言葉を用いた革命の試み 東北学院大学 小宮友根.

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2010応用行動分析(3) 対人援助の方法としての応用行動分析
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言葉を用いた革命の試み 東北学院大学 小宮友根

はじめに 自己紹介 今日の役割 専門はエスノメソドロジー/会話分析、ジェンダー論 特に人のカテゴリー化にかかわる問題を研究 法とジェンダー ・性暴力事件の裁判で被害者をはじめ関係者がどうカテゴリー化されるか ・裁判員評議で裁判員は何者として発言するのか なぜ「当事者宣言」なのかは? 「当事者宣言をすること」はどんな営みなのかについて 検討するための視点の提供

「ホットロッダー:革命的カテゴリー」 H. サックスの1979年の論文 Q. なぜ少年たちは実に見事な車の分類学を身につけて いるのか? 「ティーンエイジャー」と「ホットロッダー」の違いに ついて考える必要がある

ホットロッダー ある人(たち)のカテゴリー化に用いられるカテゴリーには 当人たちによっては用いられないカテゴリーがある 創世記「ヘブライ人アブラハム」 白人による「ニグロ」 カテゴリー化は「事実の記述」ではない その人たちを「誰がどう見ているか」という視点 しばしば支配的な「世界の見方」を構成する(ステレオタイプ) ホットロッダー

ホットロッダー なぜ「ホットロッダー」は革命的カテゴリーか A. 車の分類学への習熟は、カテゴリーの「自己執行」の 帰結である 「ティーンエイジャー」は「大人」が管理するカテゴリー 「ホットロッダー」は少年たち自身が管理するカテゴリー どんな車に乗るか、誰とレースをするか etc. カテゴリーの自己執行をとおした認識の転覆がある A. 車の分類学への習熟は、カテゴリーの「自己執行」の 帰結である 「その人たちはどんな人たちなのか」という知識の転換 ホットロッダー

ホットロッダー 「ホットロッダー」の示唆 ある人がどうカテゴリー化されるかは、事実としての属性の 問題では必ずしもない そのカテゴリーを誰が管理しているかが問題となる場合がある カテゴリーの管理は、活動の管理をとおした「人の評価」とし ておこなわれる ホットロッダー

当事者論 「当事者とは誰か」問題 必ずしも属性の問題ではない どんな活動をしてきたか/すべきか

当事者論 HIV/AIDSをめぐる当時者性(本郷 2007) 「薬害」から「STI」へのフレーム転換 当事者=薬害感染、医療の被害者、責任なし 当事者=性行為感染、自業自得 誰もが感染する可能性→「自分事」としての支援 当事者論

当事者論 「当事者とは誰か」問題 必ずしも属性の問題ではない どんな活動をしてきたか/すべきか カテゴリーの管理をめぐる争いも起こる 「裏切り者」問題

当事者論 TGにおける「真の当事者」(鶴田 2009) 医療カテゴリーとしての「性同一性障害」の登場 TS、TG、TV間の序列化 「なんちゃってFtM」の「社会性のなさ」 当事者論

当事者論 「当事者とは誰か」問題 Q. どんな活動の管理・人の評価がそこにはあるのか 必ずしも属性の問題ではない どんな活動をしてきたか/すべきか カテゴリーの管理をめぐる争いも起こる 「裏切り者」問題 Q. どんな活動の管理・人の評価がそこにはあるのか

宣言論 「当事者宣言」はどんなカテゴリー化実践になっているか 「革命の試み」とみなせる部分がある 活動の管理・人の評価をとおした認識の転覆 「宣言」に含まれる「定義」から

宣言論 ろう文化宣言 ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である 手話という言語活動・手話話者としての「ろう者」 {聞こえる>聞こえない}から{日本語を話す=手話を話す}へ 宣言論

宣言論 触常者宣言 触常者とは“考える”人である…触常者とは“交わる”人である…触常者とは“耕す”人である 触る活動・触ることの専門家としての「触常者」 {見える人>見えない人}から{見常者=触常者}へ 宣言論

いくつかの問題提起 「革命の大義」問題 認識の転換はどのように正当化されるのか 現行の秩序は必ずしも悪いとは限らない 支持が得られなければ転覆は成功しない 現在おこなわれている活動・評価とどんな関係を取り結ぶか 「アブノーマライゼーション宣言」の位置

問題提起 「革命の後」問題 転換された認識をどのように維持していくか 単に認識の問題ではなく、社会生活の中での活動の問題 「宣言」の課題ではないが、「宣言」を読む者の課題として 問題提起