第3章.材料の強化機構.

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第3章.材料の強化機構

金属材料の強化機構 金属強度が高くなる(強度が高い)主原因は何か? 答え : 材料がすべり変形を起こし易いかどうか 答え : 材料がすべり変形を起こし易いかどうか すべり変形を起こしにくい材料 転位の移動を起こしにくくする 転位を全く含まない結晶 転位の移動を抑制する ・ 固溶強化 ・ 析出強化 ・ 結晶粒微細化強化 ・ 加工強化         など ウイスカー(whisker) 直径数μm 小さい寸法に限定される

金属材料の強化機構事例(1) *新日鉄はTRIP鋼(Transformation Induced Plasticity)を 世界で初めて実用化しました

金属材料の強化機構事例(2) 結晶粒超微細化により、室温で超塑性を実現

3.1 固溶強化 + 純金属 他元素 (点欠陥をわざと作り出す) 内部ひずみ 転位の移動を抑制 (溶媒金属) (溶質金属) 合金元素 at% 降伏強さ MPa 図3.1 α鉄の降伏強さに及ぼす        置換型固溶元素の影響 内部ひずみ 転位の移動を抑制 純金属 (溶媒金属) (溶質金属) 他元素 + 固溶強化効果が大きい 傾きが大きいほど ① 置換型固溶元素の場合 置換原子 ・ 原子半径の差 ・ 電子構造の差 完全結晶 ② 侵入型固溶元素の場合 転位の部分に集まる コットレル固着 他元素 N C

3.2 析出強化1(状態図) 時効 : L 温度 L + α L + β α T0 × 人工時効温度 T1 α + β T2 T3 A T0 × 人工時効温度 T1 α + β T2 T3 常温時効温度 T4 B元素 (%) 図3.2 析出硬化型合金の状態図 時効 :  急冷された、もしくは加工された金属材料が      ある温度下において時間と共に、その機械的性質が変化すること

3.2 析出強化2(析出の仕方) (b) 急冷~急に温度を下げる α (a) 徐冷~ゆっくり温度を下げる (b)急冷 (a)徐冷 α+β β:セメンタイト (b) 急冷~急に温度を下げる α相のみ ⇒ βが成長するための時間がない ⇒ αの中にβが点在するようになる α+β(パーライト) α T1 T0 β β:セメンタイト (a) 徐冷~ゆっくり温度を下げる α相のみ ⇒ αにβのものが出てくる (析出) 急冷 α (b)急冷 (a)徐冷 α α:フェライト (a) 徐冷 温度 (b) T2 T4 T3 α+β 時間

3.2 析出強化3 λ (a) (b) (c) (d) 図3.4 析出硬化材の転位の移動機構

3.3 結晶粒微細化強化 粒界 d 粒内 図3.5 結晶粒界のすべり抑制効果

3.3 結晶粒微細化強化 結晶粒を小さくする 転位が出会う粒界の 数が多くなる 転位の移動を妨害 d -1/2 [mm -1/2] (結晶粒径の減少) (下)降伏点 MPa 図3.6 降伏点の結晶粒径依存性 転位が出会う粒界の 数が多くなる 転位の移動を妨害 強化 ホール・ペッチの式(Hall-Petch’s equation)

3.4 加工強化 加工硬化 σ 引張強さの増加量 MPa 加工する(塑性変形させる) 伸び % σが増加している(強化) ε 伸び % 冷間加工度 % 図3.7引張強さおよび伸びに及ぼす冷間加工度の影響 加工硬化 ε σ 加工する(塑性変形させる) σが増加している(強化) 塑性変形(加工する) 転位密度の増加 転位の移動が難しくなる 強化

3.5 マルテンサイト強化 炭素鋼 [ マルテンサイト組織 ] 炭素原子 ・ 転位の密度が大きい ⇒ 加工強化 ・ 転位の密度が大きい ⇒ 加工強化 マルテンサイト組織 : 体心正方晶 ・ Cが過飽和状態 ⇒ 固溶強化 ⇒ 結晶粒微細化強化 ・ 組織が微細である 1.5%炭素鋼中のマルテンサイト組織 オーステナイト(γ)  :  面心立方格子(fcc) マルテンサイト変態 急冷 … Feの構造のみ変化

3.6 圧縮残留応力による強化 残留応力とは ‐σr (圧縮残留応力) σ σap=σ‐σr (実際にかかる応力) 圧縮残留応力 大きな材料 下の大きさに合わせようとして圧縮を受ける 引張を行う前に 圧縮残留応力(‐σr)を加える 大きな材料 σ ‐σr (圧縮残留応力) 上の大きさに合わせようとして引張を受ける 引張残留応力 小さな材料 σap=σ‐σr     (実際にかかる応力)

まとめ まとめ ※ 第三章のキーワード 固溶強化、析出強化、結晶粒径微細化強化、 加工強化、マルテンサイト強化、圧縮残留応力による強化