ーーー現在の課題の検討のために 臼井久実子 瀬山紀子 共に障害者欠格条項をなくす会事務局 東京大学大学院経済学研究科RF

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ーーー現在の課題の検討のために 臼井久実子 瀬山紀子 共に障害者欠格条項をなくす会事務局 東京大学大学院経済学研究科RF 障害者欠格条項の見直し経過と合理的配慮 ーーー現在の課題の検討のために 臼井久実子 瀬山紀子 共に障害者欠格条項をなくす会事務局 東京大学大学院経済学研究科RF

報告の目的 90年代以降の経過の振り返り 「63制度の見直し」に関わる評価と課題 合理的配慮の確立という課題の検討

障害者に係る欠格条項とは 「職業免許」に関わる欠格条項 歯科技工士、通訳案内士など 「技能免許」に関わる欠格条項   歯科技工士、通訳案内士など 「技能免許」に関わる欠格条項   自動車運転免許、ボート・ヨット免許など その他 様々な権利制限   最低賃金法適用除外、就学猶予など

障害者欠格条項見直しの経過 1993 障害者基本法 障害者対策に関する新長期計画 1998 障害種別を越えた運動の高まり 1993 障害者基本法 障害者対策に関する新長期計画 1998 障害種別を越えた運動の高まり 1999 「障害者に係る欠格条項の見直しについて」    (対処方針) -63制度の抽出 2001 医師法等の一部が改正 2003-2005 障害者団体等による質問要望活動 2005 試験等における共通的な配慮事項

63制度の内容からみた内訳 職業免許 54制度 技能免許 4制度 その他様々な権利制限 5制度 医師・薬剤師・栄養士・調理師等 職業免許 54制度 医師・薬剤師・栄養士・調理師等 技能免許 4制度 運転免許・無線免許等 その他様々な権利制限 5制度 公営住宅・外国人の上陸制限等              →大多数が職業免許

63制度の障害別内訳 (1999年当時)

「63制度の見直し」の検討 職業免許に限定した法制度の見直し →「すでに一定の能力を認められている一部の障害者が被る不利益の問題」への一元化  →「すでに一定の能力を認められている一部の障害者が被る不利益の問題」への一元化 見直し対象から外れた法制度  取得後欠格、地方条例 幅広い権利制限としての欠格条項を問題化 する視点の欠如

63制度の見直し結果 グラフ 「63制度」 見直し結果からの分類 全廃は11% 30%は絶対的欠格から相対的欠格

63制度の見直し結果 内訳 全廃…検察審査員・栄養士・調理師・製菓衛生師・医師国家試験・歯科医師国家試験・地域伝統芸能等通訳案内業免許 63制度の見直し結果 内訳 全廃…検察審査員・栄養士・調理師・製菓衛生師・医師国家試験・歯科医師国家試験・地域伝統芸能等通訳案内業免許 絶対的欠格から相対的欠格に…医師など 相対的欠格のまま…美容師・鍼灸師など 基準条件の緩和…公営住宅など 特定の障害は削除…薬剤師など 制限拡大・より厳しく細かい制限…獣医師など その他…運転免許など

欠格条項見直しの評価 絶対的欠格条項撤廃の取り組みの進展 「障害者」を法律で一律に排除することは権利侵害にあたるという認識の広まり  「障害者」を法律で一律に排除することは権利侵害にあたるという認識の広まり 個人の能力の捉え方の転換  「単独でできなければだめ」から  「補助者や補助手段をえて本質的業務を遂行できればよい」 という見方へ

見直し後の動き 障害者に係る欠格条項の見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」(障害者施策推進本部申し合わせ 2001年6月) 障害者に係る欠格条項の見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」(障害者施策推進本部申し合わせ 2001年6月) 資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について(障害者施策推進課長会議決定 2005年11月) →必要な配慮を権利として求めやすい環境の整備

見直し以降の課題 ① 残された相対的欠格の課題 見直し対象となった法制度の約半数は相対的欠格条項を残した 見直し以降の課題 ① 残された相対的欠格の課題 見直し対象となった法制度の約半数は相対的欠格条項を残した 相対的欠格条項:試験に受かっても「免許を与えないことがある」といった規定 →事例a

事例a 医師法に残された相対的欠格条項 医師法 ・試験合格後、免許交付まで、根拠が不明確な、長期の審査 ・7科目の臨床研修制度が新たな障壁に どうしたらできるか、という発想の必要性

見直し以降の課題 ② 欠格条項見直しに伴いクローズアップされた間接的排除 →事例b 見直し以降の課題 ② 欠格条項見直しに伴いクローズアップされた間接的排除 見直し対象となった法制度の約1割は、欠格条項を全廃した。しかし、法制度上の排除がなくなっても、実質的な排除は存続。 →事例b

事例b 欠格条項全廃後も続く制限 検察審査会法 欠格条項全廃 検察審査会法 欠格条項全廃 2006年 全身性障害がある人が検察審査会に選出されたが、「委員会が開かれる会場が二階でエレベーターがない」ことなどを理由に、暗に辞退をすすめられる。 結果的には、介助者をつけて審査会に出席する人の前例となる 顕在化しにくい問題/顕在化してきた問題

欠格条項見直し以後の課題 まとめ 相対的欠格条項の問題 間接的排除の問題 見直し対象とされなかった法制度の問題 →障害者差別禁止の視点 合理的配慮・環境整備

今後の課題検討の手がかり 障害者権利条約 第2条 障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限=差別 差別には合理的配慮の否定も含まれる 障害者権利条約 第2条  障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限=差別 差別には合理的配慮の否定も含まれる 合理的配慮: 平等な権利を行使するために必要な調整  不釣合いな又は過度な負担を課さないもの

今後に向けてー 既存の法制度全体の洗い直し 差別禁止の視点からの再構築 当事者参画によるー 合理的配慮も含めた環境の整備  合理的配慮も含めた環境の整備  権利回復の仕組みづくり