枯草菌C4-ジカルボン酸輸送体DctPとMaeNの機能解析

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枯草菌C4-ジカルボン酸輸送体DctPとMaeNの機能解析 理工学研究科分子生物学専攻 指導教官: 大西 純一 生内 寿文

枯草菌と大腸菌の TCA回路代謝中間産物の輸送体 枯草菌輸送体 枯草菌 輸送体候補 大腸菌輸送体 (好気条件下) Citrate CitM, CitH, CimH YraO - cis-Aconitate Isocitrate CitM? a-Ketoglutarate KgtP Succinate DctP DctA モノカルボン酸輸送体 Fumarate Malate MaeN, (YflS), MleN, CimH Oxaloacetate Bastiaan P. Korm et al. Antonie Van Leeuwenhoek. 2003; 84(1): 69-80. より一部改

枯草菌のC4-ジカルボン酸取り込み に関する2つの経路 第一経路 第二経路 Succinate Fumarate Malate ? DctP MaeN ? DctS YufL DctB YufM ? DctR P P YufL DctS DctR YufM P P dctP maeN

DctPとMaeNについてのこれまでの実験 方法 DctP (Na+ or H+ /Dicarboxylate) MaeN (Na+/Malate) 生育(相補)による 輸送基質の特定 枯草菌欠損株 Succinate Fumarate Malate DctA欠損大腸菌の生育相補 - 輸送活性測定 細胞 再構成膜小胞 Na+/Malate symporter

最小培地でのdctA欠損大腸菌株の生育の変化① pDctPで形質転換 〇野生株 ◇dctA欠損株 ◆dctA欠損株 pDctP

dctA欠損大腸菌株の14C-コハク酸取り込み活性 大腸菌を培養 (pDctP保持株はDctPを誘導発現)      ↓ 集菌してリン酸緩衝液(pH 7.4)に懸濁 大腸菌懸濁液に1 mM 14C-コハク酸 を加え,氷上でインキュベーションし てその取り込み活性を測定

DctP発現DctA欠損大腸菌株の 拮抗阻害剤存在下での14C-コハク酸取り込み

dctA欠損大腸菌株の14C-リンゴ酸取り込み活性 大腸菌を培養 (プラスミド保持株はそれぞれの  タンパク質を誘導発現)      ↓ 集菌してリン酸緩衝液(pH 7.4)に懸濁 大腸菌懸濁液に1 mM 14C-リンゴ酸 を加え,氷上でインキュベーションし てその取り込み活性を測定

DctP発現dctA欠損大腸菌株の 14C-リンゴ酸輸送の速度論的解析 Km (µM) Lineweaver-Burk plot 363 75 Eadie-Hofstee plot 411 (343) 68

最小培地でのdctA欠損大腸菌株の生育の変化② pMaeNで形質転換

dctA欠損大腸菌株の14C-リンゴ酸取り込み活性 大腸菌を培養 (プラスミド保持株はそれぞれの  タンパク質を誘導発現)      ↓ 集菌してリン酸緩衝液(pH 7.4)に懸濁 大腸菌懸濁液に1 mM 14C-リンゴ酸 を加え,氷上でインキュベーションし てその取り込み活性を測定

MaeN発現大腸菌株の 14C-リンゴ酸取り込みのpH依存性 大腸菌を培養 (プラスミド保持株はそれぞれの  タンパク質を誘導発現)      ↓ 集菌してリン酸緩衝液(pH 5-9) に懸濁 大腸菌懸濁液に20 µM 14C-リンゴ酸 を加え,氷上でインキュベーションし てその取り込み活性を測定

DctPとMaeNについて 本実験により明らかになった事実 方法 DctP (Na+ or H+ /Dicarboxylate) MaeN (Na+/Malate) 生育(相補)による 輸送基質の特定 枯草菌欠損株 Succinate Fumarate Malate DctA欠損大腸菌の生育相補 輸送活性測定 細胞 再構成膜小胞 Succ, Fum, MalとAspも輸送基質 Na+/Malate symporter pH < 7で輸送活性増大

dctPとmaeNのプロモーター活性測定 栄養培地で枯草菌を前培養     ↓ 0-5 mM リンゴ酸を含む最小培地 で枯草菌を本培養 OD600 = 0.5で集菌して b-Galactosidase活性を測定 Malate DctP DctP MaeN 第一経路 第一・第二経路

まとめ DctPの輸送基質はコハク酸,フマル酸,リンゴ酸とアスパラギン酸などC4-ジカルボン酸を広く輸送基質とする. MaeNはNa+/Malate共輸送体と考えられているが,大腸菌内では外液のpHが酸性条件で輸送活性が検出された.

謝辞 松本 幸次 先生 朝井 計 先生 小笠原 直毅 先生 細胞生化学研究室の皆様 本研究を進めるにあたってお世話になりました 松本 幸次 先生 朝井 計 先生 小笠原 直毅 先生  (奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科) 細胞生化学研究室の皆様 本研究を進めるにあたってお世話になりました 上記の人々に深く感謝いたします