第2節 管理組織編成の基本原理 1)課業分担の設計原理 (1)専門化の原則 協働=分業(division of labor)を前提 単純協業=複数人が同質の課業を並行的に分担して遂行する方式=低度の分業 専門化された分業=専門化を前提にした高度な分業=分業 専門化(specialization)=自己完結性のない相互依存する課業を分担する協働方式(各課業はそれ自体では完結せず,相互に補完して初めて有意な結果を生み出す)=特殊化.

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第2節 管理組織編成の基本原理 1)課業分担の設計原理 (1)専門化の原則 協働=分業(division of labor)を前提 単純協業=複数人が同質の課業を並行的に分担して遂行する方式=低度の分業 専門化された分業=専門化を前提にした高度な分業=分業 専門化(specialization)=自己完結性のない相互依存する課業を分担する協働方式(各課業はそれ自体では完結せず,相互に補完して初めて有意な結果を生み出す)=特殊化 専門化による効果→得意とする知識・能力の集中利用            →反復による学習(習熟効果)            →特殊化した手段と方法の利用            →シナジー効果(分業による孤立した個人の単純合計よりも大きな効果) 専門化の種類 →製品別,顧客別,地域別,工程別,技能別,生産要素別,職能別 →人の専門化,部門の専門化 組織構造→部門の専門化→職能別専門化を基礎とした職能別部門組織              →製品別専門化を基礎とした製品別部門組織

(2)職務権限の原則 職務(job)=組織の各職位(position)について特定化された課業 職務権限の原則=各職務を,重複や間隙を生まないように明確に規定するとともに,各職位には,その職務に照応した権限・責任・説明義務が付与されなければならないこと 権限(authority)=職務を正当に遂行することのできる公式の権力(power) 管理職位=対人指揮権(命令権など)+対物処理権(支出決定権など)   作業職位=実施権 責任(responsibility)=職務を遂行しなければならない義務(duty) 説明義務(accountability)=関係者に対して自己の職務遂行に関する情報を提供し,伝達を密にして,協働の実を高めるべき特性(上司・関係者に対する報告など) (3)例外の原則 課業→定型的事項→大量生産現場における繰り返し作業              =日常反復されるために行動プログラムが標準化されている事項    →非定型的事項→経営者レベルにおける戦略的諸問題             =単発的・突発的・断続的であるために行動プログラムが用意されて               いない事項=例外事項(exception) 例外の原則=課業の割当てを行う際に,上級者には例外事項の処理に専念させ,定型的事項は下級者に委譲すべきこと        =組織垂直軸での処理

2)伝達システムの設計原理 (1)管理範囲の原則 管理範囲(span of control)=1人の管理・監督者が直接かつ有効に管理・監督しうる部下の人数には限りがあること 管理範囲の有限性→組織の規模拡大に伴う階層化の契機    ① 管理範囲が小さければ階層数が増えて組織のピラミッドは高くなる    ② 逆に管理範囲が大きければ階層数が減りピラミッドは低くなる    ③ 階層を低くしようと思えば管理範囲を大きくする必要がある    ④ 管理範囲の大きさと階層の数とは逆相関の関係にある 規模の拡大→階層化→伝達システムの延伸→伝達の遅鈍化・不正確化 管理範囲の拡大→階層の数の削減→組織のフラット化             ←コンピュータ化した情報システムの利用 適正管理範囲←上司・部下の関連状況(課業内容・各自の能力等)によって決まる適正な管理範囲 適正管理範囲の拡大によるフラットな構造の実現 ①上司・部下双方の能力向上とそれに基づく適正配置 ②伝達の効率性 ③分権化もしくは権限委譲による伝達の量と時間の節減

(2)命令一元性の原則(命令統一性の原則) 命令一元性の原則=組織の秩序を維持するために全ての組織構成員がただ1人の上司からの命令によって行動すべきであること 命令一元性の機械的遵守の問題点 ① 命令者は部下の全ての活動に命令できる万能型管理者である必要があるために管理者の専門化を妨げること ② 組織行動の硬直化の危険あるいは繁文縟礼の弊害 →「架け橋」の必要性 事前許諾:事前に各自の命令権者である上司の許可を得て,接触の権限を認めてもらう 事後報告:接触による処理の結果を直属上司に報告する A B1 B2 C1 C2 C3 C4

第3節 組織単位と組織形態 組織単位(organizational unit)=組織構造を形成する単位 第3節 組織単位と組織形態 組織単位(organizational unit)=組織構造を形成する単位 =職位(position)もしくは部門(department) 部門→部・課・係のように大小の単位の設定可能 職位→組織構成員個々人が占める組織内の公式単位(社長・課長・販売員等) 二つの組織タイプ 部門主義組織←組織単位=部門(最も代表的な最小単位は「課」) 職位主義組織←組織単位=職位 組織形態(organizational form)→組織図(organization chart) =組織単位の連結様式を示す標準化した類型 =組織単位について課業を規定し,権限と責任の公式伝達システムでそれらを連結した状態を示す静学的モデル→組織の解剖学的表現 二種の組織形態 職位主義的組織形態→職位の連結様式として組織形態の把握・表現←米国 部門主義的組織形態→部門の連結様式として組織形態を把握・表現←日本 ☆但し,この日米の組織形態区分は相対的・伝統的なもの ☆日本では伝統的に「職位」の概念は希薄であり,現代でも経営者・管理者については職位の概念を使用し,それが定着しているが,作業者各人については職位を意識し,組織の全体を職位の集合的連結とする概念はほとんど見られない

第4節 組織の基本形態

直系組織の長所 ① 命令系統が極めて単純である。 ② 各管理者の責任と権限の貴族が明確に示されていること ③ 経営管理機構全体の秩序が厳格に維持されていること ④ 政策の一貫性が保持されやすいこと 直系組織の短所 ① この組織破壊の管理者から上位の管理者へ,あるいは同じ地位の管理者相互の間に報告ないし情報が円滑に流れることを前提として成り立っているが現実にはなかなか簡単には実現しない。 ② 一定の部門全体について全般的な理解力はもっているが,特定の問題について深く突っ込んだ理解をもつ専門家が養成しにくい。 ③ 権限委譲が行われず,トップ層の負担過重が生じやすい。 ④ 常に上位のものに報告しなければ行動できないという傾向が強く,これが繁文縟礼(規則・礼式などが細々していて煩わしいこと)・官僚主義を生みやすい。

マネジメント・スタッフの二つの種類 1)ゼネラル・スタッフ (general staff) →経営管理全般に関係するライン(経営者・全般管理者)の支援 2)スペシャル・スタッフ(special staff) →特定の専門分野の立場から中間管理者以下の業務執行管理を支援 マネジメント・スタッフ→経営管理専門情報の提供 その情報が経営活動の準備・設計に関するもの→計画スタッフ(planning staff) その情報が経営活動の維持・評価に関するもの→統制スタッフ(control staff)

② 事業部制(divisional system) 起源:1920年代に米国デュポン・GM」 1933年(昭和8年),松下電器産業では,「自主責任経営の徹底と経営者の育成」を狙いとして,製品分野別の自主責任体制を構築し,第1事業部(ラジオ部門),第2事業部(ランプ・乾電池部門)そして第3事業部(配線器具・電熱器部門)の三つの事業部(各事業部はそれぞれの傘下に工場と出張所を設け,製品の開発から生産・販売・収支に至るまで一貫して責任を持つ独立採算の事業体)から構成される,我が国では最初に事業部制を導入している。 経営多角化(製品系列の複数化)に伴う管理の複雑化  事業ごとに事業部(division)を編成 1) 第1次組織区分に製品別,地域別,顧客別のような,独自の生産過程と市場を持つ自己完結性の高い基準を用いて部門化した組織単位 利益責任をもつ経営単位として自ら利益を生み出す利益単位(profit center)になっている組織単位 2)事業部はあたかも企業内企業のようなもので,その責任者である事業部長には,自己の製品等について利益責任を実現するための包括的裁量権が与えられており,高い自主性がある→事業部制=分権的組織形態【事業部長の自主性→忌避宣言権(right of nullification)=事業部間の取引にあたって独立企業と同様に「交渉」=「振替価格」(transfer price)←市場競争原理の内部化】

3) 各製品事業部,とくに事業部長は大幅に権限を委譲されるとはいえ,最高経営者の全般的経営方針によって統制される。経営者は企業全体の企業戦略を決定し,これに基づいて各事業部の事業部の部門目標(投資利益率や市場占有率)を指示し,この業績評価を通じて各事業部を統制→最高経営層は企業全体の設備投資の決定権を握って各事業部の基礎構造を決定するとともに,事業部長ないしそれに近い職位の人々の人事権を留保し,事業部業績に基づいてこれを操作し,各事業部を実質的に掌握する。事業部制を採用している企業の経営者の役割→各製品等に関する日常業務から解放され,本社ゼネラル・スタッフを駆使して,全社的な戦略・組織計画・資源配分,新製品・新事業の開発,後継経営者育成,事業部の業績評価を行う。 4) 本社スタッフの充実→最高経営層を補佐する管理スタッフないしゼネラル・スタッフが最高経営層の全社的な経営方針の決定,全社的企業戦略の策定,事業部間の調整,各事業部の統制を強力に確保するために設定され,またサービス・スタッフも全社的観点からあるいは各事業部の効果的運営を促進するために充実・強化 5) 各事業部そのものの内部組織は職能別に編成・組織化される 6) 事業グループ制→事業部の数が非常に多い場合,管理範囲の制約から直接これらの事業部を直接本社の下に置くことはできず,類似事業部を集合させた組織単位(事業グループないし事業本部)を設けること:SBU(strategic business unit)=戦略的事業単位→本社が策定する企業戦略(製品市場戦略)を受けて,特定の製品市場について策定される競争戦略である事業戦略(business strategy)の策定を委譲されている組織単位

事業部制組織のメリット 事業部制組織のデメリット 1)最高経営者は日常的な業務上の意思決定から解放され,本来彼らがなすべき企業全体の指導に専念することができる 2)管理者(とくに事業部長)の機能を明確にし,その業績評価の客観的な尺度を部門利益などの点で把握可能 3)管理者層の過度の職能分化,専門化に伴う安全第一主義,官僚制化傾向に対して競争的刺激を付与 4)最高経営層と中間経営層とのギャップを埋めることができる。とくに事業部長は職能別部門組織における最高経営層が直面する問題に類似した経験,すなわち,購買,製造,販売といった異種職能間の調整を行う 5)経営者が直面する問題と仕事を現実に経験することによって最高経営層の後継者育成という点で大きな効果 1)この分権的組織の採用される基本前提は,その企業が相互に異なる独自の市場を持つ,いくつかの製品を生産-供給していることであり,この条件を満たさない企業が適用してもそのメリットを十分に生かすことはできない→事業部制はスタッフを含めた管理層の量的増大 →管理費の増大 2)各事業部の部門成績が事業部長以下のメンバーの能力・努力に無関係な外部条件(景気変動・産業の長期停滞その他)によって大きく影響を受けることが多い→こうした影響力を排除した客観的な業績評価の難しさ 3)事業部があまりに自立性をもつと,全社的観点が失われ,セクショナリズムが蔓延る