消費の理論: スルーツキー方程式 需要曲線の導出 序数と基数 ミクロ経済学 第7回 消費の理論: スルーツキー方程式 需要曲線の導出 序数と基数
前回の宿題の解説 1 Cokeの消費量をx1、Pepsiの消費量をx2とすると、私の効用関数はU=x1+x2です。 前回の宿題の解説 1 Cokeの消費量をx1、Pepsiの消費量をx2とすると、私の効用関数はU=x1+x2です。 Cokeが1本150円、Pepsiが1本100円、私の所得が3000円であるとします。 予算制約式を求めなさい。 予算線のグラフを描きなさい。 限られた予算で効用を最大化するには、私は何をどれだけ買えばよいでしょうか? 2
前回の宿題の解説 2 紅茶の消費量をx1、緑茶の消費量をx2とすると、私の効用関数はU=x1×x2です。 前回の宿題の解説 2 紅茶の消費量をx1、緑茶の消費量をx2とすると、私の効用関数はU=x1×x2です。 紅茶が100g200円、緑茶が100g300円、私の予算が6000円であるとします。 予算制約のもとで効用を最大化する紅茶と緑茶の消費量を求めなさい。 最適消費点における紅茶の緑茶に対する限界代替率を求めなさい。 3
今日やること 1.スルーツキー方程式 1.1 前回の復習: 所得効果と代替効果 1.2 自己価格の変化が消費量に与える影響 1.3 他の財の価格変化が消費量に与える影響 2.需要曲線の導出 3.基数的効用関数 vs 序数的効用関数 4
所得効果と代替効果 (第1財の)価格が上がることによる影響は二つ 1.所得効果: 価格増によって実質所得が減少したことによる変化 正常財なら消費減、劣等財なら消費増 支出に占める割合が高い財ほど大きい 2.代替効果: 第1財が第2財に対して相対的に値上がりしたので、第1財から第2財に消費をシフトする効果 第1財については必ず消費減、第2財は必ず消費増
所得効果と代替効果の例 ガソリン代が値上がり 所得効果: 家計が圧迫されたので、より質素な生活をする 所得効果: 家計が圧迫されたので、より質素な生活をする 正常財の消費が減り、劣等財の消費が増える 代替効果: 車に乗ることが相対的に高価になり、他の財が相対的に安くなったので、消費がドライブ以外にシフトする
第1財の価格が上昇したら均衡点は? 均衡の変化 代替効果 所得効果 変化後の予算線 変化後の均衡点 変化前の予算線と平行で変化後の無差別曲線に接する予算線 所得効果は? 代替効果は? x2 均衡の変化 代替効果 所得効果 x1 7
グラフによる所得効果と代替効果の分解 所得効果: ⇒価格は変わらず、所得が減ることで価格変化と同じだけ効用が減った場合の消費の変化 代替効果: ⇒効用水準は同じで、相対価格だけが変わった場合の消費の変化 x2 トータルの効果 代替効果 所得効果 x1
スルーツキー方程式1 価格上昇によるその財の需要への影響 =(自己の)代替効果+ (所得減による)所得効果 ⇒トータルの影響は正常財(上級財)ならマイナスだけど、劣等財(下級財)だとマイナスのこともプラスのこともある 必ずマイナス 正常財(上級財)ならマイナス 劣等財(下級財)ならプラス
ギッフェン財 価格上昇によるその財の需要への影響 =(自己の)代替効果+ (所得減による)所得効果 ギッフェン財 (劣等財の特殊ケース) ギッフェン財 価格上昇によるその財の需要への影響 =(自己の)代替効果+ (所得減による)所得効果 ギッフェン財 (劣等財の特殊ケース) 代替効果(ー)が小さくて、所得効果(劣等財だから+)が大きい場合、価格が上がると需要量が増えることもある 非常に稀なケース 例) ジャガイモ値上がり→やりくりが苦しい→パンが買えない→ジャガイモの消費量が増える
スルーツキー方程式2 第1財の価格上昇による第2財の需要への影響 =クロス代替効果+(所得減による)所得効果 トータルな影響は、劣等財ならプラスだけれど 正常財だとプラスのこともマイナスのことも 2財モデルでは 必ずプラス 正常財(上級財)ならマイナス 劣等財(下級財)ならプラス
クロス代替効果 他の財の価格変化による代替効果 第1財の価格上昇によって第2財が相対的に安くなったので、第2財の消費を増やす 第1財の価格上昇によって第2財が相対的に安くなったので、第2財の消費を増やす ⇒2財モデルでは(無差別曲線が右下がりなら) 必ずプラス 3財以上のケースではクロス代替効果がプラスのこともマイナスのことも
代替材と補完財 代替財: クロス代替効果が+ 「片方の価格上昇⇒もう片方の消費増」 バターとマーガリン、ペプシとコーラ 代替財: クロス代替効果が+ 「片方の価格上昇⇒もう片方の消費増」 バターとマーガリン、ペプシとコーラ 補完財: クロス代替効果がー 「片方の価格上昇⇒もう片方の消費減」 コーヒーとクリーム、プリンタとインクジェット 完全な代替材と完全な補完財の無差別曲線を描いてみよう
今日やること 1.スルーツキー方程式 2.需要曲線の導出 2.1 前回の復習: 主体的均衡点 2.2 個人の需要関数の導出 2.3 需要曲線の性質 2.4 市場全体の需要曲線の導出 3.基数的効用関数 vs 序数的効用関数 14
復習1 主体的均衡点 予算制約の下で効用を最大化する点 ≝主体的均衡点 =無差別曲線と予算線の 接点 15
復習2 無差別曲線の傾きと限界効用 16 16
復習3 限界効用均等の法則 二つの財の1円当たりの限界効用が等しくなる 17
最適消費から個人の需要関数を導出 数学的には次の問題を解く Max U(x1, x2) subject to: p1×x1 + p2×x2 = M つまり、予算制約の下で効用を最大化するように x1とx2を選びなさい これを解くと、最適解(均衡点)が x1*=x1(p1, p2, M), x2*=x2(p1, p2, M) のように価格と所得の関数になるので、他の財の価格と所得を一定と考えると需要曲線がかける
需要関数導出の例 1円あたりの限界効用が等しい⇒ これに実際の限界効用を代入して式変形すると これと予算制約式を連立方程式として解くと、 需要関数導出の例 1円あたりの限界効用が等しい⇒ これに実際の限界効用を代入して式変形すると これと予算制約式を連立方程式として解くと、 Mを定数として扱うと、これが需要関数 (この場合はクロスの代替効果がゼロ)
需要曲線の性質 今までの話を総合すると 1.ギッフェン財のケースを除くと、自己価格が上がれば需要は減少 → ギッフェン財以外は、需要曲線は右下がり 2.正常財ならば所得が上がれば需要は増加 (劣等財ならば需要は減少) 3.代替財の価格が上がれば需要は増加 → 需要曲線がシフトする
市場全体の需要曲線の導出 個人の効用関数、財の価格、所得をもとに均衡点(最適消費)を求める 1より、財の価格と需要量の関係がわかるので(その個人の)需要曲線がかける 個々人の需要曲線を横に足し合わせると市場の需要曲線になる
市場全体の需要曲線: 各消費者の需要曲線を横に足したもの 消費者数2の場合の市場全体の需要曲線 消費者1の需要曲線 消費者2の需要曲線 22
今日やること 1.スルーツキー方程式 2.需要曲線の導出 3.基数的効用関数 vs 序数的効用関数 23
基数的効用と序数的効用 基数的効用理論: 効用の大きさが大事 (成績で言うと、点数の大きさが大事) 序数的効用理論: 基数的効用理論: 効用の大きさが大事 (成績で言うと、点数の大きさが大事) 序数的効用理論: 効用関数は消費の組み合わせの間に順列をつけられれば、効用の大きさはどうでもいい (成績で言うと、順位・偏差値が大事) 消費者の行動を分析する上では序数的効用理論で全く問題なし 24
異なる効用関数の例 これを解くと、需要関数が出てくる 効用関数が違うのに需要関数が全く同じ 25
効用関数が違うのに需要関数が同じ? 理由: を最大化するのは を最大化するのと同じ 理由: を最大化するのは を最大化するのと同じ どちらの効用関数も表している選好は全く同じ (無差別曲線の形も同じ) 26