「2012年経済センサス- 活動調査」 結果の精度について 山田 茂(国士舘大学) 経済統計学会関東支部 2014年7月5日
1 事業所を調査客体とする統計調査結果 *考察対象: 経済センサスおよび 事業所を調査客体とする統計調査 *2012年経済センサス-活動調査:従業者数のほか ・売上高・付加価値額・設備投資額と組合せ →販売効率・労働生産性など算出 ・(全数調査)地域別の結果が利用可能 小規模事業所・企業もカバー
就業人口の把握:事業所と世帯 (##万社) ○○万事業所 ***万人 △△△万人
企業の本部 支所 本店 事業部 単独 事業所
実地調査が相対的に容易な調査 ・調査主体:「監督」官庁・後日のチェックなどの可能性 市町村より県・国:経験がある専任者の数 前回調査などによる名簿利用 ・調査員:経験豊かな少数の調査員 ・回答側:(新設でなく)存続事業所・(出先でなく)本社 *事業所数: ・2008年工業統計:44万 ・2007年商業統計:156万 ・2009年経済センサス:636万 ・2012年同:577万 →調査結果の精度:相対的に良好 (自発的な)法人登記・周期が短い調査・本社が回答
2 考察の範囲・方法と注目点 *2000年以降の全数調査の従業員数データ *対比用 2001年・04年・06年事業所・企業統計調査 2 考察の範囲・方法と注目点 *2000年以降の全数調査の従業員数データ 2001年・04年・06年事業所・企業統計調査 2009年経済センサス‐基礎調査 12年同‐活動調査 (調査区数 約25万) 2003年・05年・08年工業統計 2002年・04年・07年商業統計 毎年:学校基本調査 *対比用 毎月 労働力調査 雇用保険事業月報 毎年 法人企業統計 会社標本調査 衛生行政報告例
考察の方法と注目点 *方法:他の統計調査結果との比較 税務申告をした企業 「会社標本調査」 法人登記に基づく企業 「法人企業統計」 対比:事業所数・企業数と就業者数 客体:世帯 実施「労働力調査」 税務申告をした企業 「会社標本調査」 法人登記に基づく企業 「法人企業統計」 保健所 届出した施設 「衛生行政報告例」 *経済センサスなどが把握した事業所・企業: ・地域別事業所数の大幅な減少 ・「不詳」率の水準
事業所を客体とする全数調査における民営事業所の 把握状況 調査員調査 ← 調 査 員 が 把 握 し た 事 業 所 → ← の対象外 の事業所 → ↑ 協力が得られた事業所 A 外観上から脱落が 生じにくい事業所 B 脱落しやすい事業所 C 本所・本社・本店 X 脱落 した 全部の (外観から住居等と 誤認の可能性) からの情報を もとに 事業所 ・企業 集計表 把握した事業所 に収録 2006年調査の比率:87.2% 2006年調査の 比率: 9.7% 上記の方法は +?% (事業内容など判明) (同左) 2009年 経済センサス 基礎調査に 他の ↓ 事業内容以外の項目に 「不詳」の場合あり 同左 初めて導入 (比率不明) 統計は 把握? 少数の D 非協力の事業所 (事業内容など不詳) 2006年調査の比率:3.1% 2009年調査の比率:4.9% ↓ 2012年調査の比率:5.5%
実地調査における「名簿」 *名簿利用→漏れを防ぐ ・法人企業統計:登記された法人+過去の調査による修正 ・事業所・企業統計調査~2006年:過去に把握した事業所 ・工業統計・商業統計:当該統計の過去の調査分 事業所・企業統計調査の名簿 ・2009年経済センサス 上記+法人登記情報 ・2012年経済センサス ←2009年の把握分名簿
実地調査に影響する要因 *項目数:2004年事業所・企業統計: 同時に商業・サービス業統計 *経理項目 工業・商業統計:売上・在庫など→非協力 2012年「経済センサス-活動調査」 09年調査にない売上・経費(実額):約18%回答せず *選択式:02年~「労調」:年間収入額(1/4の世帯) 選択式→実額より回答容易 *本社一括調査:09年センサス導入(07年~工業統計)
3 他の統計調査との相違:就業者 1)副業を持つ就業者:2012年10月に計234万人 事業所調査では二重カウントの可能性 3 他の統計調査との相違:就業者 1)副業を持つ就業者:2012年10月に計234万人 事業所調査では二重カウントの可能性 「従業者」「就業者」「本務」と世帯調査 2)標本誤差:結果の差よりも小さい 100万人では3.9% 3)未回収:「事業内容等不詳」の事業所の従業者 4)実地調査自体から脱落した事業所・企業の従業者
1)副業を持つ就業者 ・実数は多くない。副業先は同一業種が多い。 男:製造・卸小売・建設 女:卸小売・医療福祉
「不詳」項目がある事業所数
4)他の統計との対比:公衆衛生施設
商業統計における「就業者」 ①「従業者」 =「個人業主」+「無給家族従業者」 +「有給役員」+「常用雇用者」 ②「就業者」=①「従業者」 =「個人業主」+「無給家族従業者」 +「有給役員」+「常用雇用者」 ②「就業者」=①「従業者」 +「臨時雇用者」 +「他からの派遣従業者」 -「従業者・臨時雇用者のうち他への派遣従業者」 ①と②の差:2002年~2007年には 58~77万人
世帯を客体とする調査との比較 ・経済センサス 12年2月1日:労調 1月末週と *経済センサス下回り: 脱落事業所の従業員を把握した可能性 ・経済センサス 12年2月1日:労調 1月末週と *経済センサス下回り: 脱落事業所の従業員を把握した可能性 ・男・雇用者「製造」「建設」「情報通信」 ・男・自営業主 「建設」「製造」「小売」 ・女・自営業主 「製造」 「小売」 *上回り:男女・雇用者「卸・小売」「宿泊・飲食」 副業者の2重カウント・労調での脱落の可能性 (上記の傾向は2009年でもほぼ同じ)
従業上の地位別従業・就業者
5)実地調査から脱落した事業所・企業 事業所の急減: 間接的な手掛かり 3年前・6年前と比べて100以上減少した町丁 (別紙) 事業所の急減: 間接的な手掛かり 3年前・6年前と比べて100以上減少した町丁 (別紙) 大都市中心部:多い事業所のタイプ (企業の本社ではない)支所 新設事業所 夜間しか営業していない飲食店 ・把握された企業数: 「会社標本調査」「法人企業統計」との比較
事業所調査の集計から脱落した就業者 ①実地調査から脱落した事業所・企業の所属者 ②「事業内容等不詳」事業所の所属者 ③「事業内容」が把握できた事業所・企業の所属者の一部が漏れた →①②③小規模事業所・企業が多い可能性 (把握している他の調査) →財務省・国税庁が把握している企業所属? →労働力調査が就業する世帯員として把握?
差の原因:2012年把握された企業数
把握された業種別企業数
むすびにかえて *事業所を客体とする調査による就業人口の把握 ・脱落の可能性:特定業種 小規模・支所 大都市 比較困難 学校基本調査: ・脱落の可能性:特定業種 小規模・支所 大都市 比較困難 学校基本調査: 短大・専修「兼務教員」が半数以上 工業統計:男女別 調査票にあるが集計表なし ・比較対象にも脱落の可能性:例 廃業した理髪店 ・労調 ・法人企業統計 ・雇用保険事業月報
学校基本調査:教職員数
「常用雇用者」と「正社員・正職員」 (経済センサス) 「常用雇用者」 期間を定めずに、 1か月を超える期間を定めて 期間を定めずに、 1か月を超える期間を定めて 基準日の前月・前々月に各18日以上雇用 「常用雇用者」のうち、一般に 「正社員」、「正職員」などと呼ばれている人
雇用保険事業 1.適用事業 雇用保険は、全産業に対して適用され、労働者が雇用される事業は、全て適用事業となる。ただ し、農林水産の事業であって政令で定めるもの(法人以外の事業主が行う事業であって、常時5人以上の労働者を雇用する事業以外のもの)は、当分の間、暫定的に任意適用事業とされている(法附則第2条)。 2.被保険者 雇用保険の適用事業に雇用される労働者を被保険者としている。 〈適用が除外される労働者〉(法第6条) ○1週間の所定労働時間が20 時間未満である者 ○同一の事業主に継続して31 日以上雇用されることが見込まれない者 ○季節的に雇用される者(短期雇用特例被保険者に該当する者を除く)であって、4ヵ月以内の期間を定めて雇用される者又は1週間の所定労働時間が20 時間以上30 時間未満である者 ○65 歳以上に達した日以降に雇用される者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者に該当する者を除く) ○国、都道府県、市町村等に雇用される者 ○昼間学生