産科医療崩壊を防ぎ 安心・健やかお産を守るために 西尾産婦人科(土岐市) 西 尾 好 司

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産科医療崩壊を防ぎ 安心・健やかお産を守るために 西尾産婦人科(土岐市) 西 尾 好 司 産科医療崩壊を防ぎ      安心・健やかお産を守るために          西尾産婦人科(土岐市)             西 尾 好 司  1.分娩取扱い30年を振り返って  2.地域の周産期ネットワーク  3.安全神話の払拭  4.無過失補償制度について  5.医師・患者信頼関係の再構築                        10/27‘07  土岐市文化プラザ ご紹介頂きました西尾でございます。時間が限られておりますので、早速進めさせていただきます。

30年の分娩数推移 私は1977年(昭和52年)から今年1月迄、足かけ30年お産を扱って、9000件の分娩を扱ってきました。その推移を示したものです。

30年間を振り返って ・ 取扱い分娩件数(常勤医 1人) : 9千件 ・ 母体死亡 : なし ・ 25年間の帝王切開率: 3.11% ・ 25年間の骨盤位分娩 : 2.52% ・ VBAC(前回帝切後の自然分娩): >37件 ・ NICU及び母体搬送率 : 1.73% ・ 死産率(22W.~ 14年間): 0.44% ・ 先天性異常児(25年間) : 0.93% 30年を振り返って,まとめて見るとこんなことになりますが、幸いに、母体死亡も、訴訟案件も経験せず、これも時代背景が未だよく、運も良かったと感謝しております。

24時間受け入れ態勢 ・情報センター ・研修機能 地域周産期ネットワーク 東濃地域周産期母子医療センター     (県立多治見病院内) 24時間受け入れ態勢 ・情報センター ・研修機能         (お産ネット) 東濃東部2次病院 オープン病床 東濃西部2次病院 オープン病床 これは私が理想とする周産期ネットワーク図ですが、以前はこんな構図が、十分機能しておりましたが、最近2次病院が無くなって、危機感が募ってきているのは、皆さん周知の通りであります。1次は2次,3次があっての1次であります。 東濃地域の一般産婦人科診療所

分娩取扱い中止の理由 1.モチベーションの低下 ・老齢化と積年の疲れ ・後継者が継承に消極的 ・保身(萎縮)医療 訴訟プレッシャー 2.周囲の環境悪化 ・安全神話の定着 訴訟の多発 ・保助看法問題によるスタッフ不足 ・周産期医療連携に綻び これは私が少し未練を残しながら、分娩を止めた理由ですが、明日は我が身という訴訟のプレっシュアーは大きく影響しております。

分娩場所別出生数の推移 99% 52年前は98%は自宅分娩でしたが、今や99%は病院や診療所ぶんべんで、助産所は1%足らずであります。

妊産婦死亡率の推移(出産10万対) (母子保健の主なる統計 2006より) 妊産婦死亡率の推移(出産10万対) (母子保健の主なる統計 2006より) 昭和30年 年間3,095人が出産で命を落しました 周産期死亡率  43.9 (出生 1000対) (人) 周産期死亡率(出生 1000対) 日本  3.3 米国  5.6 英国  6.8 平成16年  49人、日本は世界一安全なお産が出来る国となった 161.7人 それと同じようなカーブで母体死亡も減ってきております。つまり、52年前には3095人が分娩で死亡しました。まさに分娩は命がけでもあったわけです。それが現在では、40分の1に減り、周産期死亡率も20倍以上すくなくなり、日本は今や世界一に安全なお産が出来る国なんです。 4.3人

産科医療危機の主因 *周産期医療危機の主因 1.産科医の過重労働 2.医療訴訟のプレッシャー *世界一の産科医療を築いてきたもの    ○ 医術の進歩による質の高い医療     ○ 国民皆保健制度     ● 周産期医療関係者(産科医、助産師など)の頑張り *周産期医療危機の主因    1.産科医の過重労働    2.医療訴訟のプレッシャー 医療危機 これは周産期医療当事者の頑張りに負うところが大きかったのです。36時間勤務に耐えながら頑張った産科医に負うところが大きかったのです。

安全神話は誤解!! 「安全神話」とは、お産は病気ではないから、正常に生まれるのが当たり前という固定観念。 「命がけ」という心構えも少しは必要! 分娩の8~9割は正常に生まれるが、1~2割は、厳重な管理と介助が必要であり、突然、異常が発生することも珍しくない。 最近、晩婚化によって、ハイリスク妊娠、異常産 は増えている。 母体死亡の危険を伴う異常    1)羊水栓塞症    2)ヘルプ症候群    3)胎盤早期剥離    4)癒着前置胎盤    5)弛緩出血等の多量出血(DIC)に伴う多臓器不全 ● 常に安全管理と医療の質の向上を図ることは勿論である。 しかし、 ● 事故が起これば、全て医師の責任(結果責任)では産科医は減る一方。 世界一安全なお産が実現した結果、安全神話が生まれた。しかし、・・・・・。こんな異常が突然発生することもある。

帝王切開が増えている !! 帝王切開率(%)の推移 帝王切開が増えている !!                帝王切開率(%)の推移 病院平均  14.33% 診療所平均 9.51% 脳性麻痺に対する訴訟を避けるために、近年、帝王切開が増加しております。 西尾産婦人科 3.11% (233/7503)

帝王切開なら安全か!! ・ 帝王切開術は一般に、自然分娩では危険な場合に、児を救命するための究極の手段である。 ・ 帝王切開術は一般に、自然分娩では危険な場合に、児を救命するための究極の手段である。 ・ 現在、我が国では15~20%の分娩に、帝王切開術が行われ、 医事紛争の増加と共に、年々増加の一途を辿っている。                     少子化 ・ 帝王切開に伴う合併症 !   母体にとっては、自然分娩より2倍母体死亡率の危険が増し、緊急手術では更に危険度が増す。     * 手術副損傷による出血、DIC等     * 肺血栓塞栓症(PTE)     * 術後感染症     * 麻酔に伴うトラブル 安易な帝王切開は危険である。

総医師数と産婦人科医師数の推移 14,677 11,000 平成16年で総医師数は27万強の中で、、、、、 産婦人科医

産婦人科医へ緊急アンケート 兵庫県産婦人科学会会員327名(開業医194、勤務医133名) 平成18年10月実施 今後10年以内に分娩取扱いを止めるつもり?  ・ 60 歳代以上の医師    60 %  ・ 50 歳代           40 %  ・ 40 歳代           25 %  ・ 20~30 歳代        13 %             何が産科診療医減少の原因と     考えるか?  ・不規則な生活、夜間勤務を強いられ、心身のストレスが過大  ・訴訟リスクが大きい  ・拘束時間が長過ぎ、プライベートな時間が確保できない  ・仕事の量と責任に見合った報酬が不十分  ・産科医療への国民の誤解、マスメディアの不適切な報道  ・その他   「根が深すぎて解決策を思いつかない」 40代、50代の働き盛りの年代でこんなに産科離れを考えている。

医療事故は増えているか? 事故は決して増えているとは言えない。 医療側の隠ぺい体質に問題があった。 医療事故報道が極度に増えた。 医療に対する過度の不信感が生まれた。 医療訴訟の増加。             医療過誤 医療事故              第3者機関の判定                医療災害   (裁判外紛争解決手続き)               (医事紛争) ● 結果から見て、最高の医療でなければ過誤? ◎ 100%安全な医療行為はなく、医師も万能ではない。 事故が公表されるようになったのは、メディアの功績でもありますが、、、、、、。

無過失補償制度      ● 脳性麻痺が起こると、紛争になることが多いが、その原因が、既に妊娠中に起っている可能性が高く、分娩時の障害によるものは、12~15%程度との説もある。 ○ 被害者救済は絶対に必要。 ◎ 産婦人科医に過失があったかどうかとは無関係に、 取りあえず、新生児脳性麻痺を発症した子供の両親に補償を給する制度。 産科医事紛争中、最も多い。患者側も医者側も一旦紛争になれば、時間的、経済的負担や精神的重圧は図り知れないものがある。

安心・安全な分娩を守るために!! ▲ 最近の関係:*医師を信頼しない患者の増加(イライラ) *訴訟に怯え、保身医療の医師(ハラハラ) ▲ 最近の関係:*医師を信頼しない患者の増加(イライラ)            *訴訟に怯え、保身医療の医師(ハラハラ) ◎ 本来の関係 (心のつながりがある信頼関係)    ・共に病と闘い    ・共に悲しみ    ・共に喜ぶ ● 温かいシステムが非常に重要     ・ゆとりのある勤務体制      ・周産期医療ネットワークの充実      ・医療事故防止システムの確立      ・無過失補償制度 等 時間がなくて十分意をつくせませんでしたが、産科医療の現況を少しでもご理解いただけたなら、幸いに存じます。