建築環境工学・建築設備工学入門 <給排水・衛生設備編> <給水設備> 給水設備の基礎知識

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建築環境工学・建築設備工学入門 <給排水・衛生設備編> <給水設備> 給水設備の基礎知識 [Last Update 2015/04/30] 建築環境工学・建築設備工学入門 <給排水・衛生設備編> <給水設備> 給水設備の基礎知識 給水設備の基礎編では、計画設計のプロセスや留意事項、建物用途別の給水特性などについて説明します。

給水設備の計画・設計フロー(1/2) 次頁へ 敷地の与条件整理 建物の与条件整理 使用水量の把握 水源の決定 給水システムの設計 □敷地状況の把握  □上下水供給状況調査 □法規制の調査    □水源の調査 ・放流規制 建物の与条件整理 □建物種別  □規模把握  □利用状態の把握 □使用人員の把握       □使用時間の把握 使用水量の把握 □1人1日当り給水量の算定 □上水使用量の算定 ・雑用水使用量の算定 水源の決定 □水源の種別の決定 ・水源の水質、容量の決定 □水源の引き込み、排水放流の位置決定 ※空気調和衛生工学便覧などをもとに作成。講義内容に合わせ適宜編集下さい。 給水システムの設計 □給水供給方式の比較検討  □井水利用システムの検討 □雨水利用システムの検討 □排水再利用システムの検討 次頁へ

給排水設備の計画・設計フロー(2/2) 前頁からの続き 機器類の設計・選定 配管の設計 制御・監視システムの設計 □上水使用量の決定     □雑用水使用量の決定 □排水量(汚水・雨水)の決定   □水槽の容量決定 □ポンプ類の容量決定    □設置スペースの検討 □耐震基準の決定      □将来対応機器の想定 配管の設計 □配管方式の検討   □配管スペースの検討 □将来更新の検討   □配管口径の決定 □配管材料の決定   □耐震基準の決定 ※空気調和衛生工学便覧などをもとに作成。講義内容に合わせ適宜編集下さい。 制御・監視システムの設計 □使用水量の計測システムの検討 □省エネルギー運転制御の検討 □保守管理の自動化の検討

給水設備の計画・設計を進めるにあたり留意すること/しておくこと 建築図・構造図の理解   □ 建築平断面図と設備ルート、機器スペースの整合性   □ 設備荷重、耐震壁、梁貫通条件の整理   □ 更新、点検スペースの確保   □ 建築図と構造図に齟齬はないか   □ 各階でシャフトスペースに矛盾はないか   □ 設備計算書の整備   □ 建物の使用条件は計算に考慮されているか   □ インフラの条件は満足しているか   □ 用途(設計)変更にはどの程度の対応が可能か   □ 関連法令は遵守されているか   □ 過剰スペックになっていないか   □ ※空気調和衛生工学便覧などをもとに作成。講義内容に合わせ適宜編集下さい。

給水設備の計画・設計を進めるにあたり留意すること/しておくこと 施工性や使い勝手への配慮   □ 配管材、継ぎ手仕様の選定は適切か   □ 保温、防錆、伸縮の対策は妥当か   □ 防音、防振の対策は妥当か   □ 配管の機器接続部や継ぎ手部の点検動線は妥当か 更新性(可変性)への配慮   □ 機器や配管の搬出入動線は適切か   □ メンテナンススペースは適切か   □ 断水範囲、時間の想定は建物使用形態と整合しているか   □ 改修工事における建築の道連れ工事範囲は明確か   □ プラン変更や用途変更への可変性のレベルは明確か ※空気調和衛生工学便覧などをもとに作成。講義内容に合わせ適宜編集下さい。 その他   □ 各種配管の勾配は適切に確保されているか   □ 空調設備や電気設備との整合は図られているか   □

(※)所管により違いがあるので確認を要する。 給水装置の維持管理区分 使用者等の財産 受水槽方式 水道直結方式 一般的な給水設備の管理区分(※) M 水道局の 水質検査範囲 水道局の水質検査範囲 メータ 給水管 配水管 受水タンク ポンプ 高置タンク 漏水対応範囲 (※)所管により違いがあるので確認を要する。 はじめに ・給水方式の説明にて、給水方式は水道直結方式と受水槽方式とに大別されると説明しました。 ・ここでは、水道事業者と建物側給水装置の維持管理区分について整理します。 ・建物の立地条件(対象となる水道事業者区分)により若干の違いがあるので、必ず所管の水道事業者に確認します。 受水槽方式の場合 ・給水装置の使用者等の財産区分は、配水管より分岐した給水管以降が一般に該当します。 ・一方、水道局(水道事業者)の水質検査範囲は受水槽までとなります。 ・よって受水槽以降は、一般に使用者等による水質管理が必要になります。 水道直結方式の場合 ・給水装置の財産区分は、一般に受水槽方式と同じですが、給水器具までが水道局(水道事業者)の水質検査範囲になります。 水道直結直圧方式の給水栓からバケツ(受水槽)に水を汲め(給水すれ)ば、以降の水質の管理は建物使用者に委ねられるということですね。

時刻別予想給水量の推移 オフィスビルを例として 時刻別予想給水量の推移 オフィスビルを例として C A B C   ピーク時最大 B A このグラフは、中小規模のオフィスビルを例とした時刻別給水量の特性を表わしたものです。 これによると、対象となった中小規模のモデルビルでは、 ①始業時間帯に1日のピークが発生している。継続時間は少ない。 ②昼休み前後で時間最大給水量が発生している。 ③ピーク最大は時間平均の3倍、時間最大は1.5倍程度の関係にある。 ということが分かります。 近年ではフレックスタイムの導入によりピーク最大の発生時間帯が、昼休みや終業時刻に発生するケースもあり、また、ピーク率は大規模ビルに比べて、中小規模が大きくなる傾向があります。 次頁に建物用途別の時刻別給水特性を一覧します。 新築建物ではこのデータを拠り所にしますが、既存建物等でこれらのデータが収集されている場合では、それらを参考にするとより効率の良いシステムとなります。 Qd :1日当たりの使用水量[ℓ/d]   T :1日平均使用時間[h] Qh :時間平均予想給水量[ℓ/h]    Km :時間最大給水量のピーク率 Qm :時間最大予想給水量[ℓ/h] Kp :ピーク時最大予想給水量のピーク率 Qp :ピーク最大予想給水量[ℓ/min]

建物予想給水量の算定 用途別時刻変動 集合住宅 ホテル 病院 事務所 小学校 高等学校 店舗・飲食店 小規模小売店舗 劇場 日曜 土曜 日曜 建物予想給水量の算定 用途別時刻変動 集合住宅 ホテル 病院 土曜 日曜 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 土曜 日曜 平日 事務所 小学校 高等学校 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 建物用途別の時刻別予想給水量をグラフ化したものです。 店舗・飲食店 小規模小売店舗 劇場 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 土曜 日曜 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 日曜 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%]

用途別時刻変動と給水原単位(1/3) ■住宅用途の給水原単位 ■事務所の給水原単位 ■店舗・飲食店の給水原単位 集合住宅 土曜 日曜 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] ■住宅用途の給水原単位   戸建住宅:300~400L/(d・人), 10h/d,  0.16人/㎡   集合住宅:200~350L/(d・人), 15h/d,  0.16人/㎡   独 身 寮:400~600L/(d・人), 10h/d,  事務所 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] ■事務所の給水原単位   公官庁:60~100L/(d・人), 9h/d,  0.2人/㎡     男子 50L/人、 女子 100L/人、   (※)社員食堂、テナントなどは別途加算する ※空気調和衛生工学便覧等を基に作成。用途別時刻別の水使用量(グラフデータ)は、EXCELファイルに収録されています。 店舗・飲食店 土曜 日曜 平日 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] ■店舗・飲食店の給水原単位   喫茶店:60~100L/(d・人), 9h/d,  0.2人/㎡   飲食店:55~130L/(d・人), 10h/d,   社員食堂:55~130L/(d・人), 10h/d,   給食センター:25~50L/(d・人),  10h/d

用途別時刻変動と給水原単位(2/3) ■ホテルの給水原単位 ■小学校の給水原単位 ■大規模小売店舗の給水原単位 ホテル 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] ■ホテルの給水原単位   ホテル全体500~600L/(d・人), 12h/d   ホテル客室350~450L/床面積, 12h/d   設備内容などにより詳細に検討する    小学校 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 ■小学校の給水原単位   70~100L/(d・人), 9h/d   教師・従業員も含む   プール用水(40~100/人)は別途計算する    ※空気調和衛生工学便覧等を基に作成。用途別時刻別の水使用量(グラフデータ)は、EXCELファイルに収録されています。 小規模小売店舗 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 日曜 ■大規模小売店舗の給水原単位   15~30L/m2, 10h/d   延べ面積1m2当たり   従業員・空調用水含む  

用途別時刻変動と給水原単位(3/3) ■病院の給水原単位 ■高等学校の給水原単位 ■劇場の給水原単位 病院 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 ■病院の給水原単位   1500~3000L/床面積, 16h/d   延べ面積1m2当たり   従業員・空調用水含む 高等学校 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 ■高等学校の給水原単位   70~100L/(d・人), 9h/d   教師・従業員も含む   プール用水(40~100/人)は別途計算  ※空気調和衛生工学便覧等を基に作成。用途別時刻別の水使用量(グラフデータ)は、EXCELファイルに収録されています。 4 12 8 20 24 16 時刻 [時] 12.0 8.0 4.0 水使用量 [%] 平日 劇場 ■劇場の給水原単位   25~40L/m2, 0.2~0.3L/(d・人), 14h/d   延べ面積1m2当たり   従業員・空調用水含む

ウォーターハンマ(水撃作用)現象とは? ウォーターハンマの発生プロセス 配管内を流れていた水を急激に止める。 流れていた水のエネルギー   配管内を流れていた水を急激に止める。   その時、流れていた水のエネルギーは・・・     ①水を圧縮して水圧をあげるエネルギー    ②衝撃音を発するエネルギー    ③配管を振動させるエネルギー    ④配管を膨張させるエネルギー                      に変換される。  ③配管を振動させるエネルギー ④配管を膨張させるエネルギー ①水圧を上げる エネルギー ②衝撃音を発する ウォーターハンマとは、水撃作用ともいい、水圧管内水流を急に締め切った時に、水流の慣性で管内に衝撃・振動水圧が発生する現象である。 この現象により配管の破裂や機器に故障などを発生する場合もあるので注意が必要である。  上昇した圧力(圧力波)は、   →閉止した点と上流側との間の配管を往復する。   →配管内圧力の高低変動を発生させる。   →ウォーターハンマの原因となる。

揚水ポンプ停止時の水柱分離 ポンプ停止時の水柱分離 ポンプ停止時の水柱分離 受水槽 高置水槽 揚水ポンプ ON 揚水ポンプ停止後も配管内の水は慣性力によって揚水を維持しようとする。 揚水ポンプ吐出直後の管内圧力低下が発生する。 ポンプ停止時の水柱分離 最大負圧発生点 受水槽 高置水槽 このように低い位置で横引きするのが良い 高い位置で横引きするとこの点で水柱分離が発生する可能性がある 揚水 ポンプ 最低圧力こう配曲線 受水槽 揚水ポンプ OFF!! 横引き配管部はポンプが停止しても、与えられた慣性力で水は水槽へ到達する。 ポンプ直後の配管内は、ポンプ停止によって配管内の圧力が低下する。 水柱分離 高置水槽 ポンプ停止時の水柱分離 高置水槽方式において、揚水ポンプが停止しても揚水管内の水は慣性力によって揚水を維持しようとするため、揚水管内の圧力が水の飽和水蒸気圧以下になると水が蒸発し、水柱が分離します。 このような現象を回避するため、揚水管の横引きは低い位置で行い、屋上等の高置水槽付近での横引きを極力短くなるように配慮します。

発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 西川 豊宏 発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 (SHASE: The Society of Heating, Air Conditioning and Sanitary Engineers of Japan) 西川 豊宏