Non-Spherical Mass Models for Dwarf Satellites 東北大学大学院理学研究科天文学専攻 修士2年 林 航平 第41回天文・天体物理若手夏の学校@愛知県西浦温泉ホテルたつき Fornax dSph(ESO/Digitized Sky Survey 2)
1. Introduction 1-1 冷たい暗黒物質(CDM)のサブハロー構造 CDM理論に基づく高分解能のN-body simulationによって、MW-sizeのハロー内に無数の小さな構造(subhalo)が存在することが分かっている。 (Springel et al.2008)
1. Introduction 1-2 CDM理論とカスプ問題 CDM理論に基づく構造形成シミュレーションでのダークハロー中心部の密度分布。 冪指数が-1〜-1.5の間にあり、カスプ構造であると予測されている。 しかし、矮小銀河等の観測ではコア構造を示唆している。 ----- 会議メモ (11/07/31 22:28) ----- カスプ問題とは、ダークハローの中心部の密度が理論ではカスプになっているが観測ではコアを支持していて、矛盾が生じている。 (Navarro et al.2004)
1. Introduction 1-3 CDMサブハローの形状 CDMサブハローはMW-sizeのハローと同様に(Jing&Suto 2002,Hayashi+2007)、3軸非対称であると予測されている。 また、この結果はCDMの階層的進化の影響を強く反映している。 サブハローの形状を明らかにすれば、CDM理論と銀河の形成と進化に重要な制限を与えることが出来る! (Kuhlen et al.2007)
1. Introduction ハローの形状に対する制限を与えるには 非球対称分布モデルの構築が必須である 1-4 CDM サブハローの観測的制限 ダークマターが支配的な矮小銀河の星の速度分散分布を用いて、サブハローに制限を与える。 先行研究のほとんどが(Walker+2009,Strigari+2010など)、恒星系やハローの分布を球対称と仮定した、簡単なモデルのみを用いている。 ダークハローが支配的な矮小銀河。 M/Lが大きい。 ハローの形状に対する制限を与えるには 非球対称分布モデルの構築が必須である
本研究の目的 非球対称な質量分布モデルを構築し、矮小銀河の視線速度分散分布を用いて解析することで、「ダークハローの形」について制限を与える。 このモデルにおいて、カスプ問題についてどの程度制限を与えることが出来るのか議論する。
2. Model 2-1-1 軸対称分布とジーンズ方程式 恒星系の数密度とハローの密度を以下の様に仮定する 2-1-1 軸対称分布とジーンズ方程式 恒星系の数密度とハローの密度を以下の様に仮定する 恒星系 (Plummer model) ダークハロー 密度分布: q : 恒星系の軸比 面密度: i : 銀河のinclination ----- 会議メモ (11/07/31 22:28) ----- b_*はhalf right radiusを用いる。 Q : ダークハローの軸比 α=-1,δ=-1 ;NFWモデル α=0,δ=-1.5 ;COREモデル
2. Model 2-2-1 モデルの振る舞い(NFW, i=90°) 恒星系の軸比qは速度分散プロファイルの形を、 視線速度分散 qが小さくなると、波打つような特徴的な振舞を表している。これは、qが下がる事でσの勾配が大きくなり、力学平衡を考えると、その分azimuthal方向の速度分散が小さくなる。中心から遠くなるにつれてσの勾配は緩やかになりazimuthalな速度分散が強くなっていく。Qが下がる事で重力を支配しているhaloが潰れ、その分中心部での重力が強くなる。よってamplitudeと勾配が強くなる。この特徴的な振る舞いはhalf right radius以内で起こっている。 Major axis (half right radiusで規格化) 恒星系の軸比qは速度分散プロファイルの形を、 ダークハローの軸比Qは中心部での勾配を決定している。
恒星系の軸比qとダークハローの軸比Qは、 2. Model 2-2-2 モデルの振る舞い(NFW, i=90°) 視線速度分散 Minor axis (half right radiusで規格化) 恒星系の軸比qとダークハローの軸比Qは、 中心部での勾配を決定している。
2. Model 2-2-3 モデルの振る舞い(NFW vs CORE, i=90°) NFW CORE Major axis 視線速度分散
3. Data b* 3-1 今回用いる天体データは以下の6つの矮小銀河 視線速度データは Carina, Fornax, Sculptor, Sextans ⇒ Walker+2009 LeoI ⇒ Mateo+2008 Draco ⇒ Kleyna+2002 を用いた
Major axisとMinor axisそれぞれの振る舞いが、 CDMハローの形、カスプ問題に重要な制限を与える 3. Data 3-2 各矮小銀河の視線速度分散分布 Carina Sextans Fornax Draco Sculptor LeoI ----- 会議メモ (11/07/31 22:43) ----- 赤がMajor axis、青がMinor axis Major axisとMinor axisそれぞれの振る舞いが、 CDMハローの形、カスプ問題に重要な制限を与える
4. Result 4-1 Major axisにおけるダークハローへの制限 σb*/σmin ≥ 1 σb*/σmin > 1 q=0.67 q=0.7 q=0.68 4-1 Major axisにおけるダークハローへの制限 σb*/σmin > 1 σb*/σmin ≥ 1 σmin σb* ----- 会議メモ (11/07/31 22:28) ----- 波打つプロファイルを基準にしてσminとする。 x=b_*でのσを用いる。 観測では、1に近い値をとる。 σb*/σminの指標を用いてダークハローの軸比Qについて考察する
4. Result 4-1 Major axisにおけるダークハローへの制限 直感的にQ≠1であり、 ダークハローは球対称では 右下図はσb*/σminとQ−bhaloの関係。 この比が1近くになるには、 Qが1より小さい必要がある。 直感的にQ≠1であり、 ダークハローは球対称では ないことがわかる。 Q bhalo/b* contour: σb*/σmin
4. Result 4-2 Minor axisにおけるダークハローへの制限 NFW CORE minor axis
4. Result ダークハローの密度プロファイルはコア状であることを示唆している。 4-2 Minor axisにおけるダークハローへの制限 観測結果から、minor axisのプロファイルが全体的に一定または正の傾きを持っている。この振る舞いは、NFWプロファイルでは説明しにくい。 ダークハローの密度プロファイルはコア状であることを示唆している。
4. Result 定量的(χ2検定)にも、確かめられている。 他の4つの矮小銀河でも確かめられている。
5. Conclusion ハローの形状は球対称ではない。そしてそれは観測結果を再現するのに重要な物理量であることがわかった。 ⇒これまで行われてきた、球対称での解析ではダークハローに対する正確な理解を与えるとは言えない。 我々が構築した軸対称モデルでは、ダークハローの密度分布がコアであることを示唆している。
6. Future work CDM理論と階層的合体に基づく銀河の形成と進化過程に対して重要な制限を与える事が出来る ダークハローの軸比が何に依存しているのか。 Q、bhalo、ρ0が星質量との相関があるのか。 CDM理論と階層的合体に基づく銀河の形成と進化過程に対して重要な制限を与える事が出来る ----- 会議メモ (11/07/31 22:43) ----- 相関関係があるとしたら、その原因は何故か? ※「全天体形成」Workshop、秋季年会で詳しく発表します。
END
2. Model 2-1-2 軸対称分布とジーンズ方程式 分布関数をƒ(E,Lz)と仮定するとジーンズ方程式は以下の様になる 2-1-2 軸対称分布とジーンズ方程式 分布関数をƒ(E,Lz)と仮定するとジーンズ方程式は以下の様になる これを視線方向に射影し、視線方向における速度分散を得る。
2. Model 2-3 観測データとの比較 恒星系の軸比qとスケール長さb*はgiven。inclinationは90度(edge-on)で固定する。 ハローの密度分布はNFWとCOREの2通りで行う。 ハローの軸比、スケール長さ、中心密度(Q, bhalo, ρ0)をパラメータとしてカイ二乗テストを行う。 フィッティングはMajor axisとMinor axisで行う。
2. Model 2-2-4 モデルの振る舞い(NFW vs CORE, i=90°) NFW CORE 視線速度分散 短軸方向
4. Result (Fornax) NFW CORE COREモデルがプロファイルを良く再現している
4. Result (Draco) NFW CORE 他の4つの矮小銀河もCOREモデルを支持している