保育園での天文アウトリーチ活動の試行 富田晃彦 (Tomita Akihiko) 講演番号A7 (和歌山大学教育学部) 日本理科教育学会近畿支部大会 2007年12月8日、和歌山大学教育学部附属中学校
アウトリーチ活動を行っています 第3期科学技術基本計画では「社会・国民に支持される 科学技術」という目標がある。そのための「科学に関する 国民意識の醸成」への活動の一つとして、科学のアウト リーチ活動がある。この研究では「科学への興味関心を 高める」ことを、「科学に関する国民意識の醸成」の 具体的目標とした。
a,b層同時にアプローチできる絶好の場所:保育園 保育園で行っています a,b層同時にアプローチできる絶好の場所:保育園
天文分野で行っています 園児及び(保護者&保育担当者)の両者を対象とする背景 どの年代層にも「宇宙」が人気分野であることを、大いに利用する。 国際協力的視点を示しやすいことは、大人の層への共感を呼ぶ (JAXA「月に願いを!」キャンペーンに園として参加、など)。 また「宇宙」は、科学の面だけでなく、子どもの文化の世界 (おとぎの世界)ともつながっている。 園児及び(保護者&保育担当者)の両者を対象とする背景 科学技術政策研究所 調査資料107 学校教育と連携した科学館等での理科学習が児童生徒へ及ぼす影響について 「科学について、子どもの頃の親しみが後々大きい」→園児へ 科学技術政策研究所 調査資料100 科学技術理解増進と科学コミュニケーションの活性化について 「科学に関心があるが、分かりやすく説明を受ける機会が少ないと、 国民の多くが不満」→保育者、保護者の層へ
実践方法 実践場所 ゲストとして、園へ「うちゅうのおはなし」で 定期的に出かける。 園児の変化、保育者の変化、保護者の変化を見る。 ゲストとして、園へ「うちゅうのおはなし」で 定期的に出かける。 園児の変化、保育者の変化、保護者の変化を見る。 保育者からの聞き取りに力を入れる。 実践場所 大阪府藤井寺市 認可のH保育園(園児数130) 大阪市中央区 認可外のN保育園(園児数40) たくさんの場所を回るより、特定の園で実践を重ねる。 派手な広報を考えるより、じっくり園の観察を。
この研究発表での範囲 最終目標:保育園(将来的には「様々な園」を含めて)や幼稚園で天文分野のアウトリーチ活動を行うことにより、園児の層、大人の層(科学のもともとの好き嫌いに関係なく)同時に、科学への興味関心を高めることができる実践の例を示す。
ことの起こり 実践前は… 実践後: ● N保育園での4,5歳児(15人)の「お泊まり保育」で 「ほしのはなし」。保育士数人も参加。室内にて30分間。 公開天文台ネットワーク(PAONET)画像を活用した 「あまのかわ」というスライドを作成。 実践前は… ● 保育士が「星の話→理科の授業」で構えたとのこと。 星の話といえども、必ずしも歓迎されていない(貴重な体験)。 実践後: ● 2カ月後、園は初めて地域のプラネタリウムに出かけた。 ● 園児は「ほし」「プラネタリウム」ということばをよく話すように なった。 ● 園の制作展で、プラネタリウムを意識した展示を初めて作成した…
公開天文台ネットワーク (PAONET)の1万枚以上 の画像データベース
高校生だって素朴な疑問(ある進学校の理数科2年生より) 月はいつ寝ている? →月は出たらきれいだから、ちゃんと寝ていて寝不足ではないよ。 月は暑い? →暑いと思う人! 寒いと思う人! で手を挙げてもらい、だいたい半々。 昼間はものすごーっく暑く、夜はものすごーっく寒い。みんな正解! 月は何歳? →何歳だと思う? 保育園か小学生かと言われれば、小学生かな。 だってしっかりしてるもん。そうか(^^)。 月はおいしい? →そうやな、弁当持っていかないと、むこうでごはんは出ないよ。 # 月は食べられるか、という質問だったかも。 月で何が飲める? →そうやな、月に行った人に聞いてみるか。 園児の質問 高校生だって素朴な疑問(ある進学校の理数科2年生より) ◆新しい星座はつくれないのですか。 ◆宇宙に人型の生命体はあるのでしょうか。 ◆星の数は、増えているのでしょうか。 ◆ブラックホールはどのようにしてできるのですか。 ◆土星ができたときから土星のリングはあったのですか。 ◆月の大きさ、見える位置、色が違ったりするのは、なぜでしょうか。 ◆惑星はどうしてすべて丸いのでしょうか。
N保育園 2006 年度 2007年2月 2006年7月7日 お迎えの保護者仕事後の保育士さんが楽しむ 質問にまじめに対応したのは 園児に好評(保育士) *星は寝ないの?いつ寝るの? *星はけんかしないの? *月はおいしいの?? *星って小学生?しっかりしてるもん 望遠鏡で土星、月 お泊まり保育の絵でのスライド投影 喜ぶ大人の姿が 園児によかった (保育士) § 富田の誘導は一切なし 保育士さんも興味を持ち始めて頂く 2006年11月30日 12月 1日 2006年9月8日 2007年1月 4、5歳児がプラネタリウムに§ 4、5歳児が制作展で プラネタリウム制作§ 3〜5歳児: 勝手に園庭でお月見§ 園として大変珍しい科学館訪問 みんなスライドを思い出して楽しんだ (保育士) 保育士抜きで異年齢児が集まり、ひとつの話題で盛り上がる (保育士) 2006年12月8日 黒ビニール袋利用 中から見るときれい 親子で参加 家庭でも星や月の話題 (保育士) 月の話 セレーネ「月に願いを!」宣伝 2007年1月「月に願いを!」団体応募
結 論 1. 保育園で、天文アウトリーチ活動を 2. 科学の好き嫌いに関係なく、 3. 少しの活動で、園児、保育者、保護者に 楽しむことができる(宇宙は誰にでも 平等に頭の上、そして中に!)。 2. 科学の好き嫌いに関係なく、 大人の層に会うことができる。 3. 少しの活動で、園児、保育者、保護者に 宇宙への興味を喚起することができる。 現在の研究の限界: 限られた園、限られた実践者という限定版 → 誰でも、どこででもへの拡張が課題