第2章 銀行による貨幣の供給 前章の確認: ● マネーストックの区分 ● クレジットカードや電子マネーは貨幣か ● 日銀当座預金とはなにか 第2章 銀行による貨幣の供給 前章の確認: ● マネーストックの区分 ● クレジットカードや電子マネーは貨幣か ● 日銀当座預金とはなにか ● 貨幣はなぜ誕生したか ● どのような貨幣が流通してきたか 金融論第5週資料
§1 貨幣の供給(p.23~29) Q1) 日銀は貨幣をどのように供給しているか Q2) 民間銀行は貨幣をどのように供給しているか キーワード: 要求払い預金 大数の法則 信用創造 金融論第5週資料
Q1) 日銀は通貨をどのように供給しているか ◆ 中央銀行(Central Bank): 一国の通貨(決済)制度や銀行システムの中心として、通貨の発行・管理を行う ◆ 中央銀行に当座預金口座を保有するのは、民間銀行(預金取り扱い銀行)のみ ◆ 中央銀行からの貸し出し(通貨の供給)は、日銀当座預金ならびにそこからの現金引き出しの形をとる ※ 中央銀行が供給する(民間の銀行が自由に使用できる)通貨を‘ハイパワードマネー(またはベースマネー)’という
① 日銀は「発券銀行」である ② 日銀は「銀行の銀行」である ③ 日銀は「政府の銀行」である 確認:中央銀行としての日銀の具体的役割 ① 日銀は「発券銀行」である → 日本銀行券の発行を行う ② 日銀は「銀行の銀行」である → 銀行に日銀当座預金を供給する ③ 日銀は「政府の銀行」である → 国庫金や国債の取扱いを行う
Q2) 銀行は通貨をどのように供給しているか ◆ 個人や企業が、保有現金を銀行に預ける ◆ 銀行は個人や企業に対し、預金を供給する = 決済が可能な資産、または現金の引き出し権 ※ A(貸し手)とB(借り手)の金融取引では、「AからBへの資金の融通(供給)」と同時に、「BからAへの金融資産の供給」が成立している 金融論第5週資料
● 銀行は少ない手元現金で大丈夫なのか? ◆ 現金残高 : 要求払預金残高 ≒ 1 : 27 (2008年1月、テキストp.25) ● 銀行は少ない手元現金で大丈夫なのか? ◆ 現金残高 : 要求払預金残高 ≒ 1 : 27 (2008年1月、テキストp.25) ◆ 預金に対しどの程度の率で現金が流出するかは不確実 ◆ ただし、十分な規模の預金についてみると、現金流出の比率(現金-預金比率)はおおむね一定の値をとると考えられる ※ 不確実な事象の実現値が、標本数が大きくなることで理論上の平均値に収束することを「大数の法則」という
Q3) 銀行預金はどのように創造されるか ◆ 現実には、日銀の通貨供給(日銀当預+現金通貨)をはるかに上回る通貨(現金通貨+預金通貨)が流通 ◆ 現実には、日銀の通貨供給(日銀当預+現金通貨)をはるかに上回る通貨(現金通貨+預金通貨)が流通 ◆ このようなことが起きるのは、民間銀行が貸し出し(信用創造)を通じて新しい預金通貨を創造しているためである。 (p.24~29参照) マネーストック>>ベースマネー
● なぜ銀行は信用創造ができるのか ◆ 銀行の貸し出しは、銀行が借り手の預金口座に振り込む(数字を記入する)ことで成立 ● なぜ銀行は信用創造ができるのか ポイント:銀行の提供する要求払い預金は、それ自体Finality をもつ決済手段として使える。 ◆ 銀行の貸し出しは、銀行が借り手の預金口座に振り込む(数字を記入する)ことで成立 ◆ 借り手の他者への支払いが預金振り替えで行われれば、預金口座間の転記が生じるのみ(現金準備は必要とされない) ◆ 一般に預金は決済手段としてだけでなく、貯蓄の手段として用いられ、全てが現金化されることは稀 → 以上の理由により、銀行は現金準備の何倍もの預金を創造することが可能となっている
● 日銀当座預金はどれだけ必要か(p.28~29参照) ◆ 個人や企業が(銀行から借り入れた)資金を(他行への振り込みの形で)他者に支払う場合、異なる銀行間で日銀当座預金による振り替えが必要となる。 ◆ ただし、個人や企業間の債権・債務関係とは異なり、銀行間での債権・債務関係は個別的に決済するのではなく、一定期間集積し、そのネット(差額)についてのみ支払いを行う方式をとっている。よって、決済に必要な日銀当座預金の額は要求払い預金の額に比べてごくわずかで済むことになる。 ※ ただし2001年1月からは決済の即時・グロス処理化が進行
§2 決済システムの安定化政策(p.29~43) Q1) 銀行取付け(bunk run)は、なぜ生じるか キーワード: システミック・リスク 預金保険制度 ペイ・オフ モラル・ハザード 自己資本比率規制 BIS基準 早期是正措置
Q1) 銀行取付けはなぜ生じるか ◆ 通常、銀行の預金は小口・短期であるのに対し、貸し出しはより大口・長期であるため、預金者が一度に支払い請求する事態に銀行は対応できない。 ◆ 預金者のもつ情報や判断力が限られているため、健全な銀行にも取り付けが波及する危険性がある。 ※ 金融恐慌(banking panic)1920~30年代 日本:昭和初期に取り付け騒ぎを経験 米国:大恐慌期に3次にわたり銀行が大量破綻
● 個別銀行の取り付けへの対処 ◆ 預金者にとって、銀行の経営状況を厳密に精査するより、預金を引き出す方が手っ取り早い ● 個別銀行の取り付けへの対処 ◆ 預金者にとって、銀行の経営状況を厳密に精査するより、預金を引き出す方が手っ取り早い ◆ 預金引き出しのリスクが高まると、銀行は ① 日銀当預の現金化 ② 手形・国債といった保有資産の売却 ③ 他行からの借入れ ④ 貸し渋りや貸し剥がし といった方法で流動性を確保しようとする。 (p.30~31)
昭和恐慌の引き金となった取り付け騒ぎ ・ 1927年衆議院予算委員会で大蔵大臣・片岡直温が「東京渡辺銀行がとうとう破綻を致しました。」と間違った情報を発言 → 全国各地で「銀行が危ない」という噂が広がり、取り付け騒ぎに。これが引き金となり、金融恐慌が発生した。 (出所:ウィキペディアからの転載)
2007年9月 英国ノーザンロック銀行で起きた取り付け騒ぎ (20億ポンドが数日で引き落とされ、一時国有化に) 2007年9月 英国ノーザンロック銀行で起きた取り付け騒ぎ (20億ポンドが数日で引き落とされ、一時国有化に) http://flickr.com/photos/89319548@N00/1378965141