研究テーマ 福山大学 薬学部 生化学研究室 1) 脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究 2) がん細胞の特徴と

Slides:



Advertisements
Similar presentations
血糖値の調節 膵臓 肝臓 筋肉 血 糖 脳 インスリン ↑ 200 g/ 日 120g/ 日 乳 酸 乳 酸 グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン ( 食事 ) 脂肪組織 Plasma Glucose Blood Glucose 尿糖 血糖値は制御された値 であり制御機構が正常 なら全く血糖は上昇し.
Advertisements

第1章 健康の考え方第2節 健康の増進と疾病の予防⑤飲酒と健康. 第1章 健康の考え方第2節 健康の増進と疾病の予防⑤飲酒と健康 本時の学習のポイント ①アルコールは,健康にどのような影響を 与えるのだろうか。 ②「アルコール依存症」とは,どのような 状態をいうのだろうか。 ③飲酒は,青少年にどのような影響を与え.
Fukuyama City Hospital Sorafenib とは Sorafenib とは 2012 年 7 月 28 日 福山市民病院 内科 ○ 辰川 匡史 藪下 和久 下江 俊成 坂口 孝作.
生物学的製剤と小分子化合物製剤 1. Generics and Biosimilars Initiative. (2012, June 29). Small molecule versus biological drugs. Accessed
1
2012年7月28日 福山市民病院 内科 ○辰川 匡史 藪下 和久 下江 俊成 坂口 孝作
LDL-C代謝機構の 新たなパスウェイ PCSK9 野原 淳 先生 監修: 金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 脂質研究講座 特任准教授
 脂質異常症における   食事療法の基本 管理栄養士 森 律子.
脂質代謝.
J Dermatol Sci ;75(1): Resveratrol inhibition of human keratinocyte proliferation via SIRT1/ARNT/ERK dependent downregulation of AQP3 レスベラトロールによるヒトケラチノサイトの増殖阻害は.
高血圧対策に 森永ミルクペプチドMKP MKPとは? 日本人の3人に1人は高血圧と推計され いまや高血圧は国民病となっています
無機質 (2)-イ-aーH.
輸血の適応/適正使用 新鮮凍結血漿 福井大学輸血部 浦崎芳正.
チョコレートの健康効果 2013‐04‐25 MR1051  アキ.
脂質 細胞や組織から無極性有機溶媒で抽出することにより単離される天然有機化合物 エステル結合を有し,加水分解できるもの 脂肪,ワックスなど
第19課 人の寿命と病気 背景知識.
骨格筋のインスリン抵抗性が肥満の引き金 1 参考 最近、エール大学のグループは、骨格筋のインスリン抵抗性がメタボリック症候群を引き起こす最初のステップであることを報告した。BMIが22-24の男性をインスリン感受性度で2グループに分け、食事(55%炭水化物、10%蛋白質、35%脂肪)を摂取してから、筋肉のグリコーゲン量をMRI(核磁気共鳴画像法)で調べたところ、インスリン感受性群に比べて、抵抗性群ではグリコーゲン生成が61%減少していた。肝臓のグリコーゲン量は2群間で有意差はみられなかった。しかし、肝臓の
2型糖尿病患者におけるナテグリニドと メトホルミン併用療法の有効性と安全性の検討
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
活性化エネルギー.
甲状腺疾患 カイエー薬局 グループ発行 健康シリーズ 女性に多い 最近、テレビでも放送されましたが、いくつもの病院を
野菜は1日350g食べましょう 料理例 D-4 野菜350gの目安 80g 85g 100g 100g 75g 80g 140g 75g
脂肪の消化吸収 【3】グループ   ~
1 フッ化物は自然界に多く含まれる フッ化物は以下のものにも含まれる 土壌 植物 動物 全ての上水道.
Targeting of Receptor for Advanced Glycation End Products Suppresses Cyst Growth in Polycystic Kidney Disease The Journal of Biological Chemistry, 2014,
リスクの把握と自己管理(ロードマップ) 安価なゲノム解析技術 (固定リスクの把握) 塩基配列情報
かゆみが血液透析患者のQOLに与える影響の検討 ~SF-36v2を使用して~
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
代謝経路の有機化学 細胞内で行われている反応→代謝 大きな分子を小さな分子に分解→異化作用 第一段階 消化→加水分解
緩衝作用.
放送大学面接授業試験問題
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
セラミド分解の標的導入は全身の代謝を改善し、脂肪肝を減らす
中性シイステインプロテアーゼブレオマイシン水解酵素は、脱イミノ化されたフィラグリンをアミノ酸へと分解するのに不可欠である
2を基本として、より嗜好性を高めるために1を付与する場合が多い
・神経 続き シナプス 神経伝達物質 ・ホルモン ホルモンの種類 ホルモン受容体 ホルモンの働き
生命科学基礎C 第5回 早い神経伝達と遅い神経伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
* 研究テーマ 1.(抗)甲状腺ホルモン様作用を評価するバイオアッセイ系の確立 2.各種化学物質による(抗)甲状腺ホルモン様作用の検討
まずはじめに、二次元電気泳動によって得られたタンパク質に酵素処理を行い、ペプチドを解離する。
肥満の人の割合が増えています 肥満者(BMI≧25)の割合 20~60歳代男性 40~60歳代女性 (%)
メタボリックシンドロームはなぜ重要か A-5 不健康な生活習慣 内臓脂肪の蓄積 高血糖 脂質異常 高血圧 血管変化の進行 動脈硬化
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
高脂血症の恐怖 胃 基礎細胞生物学 第14回(1/22) 2. 胃酸の分泌 1. 胃 3. 消化管(小腸)上皮細胞の更新
すずかけの木通信 平成29年 11月号 糖質制限は体に良いのか 糖質の問題点 糖化反応 血糖値の上昇
喫煙者は糖尿病に なりやすい!! 保険者機能を推進する会 たばこ対策研究会 003_サードハンドスモーク(3).pptx.
農学部 資源生物科学科 加藤直樹 北村尚也 菰田浩哉
第19課 人の寿命と病気 背景知識.
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
樹状細胞療法 長崎大学輸血部 長井一浩.
細胞周期とその調節.
2 物質の膜透過機構  吸収・分布・代謝・排泄の過程は、生体膜を透過することが基本.
高脂血症.
従来の感染症法では、感染症患者の治療及び感染症の予防を行うための法律内容であった。
骨粗鬆症治療薬のスクリーニング系 ライフ 主たる提供特許 技術概要 応用分野
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
乳酸球菌カワイ株の検証(1) 動脈硬化とカワイ株.
Central Dogma Epigenetics
脂質異常症 7月 疾患別研修.
1月19日 シグナル分子による情報伝達 シグナル伝達の種類 ホルモンの種類 ホルモン受容体 内分泌腺 ホルモンの働き.
大豆 栄 養 と 薬 効 たんぱく質、脂質、ビタミンB群が多いなど、その栄養の豊かさから「畑の肉」と呼ばれている栄養食品です。動脈硬化予防や肥満をコントロールする働きがあります。大豆の脂質の多くはリノール酸で、コレステロールを洗い流す作用があり、脂肪異常症の予防に有効です。 注目されている栄養素は大豆サポニンとレシチンです。前者は、血管にこびりついたコレステロールや中性脂肪を洗い流す作用があり、高血圧・動脈硬化・認知症などの予防に役立ちます。
生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
ノニの血圧上昇抑制のメカニズムに関する研究
「骨粗鬆症や癌を予防するビタミンDの作用メカニズム 」
異所性妊娠卵管破裂に対する緊急手術中の輸血により輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症した1例
アミノ酸の分解とアンモニアの代謝 タンパク質やアミノ酸はどこにでもあるありふれた食材ですが、実は分解されるとアンモニアという、体に非常に有害な物質を産生します。これは、普段われわれが何も気にせずに飲んでいる水が、実はH+(酸)とOH-(アルカリ)で出来ているのと似ているように感じます。今回、アミノ酸の分解に伴って産生されるアンモニアを、生体はどのようにして無毒化しているかを考えましょう。
タンパク質.
●食物の消化と吸収 デンプン ブドウ糖 (だ液中の消化酵素…アミラーゼ) (すい液中の消化酵素) (小腸の壁の消化酵素)
Department of Neurogenomics
細胞膜受容体-天然物リガンド間架橋に最適化した架橋法の開発
Presentation transcript:

研究テーマ 福山大学 薬学部 生化学研究室 1) 脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究 2) がん細胞の特徴と 福山大学 薬学部 生化学研究室 研究テーマ 1) 脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究 今では身近となったトリアシルグリセロール(TG)やコレステロール (TC,善玉・悪玉があります) の増減には生体内の“リパーゼ”と 呼ばれる酵素群の働きが密接に関与しています。 すなわち、肝臓由来の肝性リパーゼ(HTGL)、 脂肪組織などの 肝外組織由来のリポタンパク質リパーゼ(LPL)です。 本研究室では、これらリパーゼの調節やその疾患の機序を解析 することを目的とし研究を行っています。 2) がん細胞の特徴と        その増殖および抑制物質の検索に関する研究 悪性新生物、いわゆる“がん”による死亡率は1980年以降1位 となっています(厚労省:人口動態統計)。また、日本は1960年 以降、乳がん、結腸がん、前立腺がんの死亡率の増加が確認さ れている(WHO:死亡統計)。 本研究室では各種がん細胞について、その特性や特異物質によ る応答を検討し、また悪液質の改善も視野に入れ研究を行ってい ます。

①肝細胞における脂質代謝酵素(HTGL)の活性の亢進 《最近の本研究室による1)脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究発表について》 ①肝細胞における脂質代謝酵素(HTGL)の活性の亢進 高血圧・前立腺肥大症治療に用いられる薬剤群である。 中でもプラゾシン(ミニプレスⓇ 等の主要成分)は、明 らかにHTGLの分泌を促進し、活性を亢進している。 (μM) 肝細胞においてプラゾシン添加群と 非添加群を比較すると、肝細胞内で のcAMP量およびPKA活性に明ら かな上昇が認められた。 また、これらの阻害剤を用いることで HTGL分泌の抑制が認められた。 (min) (min) プラゾシンによるHTGLの分泌促進メカニズムは、肝細胞内のcAMP量に依存した、シグ ナル伝達系酵素PKAの活性化が重要である。よって、プラゾシンには脂質代謝改善作用 も認められる。種々の薬剤には、従来の作用とは別の好ましい作用が認められる可能性が あり、その作用はどのようなメカニズムによるものか?を念頭に研究を行っています。

《最近の本研究室による1)脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究発表について》 ②脂肪組織における脂質代謝酵素(LPL)の活性の亢進 デキストラン硫酸は、高TG血症の治療薬として臨床的に用いられてい る(左写真;MDSコーワ)。しかし、この薬剤に用いられているデキストラ ン硫酸は、平均分子量が1,600と不均一である。 本研究室では、デキストラン硫酸による脂肪組織からの各分子量別によ るLPL分泌促進作用を見出しており、さらにLPL抗体を用いることによ り、量的解析も行っている。 デキストラン硫酸によるLPL分泌促進作用は、分子量3,200で最大比活性が認められた。 さらに、この分子量によるデキストラン硫酸によりシグナル伝達過程の検討を行う。 ③肝細胞における種々の薬剤による効果 本研究室では、初代培養ラット肝細胞において、種々の物質・薬剤によりHTGLの分泌促進作用を見出してい る。 高脂血清澄作用を もつヘパリンによる 肝細胞応答 褥瘡の治癒や筋肉再生などに 医療用栄養剤に用いられてい るアバンドに含まれるHMB さらに、健康飲料に含まれるバナジウム、 低分子量ヘパリン、ルテニウムレッド、 分子量7,700におけるデキストラン硫酸、 アミノ酸;L-アルギニンなど種々の物質 および薬剤によりその作用を見出して いる。

◎乳がん細胞における脂質代謝酵素( LPL)の活性の亢進 ◎乳がん細胞におけるチミジンキナーゼの活性の亢進 《最近の本研究室による2)がん細胞の特徴とその増殖                         および抑制物質の検索に関する研究について》 ◎乳がん細胞における脂質代謝酵素( LPL)の活性の亢進 L-アスパラギンによるマウス乳がんFM3A細胞におけるLPL(リポ タンパク質リパーゼ)の分泌や細胞増殖の促進について研究を行って います。 L-アスパラギンによりLPL分泌が促進されることが認められ、それ に伴い細胞の増殖が促進されることが認められました。 また、抗悪性腫瘍薬に分類されるL-アスパラギナーゼによりLPL 分泌や細胞増殖が抑制されることが分かりました。 現在、L-アスパラギンがどの様なメカニズムで細胞増殖に関与して いるか検討を行っています。 ↑L-アスパラギン L-アスパラギナーゼ→ ◎乳がん細胞におけるチミジンキナーゼの活性の亢進 チミジンキナーゼは、細胞の増殖の指標となる酵素の1つであり、本研 究室では、L-アルギニンによるマウス乳がんFM3A細胞のチミジン キナーゼの活性の亢進について研究を行っています。 本研究によって、L-アルギニンによりチミジンキナーゼ活性が亢進 することが示唆されました。 しかし、現在、がん患者ではアミノ酸が有意に低下することが認められ、 アミノ酸の補充が推進されています。そこで我々は、過剰量のL-アル ギニンにおける細胞増殖のメカニズムを検討するとともに、がん細胞 の増殖に有益であるかどうか研究を行っています。 ↑L-アルギニン