基礎ゼミ 第三章 レンズによる結像 2016年5月16日 西村 彬
目次 1.像の求め方 2.実際の結像とルーペ 3.光学機器のレンズ系 4.レンズの収差 5.レンズの絞り レンズを通過する光線の性質 倍率(横倍率)について 像の位置と大きさ ピント合わせとピンボケ ルーペ深度 合成焦点距離 めがねの原理 ザイデルの5収差と色収差 収差補正について 絞り Fナンバーと開口数
1.結像の求め方 レンズにより出来る像の位置や大きさは、作図により求めることがで きる(レンズの焦点距離と物体までの距離が必要)。 作図に用いられるのは、レンズを通過する光線の3つの性質である。
三つの性質 光軸に平行な光線は焦点を通る 焦点を通る光線は光軸に平行となる レンズの中心を通る光線はまっすぐに進む
凹レンズ、凸レンズにおける性質
作図による像の求め方 1.凸レンズの場合 2.凹レンズの場合
作図の他に 結像公式を用いて像の位置や大きさを求めることもできる。 結像公式 1/f = 1/a + 1/b (a<f またはb< f の時はこの限りではない)
横倍率と縦倍率 横倍率mは、像の大きさ / 物体の大きさで表される。すなわち、(先 の結像公式で用いたaとbを用いて)|b/a|とできる。 では縦倍率は存在するか? → 存在する。 横倍率:物体と像の大きさを、光軸に垂直な直線上の長さとする 縦倍率:光軸上に沿った長さとする 通常、倍率といえば横倍率のことを指す。
2.結像の実際とルーペ 像はいつも同じ位置、大きさであるとは限らない。 →レンズから物体までの距離によって像の位置と大きさは変化する 例えばカメラでは? 像の位置が変化するとフィルムの位置を変える必要が出てくる。 そこでピント合わせが必要になってくる。
像の位置と大きさの変化の例 1.物体とレンズの距離 > 2f 2.物体とレンズの距離 = 2f (虚像ができる→ルーペ)
ピント合わせ 実際のカメラで行われるピント合わせの手法 →フィルムを固定してレンズを動かす。 レンズを動かすことでフィルムの位置に像ができるようにする。 上手くいかないとフィルム上の像がぼやける。 →この状態をピンボケという。
焦点深度 像がピンボケの状態でも許容できる(事実上ピントが合っているとみ なせる)範囲のことを焦点深度と呼ぶ。 焦点深度は開口数に反比例する → 開口数については後ほど。 これにより、倍率が高くなると開口数が上がり、焦点深度は浅くなる。 また、ピントが合っている物体を移動させてもボケない範囲を被写界 深度という。
ルーペの原理 前のスライドの例4を原理とし、拡大された虚像を作り出してそれを 観察する。 ルーペの倍率の式は250/fであり、物体を250mm離して見た時と比べ て、拡大された像が何倍に見えるかを表している。 この250mmの距離のことを明視距離という。
3.光学機器のレンズ系 光学機器に使われているレンズ系は、どれも原理的には実像や虚像、もしく はそれらを組み合わせたものである。 例:ケプラー式望遠鏡とガリレイ式望遠鏡(おさらい) ケプラー式望遠鏡→対物レンズによる縮小された実像を接眼レンズ を用いて拡大した虚像とし、それを観察する。 ガリレイ式望遠鏡→対物レンズ(凸)による縮小された実像を接眼レンズ (凹)によって拡大した虚像とし、それを観察する。
合成焦点距離 複数のレンズで構成されている光学系では、全体をある焦点距離を 持った一枚のレンズとして考える。 この焦点距離のことを合成焦点距離と呼ぶ。下にその式を示す。 ただし、f1,f2はそれぞれのレンズの焦点距離。dは両レンズの間隔。
眼鏡の原理 眼鏡は目の前にレンズを置くことにより、掛けている人の視力を向上 させることを狙いとしている。 眼鏡には大きく分けて近視用と老視用のものがあり、それぞれ原理が 異なっている(資料では近視用が扱われている)。
近視用メガネ 近視とは? →眼球内に入ってきた光が、網膜よりも手前で像を結んでしまうこ とによって起こる疾患。水晶体の屈折率が強すぎたり、眼球が前後 に長くなりすぎると発症する。 そのため、光を拡散する凸レンズが用いられる。
老視用メガネ 年を取るにつれてヒトの水晶体は固くなり、近くのものが見えづらく なる →網膜よりも後ろで光の像が結んでしまっている。 年を取るにつれてヒトの水晶体は固くなり、近くのものが見えづらく なる →網膜よりも後ろで光の像が結んでしまっている。 そこで、光を集める凸レンズを用いる。
4.レンズの収差 一点から出た光はレンズによって一点に集まると言ったな? 一点から出た光はレンズによって一点に集まると言ったな? 一般的には、理想的な焦点からわずかにずれている。このずれを収差 と呼ぶ。その原因は光の屈折する性質やレンズの形など。 レンズの(理想的な)焦点距離は近軸光線(光軸に極めて近い高さを 通る光線)を用いた光線追跡により求められる。 収差は像のぼやけなどの原因になる。いかにして収差が小さいレンズ を作るか? →収差補正
ザイデルの5収差 収差のうち、単一の波長の光でも生じる収差を分類したもの。 球面収差:軸上の一点から出た光が一点に収束せずバラつく収差 コマ収差:軸外の一点から出た光が一点に収束せず非対称になる収差 非点収差:軸外の一点から出た光による子午像点と球欠像点がずれる収差 像面湾曲:物体の像面が湾曲する収差 歪曲収差:方眼の物体の像が方眼にならない収差
非点収差 子午面(光軸を含む面)と球欠断面(子午面に垂直な面)のズレによって生じる。点として集光しない。
色収差 白色光が含む、いくつかの色の波長の違いによって起こる収差を色収 差という。 光の波長によって像の位置が異なる収差を軸上色収差と呼び、光の波 長によって像の倍率が異なる収差を倍率色収差と呼ぶ。
収差を小さくするために 一枚のレンズだと収差が大きく発生する。ならば複数のレンズを組み 合わせればよいのではないか? →収差補正 一枚のレンズだと収差が大きく発生する。ならば複数のレンズを組み 合わせればよいのではないか? →収差補正 例:赤と青の2色について色収差が取り除かれているレンズ「アクロ マート」はこの考えを用いて作られている。これは屈折望遠鏡な どに用いられている。 わざとレンズの面を球面でなく非球面にすることで、光線を完全に一 点に集めることもできる →非球面レンズ
5.レンズの絞り カメラのレンズには、「絞り」がついている。絞りはレンズを通る光 の量を調節する機能を持っており、これによって像の明るさが変わる。 Fナンバー:レンズの焦点距離をレンズの口径で割った値。像の 明るさを示す指標。小さいほど像は明るい。 開口数:対物レンズの焦点からレンズ本体までで形成される円錐形の 角度をθとしたとき、nsinθで表される値(nはレンズと試料の 間にある物質の屈折率)。像の明るさを示す指標。NAとも。 大きいほど像は明るい。
参考文献 FN高校物理 http://fnorio.com/0134combination_lens/combination_lens.html 3つの性質 分かりやすい高校物理の部屋 http://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/kika/rennzu.html 像の求め方 光学系諸定義 http://www.geocities.jp/jtqsw192/DOC/memo/camera.htm 結像公式の求め方
参考文献2 adokoの物理 http://adoko.blue.coocan.jp/hadou/kouha5-24.html 倍率の定義 レンズの倍率 http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~ortho/med/reh/lens.html 横倍率と縦倍率の定義 Hello School 中学理科 http://www.hello-school.net/harorika002.files/hsrika2015.gif 像の位置と大きさの変化
参考文献3 ナノフォトン株式会社 http://www.nanophoton.jp/microscopes/glossary.html#C6 焦点深度について 色収差について 開口数について 啓林館 http://www.keirinkan.com/kori/kori_physics/kori_physics_1_kaitei/contents/ph-1/4-bu/4-3-3.htm 虫眼鏡の原理 天文セミナー 望遠鏡物語 http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1425107882625/html/common/54f66b0d076.htm ケプラー、ガリレイ式望遠鏡の図
参考文献4 シグマ光機株式会社 http://www.products-sigmakoki.com/category/opt_d/opt_d08.html 合成焦点距離の図 光と色と http://optica.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-eef3.html 眼鏡の仕組み nicon公式サイト http://www.nikonvision.co.jp/how_to/guide/binoculars/technologies/technologies_08.ht m 収差について