退職記念講演 制御屋のロボット工学 立命館大学理工学部 前田浩一 2009年1月30日
構造に着目した制御 台車2 台車1
構造に着目した制御2 Coatesグラフ
・係数変動を直接扱え、グラフを用いた直感的理解が容易な ロバスト制御系設計理論の構築を目指す 構造に着目した制御3 構造可制御 強構造可制御 Cactus Serial Buds Cactus ・係数変動を直接扱え、グラフを用いた直感的理解が容易な ロバスト制御系設計理論の構築を目指す
ロボットアームのモデルベースド制御 ロボットアームの動特性モデル 標準化コントローラ(補償器) 補償後の動特性モデル モデルベースド制御のための技術課題 1. ロボットアームの動特性同定 2. 逆動力学問題の実時間演算 3. 交流モータのトルク制御(電流計測)
ロボットアームの動特性同定 いろいろな試験運動の入力トルクと関節変数データから推定 リンクパラメータ:質量 一次モーメント 二次モーメント リンクパラメータ:質量 一次モーメント 二次モーメント 1つのリンクにつき10個のリンクパラメータがあるが,これらのすべてが独立に運動方程式の係数に表れてこない.しかし運動方程式の係数はすべてリンクパラメータの一次結合の関節変数の三角関数をかけた形になる.
運動方程式が表現できる最小個数のリンクパラメータの一次結合 ロボットアームの動特性同定2 基底パラメータ: 運動方程式が表現できる最小個数のリンクパラメータの一次結合 基底パラメータを解析的方法で求める(前田) 数式処理で求める 基底パラメータの個数: 回転関節のみ7N-4β(-2) 直動関節が加わると一般的なリンク1つにつき4 同定法: 逐次同定法,同時同定法,混合同定法 数種のロボットアームで実証研究
逆動力学問題の実時間演算 演算量: 一般6自由度アームで乗算616回,加減算482回,+ヤコビ行列の計算(約800積和演算) アームの型を限定しカスタマイズすると少なくなる. 要求演算時間: 1m sec以下 浮動小数点DSPの利用 MSM6992(22bit,沖電気) 逆動力学 218μsec(PUMA133μsec ) ヤコビ行列 244μsec 当時は世界最速 DSPの問題点: プログラミングの複雑さ,その後C言語が利用できるようになったが,開発ツールが高価 現在は1GHz程度のマイクロプロセッサとC言語で同等の時間で演算可能
交流モータのトルク ・技術課題というよりはモーターメーカーのポリシーの問題であるが,大学の研究者にとっては最も難しい問題 ・標準化コントローラも含めてオープンコントローラの提唱 ・研究室でドライバの製作を試みたが失敗(餅は餅屋)
ロボティクス学科の創立 立命館大学に移る(1992 情報工学科) ロボット工学とは(教育、研究分野として学科設立に必要性) 立命館大学に移る(1992 情報工学科) ロボット工学とは(教育、研究分野として学科設立に必要性) ロボット: 人に適合する自律汎用人工物 ロボット工学主要3分野: ロボットシステム技術 ロボット知能化技術 マン・マシンインターフェイス技術
ロボット知能化技術 知能: 未知あるいは変化する状況に対処して目的を達成 できる能力 ロボット知能: 環境認識知能 知能: 未知あるいは変化する状況に対処して目的を達成 できる能力 ロボット知能: 環境認識知能 作業知能(計画知能、実行知能) 作業実行知能: ロボットが作業対象や環境の不確定要因 に直面 タスク理解が1つの方法論
タスク理解 ロボットアームで組み立て作業等の対象や環境との接触を伴ういろいろな作業を行えるようにすることが目標 タスク理解: 作業を数理的、力学的に解析し、想定される不確定要因まで含めた作業のモデリングを行い、不確定要因があっても目的の作業を遂行できるフィードバック策(センシング策と制御策)をロボットが実行可能な範囲で見つける。 不確定要因: 拘束条件の変化、物性値パラメータ
・タスク理解の一般的方法はない。タスク毎に研究し、その成果と経験を蓄積する。 ・実証が不可欠 タスク理解2 ・タスク理解の一般的方法はない。タスク毎に研究し、その成果と経験を蓄積する。 ・実証が不可欠 タスク理解の実証研究: ブロックの押し付け滑らし作業 クランクまわし作業 (ねじ締め、3次元ペグの挿入) ロボットの実行能力 運動・力・インピーダンス制御 の必要性
運動・力・インピーダンス制御 運動・インピーダンス制御と力・インピーダンス制御の切替が容易 ロボットの動特性 環境のインピ ーダンス 力センサ 運動・インピーダンス制御と力・インピーダンス制御の切替が容易
モデルベースド制御の実証研究 6自由度アームJs‐2のモデルベースド制御に基づく 運動・力・インピーダンス制御 運動・力・インピーダンス制御 ロボット作業実習用、アームは川重製Js‐2、ドライバとコントローラは日立製 運動制御は良好(イライラ棒コンテスト)。 力・インピーダンス制御は方向性があまり良くない。 原因:減速機の摩擦トルクが軸毎に異なり、手先力センサでは対応できない。 軸トルクセンサの開発 (センサ自体がバネ効果を持ち、それによる振動より計測地の収束が遅いことが問題点として残る)
・ 3自由度パレタイザ(可搬重量50Kg)のモデルベースド運動制御(オークラ輸送機受託研究) モデルベースド制御の実証研究2 ・ 3自由度パレタイザ(可搬重量50Kg)のモデルベースド運動制御(オークラ輸送機受託研究) 運動軌跡から逸脱せず手先の加減速・緊急停止を入力制限内で行う。 結果は良好。 モデルベースド制御を用いて初めて可能となり、 その優越性が実証できた。
最近の研究 ・環境の動特性試験機の開発 ・人指の機械特性の測定 ・パワーアシストキャリーカートの開発 ・マークドビジョンによる移動物体の追跡 ・空気圧浮上ガントリーの精密速度制御 (東レエンジニアリング受託研究)
大学はそもそも何をする所か ・存在意義、社会的使命、在学することの意義(学生) ・難しい問題ほど基本に戻り簡明な策を。 ・大事は理をもって決し、小事は情を持って接す。 ・経験(歴史)に学ぶ。(評価が大事) (人は現実を見たいものしか見ないーカエサル) ・信なくば人立たず。(粗にして野であったが卑ではなかった) ・法は精神が大事