IVR基礎知識
IVRの起源と名称 ■IVRとはInterventional Radiologyのわが国における略語である。 ■IVRは日本語として適切な言葉はない。 ■欧米では「IR」が略語として用いられている。 わが国では「IVR」が略語として一般化
日本IVR学会 ■本邦では1982年に症例検討会としてスタート。 ■1992年日本血管造影,インターベンショナルラジオロジー学会設立 ■2006年に日本インターベンショナルラジオロジー学会(日本IVR学会)と改称された。 正会員(2005年)1827名 (放射線科1613名)
IVRの分類 ①血管系IVR/Vascular Intervention ・IVRの中で血管造影手技を用いる事により血管内を 経由して病巣の加療を行うもの。 ・血管内治療とも呼ばれIVRの中心をなす領域 ・IVRの適応は低侵襲故に外科手術に比べ一般に広 いが限界もある。 ②非血管IVR/non-vascular intervention ・ガイド法と穿刺技術が重要 ガイド法:X線透視,CT,超音波 ・穿刺経路の解剖を熟知することが重要。穿刺に引き 続き様々な操作を行う。(造影・生検・ドレナージ・・・)
弊社製品群主な適応疾患(血管系IVR) 【血管塞栓術】 ・腫瘍血管塞栓術 (肝細胞癌/子宮筋腫) ・止血 (消化管出血・術後出血・喀血・骨盤骨折) ・異常血管塞栓術 (肺動静脈奇形・静脈瘤・動脈瘤 ・その他 (部分的脾塞栓術) 【動注療法】 ・動注化学療法 (肝細胞癌・転移性肝癌・頭頸部がん・子宮がん膀胱がん) ・肝動注リザーバー (転移性肝癌・肝細胞癌)
TACE(肝動脈化学塞栓療法) Transcatheter Arterial Chemo Embolization
肝臓 正常成人の肝重量 体重の1/50(1から1.5kg) 肝臓の血管 肝臓は酵素を運ぶ肝動脈。消化管からの栄養素を運ぶ門脈、肝静脈の3本の血液循環系を持つ。 肝臓の働き 代謝:消化管からの栄養素の代謝 解毒:体内の有害物質の無毒化 胆汁生成:脂質の消化吸収を助ける胆汁生成
肝臓病 肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれ自覚症状が出にくいのが特徴 症状:発熱、腹痛、嘔吐、体のだるさ、黄疸 肝臓病の原因別分類 ●ウィルス 肝炎(急性、慢性、劇症)、肝硬変、肝がん ●生活習慣 アルコール:アルコール性肝障害 過食、肥満:過栄養性脂肪肝
肝炎 肝炎・・・肝細胞が破壊されている状態 原因:ウィルス、薬物、アルコール、自己免疫性 ■ウィルス性肝炎 ①急性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎 ※慢性肝炎: B型、C型ウィルスによるものが殆ど。 6か月以上肝障害が持続。徐々に線維化し肝硬変に至る。 B型肝炎(15%) C型肝炎(75%) キャリア数 約110万~140万人 約190~230万人 患者数 約7万人 約37万人 治療法 抗ウィルス療法(インターフェロン等) ワクチン あり なし
B型・C型肝炎ウィルスの感染経路 妊娠・分娩による感染 血液製剤の注射による感染 針刺し行為による感染 etc・・・
肝癌の発生 肝不全 慢性肝炎 肝硬変 肝 癌
肝癌の分類 肝癌は原発性と転移性に大別される。 原発性肝癌 25%(肝細胞がん(90%)胆管細胞がん) 肝癌の分類 肝癌は原発性と転移性に大別される。 原発性肝癌 25%(肝細胞がん(90%)胆管細胞がん) 転移性肝癌 75%(胃がん、大腸がん、膵がん) ※TACEは原発性肝がんの肝細胞がん (HCC:Hepatocellular Carcinoma)を主な対象と している。 ■国内死亡原因 1位 悪性新生物 30.1% 2位 心疾患 15.8% 3位 脳血管疾患 10.7% ■部位別がん死亡率(人口10万人当たりの死亡者数) 男性:1位 肺がん 2位胃がん 3位大腸がん 4位肝臓がん 女性:1位大腸がん 2位肺がん 3位胃がん 6位肝臓がん
肝細胞癌 ■年間死亡者数 約34,000人 (転移性肝がんは原発性肝がんの3倍以上) ・原発性肝がんの90%以上を占める。 ・肝内転移が多い ・男性に多い
肝細胞癌(肝癌)に対する治療方法 手術(肝移植を含む) 経皮的局所療法(ラジオ波) 肝動脈化学塞栓療法 (TACE) 動注化学療法 根治的治療 姑息的治療 手術(肝移植を含む) 経皮的局所療法(ラジオ波) 肝動脈化学塞栓療法 (TACE) 動注化学療法 放射線療法
肝細胞癌(肝癌)に対する治療方法 手術(肝切除) 局所治療(経皮的ラジオ波凝固術:RFA)
Controversy 肝機能の悪い方:RFA>手術 腫瘍径2㎝以下:RFA=手術 腫瘍径2-3㎝:RFA?手術 手術:残肝機能,負担が大きい RFA:部位によって穿刺困難。 大血管の近くは焼けにくい
肝細胞癌治療アルゴリズム
肝動脈化学塞栓術 ・肝癌は欧米に比較して日本では非常に多い疾患で悪性腫瘍 の中でも主要な死亡原因のひとつになっています ・この切除不能な肝癌に対し、近年開発されたのがカテーテル による動脈塞栓術である。
腹部マーケット推移(症例・製品) 2012年度矢野経参照
肝臓の二重血流支配 肝細胞癌は腫瘍血流に富み、ほぼ100%肝動脈より血流を受 けて養われています。一方肝臓の非癌部組織は門脈(静脈系) 肝臓の二重血流支配 肝細胞癌は腫瘍血流に富み、ほぼ100%肝動脈より血流を受 けて養われています。一方肝臓の非癌部組織は門脈(静脈系) と肝動脈の二重血流支配を受けており、門脈より75%肝動脈 より25%の血流を受けています。そこで門脈血流さえ保たれ ていれば、肝臓の非癌部にはダメージがなく癌組織のみが壊 死に陥ります。→これが肝癌治療のTACE確立 肝癌(動脈血流100%) HCCは、門脈の血流がほとんどなく、ほぼ100%肝動脈で支配されている。
TACEの背景
肝TAE -手技の実際-
肝臓支配血管 セリアック(腹腔動脈)、総肝動脈、固有肝動脈、胃 十二指腸動脈、右肝動脈、左肝動脈
肝区域分類
前面・後面からの解剖
TACE-イントロダクション- 肝癌の診断 Ⅰ 血液検査 ⇒腫瘍マーカー Ⅱ 画像診断 ⇒超音波検査(エコー) Ⅰ 血液検査 ⇒腫瘍マーカー GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ) 正常値:5~40U GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ) 正常値:5~35U ※肝細胞内に存在する酵素で肝細胞の破壊と血中濃度が上昇 γ-GTP(γグルタールトランスペプチターゼ) ※肝臓に存在する酵素で肝障害や胆道閉塞等によって異常高値 正常値:60U以下 Ⅱ 画像診断 ⇒超音波検査(エコー) CT、血管造影
TACEの手順1
1)診断造影(腫瘍の部位、大きさ、栄養動脈) ➢腹腔動脈造影(CA)・・肝動脈解剖 TACE手技手順② 1)診断造影(腫瘍の部位、大きさ、栄養動脈) ➢腹腔動脈造影(CA)・・肝動脈解剖 ➢上腸間膜動脈造影(SMA)・・経上腸間膜的 門脈造影(血流の二重支配による門脈 血流の開存を確認) ➢CA・SMA選択造影下でのCT撮影(CTAP CTHA)にて腫瘍の存在を診断 ➢選択的肝動脈造影・・腫瘍栄養動脈の同定。
腹腔動脈造影
上腸間膜造影
CTAP/CTHA
選択的肝動脈造影
TACE手技手順3 2)治療 ➢栄養動脈へのマイクロカテーテル挿入。 ➢抗がん剤、リピオドールの注入。 ➢※ジェルパートの注入。 2)治療 ➢栄養動脈へのマイクロカテーテル挿入。 ➢抗がん剤、リピオドールの注入。 ➢※ジェルパートの注入。 (一時的塞栓物質)栄養動脈の阻血 ➢確認造影(CT):DSA/腫瘍濃染消失 CT/リピオドール集積 ※スポンゼルに換わり保険適用化された塞栓物質
治療
薬剤注入及び塞栓
確認造影(DSA/CT)
IVR-CT装置
使用デバイス・材料 ・一般用ガイドワイヤー ・シースイントロデューサー ・親(造影)カテーテル ・マイクロカテーテル(先端1.7Fr-2.7Fr) ・マイクロガイドワイヤー(0.012inch~0.021inch) ・塞栓物質(ゼラチン製剤、ジェルパート、マイクロコ イル)、 ・抗癌剤、油性造影剤 HCCは、門脈の血流がほとんどなく、ほぼ100%肝動脈で支配されている。
塞栓物質(1) Lipiodol ・リンパ管造影や子宮卵管造影に用いられる油性造影剤 (血管内投与禁) Lipiodol ultra-fluid ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル ・リンパ管造影や子宮卵管造影に用いられる油性造影剤 (血管内投与禁) ・一部は門脈末梢枝や類洞に流入し、一次的に門脈 血流を遮断する ・大量に使用すると肝実質壊死が 生じる(最大使用量は10mL) ・通常抗癌薬を混和して投与する
多孔性ゼラチン粒子:ジェルパート (日本化薬) 塞栓物質(2)ゼラチンスポンジ ・ブタ由来のゼラチン ・数週間内で溶解・吸収される ・透視で見えないため、造影剤に浸して注入 多孔性ゼラチン粒子:ジェルパート (日本化薬) ゼルフォーム
選択的アプローチタイプ使用例 (当社製品群Mastersシリーズ・Veloute)
造影能強化型・ハイフロータイプ使用例 (当社製品群・Master HFシリーズ)
その他の塞栓物質
永久塞栓物質
TACE手技