老化のメカニズム 1.遺伝子と老化 1)長寿関連遺伝子 2)老化関連遺伝子 3)テロメアと寿命 2.カロリー制限と寿命延長 1)長寿関連遺伝子 2)老化関連遺伝子 3)テロメアと寿命 2.カロリー制限と寿命延長 3.酸化ストレスと老化
寿命を決定する遺伝要因の関与度は? 一卵性双生児 二卵性双生児 一卵性双生児と二卵性双生児の双生児間の寿命の差を比較することで、寿命を規定している遺伝要因は約25%であると計算される。残りの75%は環境要因が寿命を規定していると考えられる。
ノックアウトマウスを用いた解析 ある特定の遺伝子を破壊・欠損させて、発現しないようにしたマウスをノックアウトマウスと呼ぶ。遺伝子の個体レベルでの機能を調べるために大変重要な方法。
マウスモデルにおける長寿命変異体 ミュータント 遺伝子 p66Sch (-/-) シグナル伝達アダプター分子 ミュータント 遺伝子 p66Sch (-/-) シグナル伝達アダプター分子 FIRKO インスリン受容体(脂肪細胞) IGF-1R (+/-) インスリン様増殖因子受容体 FOXO 転写因子 Dwarf mice GH欠損によるIGF-1低値 Brain-IRS-1 (-/-) インスリン受容体基質(脳) Klotho (tg) カルシウムホメオスターシス Catalase (ミトコンドリアtg) 活性酸素代謝酵素 Thioredoxin (tg) 活性酸素代謝酵素 Clk-1 (+/-) DMQ (CoQ前駆体)水酸化酵素 AC-5 アデニル酸シクラーゼ 主な遺伝子として、インスリンシグナルに関連する遺伝子と活性酸素関連遺伝子がある
遺伝性早老症と原因遺伝子 遺伝性早老症 遺伝子 遺伝子の機能 ウェルナー症候群 WRNヘリカーゼ 組み換え修復 ハッチンソン・ 遺伝性早老症 遺伝子 遺伝子の機能 ウェルナー症候群 WRNヘリカーゼ 組み換え修復 ハッチンソン・ ギルフォード症候群 ラミンA遺伝子 核膜裏打ち蛋白 コケイン症候群 CSA遺伝子 転写供役型DNA修復 ブルーム症候群 BLMヘリカーゼ DNA修復酵素 色素性乾皮症 XP遺伝子 DNA修復酵素 毛細血管拡張性失調症 ATM遺伝子 細胞周期調節 ダウン症候群 21番染色体トリソミー 原因遺伝子不明
ウェルナー症候群 臨床診断基準としては10歳以降の発症の主徴候として ・両側性白内障 ・特徴的な皮膚病理像(硬化,萎縮,色素沈着,潰瘍形成, ・特徴的な皮膚病理像(硬化,萎縮,色素沈着,潰瘍形成, 過角化症,部分的皮下脂肪萎縮) ・特徴的な鳥様顔貌(鼻稜が突出し,皮下脂肪が少ない) ・低身長 ・頭髪の早期の白髪化や禿頭 ・両親の近親婚(3度近親以内)または罹患した同胞 ・可能であれば,24時間尿でのヒアルロン酸試験陽性 (排泄増加) 左が15歳で右が48歳なのでかなり早期に老化していることがわかる。
カロリー制限とラット寿命 ラットを自由摂食条件下で飼育すると、平均月齢寿命は27.4ヶ月であるが、摂取量を60%、50%に制限すると、42.3ヶ月、45.1ヶ月と延長する。この結果はエネルギー制限した方が寿命が延びることを示唆する。 しかし食事摂取量を減らすと、エネルギー不足下では蛋白をアミノ酸に分解してATP産生が始まり、ビタミンやミネラルの摂取量も減少して、健康を害する可能性もある。
カロリー制限と寿命の延長 1935年にMcCayらは、ラットの摂取カロリーを制限した実験を行い、カロリー制限により個体寿命が延長することを明らかにした。その後、原生動物、ミジンコ、クモ、魚など幅広い動物種で摂取カロリーを制限すると個体寿命が1.4倍から1.9倍延長することが明らかとなった。
カロリー制限と長寿マーカー アカゲザルにカロリー制限を行った研究で、バイオマーカーが調べられており、体温、空腹時インスリン値、血中DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン)値がカロリー制限によって有意に変動し、65歳以上の男性700名を対象としたボルチモア長期縦断研究でも体温、低インスリン血症、高DHEA-s血症が長寿のバイオマーカーであることが判明している。
カロリー制限でヒトの寿命を延ばせるか? サルでの実験結果が、自由摂取群とカロリー制限群に分けた実験であることに注意する必要がある。つまり、1日3度の食事を摂取している普通のヒトはサルの実験でいうとカロリー制限群とも言える。 日がな一日食べ続けていると寿命が短くなるとは言えるだろう。 糖尿病の発症予防などのためにはカロリーを制限することが重要で、寿命の延長にもつながるだろうが、過度の制限は骨のミネラル不足や筋力低下などを招いて逆効果になる可能性もある。
細胞の老化とそのメカニズム 細胞の老化と個体の老化はどう関連するのか? 線維芽細胞のような分裂性の体細胞を培養すると、分裂回数が40~60回(ヘイフリックの限界)を超えると、増殖した細胞が一斉に死滅することが知られている(上図)。アポトーシスを引き起こす「老化」のメカニズムのひとつが、テロメアの短縮である。テロメアとは、染色体の端にある特定の塩基配列であり、細胞分裂によって染色体を複製する際に一部が欠落していくという性質がある。「老化した細胞」とは、分裂を多数回繰り返したためにテロメアが臨界値を越えて短くなった細胞のことであり、何らかのメカニズムでアポトーシス機構が活性化されて生体組織から取り除かれていく。
酸素生物にとっての必要悪:活性酸素 酸素は呼吸で肺に取り込まれたのちヘモグロビンへ。そして血流に乗ってカラダ中の細胞、ミトコンドリアに。そこで、ATP(アデノシン三リン酸)がエネルギーを作り出す過程で、摂取した酸素のうちの数%が、活性酸素の第1段階、スーパーオキシドに変身する。 スーパーオキシドとは、酸素分子に電子が1個余分にくっつけられた状態。電子が対でなくなることで不安定になったスーパーオキシドは、電子を対にすることで自分を安定させたくて仕方がない。そこで自らを取り巻くあらゆるモノから、それが細菌であろうとDNAであろうと、相手構わず電子を奪いにかかる(この攻撃性が問題)。 しかし、通常ならスーパーオキシドは、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルと何段階かの変身を経て、やがて無害な水や酸素に還されるんだけど……
活性酸素種と細胞内防御機構
酸化ストレスと老化 酸化ストレスと老化 1)抗酸化剤の投与による下等 動物の平均寿命の延長。 2)長寿遺伝子の探索で酸化ス 動物の平均寿命の延長。 2)長寿遺伝子の探索で酸化ス トレス遺伝子が見いだされて きた。 生体内では、酸素を利用する過程で種々の活性酸素が生成される。通常は活性酸素種を除去する防御機構があるために問題とはならないが、喫煙、薬剤、紫外線、環境因子などによる外因性のものやストレス、炎症、虚血などの内因性の活性酸素の増加や除去機構であるSOD(Superoxide dismutase)の低下などで活性酸素優位な状態が起きると、上記のように生活習慣病や老化につながると考えられている。