かゆみが血液透析患者のQOLに与える影響の検討 ~SF-36v2を使用して~

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Presentation transcript:

かゆみが血液透析患者のQOLに与える影響の検討 ~SF-36v2を使用して~ 医療法人社団スマイル クレア焼山クリニック ○藤井恵子、永谷美子、桐林慶

はじめに 血液透析患者の合併症は多種多様であり、様々な症状が出現する。  血液透析患者の合併症は多種多様であり、様々な症状が出現する。 その中でも透析皮膚搔痒症は、患者のQOL維持、向上の妨げとなる因子であり、程度の差はあれ50~90%の透析患者に認められる重要な合併症である。

目的 血液透析患者のかゆみとQOLの関連性を知るため、各種臨床データとの検討を行ったので報告する。

対象・方法 ➣維持血液透析患者:61名 (男/女:37/24) ➣年齢:67.9±10.2歳 ➣透析歴:7.3±4.7年 ➣維持血液透析患者:61名 (男/女:37/24) ➣年齢:67.9±10.2歳 ➣透析歴:7.3±4.7年 ➣ I.C及び個人が特定されないための倫理的  配慮のもと、SF-36v2の調査及びかゆみ  に関するアンケートを行い、かゆみのあり、  なしの2群間における各種臨床データとの  関連性を含めた検討を行った。

当院血液透析患者のかゆみの有無 なし:22名 あり:39名

SF-36 (MOS 36-Item Short-Form Health Survey ver.2) ❒36項目から構成され、36項  目は8つの下位尺度に分類される さらに ❒スリーコンポーネントサマリースコア PF : 身体機能 RP : 日常役割機能(身体) BP : 体の痛み GH :全体的健康感 SF : 社会生活機能 VT : 活力 RE : 日常役割機能(精神) MH : 心の健康 身体的健康度 PCS 身体的側面 RCS 役割/社会的側面 精神的健康度 MCS 精神的側面

結果1 * * ** ** * ** * QOLスコア 90 80 70 60 50 40 30 20 10 PF RP BP GH VT n.s * * 90 ** ** * ** * *:P<0.05 ** :P<0.01 mean±SE 80 70 60 50 QOLスコア かゆみあり かゆみなし 40 30 20 10 PF 身体機能 RP 日常役割機能 (身体) BP 体の痛み GH 全体的健康感 VT 活力 SF 社会生活機能 RE 日常役割機能 (精神) MH 心の健康

結果2 (国民標準値に基づくスコアリング) * * ** *** * ** * QOLスコア 90 80 70 60 国民標準値 50 40 *:P<0.05 ** :P<0.01 ***: P<0.005 mean±SE 90 80 70 * * ** *** * n.s ** * 60 国民標準値 50 QOLスコア 40 かゆみあり かゆみなし 30 20 10 PF_N RP_N BP_N GH_N VT_N SF_N RE_N MH_N

結果3 * (スリーコンポーネントサマリースコアでの比較) QOLスコア 90 80 70 60 50 40 30 20 10 PCS mean±SE 80 70 * n.s n.s 60 50 QOLスコア 40 かゆみあり かゆみなし 30 20 10 PCS 身体的側面 MCS 役割/社会的側面 RCS 精神的側面

Q:1週間のうちどれくらいかゆみでの睡眠不足がありますか? 5日以上(2名) 3~4日(5名) あり:13名 なし 26名 1~2日(6名) 睡眠障害の割合:かゆみありの患者39名

夜間のかゆみスコアリング <そう痒の程度の判定基準(白取)> 0:ほとんどあるいはまったくかゆみを感じない。 1:就寝時わずかにかゆいが、特に意識して掻くほどでない。よく眠れる。 2:多少かゆみはあるが、掻けばおさまる。かゆみのために目がさめることはない。 3:かゆくて目が覚める。ひと掻きすると一応眠るが、無意識のうちに眠りながら掻く。 4:かゆくてほとんど眠れず、しょっちゅう掻いているが、掻くとますますかゆみが強くなる。

結果4 夜間の睡眠障害スコア low:0~2点 high:3~4点 (夜間の睡眠障害あり群内でのスコア別比較) * * high *:P<0.05 mean±SE * 80 n.s * n.s n.s n.s n.s n.s 70 60 50 high 40 QOLスコア low 30 20 10 PF 身体機能 RP 日常役割機能 (身体) BP 体の痛み VT 活力 GH 全体的健康感 SF 社会生活機能 RE 日常役割機能 (精神) MH 心の健康 夜間の睡眠障害スコア low:0~2点 high:3~4点

かゆみあり、なし2群間の臨床データ 検討項目 あり なし P値 有意差 年齢(歳) 68.5±10.6 67.0±9.6 0.4896 n.s 透析年数(年) 7.1±4.2 7.6±5.5 0.8688 n.s 補正Ca値(mg/dl) 9.0±0.5 9.0±0.5 0.9262 n.s 血清iP値(mg/dl) 4.9±1.1 4.8±0.9 0.6043 n.s Ca×iP(mg/dl)² 44.1±9.6 42.9±8.6 0.5733 n.s iPTH(pg/ml) 184.0±140.8 172.4±109.8 0.9044 n.s ALB(g/dl) 3.8±0.4 3.9±0.3 0.3107 n.s nPCR(g/kg/day) 0.8±0.2 0.8±0.1 0.5480 n.s kt/v 1.4±0.2 1.5±0.2 0.0203 有り

考察 薬剤投与 適切な外用薬 保湿剤の選択 透析条件の見直し 皮膚の乾燥 透析量不足による尿毒素の蓄積 高リン、高カルシウム血症による皮膚の代謝不良 副甲状腺機能亢進によるPTHの過剰分泌 ダイアライザー、血液回路、穿刺針、絆創膏などによる刺激 使用薬剤によるアレルギー その他疾患 薬剤投与 適切な外用薬 保湿剤の選択 透析条件の見直し

考察 透析患者のかゆみの原因は様々であり、個々の患者のかゆみのレベルに応じた対処法が要求される。そのため私たち医療スタッフは患者のかゆみの 原因を観察し、正確に把握した上で適切な外用剤、 保湿剤の選択及び効果的な塗り方の指導や、または薬剤投与における内服の確認、透析条件の変更、見直しなど患者のかゆみケアの確立と実践が望まれる。

考察 今回の結果からかゆみ、とりわけ夜間のかゆみが様々な尺度における透析患者のQOL低下に関与していることが示唆された。 また各種臨床データからは、かゆみあり群においてkt/vの低下が認められたことからも、患者の かゆみケアを行うことの重要性を再認識し、透析効率の改善を含めた介入によってQOLの維持、向上に努めていく必要があると考える。

結語 SF-36v2による評価において、血液透析患者では、かゆみあり群がなし群に比べてQOLが低下していた。