日本科学者会議 九州沖縄シンポジウム in 熊本

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個人情報保護講座 目 次 第1章 はじめに 第2章 個人情報と保有個人情報 第3章 個人情報保護条例に規定されている県の義務 第4章 個人情報の漏えい 第5章 個人情報取扱事務の登録 第6章 保有の制限 第7章 個人情報の取得制限 第8章 利用及び提供の制限 第9章 安全性及び正確性の確保 第 10.
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日本科学者会議 九州沖縄シンポジウム in 熊本 「口蹄疫問題を考える」 10 月23 日(土)13:30~17:30 口蹄疫に関する国際的危機管理体制 鹿児島大学農学部獣医学科教授 岡本嘉六 人および物資の国際移動の激増は、国境を越えた疾病の蔓 延の脅威を高めている。有害物質に汚染された食料(メタミドホス、 メラミン汚染したペット飼料・乳児粉ミルク)の輸出、高病原性鳥イ ンフルエンザ、新型インフルエンザ、口蹄疫・・・・・・。 これらの脅威に対して、国際社会はどのように対処している のか? その法的枠組みを理解することが不可欠であり、国内法 が準拠すべき国際法について解説する。 口蹄疫の対処は、国際法に定められており、それから逸脱し た対処は認められない。

世界不況 関税引き上げ 貿易数量制限 為替制限 第一次世界大戦 第二次世界大戦 自国の産業保護 国際復興開発銀行( IBRD ;1945) 国際通貨基金( IMF ;1947) 1944年 ブレトン・ウッズ会議(連合国) ガット体制(GATT; 1948 ) 「関税及び貿易に関する一般協定」 世界戦争の回避策 1947年 第1回関税交渉妥結 → ガット採択 経済紛争の元となる貿易障壁をなくし、自由貿易を確保する基本原則 (i)貿易制限措置の削減 (ii)貿易の無差別待遇(最恵国待遇、内国民待遇) GATT 第20条 一般的例外: 動植物防疫に係る検疫等の措置 「衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定」 ウルグアイ・ラウンド(1986 ~1994)妥結: 農産物貿易の原則自由化 1995年 世界貿易機関( WTO ) ← ガット体制 「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(通称:WTO設立協定)」

衛生植物検疫措置の適用に関する(SPS)協定 いかなる加盟国も、同様の条件の下にある加盟国の間にお いて恣意的若しくは不当な差別の手段となるような態様で又は国 際貿易に対する偽装した制限となるような態様で適用しないこと を条件として、・・・・・ すべての加盟国において、人及び動物の健康並びに植物の 衛生状態が向上することを希望し、・・・・・ 加盟国が人、動物又は植物の生命又は健康に関する自国の 適切な保護の水準を変更することを求められることなく、食品規格 委員会及び国際獣疫事務局を含む関連国際機関並びに国際植 物防疫条約の枠内で活動する関連国際機関及び関連地域機関 が作成した国際的な基準、指針及び勧告に基づき、・・・・・ この協定は、国際貿易に直接又は間接に影響を及ぼすすべ ての衛生植物検疫措置について適用する。衛生植物検疫措置は、 この協定に従って定められ、適用されるものとする。

自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 危害因子についての国の衛生基準 B国 A国 非関税障壁 (WTO訴訟) 国 際 基 準 E国 C国 D国 自由貿易の枠組み(WTO)と衛生基準の関係概念図 衛生および食物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定) 貿易の技術的障壁に関する協定(TBT協定)

コーデックス委員会 (Codex Alimentarius Commission) 食品の安全性確保の国際的枠組み FAO/WHO合同食品規格計画の実施機関として、1962年に、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で設立した国際政府間組織で、その設置目的は、国際食品規格の策定を通じて、消費者の健康を保護するとともに、公正な食品の貿易を確保することである。コーデックス委員会が策定した食品規格は、WTO(世界貿易機関)の多角的貿易協定のもとで、国際的な制度調和を図るものとして位置付けられている。 コーデックス委員会 (Codex Alimentarius Commission) 個別食品部会(11部会) 一般問題部会(10部会) 特別部会(3部会) 地域調整部会(6部会) 一般原則、食品衛生、食品表示、食品輸出入検査・証明システム、分析・サンプリング、栄養・特殊用途食品、食品添加物、残留農薬、残留動物用医薬品、汚染物質 穀類・豆類、加工果実・野菜、油脂、乳・乳製品、糖類、生鮮果実・野菜、魚類・水産製品、ココア製品・チョコレート、食肉衛生、植物タンパク、ナチュラルミネラルウォーター 註: 青字は休会中 バイオテクノロジー応用食品、抗菌薬剤耐性、急速冷凍食品加工取扱 アジア、アフリカ、近東、ヨーロッパ、北アメリカ・南西太平洋、ラテンアメリカ・カリブ海諸国

検疫: 1383年マルセーユで「沖合い停泊40日」を制度化 伝染病: ヒトと物資の国際移動 様々な病原体が存在し、中世のペスト、痘瘡(天然痘)、コレラ、1918年のスペイン風邪のように、世界的大流行を経験してきた。 検疫: 1383年マルセーユで「沖合い停泊40日」を制度化 発病者が出てしまい、接岸を拒否された船は、海上をさまよい、次々と感染して死に絶え、幽霊船とならざるを得なかった。 都市を護るためにやむを得ず採られた措置であるが、それが非人道的で間違っていたという評価はない。 今日の検疫制度では、患者は特定施設に強制隔離されるが、伝染病が大衆に及ぼす影響を考えると、患者の人権に制約が加えられることに反対する意見は出ないだろう。 口蹄疫発生時の患畜、疑似患畜 および畜主に対する制限

ヒトの伝染病制御の国際的枠組み 国際保健規則( 2005 ): IHR(2005) 国際保健規則に基づくWHOへの報告 国際検疫伝染病: 痘瘡(天然痘)、ペスト、黄熱、コレラ 1979年 WHOの痘瘡根絶計画により、地上から痘瘡ウイルスが消滅 国際検疫伝染病: ペスト、黄熱、コレラ 国際保健規則( 2005 ): IHR(2005) ・ 様々な新興感染症が出現した ・ アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)により、攻撃手段が無差別化した 痘瘡(天然痘) 野生型ポリオ 新型インフルエンザ 重症呼吸器症候群 コレラ、肺ペスト、黄熱、ウイルス性出血熱(エボラ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ病)、ウエストナイル熱、その他(デング熱、リフトバレー熱) ・ 公衆衛生上の影響 ・ 通常と異なるか、予期し得ない事象 ・ 国際的拡大の危険性 ・ 国際的な旅行や取引の規制を招く 国際保健規則に基づくWHOへの報告 無条件で報告 条件付き報告

OIEリスト疾病および国際貿易において重要なその他の疾病に適用可能な勧告 家畜伝染病制御の国際的枠組み 世界獣疫局(OIE): 1924年に国家間協定によって設立された。1945年の国際連合発足後は、国際連合食糧農業機関(FAO)の技術的専門機関の役割を担ってきている。 陸生動物衛生規約 第1巻: 総則 第1部 動物疾病の診断、発生動向調査および通知 第2部 リスク解析 第3部 獣医療組織の品質 第4部 総括的勧告: 疾病の予防と制御    4.1章 生きた動物の特定と遡及調査可能性の一般的原則    4.2章 動物の遡及調査可能性を実現するための特定システムの立案と実施    4.3章 地区割と区画化    4.13章  斃死動物の廃棄    4.14章  消毒と昆虫駆除に関する一般的勧告    4.16章 衛生手順、特定、採血およびワクチン接種 第5部 貿易施策、輸入/輸出手順および獣医療証明書 第6部 獣医公衆衛生 第7部 動物福祉 第2巻 OIEリスト疾病および国際貿易において重要なその他の疾病に適用可能な勧告 各国の国内法(日本では家畜伝染病予防法)は、この国際法に準拠していなければならない。

口蹄疫に関するOIE基準 第5.5章 口蹄疫 8.5.1条 国際陸生動物衛生規約において、口蹄疫(FMD)の潜伏期間は14日とする。 第5.5章 口蹄疫 8.5.1条  国際陸生動物衛生規約において、口蹄疫(FMD)の潜伏期間は14日とする。  本章において、反芻動物にはラクダ科の動物(ヒトコブラクダを除く)を含む。  本章において、症例には口蹄疫ウイルス(FMDV)に感染した動物が含まれる。  国際貿易のため、本章はFMDVによる臨床徴候の発現のみならず、臨床徴候が発現していないFMDV感染についても取り上げる。  FMDV感染の発生とは以下のように規定される。 1. 当該動物やその動物に由来する製品からFMDVが分離同定された。または、 2. FMDVの血清型の1種以上について特異的なウイルス抗原やウイルス核酸(RNA)が、口蹄疫と合致する臨床徴候を示していようがいまいが、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連していようがいまいが、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがあろうがなかろうが、一頭以上の動物からのサンプルにおいて特定された。または、 3. ワクチン接種の結果でないFMDVの構造蛋白または非構造蛋白に対する抗体が、口蹄疫と合致する臨床徴候を示している、確定または擬似の口蹄疫発生と疫学的に関連している、あるいは、FMDVとの過去の関連または接触の疑いがある一頭以上の動物で特定された。 発症してなくても、ウイルスが循環していれば汚染国

口蹄疫ウイルスの構造とマーカーワクチン 自然感染による抗体 マーカーワクチン による抗体 非構造蛋白 に対する抗体 5’ 3’ ウイルスの構造蛋白質をコードする遺伝子で、表面のカプシドの免疫原性を決める ウイルスの増殖に必要な蛋白質をコードする遺伝子で、増殖時のみ発現される カプシド蛋白質 非構造蛋白質 5’ 3’ 約7.2~8.4 kbの一本鎖(+)RNA Pirbright Laboratory

Active surveillance zone 8.5.46条 血清学的検査の利用と解釈(図1参照) 積極的発生動向調査地帯 Active surveillance zone 臨床検査と血清学的検査により摘発・処分を行い、感染拡大を防ぐ。発生確認の場合は制限地帯の見直しが必要。 感染地帯 Infected zone 殺処分 清浄地域 Disease-free zone 消毒 図1. 血清学的な調査を通した、あるいは、その後のFMDV感染の証拠を判定するための試験所検査の概要図

O型 A型 C型 Asia 1型 SAT1型 SAT2型 SAT3型 7種の血清型のそれぞれに多数のサブタイプがある。 46    35   27    10  5.1  4.4  3.7   2.1億年  500万年 ・・・ 8000年前      地球誕生 原始生物・ウイルス ラン藻類・光合成 緑藻類・真核生物 脊椎動物 陸上植物 陸上動物 哺乳類 人類の誕生 豚の家畜化 牛の家畜化 1898年 口蹄疫ウイルスの発見 1546 イタリアにおける牛での流行(科学的記述の最初) 1776 計画感染による口蹄疫予防の試行(1744 牛疫) 1796  Jenner 人痘法から牛痘法へ 偶蹄類を中心に20科70種の動物が感受性。現在の自然宿主は? O型  A型  C型  Asia 1型  SAT1型 SAT2型 SAT3型 牛: 指標動物 羊/山羊: 維持動物 豚: 増幅動物 アフリカ・バファロー アンテロープ 家畜 野生動物? 7種の血清型のそれぞれに多数のサブタイプがある。

3 1 2 5 4 7 6 口蹄疫ウイルスの供給地帯( pool ) O型: 1922年にフランスのOise地域 血清型 地帯番号 1 2 3 6 4 5 7 O、A、Asia1 O、A、Sat1、Sat2、Sat3 O、A、Sat1、Sat2 O、A 1 2 5 4 7 6 口蹄疫ウイルスの供給地帯( pool ) O型: 1922年にフランスのOise地域 A型: ドイツAllemagne地域で C型: 1926年ドイツ・レフラー研究所 SAT1型: 1948年ボツワナ共和国 SAT2型: 1957年ケニア SAT3型: 1957年南アフリカ Asia 1型: 1954年パキスタン

2001年に流行したO型ウイルスのサブタイプ(亜型) WRLFMD FMDV O Topotypes - 2001 2001年に流行したO型ウイルスのサブタイプ(亜型) 東アフリカ 中近東・南アジア 東南アジア 西アフリカ 欧州・南米 中国 インドネシア IAH Samuel, A.R. & Knowles, N.J. 2001. Foot-and-mouth disease type O viruses exhibit genetically and geographically distinct evolutionary lineages (topotypes). J. Gen. Virol. 82: 609-621.

中国ではAsia-1型が2005~6年に流行し、近隣諸国への拡大が懸念された 2003~6年 サブタイプの 遺伝的近縁性 Group 2 Group 3 Group 4 Group 6 Group 1 Group 5 Group 2 Group 6 不明 Group 1+2 Group 2+6 Group 3 1954年にパキスタンで初めて分離されたAsia 1型は6種類のサブタイプに分けられるが、それらの中でも遺伝子が微妙に違う多くのウイルス株が存在する。すなわち、変異を繰り返しており、ワクチンの有効性に関わる。 Group 4 Group 1 Group 5 EMPRESTADs

1967-68年の流行と2001年の流行の比較 1967-68年の流行 2001年の流行 10/25-6/4 222日 2/20-9/30 郡当たりの件数 郡当たりの件数 10/25-6/4 222日 2/20-9/30 221日 流行期間 感染施設数 2,364 2,026 疾病制御目的での殺処分数 44万頭 (牛49% 、豚26%、羊25% ) 417万頭(+ 229万頭=646万頭) (羊85%、牛12%、豚3%) 通知まで 4日以内 3週間 輸入汚染肉流通による24件の同時発生 不顕性羊の家畜市場を通した流通 発生要因 主として空気伝播であり、相対湿度、風速および風向きが拡散を助けた。 2月中旬から再導入した 18農場で再発生。 初期は羊との接触。 後半は感染動物と接触した人、機械および車両を介した地域的広がり。 拡大要因

3月に備蓄ワクチン300万ドーズが接種されたが、拡大は止まらなかった。 5月初旬、緊急輸入ワクチン1,000万ドーズの接種によって下火に向かった。死亡頭数から致命率を計算できない。それは死亡を待たずに殺処分したからである。

口蹄疫の臨床徴候の概要 (EUFMD: 口蹄疫防疫訓練課程)   牛 羊・ ヤギ 豚 鹿 跛行 +++ + +? 流涎 発熱 ++ 舌病変 歯茎病変 趾間病変 蹄冠帯病変 鼻部病変 乳頭病変 泌乳量低下 流産 幼獣の死亡率 鹿の臨床徴候は種によって大きく異なる。ノロジカの致命率は高く、ヘラジカでは臨床徴候がほとんどみられない。

キャリアー状態の最大持続期間 表皮の落屑 ウイルスは全身の上皮組織で増殖し、発症前からウイルスを排出する。 尿 糞 膣分泌物 涙 唾液 鼻汁 陸生動物衛生規約において、発生地からの精液、卵子、胚の輸出も禁じられている 口腔内水泡 呼気 流産胎児 胚 蹄水泡の破裂 乳 精液 蹄水泡の 破裂 キャリアー状態の最大持続期間 ウイルスは精液や胚にも分布し、キャリアーとなった種牛からの人工授精によって感染が広がる。 動物種 最大持続期間 牛 羊 山羊 アフリカ・バッファロー 水牛 豚 3年半 9ヶ月 4ヶ月 > 5年 < 2ヶ月? 持続感染しない

国内侵入時の危機管理 初発農場 周辺農場・遠隔地 積極的発生動向調査 Active Surveillance 遡及調査 追跡調査 封じ込め失敗 初発農場 周辺農場・遠隔地 積極的発生動向調査 Active Surveillance A 1 B 2 殺処分 C 3 殺処分 殺処分 4 D E 5 遡及調査 追跡調査 肉眼病変の経過日数から推定される感染日前後に関係があった施設の獣医師による立入調査 肉眼病変の経過日数から推定されるウイルス排出期間に関係があった施設の獣医師による立入調査

宮崎県は初動調査状況を公表すべきである! 第一発見農場が国内初発農場とは限らない ● 4月9日に第1報があった都農町の繁殖牛農家 ● 4月23日 都農町の水牛農家(第6件目、3/31陽性) ● 4月28日 えびの市の肉用牛農場( 9件目) A牧場系列 当時の調査結果が公表されていない(または、調査が行われていない)ため、国内初発農場は特定されていない。 口蹄疫疫学調査チーム第4回検討会の概要 これまでの現地調査、抗体検査等の結果から、ウイルスの侵入が最も早かった農場は3月31日の検査材料でPCR検査で陽性であった6例目の農場であり、ウイルスの侵入時期は3月中旬頃と推察。 1例目の発生が確認された4月20日時点では、少なくとも10農場以上にウイルスが侵入していたと推察される。・・・・・ えびの市での発生事例については、川南町の関連農場から出発した家畜運搬車両等が関連していた可能性があり、・・・ 宮崎県は初動調査状況を公表すべきである!  法律で定められた調査が行われたのか?

口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針 1 異常家畜の発見の通報から病性決定までの措置 (2)家畜防疫員及び家畜保健衛生所の措置 1 異常家畜の発見の通報から病性決定までの措置 4月9日の時点で口蹄疫を疑うのは無理だったが、4月16日に検体を動物衛生研究所に送付した時点ではこの項目が適用される。 (2)家畜防疫員及び家畜保健衛生所の措置 ア 家畜防疫員は、通報があったときは、・・・緊急的な措置について次に掲げる指導等を行う。 (ア)異常畜の所有者に対する指導事項  e 急病等の緊急かつやむを得ない場合以外は外出をせず、農場及びその関連施設の外に物を搬出しないこと。また、外出する場合は消毒等を行うこと。 農家の行き来があったとされている。 オ 家畜防疫員は、一般臨床所見を中心に検査を実施するとともに、疫学的調査も併せて行う。 キ 本病が否定できない場合には、家畜防疫員は次に掲げる対応を行う。 その後の推移からして、検討しなかったと判断されても仕方ない。 (エ)病性決定までの間、殺処分の場所、焼却又は埋却の別等その後の防疫の段取りを検討する。

口蹄疫疫学調査チーム第4回検討会の概要 遡及調査 肉眼病変の経過日数の推定 理屈では判っても、実際の病変は? 1例目の発生が確認された4月20日時点では、少なくとも10農場以上にウイルスが侵入していたと推察される。・・・・・ 遡及調査 肉眼病変の経過日数から推定される感染日前後に関係があった施設の獣医師による立入調査 肉眼病変の経過日数の推定 感染 発症 潜伏期間 水疱の 融合 剥離・糜爛 鋭利な辺縁 潰瘍 辺縁鈍 小水疱 理屈では判っても、実際の病変は? 治癒 瘢痕化 痂皮:表皮のみ 繊維素析出

口から舌を引出した時に破れた1日目の水泡のある去勢牛の舌 上側歯茎の破れた2日目の水泡、舌上のいくつかの破裂前の水泡がある 英国環境食糧農林省(DEFRA) 別の去勢の2日目の病変。尖った辺縁と露出した真皮の赤色に注意 3日目の病変。病変部への血漿と線維素の滲出によって、初期の赤色と辺縁の鋭利さが失われている

左: 牛の4日目の病変。病変部辺縁の鋭利さがさらに失われ、過度の線維素が析出している 左: 牛の4日目の病変。病変部辺縁の鋭利さがさらに失われ、過度の線維素が析出している 下: 病変部における乳頭状突起と中央縦窪みの消失と線維性組織の増殖を特徴とする10日目の病変。 4日目には、黄色の繊維素析出が観察され、治癒機転が始まっている。4日目以降10日目までの写真はないが、口腔内の傷の治りが速いことは、普段経験していることである。

積極的発生動向調査( Active Surveillance )の概要 推定感染日前後に接触のあった関連施設の立入検査 発生農家周辺最低 3km を移動制限として積極的発生動向調査の対象とする。 発生農家からの通報を待つ受動的調査(Passive Surveillance)では、早期発見が難しく、病変の経過日数の判断もできない。家畜防疫員による関連施設の立入検査が封じ込めに不可欠である。 発生動向調査地帯 清浄地域 感染源を突き止める「遡及調査」とウイルス拡散先を突き止める「追跡調査」を同時に進める。 感染地区 潜伏 期間 病変の 経過日数 推定 感染日 推定 発症日 発生 確認日 発症前からウイルスを排出する ウイルス排出期間 遡及調査 汚染施設 A 推定感染日前後に接触のあった関連施設の立入検査 追跡調査 汚染施設 B 感染源 接触後2週間に亘る汚染施設の観察・検査 汚染施設 1

初動対策もさることながら、蔓延防止対策が手遅れとなった! 蔓延防止の危機管理 牛は感受性が高くほぼ100%感染する(指標動物)。 豚は牛より感受性が低いが、発症すると牛の1000倍以上(呼気中は3000倍以上)のウイルスを排出する(増幅動物)。 4月28日に宮崎県畜産試験場川南支場 の豚の感染が判明。県有施設は民間農場よりも衛生管理が劣っているから(?)、周辺農場への感染はない ⇒ 緊急対策は講じられず ゴールデン・ウイーク突入 ⇒ 発生地帯を縦断する国道10号線等は、口蹄疫ウイルス拡散の絶好の通り道となった 初動対策もさることながら、蔓延防止対策が手遅れとなった! 指標動物 維持動物 増幅動物

発生頭数 処分頭数 補償交渉 千頭 30 1ヶ月遅れ 25 20 :豚 15 :牛 10 5 25 20 15 10 5 4/20 4/28 非常事態宣言 30 1ヶ月遅れ 5/19決定 5/22-26 ワクチン接種 発生頭数 25 20 :豚 15 :牛 10 5 25 処分頭数 20 補償交渉 15 10 5 4/20 4/28 5/1 5/6 5/15 5/20 5/26 5/29 6/3 6/17 6/27 6/10

未処分頭数の推移 補償交渉から埋却地問題へと難問が続く 10 万頭 未処分頭数の推移 補償交渉から埋却地問題へと難問が続く 8 豚の呼気中 ウイルスは 牛の3000倍 :豚 :牛 6 4 2 4/20 4/28 5/1 5/6 5/15 5/20 5/26 5/29 6/3 6/17 6/27 6/10

10件目までは人と車 A牧場 20件目以降は空気感染 えびの市

口蹄疫の制御のための欧州共同体の措置に関する規定 欧州連合: 2003年9月29日の理事会指令2003/85/EC 口蹄疫の制御のための欧州共同体の措置に関する規定 第1節 通知 第2節 口蹄疫発生の疑い事例における措置 第3節 確定事例における措置 第4節 特別の事例に適用すべき措置 第5節 異なった疫学的生産単位から構成される施設および関連施設 第6節 制限地帯と発生動向調査地帯 第7節 地区割り、移動制限、ならびに、識別 第8節 ワクチン接種 第9節 口蹄疫とその感染に係る清浄資格の回復 第12節 緊急時対策計画と即時的警戒訓練 20世紀初頭に戦争のないヨーロッパ統合の構想が持ち上がってから、経済・産業分野での共同体設立を経て1992年にようやく欧州連合条約が署名され、1999年に単一通貨としてユーロが導入された。この過程で人の往来や物資の移動における国境の役割は少しずつ軽くなってきた。中世の暗黒時代にペストで人口の半分を失った欧州は検疫制度を創設し、伝染病の侵入を国境で防いできたのだが、統合によって国境の意義が薄れる中で伝染病の侵入をどのように防いでいるのか。 その解決策として、各国の衛生水準の格差をなくし、同等性を確保することが有力視され、そのために医療や獣医療などの品質の最小限の基準を設けてきた。医師や獣医師を養成する大学、医療体制や獣医療体制の整備が行われてきた結果として、欧州連合圏内の自由な往来や物流が確保されてきたのであり、この努力は通貨統合にも匹敵する難事業だったのではなかろうか。また、欧州連合内の自由化は、同時に、それ以外の地域からの伝染病の侵入を防ぐための統一政策の必要性を高めている。この内容は日本における今後の対策を考える上でも参考になるだろう。東北アジア経済圏を進める上で避けて通れない問題である。

口蹄疫発生時の保護を目的とする「種畜の登録制度」が必要! 第4節 特別の事例に適用すべき措置 第15条 感受性動物種を一時的または定期的に飼育する特別の施設の周辺 または内部における口蹄疫発生事例に適用すべき措置 1. 口蹄疫の発生が、研究所、動物園、野生動物公園、ならびに、指令 92/65/EECの第13条2項に従って認可された団体、機関およびセンターの柵で囲ま れた区域の感受性動物に感染する脅威があり、科学的目的または動物種や家畜 の遺伝資源の保護に関連する目的で飼育されている場合、関連する加盟国は、 それらの動物を感染から保護するために全ての適切な生物学的安全措置が採ら れることを保証しなければならない。それらの措置には、公的機関への立入制限 や立入に特別な条件を設けるなどが含まれる。 半径?kmへの立入制限 2. 第1項に記載された施設の一つに口蹄疫の発生が確認された場合、関連す る加盟国は、本共同体の基本的な利益、とくにその他の加盟国の動物衛生状態 が損なわれず、口蹄疫ウイルスが拡散するあらゆるリスクを防ぐために全ての必 要な措置が実施される条件で、第10条1項(a)からの除外を決定することができる。 3. 第2項に記載された決定は、直ちに本委員会に通知しなければならない。家 畜遺伝資源の場合、その通知には、品種の維持に不可欠な感受性動物種の繁殖 の核として所轄官庁が事前にそれらの施設を特定することによって、第77条2項(f) に従って設置された施設のリストの証明書を含まなければならない。 口蹄疫発生時の保護を目的とする「種畜の登録制度」が必要!

予防的ワクチン接種は1992年にEU全域で禁止され、加盟国はこの指令に従う義務がある 第8節 ワクチン接種 第49条 口蹄疫ワクチンの使用、製造、販売および管理 加盟国は、以下のことを保証しなければならない。 口蹄疫ワクチンの使用および口蹄疫に対する高度免疫血清の 投与は、本指令で規定された場合を除き、領土内で禁止されて いる。 予防的ワクチン接種は1992年にEU全域で禁止され、加盟国はこの指令に従う義務がある 第50条 緊急ワクチン接種の決定 1. 以下の条件の少なくとも一つが適用される場合に、緊急ワクチン 接種を決定することができる。 (a) 口蹄疫の発生が確認されており、その発生が確認された加盟国 内に広範に広がる恐れがある。 (b) 加盟国における報告された口蹄疫発生に関連して、別の加盟国 が地理的状況または季節的気象条件のためリスクに曝されてい る。 英国の2001年大流行を経て、殺処分政策に動物福祉面からの抗議が起り、マーカーワクチン開発もあって、緊急ワクチン接種を実施し、 「緊急ワクチン接種動物に由来する乳製品と肉製品は、関連するEUの法律とこの指令に従って市場に出すことができる」ようになった。

PART B 発生動向調査地帯に由来する感受性動物からの生産に適用可能な追加的措置 発症していなくても、感染した個体は農場段階で排除 付属文書 VIII  PART A 生肉の処理 1. 骨抜き生肉 指令64/433/EECの第2条(a)に記載された肉は、内臓を除き、骨および主要なリンパ節が除去されたものを言う。 3. 熟成   ● と体は、+ 2 ℃以上の温度で少なくとも24時間熟成   ● 背最長筋の中心におけるpH値は、6.0未満を記録 4. 交差汚染を避けるために効果的な措置を適用しなければならない 陸生動物衛生規約と同じ内容が2003年に定められた。口蹄疫ウイルスは酸により不活化されるので、通常の熟成で十分。 PART B 発生動向調査地帯に由来する感受性動物からの生産に適用可能な追加的措置 1. 制限地帯および発生動向調査地帯の外側の市場への出荷を意図した頭部、腸管および内臓以外の生肉は、以下の追加的条件の少なくとも一つに従って生産されなければならない。 (a) 反芻動物の場合   (i) 動物は、第24条2項に規定された管理の対象とされ、かつ、   (ii) 肉は、Part Aの第1、3 および 4点に規定された処理の対象とされる 発症していなくても、感染した個体は農場段階で排除 第51条 緊急ワクチン接種の必要条件  3. 加盟国は、ワクチン接種された動物の肉、乳および乳製品の人の消費のための安全性について国民に知らせるため、広報計画を実施しなければならない。

OIEによって清浄国復帰が承認されたとしても、輸出再開には相手国との交渉が必要である。BSE問題でOIE基準を満たしている欧米諸国からの輸入を差し止めている日本は、二国間協定で暗礁に乗り上げる可能性がある。 様々な家畜伝染病(OIEリスト疾病として100種類以上)が存在しており、伝染病の蔓延を防ぎながら、自由貿易を維持するためには、国際基準の遵守が不可欠である。