筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士特別研究員 小浜 駿

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Presentation transcript:

筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士特別研究員 小浜 駿 日本心理学会第75回大会小講演  2011.09.15 先延ばしにおける意識過程の分析 筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士特別研究員  小浜 駿

総合考察 本講演の構成 はじめに 理論的検討 実証的検討 研究の概要 先延ばし研究のきっかけと研究の立場 先延ばしの定義 先延ばしと類似した概念 先延ばしの測定に用いられてきた尺度 高先延ばし特性者の特徴 実証的検討 回顧法による検討 縦断調査による検討 先延ばしの特徴に関する検討 総合考察

先延ばしのイメージ(正確な定義は後述致します) はじめに 先延ばしのイメージ(正確な定義は後述致します) 何らかの「やらなければならないこと」(課題)を遅らせること 8月下旬に終わらせるつもりが,9月に入っても終わらない 10分だけ休憩するつもりが,30分も遊んでいた 研究の土台 2010年度提出の博士論文(筑波大学博甲5781号)

研究のきっかけと本研究の立場 研究のきっかけ 本研究の立場 先延ばし特性 =どの程度先延ばしするか(全然しない⇔いつもする) 先延ばしの際に生じている意識現象 =どのように先延ばしをしているか (e.g.計画的に先延ばし,ずるずると先延ばし) 先行研究で重視 本研究で重視

< 先延ばしの実態 先延ばしによって期限直前に課題を提出する ことを気に病み,やめたいと思う問題が深刻 Beswick, Rothblum, & Mann(1988) 先延ばし特性と課題提出日との関連を検討(正の相関) 課題提出に遅れた者(6%)と課題期限当日に課題を提出した者の割合(79%)を算出 →先延ばし特性が高くても,課題期限には遅れない 高先延ばし特性者の割合(Solomon & Rothblum, 1984; 小浜, 2010ほか) PASS を用いて,先延ばし頻度が非常に高い者と先延ばしを絶対にやめたいと願う者の割合を算出 頻度:「よく先延ばしする」「いつも先延ばしする」と回答した者の割合 やめたい:「やめたい」「絶対にやめたい」と回答した者の割合 を計上 < 先延ばしによって期限直前に課題を提出する ことを気に病み,やめたいと思う問題が深刻

理論的検討:先延ばしの定義の概観 「課題の開始,もしくは完了を意図的に 遅らせる行為」 「学業課題を,それをしようという Brownlow & Reasinger(2000) 「課題の開始,もしくは完了を意図的に 遅らせる行為」 龍・小川内・橋元(2006) 「学業課題を,それをしようという 行為者の意思に反して遅らせること」

理論的検討:先延ばしの定義の概観 「課題の開始,もしくは完了を意図的に 遅らせる行為」 「終わらせよう,あるいは終わらせたいとまで感じて Brownlow & Reasinger(2000) 「課題の開始,もしくは完了を意図的に 遅らせる行為」 Senecal, Koestner, & Vallerand(1995) 「終わらせよう,あるいは終わらせたいとまで感じて いる学業課題にもかかわらず,期待された時間の 枠内で達成することに失敗すること」

理論的検討:先延ばしの定義の概観 「最終的に課題の成功を妨げるような, 習慣的な課題遂行の遅延」 Fee & Tangny(2000) 「最終的に課題の成功を妨げるような, 習慣的な課題遂行の遅延」 Lonergan & Maher(2000) 「何らかの済ますべきことを意図的に遅らせること 」

理論的検討:先延ばしの定義の概観 「目標達成が必要なものごとを 先に延ばす傾向」 「自己のコントロール下にあり,主観的に重要であると Knaus(2000) 「目標達成が必要なものごとを             先に延ばす傾向」 亀田・古屋(1996) 「自己のコントロール下にあり,主観的に重要であると 思われる課題の遂行を,一時的または完全に回避 したり,そのことから逃避すること」

理論的検討:先延ばしの定義の概観 遅延性以外は,共通した要件が存在しない

理論的検討:本研究の先延ばしの定義 遅延性 本研究でも採用 意図性 不適応性 より広く捉える 習慣的行動 先延ばしの結果として分離して検討 本研究における遅延 =「課題をやらなければならない」と意識し,かつ,課題をしない 意図性 意図的なものと非意図的なものの双方を含める 不適応性 特に言及しない 習慣的行動 本研究でも採用 より広く捉える 先延ばしの結果として分離して検討 1回の行動を詳細に捉える 本研究における先延ばしの定義 「当該の課題をやらなければならないと意識しながらも,  一時的に課題とは無関連な,あるいは課題を妨害する  行動をとる現象」

先延ばしの規定因や適応性の考察に有用な概念 がこれまで積極的に用いられてきていない 理論的検討:先延ばしの類似概念 気晴らし 他のことを考える,または何かの活動に従事することにより,問題から注意をそらすストレス対処コーピング 気晴らしに集中できるほど,その後の感情状態が良好になる 計画錯誤 類似した計画のほとんどが計画通りに進まなかったことを知っているにもかかわらず,自分の計画は計画通りに進むという確固たる信念を持つ楽観的認知バイアス 自己制御の失敗(自己制御強度理論) 複数の自己制御を同時に行うとき,自己制御を失敗しやすい (例:課題遂行と否定的感情の抑制とを同時に行うと自己制御資源が枯渇し,    課題遂行に失敗しやすい) 先延ばしの精神的適応の検討に援用可能 先延ばしの原因について示唆を 得られる概念である可能性 先延ばしによる課題達成失敗の原因について 説明するのに有用な理論 先延ばしの規定因や適応性の考察に有用な概念 がこれまで積極的に用いられてきていない

理論的検討:先延ばしの測定尺度 いずれも1因子解で,「どの程度 先延ばしをするか」を測定する尺度 全般的先延ばし尺度 General Procrastination Scale(GPS) 例)もっと前にやるはずだった物事に取り組んでいることが よくある Tuckman Procrastination Scale(TPS) 例)締め切りぎりぎりまで手をつけない Adult Inventory of Procrastination Procrastination in daily-life いずれも1因子解で,「どの程度 先延ばしをするか」を測定する尺度

尺度の一部で,先延ばしに伴う主観報告を測定 理論的検討:先延ばしの測定尺度 学業先延ばし尺度 Procrastination Assessment Scale –Students (PASS) 例)(個別の学業場面について) a)この課題をあなたはどの程度先延ばししますか b)この課題を先延ばしすることはどの程度問題ですか c)この課題を先延ばししてしまう傾向を,あなたは  どの程度なくしたいですか 遅延傾向質問項目 始動困難:暇なときでも課題以外のことをしてしまう 完成困難:締め切りを過ぎて課題を提出した 勉強嫌悪:勉強しなければと思うとゆううつになる 焦燥感:締め切りが近いと遊んでいても気が晴れない ほか 尺度の一部で,先延ばしに伴う主観報告を測定

部分的/間接的に先延ばしに伴う意識を測定 理論的検討:先延ばしの測定尺度 先延ばし特性に関するその他の測定指標 決断遅延尺度 (Decisional Procrastination; DP) 例)どうしても決断が必要になるまで決断しない 能動的先延ばし尺度(Chu & Choi, 2005; Choi, & Moran, 2009) 例)自分のやる気を最大にするためにわざと先延ばしする 先延ばし後自動思考尺度(林, 2009) 達成困難:間に合わないかもしれない 自己行為批判:まただらけてしまった 先延ばし尺度と他の変数との関連の検討(Ferrari, 1992) 覚醒的先延ばし:刺激欲求が高く,スリルを求めた先延ばし 回避的先延ばし:自尊感情が低い者が行う認知的回避のための先延ばし 部分的/間接的に先延ばしに伴う意識を測定

先延ばしが不適応なのは短期的である可能性 理論的検討:高先延ばし特性者の特徴 心理的帰結に関する変数との関連 メタ分析(van Eerde, 2003; Steel, 2007)結果 否定的感情特性(不安,抑うつ)や情緒不安定性と正の関連 自尊感情とは負の関連 メタ分析に反する結果 テストから時間的距離が遠い学期始めには先延ばし特性とストレスとの間に負の相関(Tice & Baumeister, 1997) 学習に関することを想起しない場合,先延ばし特性と動揺感情との間に相関が見られない(Lay, 1994) 精神的健康や自尊感情,否定的感情など ・先延ばしを行う者は否定的感情が高く,  情緒的に不安定で,自尊感情が低い →先延ばしは心理的不適応につながる 先延ばしが不適応なのは短期的である可能性

学業成績や課題遂行効率,実験におけるテスト成績 理論的検討:高先延ばし特性者の特徴(2) 達成成果に関する変数との関連 メタ分析(van Eerde, 2003; Steel, 2007)結果 学業成績やGPAと負の関連 セルフコントロールや誠実性とも負の関連 メタ分析に反する結果 先延ばし低群と高群でGPAの差がない(Pychyl, et al., 2000) 能動的先延ばしを行う者は低先延ばし特性者と 成績に差がない(Chu & Choi, 2005) 学業成績や課題遂行効率,実験におけるテスト成績 ・先延ばしによって達成成果に悪影響 ・先延ばしを行う者は高い成果をあげる  ための資質に乏しい 適応的な先延ばしが存在する可能性

社会的帰結に関して明確な結果が得られていない 理論的検討:高先延ばし特性者の特徴(3) 社会的帰結を保とうとする動機に関する変数との関連 メタ分析(van Eerde, 2003; Steel, 2007)結果 完全主義と正の関連(van Eerde, 2003) 失敗不安,SHと正の関連(Steel, 2007) メタ分析に反する結果 複数の先延ばし特性と自己志向的完全主義および 他者志向的完全主義とがほぼ無相関(Flett, et al.,1995) 高先延ばし群は失敗不安が高いほど先延ばしするが, 低群は失敗不安が低いほど先延ばし(Schouwenburg, 1995) 完全主義や失敗不安,SHなど ・自己評価を維持するために先延ばしを行う ・高い目標を追及し,失敗を恐れ,    失敗が生じた場合には防衛する 社会的帰結に関して明確な結果が得られていない

実証研究の前提となる研究枠組み 先延ばしを,変化する意識から構成される 過程として捉え,複数の下位過程を抽出 不適応性への偏り 特性的検討への偏り 意識的側面の軽視 先延ばしの多面的検討 先延ばしを変化するものとして捉える 先延ばしに伴って生じる意識に着目 先延ばしを,変化する意識から構成される 過程として捉え,複数の下位過程を抽出

実証的検討の目的と流れ 本研究の目的 実証的検討 先延ばしに伴って生じる意識現象を包括的に検討 →先延ばしの際の心理メカニズム解明の一助 回顧法による検討 縦断調査による検討 先延ばしの特徴に関する検討 研究1~3 とりあえず意識を集める 研究4・5 回顧法の欠点を改善 研究6・8 先延ばしの規定因・帰結の検討

研究1・研究2 研究1:調査面接 調査対象:大学生12名 ・「課題をやらなければならない」と思いつつも 先延ばしをしていた,という現象を確認 研究2:自由記述調査 調査対象:大学生105名 ・「課題をやらなければならない」と思いつつも  先延ばしをしていた,という現象を確認 ・先延ばし前,中,後を弁別して認識 ・各段階で多数の意識を収集 ・3段階で意識が変化していることを示唆

研究3 研究3:評定尺度法を主にした調査 調査対象:大学生357名 調査内容 先延ばしの経験の想起 :「やらなければならないと思いながらも一時的にやらなければならないことを中断したり他のことをしたりした経験」と教示 先延ばし前の意識を測定時の教示 「課題に取り組む前の気持ち」 先延ばし中の意識を測定時の教示 「課題をやっていないときの気持ち」 先延ばし後の意識を測定時の教示 「課題に取り組みはじめたときの気持ち」 項目は Table1~3 参照

前 中 後 課題の 辛さ 課題への支障 懸念・ 自己嫌悪 憂うつ ・焦り 後悔・ 課題への支障 状況の 楽観視 気分の 切り替え 肯定的感情 ・集中 計画性 ・各変数を主成分分析によって尺度構成 ・重回帰分析の繰り返しによるパス解析を実施 ・共分散構造分析でパスを選別 ・多母集団同時解析を実施(単一母集団が適合)

①否定的感情プロセス 否定的感情が一貫して生起し、課題への 支障を促進するプロセス 前 中 後 課題の 辛さ 課題への支障 懸念・ 自己嫌悪 詳細は Figure1 参照 課題の 辛さ 課題への支障 懸念・ 自己嫌悪 憂うつ ・焦り 後悔・ 課題の 辛さ 課題への支障 懸念・ 自己嫌悪 憂うつ ・焦り 後悔・ 課題への支障 状況の 楽観視 気分の 切り替え 肯定的感情 ・集中 計画性  否定的感情が一貫して生起し、課題への  支障を促進するプロセス ①否定的感情プロセス

②楽観的プロセス 先延ばし中に肯定的感情が生じ、 先延ばし後に否定的感情が生じる (意識が変化する)プロセス 前 中 後 課題の 辛さ 詳細は Figure1 参照 課題の 辛さ 懸念・ 自己嫌悪 状況の 楽観視 肯定的感情 ・集中 後悔・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 課題への支障 課題への支障 憂うつ ・焦り 状況の 楽観視 気分の 切り替え 肯定的感情 ・集中 計画性 ②楽観的プロセス  先延ばし中に肯定的感情が生じ、  先延ばし後に否定的感情が生じる  (意識が変化する)プロセス

③計画的プロセス 気分の切り替えを促進し、課題への支障を 抑制するプロセス 前 中 後 課題の 辛さ 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 詳細は Figure1 参照 課題の 辛さ 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 課題への支障 計画性 気分の 切り替え 課題への支障 憂うつ ・焦り 状況の 楽観視 気分の 切り替え 肯定的感情 ・集中 計画性  気分の切り替えを促進し、課題への支障を  抑制するプロセス ③計画的プロセス

回顧法による研究のまとめと問題点 結果のまとめ パス解析によって3種の下位過程が導出された 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス 回顧法による検討の限界点 記憶の変容の影響を受ける 下位過程を構成する時間間隔が不明 意識を,意識が生起した当日に測定 時間間隔を設定して下位過程を検討

10分だけ休憩するつもりが,30分も遊んでしまった 縦断調査による検討 研究4 先延ばし過程における意識変化が1日で起きている 前提で調査を実施 研究5 先延ばし過程における意識変化が1週間で起きている 10分だけ休憩するつもりが,30分も遊んでしまった 8月下旬に終わらせるつもりが, 9月に入っても終わらない

8月下旬に終わらせるつもりが,9月に入っても終わらない 縦断調査の時間の流れ 期限7日前 期限3日前 期限1日前 8月下旬に終わらせるつもりが,9月に入っても終わらない 研究5 前 中 後 前 中 後 前 中 後 研究4 10分だけ休憩するつもりが,30分も遊んでしまった

研究4の検討枠組み 期限7日前 期限3日前 期限1日前 否 前 否 中 否 後 否定的感情 プロセス 楽 肯 否 前 楽 肯 否 中 楽 肯 研究5の枠組み 研究4の枠組み 前 中 後 前 中 後 前 中 後 否 前 否 中 否 後 否定的感情 プロセス 楽 肯 否 前 楽 肯 否 中 楽 肯 否 後 楽観的 プロセス 計 替 前 中 計 替 後 計画的 プロセス 計 替

研究5の検討枠組み 期限7日前 期限3日前 期限1日前 前 中 後 否定感情 前 中 後 否定感情 前 中 後 否定感情 否定的感情 研究5の枠組み 研究4の枠組み 前 中 後 前 中 後 前 中 後 前 中 後 否定感情 前 中 後 否定感情 前 中 後 否定感情 否定的感情 プロセス 前 中 後 楽観視 前 中 後 肯定感情 前 中 後 否定感情 楽観的 プロセス 前 中 後 計画性 前 中 後 切り替え 計画的 プロセス 前 中 後

縦断調査による検討 研究4 目的 調査方法 調査対象:有効回答79名 先延ばしの経験の想起 回顧バイアスを抑制した状態で意識を測定 1日を単位とした時間間隔で3種の下位過程を確証 調査方法 課題期限7日前,3日前,1日前,(期限3日後)の4時点 測定当日の18時にwebページURLを送信→回答 調査対象:有効回答79名 先延ばしの経験の想起 :本日「やらなければならないと思いながらも一時的にやらなけ  ればならないことを中断したり他のことをしたりした体験」 と教示

縦断調査による検討 調査手続きの概要 課題期限7日前,3日前, 1日前にメールを送信 先日お願いした「課題の取り組みに関する調査」の回答をお願いします。 下記のURLにアクセスして、質問への回答を始めてください。 ↓回答ページ http://reas2.nime.ac.jp/cgi-bin/WebObjects/REAS?t=05611

「まったく意識しなかった」回答は以下に回答せず 縦断調査による検討 調査内容 当日の課題遂行量(4件法) 当日の「やらなければならない」意識(4件法) 当日の先延ばし前の意識 否定的感情,状況の楽観視,計画性 当日の先延ばし中の意識 懸念・自己嫌悪,憂うつ・焦り,肯定的感情 当日の先延ばし後の意識 後悔・自己嫌悪,気分の切り替え 「まったく意識しなかった」回答は以下に回答せず 研究3をもとに,各段階 の意識を2項目ずつ 抜粋(5件法)

否定的感情 プロセス 楽観的 プロセス 計画的 プロセス 縦断調査まとめ(研究4) パス図詳細は Figure 2参照 課題期限7日前 前 中 後 憂うつ・ 焦り 状況の 楽観視 計画性 気分の 切り替え 否定的 感情 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 肯定的 否定的 感情 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 否定的感情 プロセス 状況の 楽観視 肯定的 感情 後悔・ 自己嫌悪 楽観的 プロセス 計画性 気分の 切り替え 計画的 プロセス

否定的感情 プロセス 楽観的 プロセス 計画的 プロセス 縦断調査まとめ(研究4) パス図詳細は Figure 3参照 課題期限3日前 前 中 後 否定的 感情 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 否定的感情 プロセス 状況の 楽観視 肯定的 感情 後悔・ 自己嫌悪 楽観的 プロセス 計画性 気分の 切り替え 計画的 プロセス

否定的感情 プロセス 楽観的 プロセス 計画的 プロセス 縦断調査まとめ(研究4) パス図詳細は Figure 4参照 課題期限1日前 前 中 後 否定的 感情 懸念・ 自己嫌悪 後悔・ 自己嫌悪 否定的感情 プロセス 状況の 楽観視 肯定的 感情 後悔・ 自己嫌悪 楽観的 プロセス 計画性 気分の 切り替え 計画的 プロセス

縦断調査による検討 研究5 目的 調査方法 調査対象:有効回答108名 調査内容 回顧バイアスを抑制した状態で意識を測定 1週間を単位とした時間間隔で3種の下位過程を確証 調査方法 課題期限7日前,3日前,1日前の3時点 測定当日の18時にwebページURLを送信→回答 調査対象:有効回答108名 調査内容 当日の課題遂行量(4件法) 当日の「やらなければならない」意識(4件法)

縦断調査による検討 「やらなければならない」意識の種類 意識測定時の教示 当日の意識 ・「課題が終わったため,意識は生じない」 本日課題をしていなかったときは,どんな気持ちでしたか 当日の意識 否定的感情 状況の楽観視 計画性 肯定的感情 ・「課題が終わったため,意識は生じない」 ・「課題が終わっていないが,意識は生じない」                  は以下の質問に回答せず 研究3をもとに,4種類の 意識を5項目ずつ作成 (5件法)

縦断調査による検討 意識の尺度構成 各プロセスの検討 分散分析による意識の個人内変動の検討 各時点における意識について主成分分析で 1次元性を確認 各プロセスの検討 7日前の否定的感情 7日前の状況の楽観視 のそれぞれを中央値で分割 7日前の計画性 例)否定的感情高群は「否定的感情プロセス」が生起すると  考えられる 分散分析による意識の個人内変動の検討 群(高・低)×時間(課題期限7日前,3日前,1日前) 群の要因を,否定的感情,状況の楽観視,計画性の それぞれで実施 従属変数:課題遂行量,「やらねば」意識,4種の意識

否定的感情 プロセス 楽観的 プロセス 計画的 プロセス 縦断調査まとめ(研究5) 分析結果詳細は Table4~6参照 期限7日前 期限3日前 期限1日前 前 中 後 否定感情高群 否定的 感情 否定的 感情 否定的感情 プロセス 楽観視 高群 肯定的 感情 否定的 感情 楽観的 プロセス 計画性 高群 肯定的 感情 計画的 プロセス

高 高 否定的感情 プロセス ↑ 高 ↑ 楽観的 プロセス 計画的 プロセス 縦断調査まとめ(研究5) 分析結果詳細は Table4~6参照 期限7日前 期限3日前 期限1日前 前 中 後 「やらねば」意識 高 高 高 否定感情高群 否定的 感情 否定的 感情 否定的感情 プロセス ↑ 高 ↑ 楽観視 高群 肯定的 感情 否定的 感情 楽観的 プロセス ・「やらねば」意識 ・課題遂行量 1日前に 増加 計画性 高群 肯定的 感情 計画的 プロセス

課題遂行場面における心理変化の個人差を測定 先延ばしの特徴に関する検討 理想的な検討方法 質問紙調査によって個人特性を測定 実際に用いた検討方法 特定の先延ばし過程を辿りやすい個人を抽出 ある個人特性をもつ個人の 先延ばし過程を縦断的に検討 課題遂行場面における心理変化の個人差を測定 様々な個人特性との関連を横断的に検討

先延ばしの特徴に関する検討 研究6 目的 調査対象:大学生404名 調査内容 先延ばし意識特性尺度全体の教示 各時点の意識測定時の教示 各下位過程を辿りやすい者を抽出する方法の開発 (先延ばし意識特性尺度の作成) 調査対象:大学生404名 調査内容 先延ばし意識特性尺度全体の教示 「レポートやテストなどの課題準備中によく感じる気持ち」 各時点の意識測定時の教示 研究3と同様

先延ばしの特徴に関する検討 測定項目 先延ばし意識特性尺度 研究3 先延ばし意識特性尺度 その他の先延ばし特性尺度 課題に取り組む前に 研究3をもとに,特性的な内容となるように改変 その他の先延ばし特性尺度 日本語版General Procrastination Scale(GPS; 林, 2007) 邦訳版Tuckman Procrastination Scale(TPS; 向後ら, 2004) 決断遅延(DP; 宮元, 1997) 項目は Table 7参照 憂うつな気分だった 研究3 課題に取り組む前に 憂うつな気分になりやすい 先延ばし意識特性尺度

先延ばしの特徴に関する検討 先延ばし意識特性尺度の尺度構成 主成分分析による解析 主成分得点による回答者の分割 群別の得点差の検討 探索的因子分析,確証的因子分析によって7変数を抽出 主成分分析による解析 得点化された先延ばし意識特性尺度と他の先延ばし尺度   を対象に主成分分析 →2成分を抽出 クラスタ分析によって変数を分類 主成分得点による回答者の分割 主成分負荷量の布置にしたがって4群に分割 群別の得点差の検討 群を要因,先延ばし意識特性尺度の各変数を従属変数と した1要因被験者間計画分散分析

第2主成分負荷量 否定的感情 プロセス 楽観的 計画的 第1主成分 負荷量

否定的感情 プロセスを 辿りやすい者 計画的 プロセス を辿り やすい者 得点 楽観的 プロセスを 辿りやすい者 第2主成分得点 第1主成分 2.91 計画的 プロセス を辿り やすい者 否定的感情 プロセスを 辿りやすい者 第1主成分 得点 -2.94 3.71 楽観的 プロセスを 辿りやすい者 -3.50

計画群 n=106 否定感情群 n=53 中間群 n=54 得点 楽観群 n=51 第2主成分得点 第1主成分 2.91 0.6 -0.6 -2.94 3.71 楽観群 n=51 -3.50

先延ばし意識特性尺度および主成分 得点を用いた群分け手続きが妥当 であることが確認された

先延ばしの特徴に関する検討 研究8 目的 調査対象:大学生1285名 各下位過程を辿りやすい者の特徴の検討 先延ばし意識特性尺度およびGPS,DP→1285名を対象 その他の性格特性→各調査で異なる

先延ばしの特徴に関する検討

先延ばしの特徴に関する検討 研究8 分析方法 先延ばし意識特性尺度は研究6にしたがって尺度構成 先延ばし意識特性尺度とGPS,DPを対象に主成分分析 →研究6と同様の結果が再現されることを確認 研究6と同様に分散分析によって4群の得点を比較 ※学業成績は,肯定率をχ2検定で比較

認知特性とBig-5 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス ・情緒不安定性が高い ・楽観主義が高い ・認知的熟慮性が低い ・誠実性が低い ・感情調整機能が高い ・誠実性が高い 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス

否定的感情と精神的適応 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス ・否定的感情に関する  性格特性が高い ・精神的に不健康 ・自尊感情が低い ・自己嫌悪が高い ・反すう制御が高い ・精神的に健康 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス

気晴らし 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス ・気分調節に自信がない ・気晴らしに集中できない ・気分が悪化する ・目標が明確化しない ・気分緩和志向が高い ・気晴らしに集中する ・気晴らしに依存する ・目標明確化が高い ・気分緩和結果が高い 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス

自己評価維持のための動機 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス ・公的自意識が高い ・失敗を気にする完全主義 ・SHが高い ・完全主義が低い ・公的自意識が低い ・高目標を求める完全主義 ・失敗を気にしない 否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス

学業成績 学業成績が低いと報告 学業成績が高いと報告 楽観的プロセス 計画的プロセス

総合考察 期限7日前 期限3日前 期限1日前 否 否定感情 否 否定感情 否 否定感情 否定的感情 プロセス 楽観視 楽 肯 肯定感情 楽 研究5の枠組み 研究4の枠組み 前 中 後 前 中 後 前 中 後 否 否定感情 否 否定感情 否 否定感情 否定的感情 プロセス 楽観視 楽 肯 肯定感情 楽 肯 否定感情 楽観的 プロセス 計画性 計 替 計 替 計画的 プロセス

否定的感情 特定の時間間隔に限定されず,先延ばしに 伴って常に生じている不適応的な下位過程 総合考察 否定的感情プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 適応性 心理的帰結 達成成果 悪化 前 中 後 前 中 後 前 中 後 否定的感情 精神的健康↓ 自尊感情↓ 課題への支障↑ 否 否定感情 否 否定感情 否 否定感情 特定の時間間隔に限定されず,先延ばしに 伴って常に生じている不適応的な下位過程

課題期限から時間的距離がある時点では 課題をせず,課題期限直前に先延ばしを 後悔する中期的で不適応的な下位過程 総合考察 楽観的プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 適応性 心理的帰結 達成成果 悪化 前 中 後 前 中 後 前 中 後 自尊感情↓ 課題への支障↑ 高校の成績↓ 大学の成績↓ 状況の楽観視 肯定的 感情 否定的 楽観視 楽 肯 肯定感情 楽 肯 否定感情 課題期限から時間的距離がある時点では 課題をせず,課題期限直前に先延ばしを 後悔する中期的で不適応的な下位過程

課題期限直前などにごく短期的に 生起する適応的な下位過程 総合考察 計画的プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 適応性 心理的帰結 達成成果 上昇 前 中 後 前 中 後 前 中 後 自尊感情↑ 課題への支障↓ 高校の成績↑ 大学の成績↑ 計画性 切り替え 計画性 計 替 計 替 課題期限直前などにごく短期的に 生起する適応的な下位過程

否定的感情 総合考察 否定的感情プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 計画錯誤 気晴らし 自己制御 強度理論 前 中 後 前 中 後 やらねば意識↑ 自己嫌悪↑ 公的自意識↑ 気晴らし自信↓ 気分悪化↑ 失敗過敏↑ 気晴らし集中↓ 目標明確化↓ ネガティブ な反すう↑ 完全欲求↑ 行動疑念↑ 計画錯誤 気晴らし 自己制御 強度理論

否定的感情 総合考察 否定的感情プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 高すぎる 目標 悲観的な バイアス 課題志向性 :高 中 後 前 中 後 前 中 後 否定的感情 高すぎる 目標 悲観的な バイアス 課題志向性 :高 気晴らしの 失敗 やらねば意識↑ 知覚された 達成可能性 :低 自己制御資源 の枯渇 自己嫌悪↑ 公的自意識↑ 気晴らし自信↓ 気分悪化↑ 失敗過敏↑ 気晴らし集中↓ 目標明確化↓ ネガティブ な反すう↑ 完全欲求↑ 行動疑念↑

楽観的プロセス 状況の楽観視 肯定的 感情 否定的 目標 課題志向性 知覚された 達成可能性 総合考察 楽観的プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 前 中 後 前 中 後 前 中 後 状況の楽観視 肯定的 感情 否定的 低すぎる 目標 楽観的な バイアス 遂行接近目標↓ 課題志向性 :低 気晴らしの 没頭 知覚された 達成可能性 :低 自己制御資源 の急激な消費 課題遂行量↑ 気分緩和志向↑ 高目標設定↓ 自己嫌悪↑ 気晴らし自信↑ 完全欲求↓ 目標明確化↓ セルフ・ハンディ キャッピング↑ 気晴らし集中↑ 気晴らし依存↑

総合考察 計画的プロセス 期限7日前 期限3日前 期限1日前 適度に 高い目標 バイアス のない計画 知覚された 達成可能性 :高 中 後 前 中 後 前 中 後 計画性 切り替え 公的自意識↓ 失敗過敏↓ 誠実性↑ 認知的熟慮性↑ 高目標設定↑ 感情調整↑ 反すう制御↑ 気分緩和↑ 目標明確化↑ 適度に 高い目標 バイアス のない計画 知覚された 達成可能性 :高 自己制御資源 の維持・回復

否定的感情プロセス 楽観的プロセス 計画的プロセス 先延ばし過程による継時的適応変化モデル 課題期限 感情状態 良 悪 否定的感情プロセス 否定的感情プロセス パフォーマンス のイメージ 非効率な 課題遂行 時間経過 のイメージ 高すぎる目標 課題志向性:高 達成可能性:低 課題期限 感情状態 良 悪 楽観的プロセス 一時的な 課題遂行 低すぎる目標 課題志向性:低 達成可能性:低 楽観的プロセス 課題期限 感情状態 良 悪 計画的プロセス 課題遂行 効率的な 課題遂行 効率的な 達成可能性:高 程よく高い目標 計画的プロセス

結論 本講演の結論 先延ばしを過程の観点から検討することにより, 先延ばしに伴う意識現象の生起する時間間隔と 適応性について明らかにされた 意識現象を構成する 時間間隔 先延ばしの適応性 常時生起過程 心理的帰結を害する過程 中期的過程 達成成果を害する過程 短期的過程 適応的な過程

今後の課題 大学生の学業課題以外の検討 より長い時間間隔による検討 各下位過程の規定因に関する直接的検討 大学生以外(中高生)における学業課題や社会人に おける非学業課題において3種の下位過程を再検討 より長い時間間隔による検討 日内変動や週内変動だけでなく,月内変動や月間変動 などを先延ばし過程の構成単位として3種の下位過程を再検討 各下位過程の規定因に関する直接的検討 規定因に関しても縦断的検討が必要

ご質問や資料請求などありましたら お気軽に下記までご連絡ください s-kohama@human.tsukuba.ac.jp 発表は以上です ご質問や資料請求などありましたら お気軽に下記までご連絡ください s-kohama@human.tsukuba.ac.jp

第2主成分負荷量 研究6 研究8 第1主成分 負荷量

研究8:結果 複数の独立したサンプルを1つの分析対象とする ことの妥当性の検討 →多母集団同時解析 W:パス係数に等価制約 V:分散に等価制約 C :共分散に等価制約

否定的感情 プロセス 前 中 後 課題遂行 課題やろうかな? 遊ぼう かな? 先延ばしする自分はダメな奴だ・・・ 先延ばし 課題が気 になる・・・

楽観的 プロセス 前 中 後 課題遂行 課題やろうかな? 遊ぼう かな? 課題やっておけばよかった・・・ 先延ばし 楽しい!