現代の金融入門 第5章 3節 企業統治の変質と再生 現代の金融入門 第5章 3節 企業統治の変質と再生 08BD047F 神野光祐
株主の私的利益追求(株主価値最大化)=企業価値の最大化 となるので、効率的である。 日本的経営と持ち合い 19世紀における古典的企業では 労働者 →労働力の提供と引き替えに、あらかじめ契約された所得(賃金)を受け取るだけの存在 株主 →企業に資本を固定的に投下し、企業収益の変動リスクを負担。 古典的企業における、唯一の残余請求権者 株主の私的利益追求(株主価値最大化)=企業価値の最大化 となるので、効率的である。
しかし、現代の企業においては… ・企業特殊的な熟練の蓄積に対する重要性増加 ・株式市場発達に起因する、株式の流動性増加 日本的経営と持ち合い このような現状があるにも関わらず、企業特殊的な熟練を客観的に測定し、第三者に立証することは極めて困難。 だからといって古典的な企業行動のままだと、労働者の熟練蓄積のインセンティブ低下がもたらされる。 労働者は、その企業と運命を共にする度合いが高まる。 労働者と資本提供者(株主)の役割を古典的企業のケースと逆転すること。 保有株式を流通市場で売却することによって、容易に資本を引き上げることが可能 対策 株主が唯一のリスク負担者であるとは言えなくなってきている。 株式会社という法制的枠組みの下でこれを実現できるのが、株式持ち合い
株主からの制約を免れたかたちで、従業員の側が経営支配権を持つ 経営者・従業員のモラルハザードを誘発する可能性がある。 メインバンクと経営規律 株主からの制約を免れたかたちで、従業員の側が経営支配権を持つ 経営者・従業員のモラルハザードを誘発する可能性がある。 モラルハザード誘発の有無の分かれ目は、 「予算制約がソフトであるか、ハードであるか」に依る。 e.g. 収益性が低いプロジェクトでも、シェア・規模の拡大に寄与するなどの理由で採用する e.g. かけたコストに見合うだけの収益が得られるプロジェクトでないと採用しない 予算制約がハードなものとして維持されることがなければ、従業員主導による企業経営は効率的な結果を生むものではない。
当時の企業は、概して負債依存度が高かった。 メインバンクと経営規律 当時の企業は、概して負債依存度が高かった。 負債の主たる提供者であるメインバンクの了解を取ることなくしては、企業は十分な投資を行うこともできなかった。 資本の提供者に対して一定以上の見返りがある場合 → 経営者の行動の自由を認める。 見返りが確保されない(と見込まれる)場合 → 経営介入(銀行管理)が行われる =状態依存型ガバナンス 株式持ち合いとメインバンク制が対になってはじめて、 日本的経営を可能にし、それを効率的なメカニズムに保っていた。
この問題を解決するために、様々な動きが見られているが、適当な解決策は未だ見つかっていない。 経営規律の再構築 経営者・株主の両者のモラルハザードを抑制するには、一方の権利を強調するだけでは解決し得ない。 この問題を解決するために、様々な動きが見られているが、適当な解決策は未だ見つかっていない。
経営規律の再構築 ① 1990sの銀行危機の中で、不良債権償却のための財源を捻出することが必要になった ↓ 保有株式の大量売却 一定程度の株式持ち合いの解消 従業員余剰の簒奪を目的とした(と疑われる)敵対的買収の増加 買収防衛策の強化や、再び株式持ち合いの動きへ
②収益連動型報酬制度の導入 →代表例:ストック・オプション しかし、エンロン事件や今回の金融危機からも、収益連動型の報酬制度の問題が顕在化 経営規律の再構築 ②収益連動型報酬制度の導入 →代表例:ストック・オプション しかし、エンロン事件や今回の金融危機からも、収益連動型の報酬制度の問題が顕在化
③企業の内部的な統治機構の整備 経営規律の再構築 →06年の会社法改正により、現在の日本の企業は「委員会設置会社」と「監査役設置会社」という2つの企業統治の仕組みから選択することができる。 ・委員会設置会社 指名委員会、監査委員会、報酬委員会の三つの委員会を設置するとともに、業務執行を担当する役員として執行役が置かれ、経営の監督機能と業務執行機能とを分離した会社。 ・監査役設置会社 会計監査だけでなく、経営のチェック役としても監査役を導入している会社。
論点:独立役員制を導入すべきか