IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人 http://blog.canpan.info/iihoe/ 社会貢献と事業開発を融合し、 「戦略的投資」を加速する Designing Hybrid Value Chains for Global Social/Business Challenges - なぜ、日本企業は「社会課題に挑む起業家」の支援に取り組むべきか? - IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人 http://blog.canpan.info/iihoe/
延長線上で考えるな! 日本のGDPが世界に占める割合が最大だったのは? 2010年に日本のGDPが世界に占める割合は? では、2016年には? 同年、中国のGDPは日本の何倍? 同年、ブラジルの1人当たりは、日本のいつと同じ? それは、韓国のいつと同じ?
延長線上で考えるな! 日本のGDPが世界に占める割合が最大だったのは? → 1994年(17.8%) 2010年に日本のGDPが世界に占める割合は? → 8.7% では、2016年には? → 7.2%(1970年ごろ並み!) 同年、中国のGDPは日本の何倍? → 1.72倍 同年、ブラジルの1人当たりは、日本のいつと同じ? → 1986年 それは、韓国のいつと同じ? → 2005年・2009年
日本の「100年に1度」はこれから! 2015年 2020年 全国 ・高齢者率27%! ・医療・福祉の量・質不足蔓延 ・「団塊」が介護・年金対象に ・大学全入世代が就職 ・高齢者率30%! ・医療・福祉の運営統合本格化 ・GDP:インドに抜かれ4位? → 中国は日本の2倍に! ・資源価格の高騰続く 地域 ・首都圏・東海圏に人口集中 ・財政健全化法による可視化 → 公立病院の縮小・弱体化 ・労働集約型現場の外国人 必須(農林水産漁業、組立、 食品加工、看護・介護etc.) ・定住外国人2世が就職齢期に ・医療・介護による自治体破綻 → 救済合併へ ・中山間地の農畜林産業荒廃 → 水源涵養林保全 緊急対策 ・60年代製インフラ要補修期に → 年間数十兆円? 財源?? → だからこそ戦略的投資が不可欠!
地球規模では 温暖化の進行 → 途上国での深刻化 生物多様性の急速な破壊 ディジタル・ディバイドの影響が顕在化 安全のコストは高まる 抑制・防止より、適応の支援を急ぐ! 高係数物質の回収・破壊支援! 生物多様性の急速な破壊 特に重要な生態系に、集中的な保全が必要 自社が受ける「生態系サービス」の可視化を急ぐ! ディジタル・ディバイドの影響が顕在化 ユビキタス社会は「ディジタル当然社会」であり、 「アクセスできるか×使いこなせるか」のカベの克服 安全のコストは高まる ユビキタス社会は「テロ・攻撃に脆弱な社会」でもある 資源価格の高騰は続く 原因は「途上国の消費拡大」ではなく「生産・移動の効率化遅れ」
2015年-20年の主な地域別課題 2015年 2020年 東アジア 所得格差拡大、水不足 急速な高齢化 東南アジア 少子化、水・電力不足、HIV 産業構造転換、 高齢化に伴う社会保障需要 南アジア HIV、水不足、教育格差 所得格差の拡大 アフリカ HIV、食糧生産・供給、 行政の信頼性確立 持続可能な産業育成、 教育格差 欧州 地域差のモザイク化、 東欧の社会保障需要 高福祉を支える成長要因? 北米 70年代の再来? 世代差=人種差 中南米 行政の信頼性確立、 革新派元首の成果? 持続可能な産業育成 中東 イスラム内の対立 民主化・市場化の葛藤 (女性、富の偏在など)
「財団には戦略が必要」 『価値を創造する助成へ』(M.ポーターら著、IIHOE刊)より 「戦略とは選択」 1.目的は、特定の分野における、より高い事業成果 2.戦略は、独特のポジショニングによって決まる 3.戦略は、独特の活動に始まる 4.活動領域の特定には、トレード・オフが必要 しかし現実は? 「分散」と「配分」 → 明確な成果を意図した投資ではない 評価 → アウトプットのみ、助成先からの報告のみ、 個別の案件単位 では、企業の社会貢献活動は?
戦略を持つことの意義? 分野を絞り込む 優秀な社員をボランティアとして送り出す 事例を共有する 受益者による評価と、助成先との合同評価 → 分野を理解する → 成功の確率が高まる → 積極的な「自社らしさ」(現状は消極的なユニークさ) 優秀な社員をボランティアとして送り出す → 互いの顔が見える → 地域レベルの継続的な取り組みにもつながる 事例を共有する → ベンチマーキングの誘発 → 他社との連携・合同プロジェクトの可能性も 受益者による評価と、助成先との合同評価
2020年に向けた戦略の基本軸 相対優位ではなく、絶対的存在感へ → 各地域の最重点課題に焦点を当てる 商品と人材(機能)の提供を加速する 「らしさ」とは、社の基本価値の体現 社是の精神の具現化(を補う) 従来の本業の延長(を補う) 未来の本業のための基盤整備 → 各地域の最重点課題に焦点を当てる 商品と人材(機能)の提供を加速する 精度を高める中期的パートナーシップ
社会貢献活動の大きなシフト → 本業に直結する、継続的な社会参画の拡充 ・世界金融危機は、大きな試練の引き金に ・大口寄付・助成への依存による、給与の高騰 ・雇用促進系プログラムは、「出口」も「資金」も枯渇 ・現金ではなく、企業のコア・コンピタンスの提供 ・現物寄付も増加傾向 ・医薬系では90%超、IT系・食品・流通系も50-80%が現物 ・Philips http://www.businessweek.com/magazine/content/08_38/b4100066756397.htm ・American Express http://www.businessweek.com/magazine/content/08_32/b4095058414651.htm → 本業に直結する、継続的な社会参画の拡充 Hybrid Value Chains (A New Alliance for Global Change) http://hbr.org/2010/09/a-new-alliance-for-global-change/ar/1
米国主要企業の現物(製品・サービス)寄付(09年) 単位:百万ドル、( )内は寄付総額に占める現物の比率 Oracle Corporation 2,083 (99.6%) ソフトウェア ConAgra Foods 20 (79.2%) 食品 Pfizer 2,286 (97.4%) 医薬品 Microsoft Corporation 403 (78.1%) Merck & Company 866 (93.8%) IBM 145 (77.6%) コンピュータ、 Comcast Corporation 367 (90.2%) 放映・通信料 Johnson & Johnson 461 (72.4%) 日用品、医療器具、医薬品 Abbott Laboratories 525 (90.0%) 医薬品・医療器具 Marriott International 15 宿泊・飲食の無償・割引提供 Southwest Airlines 10 (89.1%) 旅客航空券、 貨物輸送 CVS Caremark Corporation 46 (69.6%) 日用品 Eli Lilly & Company 334 (82.5%) BJ’s Wholesale Club 7 (67.5%) 食品、小売製品 Bristol-Myers Squibb 233 (82.3%) Cisco Systems 83 (65.1%) Tyson Foods 13 (81.9%) Hewlett-Packard Company 34 (62.5%) 家電製品 Kraft Foods 82 (81.6%) 19社計 8,021百万ドル、平均80.8% 日本企業も、もっと現物寄付を!
慈善的な配分から、戦略的な投資と協働へ 企業とNPOとの協働の領域(博報堂・IIHOE) 本業(business oriented) (営業・生産部門が担当→専門性高い&重視) 本業に関係する、単発的な社会貢献 例:売上の一部を寄付 周年記念事業 医薬品メーカーの保健啓発広告 運輸業界の交通安全キャンペーン 本業に直結する、継続的な社会参画 (cause-related marketing) 例:NPOへの無償提供・割引販売 NPOとの協働商品開発 NPOとの協働販売促進 IT企業によるIT技術・製品支援 ←単発的(content oriented) 本業に関係がうすい、単発的な社会貢献 (慈善型の協賛:charitable sponsorship) 例:災害など突発的事態への対処 チャリティー・コンサートへの協賛 社員に対する、地域活動の案内 継続的(context oriented) → 本業に関係がうすい、継続的な社会貢献 (strategic philanthropy) 例:障碍者の芸術活動支援 継続的な清掃活動 環境や文化に関する連続講座 地域の子どもたちへの就業体験協力 非本業(philanthropy oriented) (広報・社会貢献部門が担当→専門性形成に課題)
本業(business oriented) 非本業(philanthropy oriented) 東日本大震災の被災地・被災者支援でも 本業(business oriented) (営業・生産部門が担当→専門性高い&重視) 本業に関係する、単発的な社会貢献 例:自社製品・サービス提供 google、ユニクロ、ニトリ、IKEA、ソフトバンク、 ガリバー、メガネの三城、すかいらーく、 宮城県企業人材支援協同組合(ボランティア・ コーディネート) 本業に直結する、継続的な社会参画 (cause-related marketing) 例:コメリ、ホンダ、富士通、 売上連動寄付(ヤマト運輸、伊藤園、イオン) ←単発的(content oriented) 本業に関係がうすい、単発的な社会貢献 (慈善型の協賛:charitable sponsorship) 例:日赤・中央共募への寄付(主に義援(捐)金) ソフトバンク 孫社長の100億円 継続的(context oriented) → 本業に関係がうすい、継続的な社会貢献 (strategic philanthropy) 例:継続的なボランティア派遣(三菱商事) 遺児・孤児への支援(ロート製薬) 非本業(philanthropy oriented) (広報・社会貢献部門が担当→専門性形成に課題)
「人とコミュニティをつなぐ 安全・安心な都市・地域づくり」を 効果的に実現するために 主体があくまで地域の住民なら、 ・自律=自己決定を促すために、 判断根拠資料を相対的・中期的に示す (主導的・創発的でなくても、遅れるのは 嫌な国民性) ・自立=持続可能性を促すために、 地域最適な経済モデルの(再)構成提案
今回の被災地は、なぜ「自律的復興」が難しいか? 09年民営事業所数 総数 新設 廃業 全国 6,199,222 611,499(9.3%) 1,072,579(16.2%) 岩手県 宮古市 大船渡市 陸前高田市 釜石市 66,009 2,977 2,654 1,231 2,343 5,398(7.6%) 192(5.8%) 127(4.3%) 58(4.3%) 157(6.1%) 10,501(14.8%) 518(15.7%) 402(13.7%) 172(12.8%) 377(14.7%) 宮城県 石巻市 気仙沼市 南三陸町 女川町 111,343 9,016 3,994 870 615 11,267(9.4%) 691(7.1%) 231(5.3%) 61(6.5%) 20(3.0%) 20,420(17.1%) 1,426(14.7%) 607(14.0%) 123(13.2%) 81(12.0%) 福島県 いわき市 相馬市 南相馬市 101,403 15,986 1,915 3,594 7,766(7.1%) 1,354(8.0%) 131(6.1%) 237(6.2%) 16,056(14.7%) 2,448(14.4%) 358(16.8%) 484(12.6%)
今回の被災地は、なぜ「自律的復興」が難しいか? 他市町村への転出 計 生産人口 男 女 岩手県(前年比) 宮古市 大船渡市 陸前高田市 釜石市 大槌町 山田町 沿岸被災 計 43880(+4%) 1950(+11%) 1788(+58%) 1666(+207%) 1984(+66%) 1607(+272%) 1201(+144%) 10492(+97%) 3489(+1%) 1464(+3%) 1326(+43%) 1110(+199%) 1256(+40%) 1001(+191%) 815(+102%) 7196(+65%) 2254(+4%) 999(+11%) 929(+67%) 811(+199%) 962(+62%) 734(+249%) 551(+131%) 5120(+90%) 18405(+2%) 771(+5%) 733(+57%) 549(+138%) 651(+46%) 468(+187%) 382(+88%) 3658(+63%) 2133(+4%) 951(+11%) 859(+49%) 855(+216%) 1022(+70%) 873(+293%) 650(+156%) 5372(+105%) 16492(△0%) 693(+1%) 593(+28%) 561(+150%) 605(+35%) 533(+196%) 433(+116%) 3538(+67%) 宮城県 石巻市 気仙沼市 亘理町 女川町 南三陸町 124146(+18%) 8843(+129%) 3452(+114%) 1993(+101%) 912(+132%) 1687(+330%) 62039(+98%) 97685(+12%) 6239(+97%) 2449(+78%) 1435(+72%) 552(+75%) 1037(+207%) 46862(+70%) 63737(+15%) 4326(+118%) 1739(+110%) 970(+102%) 447(+106%) 813(+351%) 31664(+92%) 51579(+11%) 3210(+92%) 1289(+79%) 691(+68%) 295(+75%) 524(+233%) 24698(+67%) 60409(+21%) 4517(+141%) 1713(+119%) 1023(+101%) 465(+164%) 874(+312%) 30375(+105%) 46106(+14%) 3029(+101%) 1160(+78%) 744(+77%) 257(+104%) 513(+185%) 22164(+75%) 福島県 いわき市 相馬市 南相馬市 浪江町 80735(+36%) 11920(+55%) 1795(+45%) 4905(+16%) 1536(+113%) 24376(+72%) 60462(+18%) 8721(+36%) 1305(+34%) 3367(+126%) 994(+69%) 17157(+43%) 40510(+30%) 6031(+43%) 910(+41%) 2427(+148%) 753(+112%) 12200(+60%) 31012(+18%) 4549(+25%) 682(+29%) 1720(+113%) 524(+72%) 8903(+32%) 40225(+42%) 5889(+69%) 885(+49%) 2478(+188%) 783(+114%) 12176(+90%) 29450(+29%) 4172(+43%) 623(+38%) 1647(+141%) 470(+66%) 8254(+58%) 沿岸被災地の転出数は、岩手・宮城で前年比の約2倍、福島で7割増 うち7割が生産人口→ 地域を知り、支えてきた人たちの流出が加速
今回の被災地は、なぜ「自律的復興」が難しいか? 転入出差 計 生産人口 男 女 岩手県(前年比) 宮古市 大船渡市 陸前高田市 釜石市 大槌町 山田町 沿岸被災 計 -3443( -0%) -394(-0%) -660(-1%) -1184(-5%) -760(-1%) -1299(-8%) -755(-4%) -5710(-3%) -3267(-0%) -187(-0%) -435(-1%) -743(-6%) -310(-1%) -772(-9%) -465(-4%) -2999(-3%) -1376(-0%) -132(-0%) -312(-1%) -552(-5%) -292(-1%) -577(-8%) -305(-3%) -2216(-2%) -1472(-0%) -38(-0%) -233(-2%) -344(-5%) -112(-1%) -351(-8%) -182(-3%) -1295(-2%) -2067(-0%) -262(-0%) -348(-1%) -632(-5%) -468(-2%) -722(-8%) -450(-4%) -2954(-3%) -1795(-0%) -149(-0%) -202(-1%) -399(-6%) -198(-1%) -421(-9%) -283(-5%) -1704(-3%) 宮城県 石巻市 気仙沼市 亘理町 女川町 南三陸町 -6402(-0%) -5459(-3%) -2375(-3%) -900(-2%) -724(-7%) -1628(-9%) -18606(-3%) -4632(-0%) -3672(-3%) -1567(-3%) -632(-2%) -406(-7%) -990(-9%) -12095(-3%) -2220(-0%) -2515(-3%) -1138(-3%) -433(-2%) -352(-7%) -783(-9%) -8782(-3%) -1496(-0%) -1772(-3%) -779(-3%) -289(-2%) -219(-7%) -497(-9%) -5798(-3%) -4182(-0%) -2944(-3%) -1237(-3%) -467(-2%) -372(-7%) -845(-9%) -9824(-3%) -3136(-0%) -1900(-4%) -788(-3%) -343(-3%) -187(-7%) -493(-10%) -6297(-3%) 福島県 いわき市 相馬市 南相馬市 浪江町 -31381(-1%) -6194(-1%) -641(-1%) -3523(-5%) -1140(-5%) -14321(-3%) -20754(-1%) -4067(-1%) -420(-1%) -2314(-5%) -737(5%) -9362(-3%) -13798(-1%) -2736(-1%) -343(-1%) -1662(-4%) -569(-5%) -6748(-3%) -8885(-1%) -1763(-1%) -236(-2%) -1098(-5%) -407(-6%) -4484(-3%) -17583(-1%) -3458(-2%) -298(-1%) -1861(-5%) -571(-5%) -7573(-3%) -11869(-1%) -2304(-2%) -184(-1%) -1216(-5%) -330(-5%) -4878(-3%) 死亡・行方不明者数の2倍の人口流出→被害の大きさと比例 生産人口 約1割減の地域も!、女性・年少人口の流出も顕著
高齢者率と重ねあわせると?
足りないのは、自律的な復興を担う人材と再生の過程を支え続ける資金 ・復旧が復興を意味しない、最初で大規模な災害 (阪神も中越も、戻るべき仕事は残っていた) ・もともと生産人口比率が低いところに、 被災による死亡・行方不明者と流出が重なる (津波で人口1割、流出で生産人口1割を失った町も) ・政府の資金は、原則的にハードの回復のみ (コミュニティの再生に、誰が投資する?) →自ら決め、動き出し、進み続ける復興を担う人材と 再生の長い道のりを支え続ける資金が、 圧倒的に不足している!