Equine herpesvirus type 1

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微生物が体内に侵入する などして、引き起こす病気 病原体 感染症とは 細菌・ウイルス・寄生虫 など 9.感染症とその予 防 インフルエンザウィルス 「福岡県保健環境研究所H P」 タミフル「中村内科日記」よ り 素材集-感染症.
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図1 斑紋異常の子牛 出生 性別 精液の銘柄 症例1 H27.3.13 雄 Ⅰ 症例2 H27.5.26 雄 Ⅱ
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Equine herpesvirus type 1 馬鼻肺炎 (Equine rhinopneumonitis) 届出伝染病: 馬。 動物衛生研究所 「家畜の監視伝染病」 病原体:  馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)または4型(EHV-4)。ヘルペスウイルスに特有の潜伏感染を起こし(EHV-1は神経とリンパ節、EHV-4はリンパ節)、体力消耗時に活動して症状を表すとともに他への感染源となる。 Equine herpesvirus type 1 感染様式: 感染したウイルスは最初に鼻の奥の部分にある上部気道で増殖し、発熱するまでの約24-48時間の潜伏期に調教を受けた際の荒い呼吸に伴ってウイルスを多量に含んだ鼻汁が飛沫となって散乱する。  ウイルスは流産胎仔の臓器内および羊水に大量に含まれており、周囲の妊娠馬への感染源となる。羊水で汚染した場所および器物の消毒が重要。 症状: 若齢馬および競走馬では、39.0~40.5℃の発熱と水様性、後に膿様性に変わる鼻漏。その後、顎下リンパ節の腫大などを呈する呼吸器疾患。妊娠馬では、妊娠中期に感染すると死産や流産、子馬の生後直死を起こし、神経麻痺に起因する歩様異常、起立不能、尿失禁などを呈する。 JRA競走馬総合研究所 日本生物科学研究所

潜伏感染 キャリアー 鼻汁 流産が最大の 損害を与える! 競走馬の抗体保有率が高い割には発症例が少ないことから、不顕性感染が多いとされている。 潜伏感染 キャリアー 鼻汁 流産が最大の 損害を与える!

子馬の膿性鼻汁  感染馬の鼻に接触した人の衣服や手指、あるいは鼻捻子などにもウイルスは付着するので、鼻捻子を消毒せずに用いたり、衣服や手指を消毒せずに不用意に他の馬の鼻に触れたりすると接触感染の原因になる。  発熱前の潜伏期感染を防ぐために、普段から鼻捻子の使い回しを避ける。

罹患した妊娠馬にみられた流産胎子 EHV-1感染した満期産の新生子馬で呼吸困難に陥っている。先天的感染した子馬の臨床的悪化は急速であり、常に致死的となる。 起立不能に陥った 妊娠馬のビデオ

胸水の増量 流産胎子の剖検像 肝臓の壊死巣 肺水腫

軽種馬における馬鼻肺炎による年度別流産発生件数 戸数 頭数 軽種馬における馬鼻肺炎による年度別流産発生件数 1998  2   2 1999  9  12 2000  8  26 2001  9  23 2002  9  10 2003 12  25 2004 14  49 2005 18  36 2006 14  38 2007 14  33 2008  5   5 日本では1957年にEHV-4が流産胎子から初めて分離され、1959年に呼吸器病の仔馬から分離された。1967年に米国から輸入した妊娠馬の流産に端を発して、北海道と千葉県で計96頭が続々と流産し、これまで経験したことがない、いわゆる「流産の嵐」が発生した。この流行が日本における最初のEHV-1感染例であり、これ以降、EHV-1とEHV-4の両ウイルスが,わが国の馬群内に広く伝播することになった。

1998~2008年における馬鼻肺炎罹患馬の月別発生状況 近年の発生状況:  259頭の内247頭(95.4%)が北海道で、青森(6)、栃木(1)、千葉(1)、広島(3)、熊本(1)であった。北海道では1農場で10頭以上の感染が起きることも珍しくない。 季節性: 発生時期は3月をピークとしている。 計 10 20 30 40 50 1 2 3 4 5 6 7 8 9 11 12 発生頭数 1998~2008年における馬鼻肺炎罹患馬の月別発生状況

JRA栗東および美浦トレーニングセンター 1980~1990年における抗体陽性頭数 JRA栗東および美浦トレーニングセンター 「ペア血清の得られた発熱馬の月別累積頭数と馬鼻肺炎ウイルスに対する抗体価上昇馬の月別累積頭数」 冬季(1~2月)に発熱馬が多く、抗体価が上昇しており、馬鼻肺炎ウイルス感染が冬季の発熱馬の原因となっている。 発熱馬の鼻汁または血液からウイルスを分離し、型別したところ、冬季(1~2月)は全てEHV-1であり、その他の時期ではEHV-4であった。罹患馬のほとんどが、トレセンで初めての冬を経験する3歳になりたての競走馬だった。

馬鼻肺炎は熱帯地域を除いて世界各国に広く分布しており、国際レースへの登録要件や帰国要件に取上げられている。 2005 1-6 2008 1-6 2008 7-12 2007 1-6 2006 7-12 2006 7-12 2005 7-12 2006 1-6 馬鼻肺炎は熱帯地域を除いて世界各国に広く分布しており、国際レースへの登録要件や帰国要件に取上げられている。 :未報告 :これまで発生なし :この期間の発生なし :感染/侵入 :臨床例あり :発生が数地区に限定 :現在流行中 国際レースに参加後帰国する 競走馬の家畜衛生条件について

馬の用途別輸入頭数 最近の輸入馬の監視伝染病の摘発状況 年度 繁殖用 乗用 競走用 肥育用 その他 合 計 1999 248 234 352 3,535 4,369 2000 179 201 338 4,130 24 4,872 2001 166 205 353 4,224 13 4,961 2002 117 187 327 4,036 9 4,676 2003 136 129 269 3,658 8 4,200 最近の輸入馬の監視伝染病の摘発状況   1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 馬伝染性貧血 1 馬パラチフス 2 4 馬ウイルス性動脈炎 馬鼻肺炎 2007年にもオーストラリアから乗用馬として輸入したものの、馬鼻肺炎で摘発されている。隔離・係留延長の措置が採られ、回復後の再検査で陰性を確認して引き渡された。

「家畜防疫対策要綱」 ● 早期妊娠診断を励行し、妊娠馬については、常に健康の保持と体力の増強を図り、諸種の感作に対する抵抗力をつけるとともに、妊娠後期は他の馬との接触を極力避ける等の措置の徹底により本病ウイルスの感染の予防に努めるよう家畜飼養者を指導する。また、必要な場合は予防接種を実施するよう併せて指導する必要がある。 ● 未発生場所の種牝馬を発生場所内の種牡馬と交配した場合は、当該地域の分娩季節が終了するまでの間は極力隔離飼養するよう家畜飼養者を指導する必要がある。 ● 原因不明の流産が起こった場合は、本病を想定して速やかに病性鑑定を行い、家畜飼養者に対し、流産馬の隔離と消毒の徹底を指導する。なお、病性鑑定用材料採取後の流産胎子・胎盤等については、適切に処分する必要がある。 ● 感染しているか又はその疑いがある馬については、極力当該地域の分娩季節が終了するまで隔離し、これらの馬との同居馬については、当該地域の分娩季節が終了するまでは、場外への移動を控え、見学者等本病ウイルスを伝播する可能性のある者の発生場所への立入りを禁止するよう家畜飼養者を指導する必要がある。

病性鑑定指針 (1)疫学調査 ① 妊娠後期(特に胎齢9~11カ月)に流産が好発 ② 秋から早春にかけ集団飼育されている育成馬に呼吸器病が流行 ③ 冬季に競走馬群内に呼吸器病が流行 ④ 最近の馬の移動,導入 (2)臨床検査 ① 突発的な流産 ② 正常分娩で生まれた子馬も2~3日以内に死亡 ③ 発 熱 ④ 漿液性から粘液性鼻汁の漏出 ⑤ 鼻粘膜の充血 ⑥ 一般症状の悪化 ⑦ 下顎リンパ節の腫脹 ⑧ 神経症状 (3)血液検査 一過性の白血球の減少 (4)剖 検(流産胎子) ① 全身臓器(特に肺,胸腺,皮下織等)の充出血,水腫 ② 胸水,腹水,心嚢水の増量 ③ 肝,胎盤,胎膜の微小白斑 病性鑑定指針 (5)病理組織学的検査(流産胎子) ① 肺の充出血,水腫,斑状壊死。 肺胞腔内への線維素の析出と気管支及び肺胞上皮細胞の壊死。気管支及び肺胞上皮細胞における好酸性核内封入体形成。 ② 肝の巣状壊死,壊死巣周辺の肝細胞 の好酸性核内封入体形成 ③ 脾,リンパ節の小壊死巣と細網細胞における好酸性核内封入体形成 (6)抗原検査 蛍光抗体法又は補体結合反応法による抗原検出 (7)血清学的検査 補体結合試験,中和試験又はELISA法 ペア血清について実施 (8)ウイルス学的検査 ・・・・・・・ (9)分離ウイルスの型別 (10)PCR検査 家畜保健衛生所の分担

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