微生物学1 抗菌薬.

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微生物学1 抗菌薬

化学療法

化学療法 化学療法 Paul Ehrlich(1854~1915) 宿主に障害を与えずに,侵入してきた微生物を   宿主に障害を与えずに,侵入してきた微生物を   除去または障害するために化学物質を用いること 抗生物質  Selman Waksman(1888~1973)   微生物が生産し,微生物の発育を阻害する物質 化学療法の対象・・・微生物 → 微生物+がん

化学療法が抱える問題点 抗菌薬の開発 → 耐性菌の出現 → 耐性菌に有効な抗菌薬の開発 → 耐性菌の出現 抗菌薬開発の限界  → 耐性菌の出現    → 耐性菌に有効な抗菌薬の開発      → 耐性菌の出現 抗菌薬開発の限界   新作用機序をもつ抗菌薬の激減     過去30年間でリネゾリド,ダプトマイシンのみ   ライフサイクルが短い → 新薬開発意欲の低下

抗菌薬の性質 選択毒性 病原体にのみ強い毒性を示し,ヒトにはほとんど毒性を示さない性質 選択毒性の指標  病原体にのみ強い毒性を示し,ヒトにはほとんど毒性を示さない性質 選択毒性の指標  化学療法係数(CI)・・・最小有効量と最大耐量の比 抗菌作用  殺菌作用・・・菌を殺滅する効果    細胞壁合成阻害薬・・・β-ラクタムなど  静菌作用・・・菌の分裂・増殖を阻害する効果    タンパク質合成阻害薬(アミノグリコシドを除く)・・・マクロライドなど

抗菌薬に対する感受性 抗菌スペクトル・・・抗菌薬が有効な菌種の範囲 広域抗菌スペクトル・・・多くの細菌に対して有効  広域抗菌スペクトル・・・多くの細菌に対して有効  狭域抗菌スペクトル・・・限られた範囲の菌種にのみ有効  広域抗菌薬   ・起因菌が同定できないときの治療に有効   ・常在細菌の死滅 → 菌交代症   ・耐性菌の選択増殖  狭域抗菌薬   ・起因菌が判明したときは使用を推奨   ・菌交代症、耐性菌選択を防ぐ・・・デ・エスカレーション

薬剤感受性 最小発育阻止濃度(MIC) 微生物の発育を阻止するのに必要な抗菌薬の最小濃度 最小殺菌濃度(MBC)  微生物の発育を阻止するのに必要な抗菌薬の最小濃度 最小殺菌濃度(MBC)  微生物が死滅するのに必要な抗菌薬の最小濃度 薬剤感受性試験  希釈法・・・MICを求める方法    寒天培地または液体希釈法による希釈系列 → 培養,生育判定    MIC測定後の培養液 → 薬剤無添加培地・・・MBC測定  ディスク拡散法    一定量の抗菌薬を含むディスク → 寒天平板培地で菌を培養 → 阻止円     d = αlogP + β (d:阻止円の直径,P:薬剤の力価)  ブレイクポイントMIC → 臨床効果予測    組織移行性,最高血中濃度,作用時間,静菌・殺菌特性を考慮したMIC PAE(post antibiotic effect)  MIC以上の濃度の抗菌薬と接触した菌が,抗菌薬濃度が低下した後も  一定時間,増殖が抑えられる現象

寒天平板希釈法 100 50 25 12.5 6.25 3.12 µg/mL 1.56 0.78 0.39 0.20 0.10 0.05 µg/mL 菌A 菌B 菌A・・・MIC 6.25 µg/mL 菌B・・・MIC 0.78 µg/mL

βーラクタム系抗菌薬

ペニシリンの発見 Alexander Fleming(1881~1955) ペニシリン(1929) イギリスの細菌学者,リゾチームの発見 Penicillium nonatum が生産する抗ブドウ球菌物質 ペニシリン(1929) 化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes) 肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae) 抗菌作用,毒性なし

ペニシリンの再発見 Howard Florey(1898~1968) & Ernst Chain(1906~1979) ペニシリン研究再開(1938) ペニシリンの臨床試験(1941) ペニシリンG(ベンジルペニシリン)の構造決定(1945) a b βーラクタム ベンジルペニシリン(注射) グラム陽性菌(ブドウ球菌,レンサ球菌など) グラム陰性球菌(淋菌,髄膜炎菌) スピロヘータ(梅毒トレポネーマ など)

ペニシリン耐性菌の出現 ペニシリナーゼ (βーラクタマーゼ) ロンドンの病院内で分離されたペニシリン耐性ブドウ球菌 1946年 15% 1946年 15% 1947年 40% 1948年 60%

半合成ペニシリンの開発 アンピシリン(注射,経口) アモキシシリン(経口) 経口吸収改善 ・ベンジルペニシリンと比較してグラム陰性桿菌へスペクトル拡大   大腸菌,Proteus mirabilis,インフルエンザ菌 ・経口で吸収される    ・ペニシリナーゼ感受性

広域ペニシリンの開発 ピペラシリン(注射) グラム陰性桿菌に抗菌スペクトル拡大  Citrobacter,肺炎桿菌,Enterobacter, Serratia,  Morganella morganii,Providencia,緑膿菌 抗菌力はアンピシリンより弱い ペニシリナーゼにやや安定

ペプチドグリカントランスペプチダーゼ ペニシリン結合タンパク質(PBPs) b-ラクタム

Acremonium chrysogenum セファロスポリンの発見 セファロスポリンC Acremonium chrysogenum ベンジルペニシリンより低毒性 ペニシリナーゼ抵抗性 ペナム セフェム

セフェム系抗菌薬の開発(第1世代) セファゾリン(注射) アンピシリンとの比較 ペニシリナーゼ産生ブドウ球菌 ↑ グラム陽性菌全般 ↓  ペニシリナーゼ産生ブドウ球菌 ↑    グラム陽性菌全般 ↓  大腸菌,肺炎桿菌 ↑  ペニシリナーゼ抵抗性,セファロスポリナーゼ感受性

セフェム系抗菌薬の開発(第2世代) セフォチアム(注射) 第1世代セフェムとの比較 グラム陰性桿菌に対するスペクトル拡大  グラム陰性桿菌に対するスペクトル拡大  大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter,Proteus,    Morganella morganii,Providencia rettgeri,インフルエンザ菌

セフェム系抗菌薬の開発(第3世代) セフォタキシム(注射) 第2世代セフェムとの比較 グラム陰性桿菌への抗菌力,スペクトル拡大  グラム陰性桿菌への抗菌力,スペクトル拡大  ブドウ球菌に対する抗菌力低下  ペニシリナーゼ,セファロスポリナーゼ抵抗性

第3世代セフェムの改良 セフトリアキソン(注射) 初期第3世代セフェムとの比較 ブドウ球菌に対する抗菌力増強  ブドウ球菌に対する抗菌力増強  血中持続性の改善(1 g静注時の血中半減期7.5 h) ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,淋菌,大腸菌, Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter,Serratia,Proteus,Morganella morganii,Providencia,インフルエンザ菌,Peptostreptococcus,Bacteroides,Prevotella

第3世代セフェムの改良 セフォペラゾン(注射) 抗緑膿菌活性 ブドウ球菌への適応なし セファロスポリナーゼにやや不安定 レンサ球菌属,肺炎球菌,大腸菌,Citrobacter,Enterobacter, Klebsiella,Serratia, Proteus,Morganella morganii,Providencia rettgeri, インフルエンザ菌,緑膿菌,Bacteroides,Prevotella

経口第3世代セフェム セフジニル セフカペン ピボキシル セフジトレン ピボキシル ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌, 淋菌,Moraxella catarrhalis,大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter, Serratia,Proteus,Morganella morganii, Providencia,インフルエンザ菌, Peptostreptococcus,Bacteroides, Prevotella,アクネ菌 セフジトレン ピボキシル

(第4世代)セフェムの開発 セフォゾプラン(注射) 第3世代セフェムとの比較・・・緑膿菌に適応拡大 ベタイン構造を有する ブドウ球菌,レンサ球菌,肺炎球菌,腸球菌,Moraxella catarrhalis,大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter,Serratia,Proteus,Morganella morganii,Providencia,インフルエンザ菌,Pseudomonas,緑膿菌,Burkholderia cepacia,Stenotrophomonas maltophilia,Acinetobacter,Peptostreptococcus,Bacteroides,Prevotella

オキサセフェム系抗菌薬の開発 フロモキセフ(注射) ブドウ球菌属(軽度耐性MRSAを含む),レンサ球菌属,肺炎球菌, 淋菌,Moraxella catarrhalis ,大腸菌,Klebsiella,Proteus,Providencia,Morganella morganii,インフルエンザ菌, Peptostreptococcus,Bacteroides,Prevotella

モノバクタム系抗菌薬の発見 スルファゼシン (1981) SQ26823 (1981) アズトレオナム(注射薬) Pseudomonas acidphila Agrobacterium radiobacter アズトレオナム(注射薬) 好気性グラム陰性菌に対して選択的抗菌作用を示す

カルバペネム系抗菌薬の発見 チエナマイシン (1976) 1 : 1 イミペネム・シラスタチン(注射) Streptomyces cattleya 強力な抗菌活性 広い抗菌スペクトル 腎デヒドロペプチダーゼ I → 分解物の腎毒性 1 : 1 デヒドロペプチダーゼ I阻害薬 イミペネム・シラスタチン(注射) グラム陽性菌全般(含腸球菌) グラム陰性菌全般(含緑膿菌,Bacteroides) 副作用:痙攣,意識障害などの中枢神経系障害と腎機能障害

カルバペネム系抗菌薬 メロペネム(注射) 4-メチル基の導入により,デヒドロペプチダーゼⅠに対する安定性獲得 ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,腸球菌属,髄膜炎菌, Moraxella catarrhalis,大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter, Serratia,Proteus,Providencia,インフルエンザ菌,Pseudomonas, 緑膿菌,Burkholderia cepacia,Bacteroides,Prevotella 副作用:腎障害,中枢神経障害

b-ラクタマーゼ阻害薬の発見 b-ラクタマーゼ 不可逆的阻害 クラブラン酸 Streptomyces clavuligerus

b-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンの開発 アモキシシリン・クラブラン酸(経口) ペニシリナーゼ産生ブドウ球菌,Klebsiella,Proteus vulgaris,Bacteroidesに適応拡大 アンピシリン・スルバクタム(注射) ブドウ球菌属,大腸菌,Proteus,インフルエンザ菌

b-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン ピペラシリン・タゾバクタム(注射) 抗菌薬のグローバル・スタンダード ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,腸球菌属, Moraxella catarrhalis,大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter, Serratia, Proteus,Providencia, インフルエンザ菌,緑膿菌,Acinetobacter

b-ラクタマーゼ阻害薬配合セフェム セフォペラゾン・スルバクタム(注射) ブドウ球菌属,大腸菌,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter,Serratia, Proteus,Providencia rettgeri,Morganella morganii,インフルエンザ菌,緑膿菌,Acinetobacter,Bacteroides,Prevotella

βーラクタム系抗菌薬の特徴 ・ペプチドグリカントランスペプチダーゼ阻害による細胞壁合成阻害 ・結核菌,レジオネラ,マイコプラズマ,クラミジア,リケッチアには無効 ・β-ラクタマーゼにより加水分解される ・基本的に副作用は弱く,発現頻度も低い ・過敏症反応(特にペニシリン系)   即時型・・・アナフィラキシー症状   遅延型・・・発熱,発疹等のアレルギー症状 ・中枢神経症状(カルバペネム系)   痙攣,呼吸停止,意識障害,呼吸抑制等 ・アンタブース反応(セフォペラゾンなど)   アルコール摂取時の顔面紅潮,眩暈,嘔吐,頻脈 ・まれにビタミンK欠乏症,偽膜性大腸炎

グリコペプチド系抗菌薬

バンコマイシンの発見 バンコマイシン(1955) Streptomyces orientalis MRSA感染症(注射) Clostridium difficile偽膜性大腸炎(経口) 副作用: 腎障害,聴覚障害 ショック,アナフィラキシー様症状 レッドネック症候群(急速静注時)  (顔,頸,躯幹の紅斑性充血,掻痒等) 作用機序: ペプチドグリカン生合成前駆体の D-Ala-D-Ala 構造と複合体形成     ↓ 重合反応,架橋反応阻害

グリコペプチド系抗菌薬 テイコプラニン(注射) Actinoplanes teichomyceticus MRSA感染症 血中持続性が長い 腎障害,聴覚障害 ショック,アナフィラキシー様症状 レッドマン(レッドネック)症候群

アミノグリコシド系抗菌薬

ストレプトマイシンの発見 Selman Waksman (1888-1973) 結核菌(Mycobacterium tuberculosis)   細胞内寄生性と細胞壁ミコール酸のため薬剤が到達しにくい ストレプトマイシン (1944) Streptomyces griseus 注射薬 グラム陰性・陽性菌に対して幅広い抗菌スペクトル 結核菌,ペスト菌(Yersinia pestis), 野兎病菌(Francisella tularensis), ワイル病レプトスピラ リボソーム30Sサブユニットと結合し, タンパク質合成を阻害する 副作用:聴覚障害,腎障害

カナマイシンの発見 カナマイシン(注射) 2-デオキシストレプタミン (アミノサイクリトール) Streptomyces kanamyceticus 結核菌,緑膿菌を含むグラム陽性・陰性菌幅広く有効・・・多くの菌が耐性化 リボソーム30Sおよび50Sサブユニットと結合し,タンパク質合成を阻害する 腎毒性,聴覚毒性はストレプトマイシンより強い

抗緑膿菌アミノグリコシド トブラマイシン(注射) アミカシン(注射) Streptomyces tenebraius 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌 毒性はカナマイシンよりやや弱い 他のアミノグリコシドとの交叉耐性少ない 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌 毒性はカナマイシンよりやや強い

ゲンタマイシン群抗菌薬 ゲンタマイシン(注射,外用) Micromonospora purpurea 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌,ブドウ球菌 R1 , R2 = H or CH3 ゲンタマイシン(注射,外用) Micromonospora purpurea 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌,ブドウ球菌 腸球菌(ペニシリンと併用,適応なし) 聴器毒性,腎毒性は強い

抗MRSAアミノグリコシド アルベカシン(注射) 抗MRSA薬 聴器毒性はカナマイシンより弱い 腎毒性はカナマイシンより強い 他のアミノグリコシドとの交叉耐性少ない

アミノグリコシド系抗菌薬の特徴 ・リボソームに結合し,タンパク質合成を阻害する ・グラム陽性菌・陰性菌に幅広い抗菌スペクトルを示す ・嫌気性菌に対しては無効 ・経口吸収されない ・抗結核薬(ストレプトマイシン),抗MRSA薬(アルベカシン) ・緑膿菌などのグラム陰性桿菌による重症難治性感染症治療薬   敗血症,重症尿路感染症 ・聴覚毒性と腎毒性が強い ・グラム陰性桿菌に対するPAE(postantibiotic effect)   薬剤が消失した後も細菌の増殖を持続して抑制する作用    → 投与間隔延長 ・耐性菌が出やすい   不活化酵素・・・リン酸化,アデニリル化,アセチル化

マクロライド系抗菌薬

Saccharopolyspora erythraea エリスロマイシンの発見 エリスロマイシン (1952) Saccharopolyspora erythraea マクロライド・・・大環状ラクトン(14員環) リボソーム50Sサブユニットと結合し,タンパク質合成を阻害する  グラム陽性菌,グラム陰性球菌,マイコプラズマ,クラミジア  肺への移行性良好 → 肺炎治療薬  経口薬,注射薬

エリスロマイシン誘導体 クラリスロマイシン(経口) アジスロマイシン(経口,注射) 経口吸収率改善 ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌, Moraxella catarrhalis ,インフルエンザ菌,Legionella, Peptostreptococcus,マイコプラズマ,クラミジア ピロリ菌除菌療法(クラリスロマイシン+アモキシシリン+PPI)

マクロライド系抗菌薬の特徴 ・リボソーム50Sサブユニットに結合し,タンパク質合成を阻害する ・グラム陽性菌,グラム陰性球菌,マイコプラズマ,クラミジアに有効 ・クラリスロマイシン,アジスロマイシンはインフルエンザ菌に有効 ・経口吸収され,肺への移行性に優れる ・毒性が非常に少ない ・肺炎治療薬,ピロリ菌除菌療法(クラリスロマイシン)

その他の抗生物質

テトラサイクリン系抗菌薬 テトラサイクリン(1953) ミノサイクリン Streptomyces viridofaciens 経口,注射 経口,外用 グラム陽性菌,緑膿菌を除くグラム陰性菌  多くの菌が耐性化 リケッチア,クラミジア,マイコプラズマに有効 リボソーム30Sサブユニットと結合し, タンパク質合成阻害 毒性は低い 経口,注射 抗菌力強化,黄色ブドウ球菌に優れた抗菌力 他剤と交叉耐性を示さない  Legionella pneumophila,  クラミジア,肺炎マイコプラズマ

リンコマイシン系抗菌薬 クリンダマイシン(経口,注射) グラム陽性菌,嫌気性のグラム陽性菌・陰性菌に有効(経口) リボソーム50Sサブユニットと結合し,タンパク質合成を阻害する マクロライド系抗菌薬と部分交叉耐性 副作用:Clostridium difficileによる偽膜性大腸炎

その他の抗生物質 クロラムフェニコール(経口) Streptomyces venezuelae 極めて広い抗菌スペクトル(緑膿菌,結核菌以外) → 多くの菌が耐性化 適応・・・Salmonella感染症(腸チフス,パラチフスなど) リボソーム50Sサブユニットと結合し,タンパク質合成を阻害する 重篤な副作用  造血機能障害 → 再生不良性貧血  Grayシンドローム(新生児)・・・腹部膨張,嘔吐,下痢,皮膚の白化

その他の抗生物質 ホスホマイシン(経口,注射) Streptomyces fradiae グラム陽性,陰性菌に広い抗菌スペクトル  ブドウ球菌,大腸菌,赤痢菌,Salmonella,Serratia,Proteus,  Morganella morganii,Providencia rettgeri,緑膿菌,Campylobacter ペプチドグリカン生合成前駆体であるN-アセチルムラミン酸の生合成を阻害

その他の抗生物質 30 : 70 キヌプリスチン・ダルホプリスチン(注射) バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VREF)感染症

その他の抗生物質 ダプトマイシン(注射) Streptomyces roseosporus MRSA感染症(肺炎に対する適応なし) 作用機序:細胞膜機能障害

キノロン系抗菌薬

ニューキノロンの発見 キノロン ピリドンカルボン酸 ナリジクス酸 (1962) ノルフロキサシン(1978) 抗グラム陰性菌 → 尿路感染症 抗グラム陰性菌 → 尿路感染症 グラム陰性・陽性菌に対して強力な抗菌作用 グラム陰性桿菌に対するPAE(postantibiotic effect) DNAジャイレース阻害 副作用は少ない

オフロキサシン(経口) シプロフロキサシン(経口,注射) レボフロキサシン グラム陽性菌に対する抗菌力増強 Acinetobacter,Peptostreptococcusに拡大 シプロフロキサシン(経口,注射) グラム陰性菌に対する抗菌力増強 Acinetobacter,Peptostreptococcusに拡大 レボフロキサシン 抗菌力増強(2倍)

代表的キノロンの抗菌スペクトル レボフロキサシン(経口,注射) ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,腸球菌属,炭疽菌, Peptostreptococcus,アクネ菌 淋菌,緑膿菌,Moraxella catarrhalis,Acinetobacter,Legionella, 野兎病菌, Q熱コクシエラ,大腸菌,赤痢菌,Salmonella,Citrobacter,Klebsiella,Enterobacter,Serratia,Proteus,ペスト菌,Providencia,Morganella morganii, コレラ菌,インフルエンザ菌,Campylobacter,Brucella トラコーマクラミジア,肺炎クラミジア,肺炎マイコプラズマ

キノロン系抗菌薬の開発 ガレノキサシン(経口) トスフロキサシン(経口) ブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌, Moraxella catarrhalis,大腸菌, Klebsiella,Enterobacter,インフルエンザ菌, Legionella pneumophila, 肺炎クラミジア,肺炎マイコプラズマ 肺への移行性良好,1日1回投与 グラム陰性菌,陽性菌に対する抗菌力増強 Burkholderia cepacia,Stenotrophomonas maltophilia,Bacteroidesに抗菌力拡大 小児に適応あり 副作用:横紋筋融解症

キノロン系抗菌薬の特徴 ・DNAジャイレースを阻害する ・グラム陽性菌・グラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトル ・一般的に副作用は弱く,発現頻度も低い(3~5%) ・乳幼児の関節軟骨障害 ・横紋筋融解症   トスフロキサシン,ノルフロキサシン ・テオフィリン投与患者における血中テオフィリン濃度上昇   シプロフロキサシン,トスフロキサシン ・痙攣誘発・・・非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)との併用(GABA結合阻害)   フェンブフェン,フルルビプロフェン・・・ノルフロキサシン   ケトプロフェン ・・・シプロフロキサシン

葉酸代謝阻害薬

レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)感染マウスを用いたスクリーニング サルファ薬の発見 Gerhard Domagk (1895-1964) レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)感染マウスを用いたスクリーニング プロントシル・ルブラム スルファミン (1935)

ST合剤 5 : 1 スルファメトキサゾール・トリメトプリム 緑膿菌を除くグラム陰性桿菌,腸球菌(経口) 上気道,尿路感染症(他剤無効例) 5 : 1 スルファメトキサゾール・トリメトプリム 緑膿菌を除くグラム陰性桿菌,腸球菌(経口) 上気道,尿路感染症(他剤無効例) ニューモシスチス肺炎(注射) 強い副作用:血液障害,アナフィラキシー

スルファメトキサゾール ジヒドロ葉酸 トリメトプリム テトラヒドロ葉酸

抗結核薬

抗結核薬 結核菌 Mycobacterium tuberculosis イソニアジド(経口,注射) 細胞壁ミコール酸・・・薬剤透過性低 通性細胞内寄生菌 イソニアジド(経口,注射) 肺結核,その他の結核症 作用機序:ミコール酸生合成阻害 副作用:肝障害,末梢神経障害      (四肢のしびれ感など)

抗結核薬 リファンピシン(経口) 肺結核,その他の結核症 非結核性抗酸菌症,ハンセン病 作用機序:DNA依存性RNAポリメラーゼ阻害 副作用:肝障害,胃腸障害 肝臓の薬物代謝酵素P450を誘導し,血中濃度 を低下させるため,下記薬物との併用は禁忌 インジナビル,サキナビル,ネルフィナビル, ホスアンプレナビル,アタザナビル(抗HIV薬) デラビルジン(抗HIV薬) ボリコナゾール(抗真菌薬) プラジカンテル(抗吸虫薬) タダラフィル(勃起不全治療薬) リファンピシン(経口)

抗結核薬 ピラジナミド(経口) エタンブトール(経口) 肺結核,その他の結核症 肺結核,その他の結核症 非結核性抗酸菌症 細胞壁アラビノガラクタン生合成阻害 副作用:視神経炎 肺結核,その他の結核症 結核菌ピラジナミダーゼにより活性化  ピラジン酸 → トランス翻訳阻害 副作用:肝障害,関節痛

抗結核薬 ストレプトマイシン(注射) 30Sリボソームに結合しタンパク合成阻害 副作用:聴覚神経障害,腎障害

イソニアジド + リファンピシン + ピラジナミド + エタンブトール or ストレプトマイシン 結核の標準治療法 イソニアジド + リファンピシン + ピラジナミド + エタンブトール or ストレプトマイシン 2か月 イソニアジド + リファンピシン 4か月 抗結核薬の副作用 イソニアジド リファンピシン ストレプトマイシン エタンブトール ピラジナミド 肝障害,末梢神経障害 肝障害,胃腸障害 聴覚神経障害,腎障害 視神経炎 肝障害

その他の合成抗菌薬

抗MRSA,VRE薬 リネゾリド(経口,注射) MRSA,VREFを含むグラム陽性菌に有効 適応:バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VREF)     メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 副作用:骨髄抑制による血小板減少,下痢,悪心・嘔吐,視神経障害

抗ピロリ薬 メトロニダゾール ピロリ菌(経口)・・・アモキシシリン + PPI 嫌気性菌(経口):Peptostreptococcus,Bacteroides,Prevotella,Porphyromonas,            Fusobacterium,Clostridium,Eubacterium トリコモナス(経口,外用) 副作用:食欲不振,胃の不快感,吐き気 ,末梢神経障害,痙攣発作,妊婦禁忌(経口薬) 作用機序:細菌のニトロ還元酵素系によってニトロソ化合物に変化し,DNA鎖を切断する

主な抗菌薬の作用機序 細胞壁(ペプチドグリカン)合成阻害薬 β-ラクタム系 ペプチドグリカントランスペプチダーゼ(架橋)阻害   β-ラクタム系 ペプチドグリカントランスペプチダーゼ(架橋)阻害   グリコペプチド系 生合成前駆体のD-Ala-D-Ala構造に結合 → 重合,架橋阻害   ホスホマイシン 生合成前駆体N-アセチルムラミン酸の生合成を阻害 タンパク質合成阻害薬   マクロライド系 50Sリボソームに結合   リンコマイシン系 50Sリボソームに結合   クロラムフェニコール 50Sリボソームに結合   テトラサイクリン系 30Sリボソームに結合   アミノグリコシド系 30S(および50S)リボソームに結合 DNAジャイレース阻害薬   キノロン系 DNAジャイレース,トポイソメラーゼⅣを阻害 葉酸合成阻害薬   サルファ薬 p-アミノ安息香酸と拮抗し,ジヒドロプテロイン酸合成酵素阻害   トリメトプリム ジヒドロ葉酸還元酵素阻害

主な抗菌薬における耐性機構 β-ラクタム β-ラクタマーゼによる分解 薬剤低親和性ペプチドグリカントランスペプチダーゼの生産(MRSA) β-ラクタム β-ラクタマーゼによる分解 薬剤低親和性ペプチドグリカントランスペプチダーゼの生産(MRSA) アミノグリコシド 薬剤の酵素的修飾による不活性化 リボソーム変異による薬剤親和性低下(結核菌) マクロライド rRNAのメチル化による薬剤親和性低下 リボソーム変異による薬剤感受性低下 テトラサイクリン リボソーム保護タンパク質の生産 テトラサイクリン排出ポンプ ホスホマイシン 薬剤の細胞内取り込み低下 薬剤の酵素的修飾による不活性化 バンコマイシン ペプチドグリカンの構造変化による薬剤結合性低下(VRE) サルファ薬,トリメトプリム 薬剤低親和性の葉酸生合成酵素の生産 キノロン DNAジャイレース変異による薬剤感受性低下 細胞膜タンパク質による薬剤の能動排出

薬剤耐性菌の発生機構 ・突然変異により耐性遺伝子が発生し,耐性変異株が薬剤の選択圧で増加する ストレプトマイシン耐性結核菌(リボソーム変異)   ストレプトマイシン耐性結核菌(リボソーム変異)   キノロン耐性(DNAジャイレース変異)   ホスホマイシン耐性(薬剤能動輸送系変異)   試験管内における耐性変異株作成 ・薬剤使用前に存在していた少数の耐性菌株が薬剤の選択圧で増加する   セファロスポリナーゼ高生産グラム陰性桿菌 ・感受性菌が外来性の耐性遺伝子を受け入れる   Rプラスミドの接合伝達   薬剤耐性プラスミドによる形質転換 ・既存の耐性遺伝子の変異により,高度な耐性菌に変化する   第3世代セフェムを分解するβ-ラクタマーゼ生産グラム陰性菌

代表的な抗菌薬の使用上の注意 ペニシリン系・・・アレルギー性ショック カルバペネム系・・・腎毒性,中枢神経毒性 アミノグリコシド系・・・聴覚毒性,腎毒性 キノロン系・・・非ステロイド抗炎症薬との相互作用          小児に使用できないものが多い テトラサイクリン系・・・耐性菌が多い グリコペプチド系・・・アレルギー反応,腎毒性 リンコマイシン系・・・菌交代症

抗菌薬の吸収 腸管から吸収され,経口薬,注射薬ともに使用される キノロン系,マクロライド系,テトラサイクリン系  キノロン系,マクロライド系,テトラサイクリン系 腸管から吸収されないため,注射薬のみ  アミノグリコシド系,グリコペプチド系 腸管から吸収される群と吸収されない群がある  β-ラクタム系