ICU退室後のPTSDと家族の精神状況 おもしろいとおもいます。 しかし、統計学的手法が難しい研究ですね。
ICU退室後のPTSDはQOLを低下させるとされている Winters BD, Eberlein M, Leung J, et al: Long-term mortality and quality of life in sepsis: A systematic review. Crit Care Med 2010; 38:1276–1283 Oeyen SG, Vandijck DM, Benoit DD, et al: Quality of life after intensive care: A systematic review of the literature. Crit Care med
ICU退室後患者の家族もPTSDやうつなどの症状を引きおこすことが知られている Davidson JE, Jones C, Bienvenu OJ. Family response to critical illness: postintensive care syndrome-family. Crit Care Med. 2012 Feb;40(2):618-24.
family Patient ICU退室後、お互いの精神状況が 相互に影響しあっている可能性がある
そこで、今回の論文 重症敗血症後の患者・家族の身体的及び精神的健康:患者ーパートナーによる視点から長期後遺症を検定する Critical Care Medicine 41(1) 2013 重症敗血症後の患者・家族の身体的及び精神的健康:患者ーパートナーによる視点から長期後遺症を検定する 患者‐パートナー相互依存モデル
方法 デザイン:前向き調査研究 研究場所:The German Sepsis Aidという国の非 営利団体による相談電話窓口 期間:2002ー2010年。ICU退室後平均55ヶ月後 の調査
測定項目 Hospital Anxiety and Depression Scale(HADs 不安とうつ症状を得点 化したツール。0−21点で、カットオフ値が8点と11点とがある) Post- traumatic Stress Scale-10(PTSS PTSD症状を得点化したツ ール。0−30点で13点以上がPTSDの可能性がある) Short Form-12 Health Survey(健康関連QOL質問紙) the Giessen Subjective Complaints List-24(倦怠感、消化管症状、 筋骨格系症状、心血管系症状など24項目)
結果−研究参加者フロー ・564名に調査用紙を配布し、うち55名を分析対象とした。 ・約25%と低い参加者割合
正式な結婚関係がない組はわずか(同居・離婚) 結果−参加者特性 正式な結婚関係がない組はわずか(同居・離婚) ICU在室日数は32日 ICU後54.8ヶ月程度の対象 83.7%は働いていない
患者・パートナーともPTSD発症率は60%以上 結果-患者とパートナーの精神状態 うつ症状のみ患者の方が得点が高い 患者・パートナーともPTSD発症率は60%以上
結果ー健康対象者との比較 うつ得点に差はないが、 患者・パートナー共に不安や精神的な健康関連QOLが低い
結果ー患者とパートナー相互作用 患者のPTSD症状が患者自身の精神的HRQOLに与える影響は有意 患者PTSD症状がパートナーの精神的QOLの低下には有意な関係あり しかし パートナーPTSD症状が患者のQOLに与える影響は統計学的な有意が見られなかった パートナーのPTSD症状がパートナー自身の精神的HRQOLに与える影響も有意
結論 患者及びパートナーのICU退室後の不安・うつ。 PTSD症状は強く、精神的QOLは正常サンプル と比較して著しく低下していた 精神的健康関連QOLを改善するためのPTSD に対する介入には、患者だけでなく、家族、特 にパートナーもまた考慮すべきである。 すくなくともこの研究の結論は下記です。 それが伝わりにくい。
私見など 観察研究であり、因果関係についてははっきりしない 対象者は、The German Sepsis Aidの相談電話窓口 に助けを求めにきている人々であり、また、参加者が 対象全体の25%と少なくサンプルサイズが小さいこ とが結果に影響を与えている可能性がある 家族のPTSDやうつ症状発症率は高く何らかの介入 が必要である。家族への介入により、患者自身の健 康関連QOLを向上させる可能性があるが、今後の検 討が必要。