食糧とそれを取り巻く要因に関する分析 稲葉ゼミナール 4年 鶴岡裕也.

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食糧とそれを取り巻く要因に関する分析 稲葉ゼミナール 4年 鶴岡裕也

第1章 世界の食糧問題 ●食糧問題とサミット ・FAO(国連食糧農業機関)サミット (2008年 6月3日~5日) 第1章 世界の食糧問題 ●食糧問題とサミット ・FAO(国連食糧農業機関)サミット (2008年 6月3日~5日) この食糧サミットの目標は、世界の指導者が深刻な食糧価格問題について短期及び中長期の具体的政策を議論することとされており、メインとなる議題は目標に掲げられているように、食糧価格高騰への対策であった。 ・北海道洞爺湖サミット (2008年 7月7日~9日) 食糧問題についてこのサミットでは、「高騰する食糧価格抑制と安定供給に向けた国際食糧市場の改善」、「バイオ燃料生産と食糧確保の両立」、「生産国への輸出規制撤廃や貧困国への緊急食糧援助」といった議題が挙げられたほか、気候変動により食糧生産が不安定になっているアフリカ農業への支援についても話し合われた。

●価格高騰の原因 ●食糧危機の要因 ①中国など新興国の人口増加及び食生活が変化したこと ②バイオ燃料向けに需要が拡大したこと ③商品市場への投機資金流入が行われたこと ④穀物生産国が国内の物価上昇などに配慮し、輸出を抑えていること ⑤異常気象による穀物の生産量減少 図:穀物価格の推移 出典:読売新聞(2008年5月10日付) ●食糧危機の要因 ①人口の増加 ②異常気象 ③食生活の高度化 ④農業生産性の低下

第2章 バイオ燃料について ●バイオ燃料の定義 ●バイオ燃料の特徴 第2章 バイオ燃料について ●バイオ燃料の定義 バイオ燃料とは、生物体の持つエネルギーを利用したアルコール燃料やその他の合成ガスのことである。主な種類としては、自動車の燃料として使われるバイオエタノールやバイオディーゼルが挙げられる。 原料としては、さとうきびやとうもろこしなどのでんぷん原料が使用されることが多い。 ●バイオ燃料の特徴 ①再生可能エネルギー ②カーボンニュートラルという特性を有する ③バイオ燃料を使用することで、二酸化炭素だけでなく、一酸化炭素、二酸化硫黄や浮遊粒子物質の排出量を抑制することが可能

●主な国のバイオ燃料に対する取り組み ・アメリカ 現在、アメリカは世界最大のバイオエタノール生産国であり、その生産量は1985万キロリットルとなっている。 アメリカでは1970年代後半からエネルギー、環境問題への対応から、とうもろこしを主原料としたバイオエタノールの生産およびガソリンへの混合が実施されており、実際に2006/07年度は、とうもろこし需要量の22.9%がバイオエタノールの生産に仕向けられている。 ・ブラジル ブラジルではさとうきびからバイオエタノールを生産している。 その生産量は世界のバイオエタノール生産量の34.7%を占める1783万リットルであり、ブラジルは世界最大のバイオエタノール輸出国となっている。 ・日本 京都議定書で締結した温室効果ガス排出削減目標達成のために、日本でもバイオマス燃料の導入・推進の重要性が認識され、国家戦略としての「バイオマス・ニッポン総合戦略」を推進するようになった。 具体的な活動としては、関係府省が連携して、バイオエタノールの製造とバイオエタノール3%混合ガソリン(E3)の製造利用に係る実証事業を各地域で展開していることが挙げられる。

●バイオ燃料生産が食糧事情に与える影響 (とうもろこしの場合) 主にとうもろこしをバイオエタノールの原料として用いているのは世界第一位の生産を行っているアメリカと世界第三位の生産を行っている中国。 この両国のとうもろこしの生産量合計は世界の約6割を占めている。そのため、アメリカ、中国という2国がバイオエタノール政策を拡大させることは、両国のとうもろこしの国内需給だけでなく、国際需給にも大きな影響を与えることになる。 実際に起こるとされている影響は次のことが挙げられる。 ①世界最大のとうもろこし輸出国であるアメリカ国内ではバイオエタノール需要量の拡大により、とうもろこし需要量の伸びが生産量の伸びを上回る。そのため輸出量が減少し、アメリカの世界とうもろこし輸出シェアが縮小する。 ②政策の拡大が国際とうもろこし価格の上昇を通じて、世界とうもろこし輸出市場におけるブラジル及びアルゼンチンといった南米諸国のシェア拡大に寄与する。 ③政策の拡大により、両国のとうもろこし需要量は増加するが、その一方でバイオエタノール向けの需要が増加することで、その他の用途に向けられる需要量が減少する。

●これからのバイオ燃料 バイオ燃料生産を拡大する上で最大の問題点は、原料を農産物としているため食糧と競合してしまうことである。 その対策としては、以下のことが挙げられる。 ・「第2世代バイオ燃料」の利用 第2世代バイオ燃料とは、木材チップやわらなどの食用農産物と競合しないセルロース系原料を用いて製造されるバイオ燃料のことである。 そうした資源を利用するため、第2世代バイオ燃料は第1世代のものと比べてより環境負荷が少なくなる。 ・食糧と競合しないバイオ燃料の原料 「ジャトロファ」 ジャトロファは乾燥に強く、雨が降らないときには自ら葉を枯らし、水分の蒸散を減らして生き延びる性質を持っており、痩せた土地でも生長が早い。 加えて、この植物の種の油質はバイオ燃料の材料として最適であるが、毒性物質を含んでおり食用とはならないため食糧と競合することはない。

第3章 遺伝子組み換え作物について ●遺伝子組み換え作物の定義 ●遺伝子組み換え作物の利点 第3章 遺伝子組み換え作物について ●遺伝子組み換え作物の定義 遺伝子組み換えは、ある生物が持つ有用な遺伝子を外部から人為的に組み込む技術のこと。 従来の品種改良の場合は掛け合わせを数世代繰り返すために時間がかかるが、遺伝子組み換えの場合は短時間で品種改良を行えるという利点がある。 具体的には、害虫に強い、除草剤をかけても枯れないといった特徴を持つ大豆やとうもろこし、ナタネなどの作物が作られている。 ●遺伝子組み換え作物の利点 ①農家の作業負担を軽減できる ②生産費を下げられる ③農薬の使用量が減るため、農作物の残留毒性が低くなり、消費者に安心を提供できる

●各国の遺伝子組み換え作物に対する姿勢 ●遺伝子組み換え作物の問題点 推進派・・・アメリカ、カナダ、オーストラリア、中国、日本 反対派・・・EU、アフリカ、タイ、インド ●遺伝子組み換え作物の問題点 問題点としては以下のことが挙げられている。 ①安全性 慢性毒性への危惧、ターミネーター種子の人体への影響 ②生態系への影響 原種との交配による生態系の破壊、食物連鎖による自然界全体の変化 ③細胞汚染 ④利点の不確実性 農薬の使用量、コストについて

●食糧事情に与える影響 ●国際的な取り組み アメリカの農家では、2007年まで非遺伝子組み換え大豆を作っていたところでも2008年から全て遺伝子組み換えのものに切り替えるようになっており、同年には生産比率が1割程度、大豆の作付面積に占める非遺伝子組み換えの比率は9%にまで落ち込んでいる。 とうもろこしも非遺伝子組み換えのものについて同様のことが指摘されている。 こうしたこともあり、2008年における非遺伝子組み換え大豆の価格は前年の2.5倍に高騰しており、食品メーカーにとっても確保が難しいものとなっている。 そのため今後は日本でも食用のものについて、非遺伝子組み換え大豆の調達難により、遺伝子組み換え大豆を調達せざるを得ない状況も考えられる。 ●国際的な取り組み 遺伝子組み換え作物に対する国際的な取り組みとしては主に次のことが挙げられる。 ・モントリオール「バイオ安全議定書」 遺伝子組み換え作物の輸出入時に輸出先の国に情報を提供、事前同意を得ることなどを義務付けている。 ・CODEX 「遺伝子組み換え食品に関する国際規格」 遺伝子組み換えの国際ルールとなり、国際食品規格としてCODEXに加盟する各国におけるリスク評価や管理方法などの基準となるもの。

第4章 発展途上国の食糧事情 ●発展途上国の現状 ●各国の現状 第4章 発展途上国の食糧事情 ●発展途上国の現状 FAO(国連食糧農業機関)によると、2008年の世界飢餓人口は昨年比4000万人増の9億6300万人に達するとされている。 そうした飢餓人口はアジアとアフリカに集中し、インドや中国など7カ国だけで全体の65%を占めており、今後、世界的な金融・経済危機によって飢餓状況はさらに悪化する恐れがあるとされている。 ●各国の現状 ・中国 中国はコメや小麦など世界最大の食糧生産国および消費国として、2007年には約5億トンの食糧を生産・消費しており、食糧需要量は世界の全貿易量の2倍となっている。

中国では食糧の消費構造が油脂や食肉類へと高度化しつつあるため、その原料や飼料となる大豆の生産が追い付かず、1996年以降大豆の輸入が急増するようになり、2007年には世界大豆輸出量の45%に当たる約3000万トン強をブラジルやアメリカから輸入し、対外依存率が約7割に上昇した。 またこうした食生活の高度化から、とうもろこしについても輸入が急増すると考えられている。 ・アフリカ アフリカでは、干ばつや洪水などをきっかけとしてたびたび食糧不足に陥ってきた。 それに加えて降水量が少なく、かんがい設備も不十分な乾燥地域では異常気象による影響も大きいため、農業生産の減少を招いてしまっている。 国別に見てみると、マラウイでは2002年の干ばつで約500万人が緊急食糧援助を必要とする事態に陥った。 また、ニジェールでは2004年に起きた干ばつとイナゴの大量発生で全国民の5分の1が食糧不足に陥った。 地域で見てみると、南アフリカ共和国を除いた南部が深刻な状況を迎えており、この地域の飢餓人口は2003年~2004年にかけて1000万人以上に達した。現在この地域では、大人が痩せ細るという飢餓の最終段階に陥っている。

●発展途上国を救うための対策 ・世界食糧計画(WFP) 食糧欠乏国への食糧援助と天災などの被災国に対して緊急援助を施し、経済・社会の開発を促進する国連の機関であるWFPは、食糧問題に苦しむ国に食糧支援を行っている。 ・アジア開発銀行(ADB) アジア開発銀行によると、アジア太平洋地域内の途上国では家計支出の6割が食費となっており、約10億人が深刻な影響を受けている。 そのため、ADBはアジア太平洋地域の途上国に緊急財政支援を行うと共に、農業基盤整備に向けた資金も融資し、食糧増産体制の強化も支えるとしている。 ・日本 日本は貧困国への種子や肥料の提供など食糧増産に向けた支援を行っている。 また途上国への食糧危機対策の施策としては、国内の義務的輸入米を途上国へ支援するということなどを行っている。

第5章 総括 食糧という分野は現在でも、価格高騰や食糧不足などの様々な問題を抱えており、これからこうした問題はより深刻なものになってくると思われる。 では、こうした問題に対して我々はどうしていくべきなのであろうか。 そのためには、この食糧という分野に一人一人が関心を持っていくことが重要だと私は考える。 実際に価格高騰などによる影響は自分達の周りでも起こっているものであるし、これから先、利用される機会が増えていくと思われる遺伝子組み換え作物によって自分の身に危険が及ぶという可能性も考えられる。 食糧というものは人が生きていくためには欠かすことのできない要素であり、その要素に存在する問題を私達が見過ごしてはいけない。 だから、食糧問題に対して一人一人が日々関心を持って目を向けていくことが重要だと私は考える。