農業の未来を考える 日本の農業をよくするために
・目次 農業の特徴(工業との比較) 農業の問題 原因の分析 小規模農家が維持されてしまう理由 改善プランの提案
減反政策とは? 米を高価格に維持するために、作付面積を制限する政策。減反に協力した面積の分だけ、一定の補助金をもらうことができる。 現在までに約100万ヘクタールの土地を減反してきた。
1.農業の特徴(工業との比較)
農業の特徴 価格に対し非弾力的 →多少の生産の増減によって価格が大きく上下 生産期間が長い 機械稼働率が低い →多少の生産の増減によって価格が大きく上下 豊作→価格下落 不作→価格高騰 生産期間が長い →将来の価格の予想が困難 →生産過剰の可能性大 機械稼働率が低い →年に季節ごとの使用、農家間貸し借り× 環境との関わりが強い
価格弾力性 農業 工業 価格に対し非弾力的 価格に対し弾力的 多少の生産増減で価格が大きく変化
生産期間 農業 工業 生産に長期を要する 短期で生産可能 種まき 収穫 投入 完成 半年~数十年 数日
年中稼働 季節ごと 機械稼働率 農業 工業 稼働率低い 稼働率高い 9月 コンバイン 5月 田植え機 4月 耕耘機 組み立て機械 溶接機械 プレス機械 溶接機械 組み立て機械 年中稼働 季節ごと
まとめ 農業は工業と比べ効率的に生産が行えない面がある。 農業は工業と比べリスクが高く不安定 →市場原理に任せるだけではうまくいかない →政府などのある程度の介入が必要となる
2.農業の問題 食糧自給率と食糧安保
食糧自給率 カロリーベースで 戦後から約20%下落
国内生産のみで生活する場合の一日の食事例 (1日2020cal摂取するとした場合) 朝食 ご飯1杯(精米75グラム分) 粉吹きいも(ジャガイモ300グラム分) 野菜90グラム分 昼食 焼き芋2本(200グラム分) ふかしいも一個(150グラム分) リンゴ1/4個分(50グラム相当) 夕食 ご飯1杯(精米75グラム分) 焼き芋1個分(100グラム分) 焼き魚一切(魚の切り身75グラム分) 2日に1杯 みそ汁、2日に1杯 うどん、3日に2パック 納豆、 6日に1杯 牛乳 7日に1個 卵 9日に1食 食肉(約100グラム)
人口増加 食糧需要増 2050年には90億人越え
世界の穀物需給
異常気象による被害 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より引用
食糧危機の例 2008年食料危機 2006年価格との比較 コメ→217%増 小麦→136%増 トウモロコシ→125%増 大豆→107%増 2008年食料危機 2006年価格との比較 コメ→217%増 小麦→136%増 トウモロコシ→125%増 大豆→107%増 数値はWikipediaより引用
2.農業の問題 自立できない農家
給与所得者と農家の所得比較 民間給与 農業所得
主業農家の割合 増加 副業的農家:調査期日前1年間に自営農業に60日以上従事している65歳未満の世帯員がいない農家
農産物販売規模別農家数
3.原因分析 小規模農家と生産性
規模の生産性(米) 5haあたりまで徐々に低減
規模の生産性(米)
1ha未満が70%以上 2010年世界農林業センサス
4.小規模農家が維持されてしまう理由
農業の高齢化
年齢別農産物販売額
年齢別規模拡大意欲 維持したい人が多い 拡大したい人が多い
新規就農者数推移
年齢別新規就農者
減反政策による小規模農家の維持 減反政策によりコメの価格が高止まりし、小規模で経営をしていても、自ら消費する部分を自ら生産するというメリットが増えることとなるため小規模農家が維持される。 小規模でも補助金がもらえるため生産を続ける動機づけとなる。
5.改善プランの提案
生産調整から直接支払へ 減反を解除し、減反にかかる補償金も撤廃 生産量増+価格低下 補助金分が浮く 消費者余剰の増大 農家全体の所得は減少
直接払いにすることによるメリット 減反政策 直接払い 高米価維持→零細農家、兼業が残る 主業農家は規模拡大できない 規模別(生産高別、面積規模別)に補助金給付 対象者を絞れる→所得の多い兼業農家× 規模大→補助金額大 規模小→補助金小orなし
直接支払い額の試算 (使用モデルの紹介) ・需要・供給曲線のモデル 需要曲線: 供給曲線: ・平成19年産米のデータ 米価:.14185円/60kg 生産量:855万㌧ ・需要弾力性:-0.2899 ・供給弾力性:0.4405 荒幡克己「米生産調整の経済分析」より
直接支払額の試算 (減反廃止) 農地面積増加 生産量増加 価格下落 (参考)山下一仁の試算:16274円→9691円 47万ha増加 90万㌧増加 価格下落 14185円→9995円 (参考)山下一仁の試算:16274円→9691円
直接支払額の試算 (直接支払いの補助金給付) 不足支払 財政負担:-15297億円 消費者余剰:13249億円(6984億円) 生産者余剰:1367億円(7177億円) 厚生損失:682億円(1137億円) 100%デカップリング不足支払 財政負担:-6608億円 消費者余剰:6265億円(0億円) 生産者余剰:798億円(6608億円) 厚生損失:-455億円(0億円) ※()は減反廃止後から直接支払いへの変化
参考文献 荒幡克己「米生産調整の経済分析」 山下一仁「国民と消費者重視の農政改革」「農業ビッグバンの経済学」 寺西俊一、石田信隆「農林水産業を見つめなおす」「農林水産業の再生を考える」