平成22年6月1日施行 「建築確認手続き等の運用改善マニュアル」の概要

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平成22年6月1日施行 「建築確認手続き等の運用改善マニュアル」の概要 北海道建築士会 札幌支部 青年委員会 みなさん、最近の法改正といえばどのようなものが思いつくでしょうか? 姉歯事件が発端の、建築基準法の改正や建築士法の改正。現場管理をされている方にとっては昨年、労働安全衛生規則が改正され、外部足場に巾木や中桟の設置が義務化されました。その他にも、建築に係る法改正として、今年4月に省エネ法が改正され、300㎡以上の新築・増改築については省エネに関する届出が必要となりました。さらに、最近では、環境に対する法律や優遇措置も多くなってきました。例えば、長期優良住宅の法制度や住宅エコポイント制度の創設、札幌市では2,000㎡を超える建物は建築物環境配慮計画書の提出が求められています。これはCASBEE札幌という手法用いて、建築物の環境性能を評価しなければならないものです。 こうして考えてみますと、建築士として業務は、様々な法改正に対応していかなければならなく、大変なものだとつくづく感じます。  今日は、平成19年の建築基準法の改正によって、確認審査があまりにも厳格化され、様々な問題が生じたことから、それを緩和すべく、確認審査の運用改善が6月に施行されましたので、こちらを説明いたします。 4月下旬から5月上旬にかけて行われた講習会で配付されました「建築確認手続き等の運用改善マニュアル」 についての概要となります★ こちらの資料は札幌支部青年委員会のホームページにも掲載されています★ 注意書きを記載しています。「建築確認手続き等の運用改善マニュアル」を短時間で説明ができるようにまとめた資料です。この資料だけでは間違った解釈をされることもありますので、設計の際は特定行政庁や確認審査機関にてご確認の上、業務を進めてください★  この資料は、日本ERIの「建築確認手続き等の運用改善マニュアルの概要」及び北海道の「実務に役立つ建築法規解説2009」を基に、部分的に抜粋してまとめたものです。この資料だけでは間違った解釈をされることもありますので、設計の際は特定行政庁又は確認審査機関にてご確認の上、業務を進めてください。

建築確認手続き等の 運用改善マニュアルの項目 Ⅰ.確認審査の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の見直し  2.確認審査と構造計算適合性判定審査の並行審査  3.「軽微な変更」の対象の見直し Ⅱ.申請図書の簡素化関係  1.構造計算概要書の廃止  2.建築設備に係る確認申請図書の簡素化  3.建築材料・防火設備等に係る大臣認定書の省略 Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正)  1.既存不適格建築物の増改築に係る緩和措置 今回改正の大まかな内容です★ 「確認審査の迅速化関係」では、①確認申請図書の補正対象の見直し②確認審査と適判の並行審査③軽微な変更の対象見直しが・・・★ 「申請図書の簡素化関係」については、①構造計算概要書の廃止②建築設備に係る確認申請図書の簡素化③建築材料・防火設備等に係る大臣認定書の省略 が行われました★ この他、マニュアルでは、昨年9月に改正された①既存不適格建築物の増改築に係る緩和の内容が掲載されています。 それでは、各項目ごとに少し詳しく説明させていただきます★

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 1.確認申請図書の補正の対象の拡大等① Ⅰ.確認申請の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の拡大等① 補正の対象は・・・ 【改正前】:軽微な不備(誤記、記入漏れ等) 【改正後】:不備(申請者等が記載しようとした事項が合理的に推測されるもの) 確認申請図書の補正の対象の拡大についてです★ 平成19年の法改正以降、確認申請図書で間違い等があった場合、簡単に修正や図面の差替えができなくなりました。 補正が可能であったのは、誤記や記入漏れ等でありましたが・・・★ 改正後は、「申請者等が記載しようとした事項が合理的に推測されるもの」というように、補正の対象が拡大されました。★

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 1.確認申請図書の補正の対象の拡大等② Ⅰ.確認申請の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の拡大等② 補正の手続きは・・・ 【改正前】:「適合するかどうかを決定できない旨の通知」(法定通知)を行い、一定の期限を定めて、補正又は追加説明書を求める 【改正後】:書面により通知を行い、相当な期限を定めて、補正又は追加説明書を求める(相当な期間とは概ね2週間とし、この期間は法6条第4項の期間に含む)但し、適合するかどうかを決定できない正当な理由がある場合には法定通知による 補正についての手続きですが★ 改正前は、適合するかどうかを決定できない旨の通知(法定通知)を建築主へ行い、一定の期間を定めて、補正や追加説明書を求めていました。札幌市の場合は、この法定通知を設計者へ連絡せずに直接建築主へ通知することから、建築主と設計者との間でトラブルが起こることもありました★ 改正後は、法定通知ではなく、書面により通知を行い、相当な期限を定めて、補正又は追加説明書を求めることになりました。相当な期間とは概ね2週間とし、この期間は法6条第4項でいう日数に含まれます。つまり確認審査期間が長引くことはなくなりました。ただし、適合するかどうかを決定できない正当な理由がある場合は、今まで通り法定通知によるとのことです。 ちなみに札幌市では、4号建築物については確認審査期間が短いことから、正当な理由なしに法定通知となるようです。 また、書面による通知については、設計者ではなく、建築主へ送付されるとのことでした。改正前とほとんど変わりがないような感じです★

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 1.確認申請図書の補正の対象の拡大等③ Ⅰ.確認申請の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の拡大等③ 補正の方法例は(図面の補正)・・・ ・申請図面を訂正印により訂正 ・旧図面を新図面により補正(差し替え) ・申請図面に新図面を追加する(追加説明書) 補正方法については 図面の場合、訂正印による訂正、図面の差替え、追加説明書となります。 尚、不要になった元の図面の取扱い(返却又は保存)は建築主事の判断となります★

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 1.確認申請図書の補正の対象の拡大等④ Ⅰ.確認申請の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の拡大等④ 補正の方法例は(構造計算書の補正)・・・ ・一貫計算の出力部分の一部のみの補正はできない ・入力データの修正が適切に行われているか確認するため、新旧比較表などの補足資料が必要な場合がある ・提出された構造計算書のうち補正の対象とならないものは追加説明書として扱われる(元の計算書に対する補足の説明書等) ・荷重等に軽微な不整合があっても、建物全体に影響を及ぼさないことが確認できる追加説明書にあっては、一貫計算の部分的出力や再計算によらない、部分的な検討でかまわない 次は構造計算書の補正についての注意点です。 一貫計算ソフトの出力部分の一部のみの補正はできません。 変更部分がわかるような新旧比較表などの補足資料が必要な場合があります。 補正の対象とならないものは追加説明書として取り扱います。また、荷重等の軽微な不整合があっても、建物全体に影響を及ぼさない追加説明書の場合、一貫計算の再計算等によらない、部分的な検討でかまいません★

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 2.確認審査と構造計算適合性判定審査との 並行審査について Ⅰ.確認申請の迅速化関係  2.確認審査と構造計算適合性判定審査との   並行審査について 建築主事が構造計算適合性判定を求める時期は・・・ 【改正前】:構造に係る確認審査後に求める 【改正後】:当該確認審査を終える前においても、構造計算適合性判定を求めることができる 次は確認審査と構造計算適合性判定審査、いわゆる適判との並行審査についてです★ 改正前は、構造に係る確認審査が終わってからでなければ、適判に進めませんでした★ 改正後は、確認審査と適判を並行審査することが可能となりました★ ただし、確認審査と同時に並行審査されるものではなく、事前に申請図書の整合性を確認するなど並行審査の可否を判断してから並行審査となりますので、確認済が大幅に早まるものではないようです。 札幌市からの情報ですが、仮に並行審査となった場合、適判審査側の審査内容が増えること、それから適判審査の不備と確認審査側の不備を整合させる手間もかかることから、逆に審査期間が延びてしまう可能性があるようです。 また、並行審査については、するかしないかを設計者側は選択することができるとのことですが、実際のところ並行審査をしない方が早く確認が下りるのではないかと聞いています。 一見、並行審査となることで、確認審査期間が短縮されるように見受けられますが、実際のところそうでもないようです。現段階では、安易にお客様等へ、確認審査の期間が短縮するというような説明はしない方が良いのかもしれません★ 日本ERI 資料より ※確認申請と同時に並行審査されるものではなく、申請図書等の整合性 を確認するなど並行審査の可否を判断してから並行審査となる

Ⅰ.確認申請の迅速化関係 3.「軽微な変更」の対象の見直し Ⅰ.確認申請の迅速化関係  3.「軽微な変更」の対象の見直し 計画の変更に係る確認を要しない 「軽微な変更」の対象は・・・ 【改正前】:安全上、防火上及び避難上の危険の度並びに衛生上及び市街地の環境の保全上の有害な度が高くならないもの 【改正後】:変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの ※例えば間仕切位置、天井高さ、階段段数、基礎杭の位置や構造、小梁の位置、鉄骨種別や断面性能、配管貫通口等の壁開口部の位置や大きさ、ダクト長さなどの変更 次は計画変更に係る、軽微な変更の対象見直しについてです★ 改正前は、安全上、防火上及び避難上危険の度合いが高くならないもの、並びに衛生上及び環境の保全上有害な度合いが高くならないものが軽微な変更でした。ちょっとした変更も、軽微な変更とならずに、計画変更確認申請となってしまい、場合によっては工事がストップするようなこともありました★ 改正後は、建築基準関係規定に適合することが明らかなものは軽微な変更という扱いとなります★ 例えば、間仕切壁の位置、天井高さ、階段段数、基礎杭の位置や構造、小梁の位置、鉄骨種別や断面性能、配管貫通口等の壁開口部の位置や大きさ、ダクト長さの変更などです。 補足ですが、この内容は変更後に危険側な結果になる場合でも、建築基準関係規定に適合することが明らかであれば、軽微な変更として扱うようです。ただし、計画変更確認申請は必要ないのですが、図面や計算書等の提出は必要です ★

Ⅱ.申請図書の簡素化関係 1.構造計算概要書の廃止 Ⅱ.申請図書の簡素化関係  1.構造計算概要書の廃止 ・「構造計算概要書」が確認申請図書の添付図書から除外された ※これまで構造計算概要書に記載していた、「構造上の特徴」「構造計算方針」「適用する構造計算」「使用プログラムの概要」は引き続き提出し、「構造計算書の構成が分かる目次」についても、同様に、構造計算書の表紙の次に記載すること ここからは、申請図書の簡素化関係に入ります。 構造計算書にはこれまで構造計算概要書を添付していましたが、改正後、廃止となりました。 ただし、これまで構造計算概要書に記載していた「構造上の特徴」「構造計算方針」「適用する構造計算」「使用プログラムの概要」は引き続き提出し、「構造計算書の構成が分かる目次」についても、同様に、構造計算書の表紙の次に記載することとなっています★

Ⅱ.申請図書の簡素化関係 2.建築設備に係る確認申請図書の簡素化 Ⅱ.申請図書の簡素化関係  2.建築設備に係る確認申請図書の簡素化 ・「非常用照明の構造詳細図」の提出が不要となった ・「水洗便所に係る構造詳細図」の提出が不要となった ・「配管設備に係る構造詳細図」のうち仕様書等で確認可能なものは提出が不要となった ・「換気扇の構造詳細図」の提出が不要となった。  ただし、換気扇を設けた換気設備の「外気の流れによって著しく換気能力が低下しない構造」に係る構造詳細図については必要 次に建築設備に係る確認申請図書の簡素化ですが、こちらの内容は改正前から、ほとんどの確認審査機関等で、すでに運用されていた内容であると思われますので、説明を省略させていただきます。 4項目については、ただし書きがありますので少しだけ説明します。 換気扇の構造詳細図の提出が不要となりました。ただし、換気扇を設けた換気設備の「外気の流れによって著しく換気能力が低下しない構造(これはセルフード等のことです)」に係る構造詳細図については必要とのことです★

Ⅱ.申請図書の簡素化関係 3.建築材料・防火設備等に係る確認申請図書 の簡略化(大臣認定書の省略について) Ⅱ.申請図書の簡素化関係  3.建築材料・防火設備等に係る確認申請図書   の簡略化(大臣認定書の省略について) ・「建築材料(防火材料やシックハウス建材)」に係る認定書の添付が不要となった ・「防耐火構造、防火区画、区画貫通の管及び遮音構造」に係る認定書の添付が不要となった 次に大臣認定書の省略についてです。 これまで、防火材やシックハウス建材、防耐火構造、防火区画、区画貫通管及び遮音構造等に係る、大臣認定書を確認申請図書に添付していましたが、改正後、不要となります。 これは、審査機関等が大臣認定書を参照できる環境を整備することから不要となりました★

Ⅱ.申請図書の簡素化関係 4.その他運用の円滑化に係る事項① Ⅱ.申請図書の簡素化関係  4.その他運用の円滑化に係る事項① ・「歩行距離」については、階ごとに直通階段に至る歩行距離が最大となるものが明らかな場合は、その最大となる歩行距離のみについて明示すればよい ・「床面積求積図」について、CAD等を用いる場合は三斜求積とする必要はない。ただし、求積に必要な建築物の各部分の寸法及び算式については明示することが必要 ・「かまど、こんろその他設備器具の位置、種別及び発熱量」の記載について、発熱量の根拠となるカタログ等の提出は不要となった 次は、その他運用の円滑化に係る事項についてでが、こちらの内容も改正前から、ほとんどの確認審査機関等で、すでに運用されていた内容であると思われますので、説明を省略させていただきます★

Ⅱ.申請図書の簡素化関係 4.その他運用の円滑化に係る事項② Ⅱ.申請図書の簡素化関係  4.その他運用の円滑化に係る事項② ・「給気機又は排気機の給気又は排気能力及びその算出方法」の記載について、PQ線図(ダクト抵抗曲線に対する排気量を記載した線図)を記載すれば、換気設備機器のカタログの提出は不要となった ・建築設備の確認申請図書における「二面以上の断面図」の記載について、二面以上の断面図に明示すべき事項を他の図書(平面図、系統図等)に明示した時は、当該事項を二面以上の断面図に明示することは不要となった 同じく、こちらもすでに運用されていた内容であると思われますので、説明を省略させていただきます★

Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正) 1.既存不適格建築物の 増改築に係る緩和措置① Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正)  1.既存不適格建築物の   増改築に係る緩和措置① 既存不適格建築物への増築について 既存床面積の1/2以下までの増築に限り緩和となる  1.増築部分は仕様規定に適合  2.既存部分は耐久性等関係規定に適合  3.構造上一体・分離の別により、次ページの表に示す   構造計算が必要(緩和部分)  ※既存部分(4号木造建築物以外)については、令82条1~3号により、地震以外の外力・荷重に対する確認が必要(長期荷重の構造計算)。垂直積雪量が改正された平成12年以前の建物はNGの可能性が高い。仮にNGを解消するため補強改修した場合、確認審査機関はその補強の適切性を判断することが困難であるため、実質、増築不可能なケースが多い これまでは、平成22年6月改正の部分でした。ここからは、昨年9月に改正された、既存不適格建築物の増改築に係る緩和措置について説明させていただきます。 ひと昔前はエキスパンションジョイントにより増築すれば、既存建物の構造計算書の提出は必要ありませんでした。とても良い時代だったと思います。しかし、平成17年6月からは、増築部分の規模やエキスパンションジョイントの有無によって、既存建物への詳しい制限がされるようになっています★ 昨年の改正では、増築する建物の規模が、既存床面積の1/2以下までの増築に限り緩和となっています。 1/2以下までの増築の場合、次の3つの項目に適合しなければなりません★ 1.増築部分は仕様規定に適合(令36~80条)★ 2.既存部分は耐久性等関係規定に適合(令36条)★ 3.構造上一体・分離の別により、次ページの表に示す構造計算が必要 緩和となったのはこの3番目の項目です★

Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正) 1.既存不適格建築物の 増改築に係る緩和措置② Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正)  1.既存不適格建築物の   増改築に係る緩和措置② 4号木造建築物 左記以外の建築物 構造上一体 建築物全体 釣り合いよく耐力壁を配置すること等の基準*に適合すれば構造計算は不要 ほぼ通常の構造計算 構造上分離(EXP.J) 増築部分 構造計算不要 既存部分 次のいずれかに適合すれば構造計算は不要 ①釣り合いよく耐力壁を  配置すること等の基準 ②耐震診断基準 ③新耐震基準 ①耐震診断基準 ②新耐震基準 こちらが、構造計算の有無を示した表です。青色文字の部分が、緩和された内容です。 構造上一体として増築した場合、4号木造建築物においては、建物全体が、釣り合いよく耐力壁を配置すること等の基準*(令42条(土台)、43条(柱)及び46条(耐力壁)の基準(枠組壁工法、木質プレハブ工法の場合 は、H13告1540第一~第十の規定) )に適合すれば構造計算は不要となります。4号木造建築物以外は、建物全体の構造計算が必要となります。 構造上分離(エキスパンションジョイント)により増築した場合、4号木造建築物においては、増築部分は構造計算不要です。既存部分は次の①~③のいずれかに適合すれば構造計算は不要となります。  ①釣り合いよく耐力壁を配置すること等の基準  ②耐震診断基準  ③新耐震基準 4号木造建築物以外においては、増築部分は構造計算が必要です。既存部分については次の①~②のいずれかに適合すれば構造計算は不要となります。  ①耐震診断基準  ②新耐震基準 新たに②新耐震基準が加わり緩和となっています。既存建築物が昭和56年以降に建設されていれば新耐震基準にて設計されていますから、構造計算不要になるわけです。 ただし、一番下のところに赤で記載されています。表により構造計算が不要となっても、長期荷重の構造計算が必要となります★ *令42条(土台)、43条(柱)及び46条(耐力壁)の基準(枠組壁工法、木質プレハブ工法の場合 は、H13告1540第一~第十の規定) ※青文字が緩和部分  ※既存床面積の1/2以下までの増築に限る 注:表により構造計算が不要となっても、長期荷重の構造計算は必要

Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正) 1.既存不適格建築物の 増改築に係る緩和措置① Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正)  1.既存不適格建築物の   増改築に係る緩和措置① 既存不適格建築物への増築について 既存床面積の1/2以下までの増築に限り緩和となる  1.増築部分は仕様規定に適合  2.既存部分は耐久性等関係規定に適合  3.構造上一体・分離の別により、次ページの表に示す   構造計算が必要(緩和部分)  ※既存部分(4号木造建築物以外)については、令82条1~3号により、地震以外の外力・荷重に対する確認が必要(長期荷重の構造計算)。垂直積雪量が改正された平成12年以前の建物はNGの可能性が高い。仮にNGを解消するため補強改修した場合、確認審査機関はその補強の適切性を判断することが困難であるため、実質、増築不可能なケースが多い もう少し詳しく説明しますと★ 既存部分が4号木造建築物以外のRC造やS造などの場合は、令82条1~3号により地震以外の外力・荷重に対する確認が必要になります。つまり長期荷重の構造計算が必要ということになります。 北海道では平成12年に垂直積雪量が改正され、積雪荷重が増えていますので、平成12年以前の建物は構造計算の結果、NGとなる可能性が高いです。仮にNGを解消するため補強改修した場合、確認審査機関等はその補強の適切性を判断することが困難であるため、実質、増築不可能なケースが多いようです。 そこで、結局は既存建築物の構造計算を避けるため、既存床面積の1/20以下の渡り廊下を設けて、増築するという方法が一般的となっているようです★

建築確認手続き等の 運用改善マニュアルの項目 実情、大きな緩和内容ではなかった Ⅰ.確認審査の迅速化関係  1.確認申請図書の補正の対象の見直し  2.確認審査と構造計算適合性判定審査の並行審査  3.「軽微な変更」の対象の見直し Ⅱ.申請図書の簡素化関係  1.構造計算概要書の廃止  2.建築設備に係る確認申請図書の簡素化  3.建築材料・防火設備等に係る大臣認定書の省略 Ⅲ.その他関係(平成21年9月改正)  1.既存不適格建築物の増改築に係る緩和措置 それほど期間短縮は見込めない 大きな緩和かもしれない審査機関に事前確認必要 S造・RC造は長期の構造計算必要。NGになる可能性あり 最後にもう一度、今までの内容を、おさらいします。 今回、仰々しくマニュアルまで作成されているのですが、実情は、審査機関等で既に運用が改善されている部分も多く、大きな緩和内容ではなかったようです★ ただ、青文字の部分3項目については注意が必要です。 一つ目。確認審査と適判の並行審査については、確認審査の期間が大幅に短縮されることを期待していましたが、実情、並行審査による審査期間の短縮は見込めず、建設工事の工程を考える上では、従来と同等の審査期間を想定しておくことが望ましいと言えます★ 二つ目。軽微な変更の対象の見直しについては、建築基準関係規定に適合することが明らかであれば、軽微な変更という扱いになります。これはひょっとすると大きな緩和になっているのかもしれません。いずれにしても、軽微な変更の扱いについては、あいまいな部分が多いので、特定行政庁や確認審査機関に確認をとってから業務を進めるようにしてください★ 最後に、既存不適格建築物の増改築に係る緩和措置については、S造やRC造の場合、既存建物が新耐震基準に適合していれば、既存建物の構造計算は不要ですが、それとは別に、積雪荷重を含めた長期荷重時の構造計算が必要であることから、積雪荷重の改正があった平成12年以前の既存建物であれば、計算はNGとなる可能性が高く、実質、増築不可能なケースが多いです★ 以上、「建築確認手続き等の運用改善マニュアル」の概要を説明させていただきました。