地球起源散逸酸素イオンと 太陽風との関連性

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

宇宙の「気温」 1 億度から –270 度まで 平下 博之 ( 名古屋大学・理・物理 U 研 ).
COBE/DIRBE による近赤外線 宇宙背景放射の再測定 東京大学, JAXA/ISAS D1 佐野 圭 コービー ダービー.
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
YohkohからSolar-Bに向けての粒子加速
SELENE衛星搭載UPI-TEX撮像観測による散逸酸素イオンと太陽風 および地磁気変動との関連性
Nagai laboratory.
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
「ひさき」衛星(EXCEED)による ジオコロナ観測と プラズマ圏のEUV 観測 1.イントロダクション 2.地球周辺の電離大気の撮像 3.EXCEED/ひさきの観測 東京大学 吉川 一朗.
ニュートン重力理論における ブラックホール形成のシミュレーション
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
(Fri) Astrophysics Laboratory MATSUO Kei
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
磁気モーメントを用いた 磁力線再結合域の推定
スパッタ製膜における 膜厚分布の圧力依存性
輻射優勢円盤のMHD数値実験 千葉大学宇宙物理学研究室 M2 松尾 圭 Thu.
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
2次元蛍光放射線測定器の開発 宇宙粒子研究室 氏名 美野 翔太.
準光速ロケットでのブラックホール旅行における時間の遅れ
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
地球近傍における陽子・ 反陽子の空間分布 I I
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
すざく衛星による、2005年9月の太陽活動に起因する太陽風と地球大気の荷電交換反応の観測
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
ガンマ線バーストジェット内部における輻射輸送計算
太陽風プロトンの月面散乱による散乱角依存性の研究
ブラックホール周辺の 磁場構造について 大阪市立大学 孝森 洋介 共同研究者 石原秀樹,木村匡志,中尾憲一(阪市大),柳哲文(京大基研)
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
超高エネルギー宇宙線の起源: GRBアウトフローにおける元素合成
天体からのcoherent emissionの実例
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
プラズマ発光分光による銅スパッタプロセス中の原子密度評価
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
超並列宇宙プラズマ粒子シミュレーションの研究
重力レンズ効果による画像の変形と明るさの変化
開放端磁場における低温プラズマジェットに関する研究
オーロラの発生 北海道大学理学部地球科学科 4年 安達 俊貴 カメラを見てしゃべる.
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
倉本研究室 宇宙理学専攻 修士1年 岡澤直也.
極冠域電離圏における低エネルギー降下電子の起源について
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
大阪市立大学 宇宙物理(重力)研究室 D2 孝森 洋介
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
宇 宙 その進化.
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 B4 近藤 奨
惑星と太陽風 の相互作用 惑星物理学研究室 4年 深田 佳成 The Interaction of The Solar
地球近傍における宇宙線陽子・反陽子空間分布シミュレーション
すばる /HDSによる系外惑星 HD209458bの精密分光観測
すばる/HDSによる系外惑星HD209458bの精密分光観測
原始 H2 大気散逸を想定した タイタン大気進化モデルの提案
地上分光観測による金星下層大気におけるH2Oの半球分布の導出
大型ヘリカル装置における実座標を用いた 粒子軌道追跡モンテカルロコードの開発
CHANDRA衛星の観測結果による、 球状星団M4(NGC6121)のスペクトル解析
北海道大学 理学部 地球科学科 惑星物理学研究室 4 年 堺 正太朗
ESCAPE衛星と地上施設を使った共同観測案
γ線パルサーにおける電場の発生、粒子加速モデル
電離圏イオン流出現象 山田学,渡部重十(北大・理) プラズマ圏・内部磁気圏研究会(2002/03/13)
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
磁気リコネクションによる Alfven波の発生
甲南大学 理工学部物理学科 宇宙粒子研究室 学籍番号 氏名 上田武典
Presentation transcript:

地球起源散逸酸素イオンと 太陽風との関連性 中村研 M2 麻生直希 2009/6/17

発表の流れ イントロダクション   研究テーマ   研究意義   先行研究   問題点 解析   解析手法   解析結果(太陽風との関連)   ジオコロナの除去 まとめ

研究テーマ:地球酸素イオンの散逸過程 NASA/ESA [Abe,et al. 1993]

散逸過程を研究する意義1 惑星大気科学 散逸過程を知る = 大気進化を知る 火星の散逸 これまでに散逸により大気の90%が失われた                  [Luhmann et al, 1992] 地球の大気散逸 Akebonoのデータをもとに計算すると 地球から1日に400トンの酸素イオンが流出している                  [Yau and Andre,1997] ⇒ 1億年で現在の地球大気の2%が流出? 散逸過程を知る = 大気進化を知る

散逸過程を研究する意義2 宇宙プラズマ科学 GEOTAILにより、地球磁気圏尾部で冷たい 酸素イオンのビームを発見 どういう経路でやってくるのか? [Seki et al,1998]

散逸過程を研究する意義2 [Seki et al,1998] 地球近傍の加速メカニズムを知ることが、磁気圏イオン分布を理解する事につながる

先行研究 1960年代 O+はHとの電荷交換により存在量が少なく、質量が大きいため、散逸量は少ない [Banks and Holzer,1968] 1980~1990年代 DE ,Akebonoなどの極軌道衛星の観測により多量のO+の散逸が確認 [Abe et al, 1993] その後も衛星の直接観測により、カスプ、極域、オーロラ帯などで散逸O+を発見 Akebono [Andre and Yau,1997]

散逸が「いつ、どこで」起こっているのかを知るためには、 直接観測の長所と短所  長所 ・・・ 速度、密度、磁場など多くの物理量を得られる  短所 ・・・ その場の情報しか得られない            → 時間的変化と空間的変化に分離できない 地球 ひまわり6号 気象庁HP 直接観測 撮像観測 散逸が「いつ、どこで」起こっているのかを知るためには、 撮像観測が必要不可欠

本研究 散乱光量(観測量)=比蛍光率 × コラム密度 ↑ 温度、バルク速度 テーマ:  撮像観測データを用いてO+散逸量と太陽風および地磁気変動との因果関係を調べる 観測機器: 月周回軌道SELENE搭載UPI-TEX 観測対象: 地球近傍に存在するO+およびHe+の共鳴散乱光(83.4nm,30.4nm) 散乱光量(観測量)=比蛍光率 × コラム密度               ↑ 温度、バルク速度 太陽光 共鳴散乱光 83.4 nm 基底状態 励起状態 光路 SELENE 共鳴散乱光

平均輝度値[Rayleigh/Pixel] O+散逸量の摘出  磁力線を書いて、積分領域を決定  平均輝度値を求める O+ LT06 6RE どう説明する? LT00 LT12 平均輝度値[Rayleigh/Pixel] =全輝度値÷ピクセル数 LT18 He+

結果 8日間の平均輝度値時系列 平均 輝度値 [R/Pixel] 1日変動 5/26 6/3

1日変動 磁極が地軸の周りをまわる事に伴う、積分領域の増減が原因

太陽風動圧増加に伴う輝度値増加 |B| Bx By Bz V intensity density temperature pressure 5/26 5/28 5/30 6/1 6/3 太陽風動圧増加に伴う輝度値増加 5/26 5/28 5/30 6/1 6/3

ノイズの除去 観測値=O+共鳴散乱光 + ジオコロナ(ノイズ) [R] [R] [R] ジオコロナの寄与はどれほどあるのか見積もってみる

ジオコロナ n = 1→2 Lyman-α (121.6nm) n = 1→3 Lyman-β (102.5nm) 地球をとりまく酸素原子の発光 Ly-β Ly-α n = 1→2 Lyman-α (121.6nm) n = 1→3 Lyman-β (102.5nm) 酸素原子光(130.4nm)とLy-α(121.6nm) [Rairden et,al 1986]

Ly-α、Ly-βの観測値への寄与 Ly-βはO+と同程度のカウント値を与える 解析でLy-βを除去する必要あり 発光量[R] [Rairden et,al 1986] Ly-α、Ly-βの観測値への寄与 zenith emisson rate [kR] 10 発光量[R] 感度[cps/R/pixel] 観測値[cps/pixel] Ly-α 104 (観測値) 10-8 10-4 Ly-β 10 (見積り) 10-3 10-2 O+ (83.4nm) 1 Geocentric radial distance [RE] Ly-βはO+と同程度のカウント値を与える     解析でLy-βを除去する必要あり

Ly-αの輝度値の算出 Ly-βの輝度値を算出するために、以下の論文で輝度値の算出方法を学ぶ 著者、出典:Rairden et al. JGR,91,A12,1986 タイトル:Geocoronal Imaging With Dynamics Explorer 内容: DE1の観測によって得られたgeocoronaのLy-αの輝度値とChamberlain modelから得られたLy-αの輝度値を比較。

放射伝達方程式 S(τ):発光源関数、τで励起した原子から 射出するphoton数 τ’ dτ S(τ):発光源関数、τで励起した原子から 射出するphoton数 地球 T(τ,τ’):τ’で射出したphotonが吸収さ  れずにτまで到達する確率 S1 S2 τ’ τ dτ G(τ,τ’):τ’で射出したphotonがτで 吸収される確率 太陽 地球 S0

モデルと観測値の比較 水素原子の分布をモデルで与え、放射伝達方程式を解く モデル 球対称Chamberlain model パラメータ:外気圏の上端高度rcs、下端 高度rc、下端高度での温度、Tおよび密度N(rc) exosphere (外気圏) 地球 衛星 r=rc=1.08RE r=rcs=3.0rc

モデルと観測値の比較 1 2 3 4 モデルと観測値がよく合っている ただし、 1.酸素原子発光 2.銀河面 3.太陽の迷光 4.太陽風動圧によるantisunwardでの水素原子密度のモデルとのずれ の影響を受けている 2 3 Emission rate [kR] 4 Rotation angle 地球 Rotation angle from zenith

以上のように、モデルをたて、放射伝達方程式を解くことでLy-αの輝度値を算出できる。 Ly-βへの適用は諸係数を置き換えればよい。 [Rairden et,al 1986] zenith emisson rate [kR] 10 Geocentric radial distance [RE]

まとめ 今後の課題 かぐや搭載UPI-TEXを用いて、酸素イオン撮像画像の解析を行った 太陽風動圧の増加に伴って、散逸酸素イオンの輝度値が増加していた Ly-βがO+共鳴散乱光と同程度カウントしてしまうため、Ly-βの輝度値を除去する必要がある。 Ly-αの輝度値の算出方法を理解した 今後の課題 Ly-βを除去するプログラム作成