風成海洋大循環 (準地衡流渦位方程式+エクマン層の力学)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
ケルビン波( Kelvin Wave ) 境界が無い場合、回転を感じる重力波(慣性重力波)の 最大振動周期は慣性周期であった。つまり、慣性周期 以上の時間スケールを持つ重力波は、 “ 境界が無い場合 ” には存在しない。 “ 境界があれば ” 、どうなるのであろう か? 境界があれば、慣性周期以上の時間スケールを持つ重力.
Advertisements

海洋流体力学 2014 海洋流体力学とは、海洋に関する流体力学。本講義では、 海洋のみならず、大気も含めた地球流体力学について学ぶ。 Fluid Dynamics( 流体力学 ) Geophysical Fluid Dynamics (地球流体力学) 目標 海洋・大気大循環のイメージを描けるようにする。
ヤマセ海域の SST 変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 理工学部 地球環境学科 気象学研究室 4 年 08 S 4025 佐々木 実紀.
第2回:力・つりあい 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2 棟 801 号室 工業力学 補足スライド Industrial Mechanics.
1 設計基礎コース もう一度学ぶ材料力学の基礎 座屈 ( Buckling ) 長軸に軸方向圧縮力を作用させると、ある荷 重で急に軸が曲がる。 この急に曲がる荷重条件を探る。 X の位置での曲げモーメントは たわみの微分方程式は.
不安定論(波の共鳴) 大気大循環 特に中緯度の高低気圧の発生 傾圧不安定とフェレル循環 人工衛星データの見方 流れの不安定論 担当:島田浩二 9 号館 501
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
慣 性 力 と 浮 力.
ここまでのまとめ 基本方程式 基本方程式に対しスケールアナリシスの“心眼”を使って どの項を無視し、どの項を残すのかを決めてあげる、
海洋流体力学(地球流体力学) 担当:島田 予習復習用教材置き場:   
伝達事項 皆さんに数学と物理の全国統一テストを受けても らいましたが、この時の試験をまた受けていただ きます。
コリオリ力の復習資料 見延 庄士郎(海洋気候物理学研究室)
2009年8月27日 熱流体力学 第14回 担当教員: 北川輝彦.
常微分方程式と偏微分方程式 1.常微分方程式 独立変数が一個のもの 振動の運動方程式 2.偏微分方程式 独立変数が二個以上のもの
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
加藤真理子1、藤本正樹2、井田茂1 1) 東京工業大学 2) JAXA/ISAS
資源の空間的不均一性がプランクトン群集の共存に与える影響: 格子モデルシミュレーションによる予測
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
渦位(Potential Vorticity)と角運動量の保存
ジェット気流が延々と吹き続けている理由を理解する
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
工業力学 補足・復習スライド 第13回:偏心衝突,仕事 Industrial Mechanics.
相対論的輻射流体力学における 速度依存変動エディントン因子 Velocity-Dependent Eddington Factor in Relativistic Photohydrodynamics 福江 純@大阪教育大学.
伝達事項 試験は6/6 (土) 1限目の予定です。.
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
ストークスの定理と、 渦度・循環の関係を 直感で理解する方法
動力学(Dynamics) 運動方程式のまとめ 2008.6.17
流体の運動方程式の移流項を ベクトルの内積を使って 直感的に理解する方法
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
物理学セミナー 2004 May20 林田 清 ・ 常深 博.
ロスビー波( Rossby wave) 渦度 (vorticity) 順圧非発散流(絶対渦度の保存) ポテンシャル渦度(渦位)
第1章  開水路の等流(Uniform flow of open channel)
半無限領域のスペクトル法による竜巻を模した渦の数値実験に向けた研究開発
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
流体の粘性項を 気体分子運動論の助けを借りて、 直感的に理解する方法
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22)
今後の予定 4日目 10月22日(木) 班編成の確認 講義(2章の続き,3章) 5日目 10月29日(木) 小テスト 4日目までの内容
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
有効座席(出席と認められる座席) 左 列 中列 右列.
物理学Ⅰ - 第 11 回 - 前回のまとめ 回転軸の方向が変化しない運動 回転運動のエネルギーとその応用 剛体の回転運動の方程式
構造力学の構造 構造力学Ⅰ復習.
回転系において潮流が形成する 海底境界層の不安定
回転系における潮流海底境界層の 乱流に関する数値的研究
3.ヴァリアブルバージョンの応用例 3.1 五ヶ所湾の海域浄化装置の効果に関する 数値シミュレーション
動力学(Dynamics) 力と運動方程式 2008.6.10
化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室
渦位(Potential Vorticity)と角運動量の保存
2009年秋の北極海ラジオゾンデ観測によって観測された 大気の順圧不安定とメソ渦列
4章 開水路における不等流(2) 漸変流 4-1漸変流とは ① 断面形状や底面形状が緩やかに変わる流れ。
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
3-2 跳水の水理と不連続急拡・急縮水路の流れ
Large-eddy simulations of the wind-induced turbulent Ekman layer
Iida, O., N. Kasagi and Y. Nagano
速度ポテンシャルと 流線関数を ベクトルで理解する方法
Chapter 26 Steady-State Molecular Diffusion
ニュートン力学(高校レベル) バージョン.2 担当教員:綴木 馴.
河川工学 -洪水流(洪水波の伝播)- 昼間コース 選択一群 2単位 朝位
流動を伴う物質移動(p.483) y x 壁を伝わって流れ落ちる 薄い液膜にA成分が拡散 δ NA,y 速度分布:p.96.
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
将来気候における季節進行の変化予測 (偏西風の変化の観点から)
・Bernoulli(ベルヌーイ)の定理
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
波動力学 不安定論(波の共鳴) 大気大循環 特に中緯度の高低気圧の発生 傾圧不安定とフェレル循環 人工衛星データの見方 流れの不安定論
Presentation transcript:

風成海洋大循環 (準地衡流渦位方程式+エクマン層の力学) 渦位の保存 ロスビー波 エクマン層 の概念を総合して、海洋大循環を考えてみよう。 エッセンスは、この4点セットのみである。 大循環海洋物理学はこの4点セットの基礎が分かっていれば、ほぼ理解できるし、問題設定もできる。

境界層と粘性

流体に働く力(接線応力) 仮想BOXに働く接線応力を考える。注目するBOXは中段のBOXで上段のBOXが中段BOXを右方向(x正方向)に引きずり、下段のBOXが中段BOXを左方向(x負方向)に引きずっている状況を考える。 下段BOXが中段BOXの下面を左に引きずる力をτ(z),中段BOXの下面を左に引きずる力をτ(z+⊿z)であるとしよう。 ニュートンは、この引きずる力(接線応力)は速度の微分に比例する形であらわされるとし、流体の粘性を考えた。この過程に従う流体のことをニュートン流体と呼び、接線応力は、 であらわされるとした。実際の流体はこの式に近い振る舞いを示す。

粘性を含む流体方程式のことをナビエ・ストークスの式と呼ぶ。 オイラーの運動方程式と比べると、右辺の動粘性係数の掛かった項が加えられているだけである。

渦粘性 先の粘性係数(μ/ρ)は流れが乱れていない層流の場合の分子粘性である。実際の流体は乱流を伴っていることが多く分子粘性の代わりに、渦粘性係数AH(水平方向)、AV(鉛直方向)を使う。

渦粘性の表し方

分子粘性との対比 ダメージとしては、抵抗勢力と戦線離脱を等価として扱っていると考えてよい

エクマン境界層

エクマン・スパイラル

非回転系 板の場合 海の場合 下の板が 止める力 上の風が 引っ張る力 下の板(三番目の板)が 止める力 上の板(一番目の板)が 引っ張る力=B1 下の板(四番目の板)が 止める力 上の板(二番目の板)が 引っ張る力=B2 海の場合

回転系 板の場合 海の場合 下の板が 止める力 上の風が 引っ張る力 コリオリ力 下の板(三番目の板)が 止める力 上の板(一番目の板)が 引っ張る力=B1 コリオリ力 下の板(四番目の板)が 止める力 海の場合 上の板(二番目の板)が 引っ張る力=B2 コリオリ力

境界層にわたって考えると 回転系 非回転系 風 風 境界層の流れ 風の方向と同じ コリオリ力 風が引っ張る力 境界層の流れ=エクマン輸送 (エクマン層の平均的な流れ) 風に対して右手方向90度になる

H 北太平洋亜熱帯域では? 偏西風 貿易風 エクマン輸送により水が集まる。 水位が上昇する。高圧になる。 集まった水は、下に押し込まれる。 時計回りの循環の形成

海洋の 表層循環 海面変位(水位)分布

西岸境界流(黒潮) 強い流れは、太洋の西端にできる。何故か? ロスビー波により、パターンは西に伝播する。 したがって、もっとも水位の高い場所は、西に伝播する。 西には岸があるので、それ以上伝播できない。 西岸では、水位勾配が大きくなる。そして強い流れができる。 これが、黒潮の成因。 ロスビー波により西に伝播

別の説明 渦位保存から 東側では、北にある水柱が南に移動する。渦位の保存より、反時計回りの回転が付加される。時計回りの流れは弱められる。 西側では、南にある水柱が北に移動する。渦位の保存より、時計回りの回転が付加される。時計回りの流れは強くなる。

水平境界層からの考察 北に向かう流れは、東もしくは西のどちらにできるのが道理にかなっているか? 海には偏西風と貿易風により負の渦度が注入され続けている。どこかで逆符号の正の渦度を注入しないと海洋循環は加速し続け暴走する。 境界では流れはゼロになる。もし西に北上流がある場合、境界付近は、正の相対渦度になる。これは、負の渦度を打ち消す効果があり、暴走しない定常状態になるように作用する。 つまり、北上流は西にできるのである。

1慣性周期分の流速プロファイル(破線) と1慣性周期平均した流速プロファイル(太線) 青:東向き流速、赤:北向き流速 ESC12係留データ 2012年9月19日06:00~18:00UTC 74°30.002' N,173°59.902' E