性剤ベースでの細胞溶解 物理的手法では、高価で取り扱いの面倒な機器、装置の違い(内筒のフイットの不一致)により再現性が良くないなどの問題点があり、近年では使いやすさ、低コスト、効率的手順などから界面活性剤ベースでの細胞溶解が主流になっています。

細胞の物理的破砕に使用される機器 フレンチプレス Waringブレンダー

Dounce型 Potter-Elvehjem型 様々なホモジナイザー Tenbroeck型 Conical型

両性イオン性界面活性剤(良く使用するもの) CHAPS:3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]       propanesulfonic acid C H N O S  分子量614.88 32 58 2 7 膜タンパク質の溶解剤としての好ましい条件の一つに非イオン性であることがあげられ、例えば Triton X-100 などが用いられているが、溶解効率、除去の難しさ等の点で必ずしも満足なものとは言えない。CHAPSはコール酸を母核とする両性化合物であり、スルホベタイン型の溶解剤や胆汁酸塩アニオン化合物の双方の特徴を兼ねそなえた膜タンパク質可溶化剤である。なお、CHAPS 自体の紫外部の吸収は弱いため、UV 吸収を利用するタンパク質の検出にも好都合である。 陰イオン性界面活性剤(良く使用するもの) SDS:sodium dodecylsulphate/ドデシル硫酸ナトリウム CH (CH ) OSO Na  分子量288.38 3 2 11 3

種々の非イオン性界面活性剤 ①BriJ58(polyoxyethylene(20)cetyl ether) 分子量1120 タンパク質に結合して可溶化・変性させる。SDS化されたタンパク質は強い負の電荷を帯びる。SDS-PAGE、細胞の破壊、タンパク質(酵素)の失活、高分子物質の非特異的吸着の防止に用いる。カリウム塩やリチウム塩は沈殿するので、それを含む溶液中では使用しない。 種々の非イオン性界面活性剤 ①BriJ58(polyoxyethylene(20)cetyl ether) 分子量1120 ②Nonidet P-40(NP-40: polyoxyethylene(9)octyiphenyl ether) 分子量602 ③TritonX-100( polyoxyethylene(10)octylphenyl ether)     分子量628 ④Tween20( polyoxyethylene sorbitan monolaurate) 分子量1228 ⑤Tween80( polyoxyethylene sorbitan monooleate) 分子量1310

④>①>⑤>③>② ②>③>①>④>⑤ 親水度の度合い 界面活性度の度合い 細胞の膜や顆粒からのタンパク質の溶出、タンパク質の安定化、可溶化、高分子の吸着防止の目的で0.01~1%の範囲で使用される。 親水度の度合い ④>①>⑤>③>② 界面活性度の度合い ②>③>①>④>⑤ <参考文献など> 日本生化学学会編 基礎生化学実験法第3巻タンパク質Ⅰ検出・構造解析法 http://www.takara-bio.co.jp/goods/catalog/index.htm#siyaku http://www.airica.co.jp/jiten/kaimen-top.htm